ビジネスパーソンインタビュー
藤田晋著『仕事が麻雀で麻雀が仕事』より
私が18歳のときに学んだ、仕事でも麻雀でもトップクラスを維持する人の「姿勢」
新R25編集部
ここぞというところで、大胆な勝負に打って出られる「勝負強さ」。
ビジネスマンならぜひとも身につけたいスキルですが、そもそも「勝負強さ」を磨くことは可能なのでしょうか?
その質問に対し、最高の教材になるのは「麻雀」だと断言するのは、サイバーエージェントの藤田晋社長。
藤田社長は、2014年にはプロも参加する「麻雀最強戦」で優勝するほどの雀士としても知られています。
2015年に『近代麻雀』で開始した連載コラム『仕事が麻雀で麻雀が仕事』では、麻雀で培った自身のビジネス観を伝えています。
今回はそのなかから、「勝負」「ビジネス」「成長」「人生」というテーマで抜粋した4記事を特別公開。麻雀に興味がない方もぜひご一読ください。
言い訳をするな
18歳の時、雀鬼会(雀鬼・桜井章一さんが設立した麻雀の競技団体)で「言い訳をするな」と教わりました。
当時の私は遊びたい盛りで、お金を払って遊びに来たのに理不尽な気がして不服でしたが、我慢して従いました。
でも、そのことが後の人生で非常に役立つことになったのです。「何が起きても自分のせい」という「姿勢」の大切さを学んだからです。
私がいるビジネスの世界は、麻雀と同様、誰もが確率と偶然に左右されます。だから経営者が言い訳をしようと思えば、いくらでも出てきます。
「景気が悪くなったせい」「従業員が働かないから」「他社のせいで値段が下がった」等々、言い出したらきりがないくらいです。
でも、そんな経営者がいる会社で働きたい、もしくは投資したいと思うでしょうか? 私は言い訳が出る時点で、そもそも経営者の「姿勢」がなってないと思います。
震災が起きようが、ヨーロッパで金融危機が起きようが、「何が起きても自分のせい」という心構えがあれば、あらゆる事態を想定し、準備します。
そして、何が起ころうが粘り強く対応することが出来るのです。そんな張りつめたような緊張感を持って初めて、継続的に事業を成長させることが出来るのです。
本当に運が悪かっただけということも起こるのですが、現実にそれは周囲からの慰めにしかならないでしょう。自分から言い訳の言葉が出たら、その時点で「心構えが出来てなかった」と捉えるべきです。
麻雀もまた心構えが大事なゲームです。麻雀はあり得ないことが頻繁に起こるゲーム性なので、つい言い訳をしたくなります。
「今日は配牌が悪かった」「追っかけリーチに摑まされた」「他家の変な鳴きのせいで」等々、これもまた言い出したらきりがありません。
張りつめたように心の準備が出来ている人と対戦すれば、言い訳が出る人は最初から穴だらけのバケツに水を入れているようなものです。それでは勝てる筈がありません。
私が最強位になった時、最強戦が一発勝負のタイトル戦なので「最強戦は運だよね」という人が麻雀関係者の中にもいました。でも、長年トッププロとして君臨する瀬戸熊直樹プロはこう敗戦の弁を語っています。
「視聴された方には、ツイてないからと思われる人もいるかもしれないが、明らかなる準備と覚悟の不足」
たった1半荘であっても、自分の中に敗因を求める覚悟のこもった言葉です。これが仕事でも麻雀でもトップクラスを維持する人の「姿勢」なのではないでしょうか。
「たられば」を言ってはいけない
「たら、れば」は博徒が語っちゃならねぇ、最大の禁句だ。
この言葉が私がフォローしている「天牌名言bot」のTwitterアカウントから流れてきました。
ビジネスの世界でも、「あの時投資していたら」、「撤退していれば」などと、過ぎてしまったことを悔やんでばかりいる人がいますが、現実はたった一回だという覚悟が足りないと言わざるを得ません。
仕事でミスした人が「学生気分が抜けてないんじゃないのか!」というお決まりの台詞で怒られる時は、大抵何かやってしまったことを言い訳している時です。
「バーチャル株式投資」という初心者が株式投資を学ぶためのゲームが存在します。
これをやってみると分かりますが、「この時点で買ってれば大儲けできたのに」とか「ここで損切りしておけば深手を負わずに済んだのに」とか「たられば」はいくらでも言えることに気がつくと思います。
いざ自分の大事なお金で本当の株を購入したら、その株が上がろうが暴落しようが、実際に起きた現実は絶対に変わりません。「たられば」を言いがちな人はまだお勉強という意識が抜けてないのではないでしょうか。
麻雀もまた「たられば」がいくらでも言えるゲームです。「あの鳴きがなければツモってた」「リーチしてれば降りてた」「カンチャンに受けてればアガれてた」など、現実に起きなかったことを検証し始めたらいくらでも可能性を追求することが出来ます。
もちろん自分の勉強のために後で検証しておく分にはいいかも知れません。でも、真剣勝負の真っ最中に実際には起きなかったことを追いかけて悔やむのはナンセンスです。
「あの鳴きのせいで食い流れた」とか「食いとった」とか言う人がいますが、鳴きを決断する時点では、株が上がっても下がってもおかしくないのと同様、両方の可能性があった筈です。
