人生の分岐点で、“ぬりかべ”のように立ち続けた

「若いときは、良い意味で自分を騙すことが大事」永作博美が語る“転機との向き合い方”

キャリアby 新R25編集部
記事提供:Woman type
人生は、変化の連続だ。特に、いろいろな転機が訪れる20~30代ならなおさらのこと。

そんな無数の分岐点とどう向き合うか。それは、私たちの人生のテーマの一つと言えるのかもしれない。

だけど、変わることは勇気がいる。それが成長のチャンスだと十分に分かっていても、一歩踏み出すことにためらってしまう自分がいるのもまた事実。

そんな揺れる胸の内を話したら、永作博美さんは言った―変化を怖がらない人なんていないと思いますよ、と。
【永作 博美(ながさく・ひろみ)】1970年10月14日生まれ。茨城県出身。映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で第50回ブルーリボン賞助演女優賞。映画『八日目の蟬』で第35回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞受賞。映画『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』で第35回山路ふみ子映画賞女優賞をするなど受賞歴多数。今年8月より舞台『人形の家 Part2』が控えている
20代後半から30代にかけて、いくつもの作品で主演を張り、変化し続けてきた永作さん。

でも、その心の中はいつも恐怖とプレッシャーでいっぱいだったと明かす。

永作さんはどうやって、自らの転機と向き合ってきたのだろうか。

変化が怖くて仕方なかった20代「楽な道に逃げなくてよかった」

『ミニオンズ』『SING/シング』でおなじみのイルミネーション・エンターテインメントが生み出した大ヒットオリジナルアニメーション『ペット』。

その第2弾である『ペット2』が7月26日より公開される。永作さんは、前作同様、ツンデレ猫のクロエの吹替を担当。いつもと違う声だけの演技は、永作さんに新鮮な驚きをもたらしたそうだ。

「私が普段やっているお芝居は、表情があって、仕草があって、成り立つもの。それを声だけで全部表現するのは、本当に難しいと改めて思いました。

マイクの前に立っても、実際に動いてみないと、台詞にはまる声が出ないんです。でも、声優の方々は自然とあのテンションの幅だったりトーンの違いを表現できる。自分がやってみてそのすごさが分かりましたし、勉強になりました」
本作では、気の小さいマックスを中心に、キュートなペットたちが秘密の大冒険に繰り出す姿が描かれる。

老若男女、誰もが楽しめる爽快なストーリーの中で浮かび上がってくるのは、勇気と成長。未知の世界に果敢に立ち向かうことで、ペットたちはそれぞれに成長を遂げていく。

「例えば都会育ちのマックスは、旅行先で今まで知らなかった大自然と出会います。ずっと散歩で出歩ける範囲しか知らなかった彼は、初めて見る外の世界に恐怖を感じるんですけど、その恐怖が成長の第一歩。

いろんなキャラクターが勇気と団結力によって成長していく姿が鮮やかに描かれていて、1作目も良かったんですけど、今回の2作目はよりグレードアップしているなと思いました」

人生には変化が付き物。自分にとっての転機となるような変化が目の前に訪れたときに大事なのは、逃げるか立ち向かうか。そうこの映画は語り掛けてくれる。

「逃げるのは簡単というか、楽ですよね。だから私はいつも楽じゃない方を選ぶようにしています

そう永作さんは、きっぱりと宣言する。
敢えて困難な道を選べ」確かに、先輩たちはよくそう語る。

でも、どうしてもそういう気持ちになれない自分がいるのも確か。そんなことを考えていたら、まるでこちらの心を透視したように、永作さんは柔らかく微笑んだ。

「でも、それはこれまでたくさんお仕事をさせていただいた中で、楽じゃないことを選んだ方が楽しいんだっていうことを知ったから言えること。私だって、20代のころは変化が一番怖かった。変化を怖がらない人なんていないと思いますよ」