なのに悪いほうの結果が出たからと言って、それを追いかけて悔やんだり、鳴いた人を責めたりすることには全く意味がありません。
しかし、人は不思議なほどに流れて手にすることが出来なかった牌が気になります。つまりそれは、逃がした魚は大きいということなのでしょう。
現代社会に「博徒」という職業の人はもう存在しないかも知れません。しかし、仕事であれなんであれ、勝負の世界にもしもはないという気持ちを忘れてはいけないと思います。
強いやつはどんなルールでも強い
2015年末マカオで開催されたワールドシリーズオブ麻雀(WSOM)で鈴木たろうプロが日本人選手最高となる準優勝に輝きました。
日本の麻雀とはかなり異なるルールにもかかわらず、打ち慣れた世界の強豪相手に日本の麻雀プロの強さを世界に示す快挙だったと思います。
その鈴木たろうプロが、「強いやつはどんなルールでも強い」という趣旨の発言をしていました。
麻雀は日本国内だけでも4人打ち、3人打ち、赤アリ、割れ目、その他細かいルールまで場所によって様々です。
統一したルールがないのは麻雀の普及の面で本当に良くないことだと思いますが、ルールが変わるならば打ち方を変えなければならず、その都度適応が求められます。
だから基本的には既に適応出来ている分、打ち慣れた人のほうが有利です。でも確かにたろうプロの言う通り、本当に強い人はどんなルールでも素早く適応してきて、結局は勝ちます。
この話を聞いたとき、私は会社を経営していて常々感じていた「本当に仕事がデキるやつはどこに行ってもデキる」ことを思い出しました。
会社組織には、営業部門、製造部門、管理部門などなどたくさんの部署や、課長、部長、役員など様々なポジションがあります。
しかし、仕事というのは部署やポジションが変わっても、自分の役割が変わるだけで、結局はそこでの成果が求められることに変わりはありません。
仕事がデキる人は役割が新しいものに変わると、そこで求められる成果とは何かを素早く理解し、早い段階で結果を出してきます。
つまり仕事においても、新しいゲームの本質的なルールを素早く洞察して、そこから戦略を生み出す能力が求められるのです。
これは人生においても、とても大事な能力ですが、学校教育で与えられたものを盲目的に勉強しても身に付かないかも知れません。
麻雀では、ルールだけでなく相手のレベルが高いか低いか、仕掛けが早いか遅いかなど相対的なものによっても適応が求められます。
仕事や人生においても、自分の居る組織の大きい小さい、周囲の人の能力の有る無し、パートナーがどういう人かなど、自分の置かれた環境によって作戦は変わってくるでしょう。
どこに行っても仕事がデキるやつになりたければ洞察力と戦略性を磨く必要があります。その訓練に、たまにはいつもと違うルールで麻雀を打ってみましょう。
麻雀も結果が全て
会社経営の世界は結果が全てです。
業績が良ければ何を言っても「だからあなたは素晴らしい」と全部が正しいかのように賞賛され、業績が悪ければ何を言っても「だからおまえはダメなんだ」と全部が間違っているかのように批判されます。
ただ運が悪かっただけだとしても、言い訳は誰も聞いてくれません。また、どんな血の滲むような努力があろうが、どんな崇高な志があろうが、結果が伴っていなければ、それらをアピールしても虚しいだけです。
これが現実にもかかわらず、「プロセスを評価してほしい」という人の意見を聞くと「甘いなぁ」と思います。
プロセスに価値がないとは言いません。ただ、プロセスに価値があるのは結果が全てだと思い込んでいる人のプロセスだけです。
結果が全てと覚悟を決めれば、甘さが消え、集中力が高まり、結果を出すためならあらゆる努力を惜しまなくなります。
そんな人なら不幸にも失敗しても、そこに至るプロセスは結果として次に活きる可能性があります。
しかし、プロセスのほうが大事だと考えている人がいたら、それは最初から目的と手段をはき違えているのです。
ゴールが決まらないFWのサッカー選手が批判にさらされ、大事なところで点を決めた瞬間から救世主のように扱われるのを見たことがあると思います。
結果が全てというのはプロとしての職業に共通した厳しい現実なのでしょう。
麻雀は「選択」と「抽選」の繰り返しであると言われています。
少し前に若い麻雀プロが、「選択」が正しければ自摸や他家打牌といった「抽選」は運なのだから結果は関係ない。正しい選択をしていることを評価すべきで、結果はその人の実力ではなく運次第だと主張していたという話を聞きました。
まだタイトルを獲っていない若い麻雀プロですが、私はそんな姿勢ではいけないと思います。
麻雀もまた、勝った人が強く、負けた人が弱い、それが全てです。少なくともその心構えが最初の一歩だと思います。
麻雀には、ビジネスの世界で活かせる気づきがある
「麻雀はビジネスに似ている」と言いますが、実際、不平等な配牌から早く大きくアガりを目指す麻雀は、「ビジネスの世界の縮図」のようだという藤田社長。
『仕事が麻雀で麻雀が仕事』には、全82回のコラムが一冊に収められています。
藤田社長が麻雀から学んだビジネスの本質。
麻雀を知らない方もぜひ、手に取って見てください!
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