プレッシャーだらけの30代は、良い意味で自分を騙して乗り切れた

「30歳前後はたくさん悩んでいた時期。今の自分を変えたいと思う一方で、自分がこれからどう変わっていくのか不安で、いつも恐怖を感じていましたね」
28歳の時にドラマ『週末婚』(TBS)で連ドラ単独初主演を果たした永作さん。

以降も、『オレアナ』『恋愛戯曲』など舞台でも精力的に活動する他、30歳の時にはドラマ『Pure Soul~君が僕を忘れても~』(日本テレビ)で若年性アルツハイマー病のヒロインを演じるなど難役が続いた。

「次から次に難しい役をたくさんいただいて。しかも、監督や共演者の皆さんは、当時の私ではとても太刀打ちできないような手強い方たちばかり。なぜこんなにもすごい方たちから相手にしてもらえるんだろうと思いつつ、ただそこに立っているだけで精一杯でした」

それは、これからの女優人生を左右する大きな分岐点だった。逃げるのか、立ち向かうのか。そこで永作さんが選択した行動は、少しだけ意外なものだった。

「自分から何か仕掛けるなんていう大それたことはできないから、もう、腹をくくってそこに立ち続けようと思いました。妖怪の“ぬりかべ”のように(笑)。

ただ、才能も経験もある皆さんの中に踏ん張って立っているだけで、私の体にバシバシとボールがぶつかってきますし、その感触は今も残っている。それが自分の一部となり、今につながる経験になっていますね」
逃げもせず、立ち向かいもせず、ただ壁になる。傍からは消極的に見えるかもしれないけど、あの時はそれでよかったと永作さんは振り返る。

「立ち向かうのってハードルが高いし、危険なこともある。若い頃はその判断がまだできませんから、その間は無理をしない方がいいと思う。

経験を積めば、いずれ自分で立ち向かうべきか逃げるべきか判断できる時がやってくる。それまでは時間に任せて待つのも手だと思うんですよね」

どんどん自分からぶつかっていけ。そう叱咤されることが多い世の中で、永作さんのアドバイスは肩に力が何にも入っていなくて、そう易々と強くはなれない自分を何だか許してもらえた気がした。

「良い意味で自分を騙すことって、若い時は特に大事だと思います。変化って聞くと、どうしても恐怖というイメージがついてくる。

だから、何か別の違う言葉に置き換えてみるんです。それが、当時の私にとっては“ぬりかべ”だった(笑)。『私は壁だ、何もしなくていいんだ』って、良い方向に自分を騙してあげることで、プレッシャーだらけだった毎日を乗り越えられた気がします」

大事なのは自分が納得できること。経験を重ねることで、自信と勇気が生まれてくる

いつまでも変わらない少女のような笑顔で、重圧に押し潰されそうになっていた頃を思い返す永作さん。「その上で大事なことがあるとすれば」と前置きして、こう付け加えた。

「一度手を付けたことは納得いくまで取り組むこと。たくさんのことに目移りするのではなく、一つのことに腰を据えて、結果が出るまで自分の目で確かめること

そうやって一つ一つのことをきちんとできるようにしていくと、それが経験になる。そして、それが自信に変わっていくんだと思います」

経験を重ねることが、自信へと変わる。その自信が、いずれやって来る人生の転機に勇気を振り絞るための原材料になる。
「これができたっていうことが一つ、二つと増えていくことで、間違いなく世界は広がっていくし、気付けば前に進んでいる。それも明確に何かできたと胸を張れるものじゃなくたっていいんです。

何か超えられた気がする一人でも認めてくれる人がいる。そんな小さな兆しでいいから、自分が納得できることが大事。そうしたらいつの間にか自然と思える日が来るものなんですよ、『私は立ち向かうんだ』って」

無理に自分から何かを変えようとしなくていい。本当に変わらなきゃいけないときは、ちゃんとその人その人にふさわしいタイミングでやってくる。

もしまだ踏み出す気持ちが分からないなら、それはまだ自分の番ではない、というだけのこと。

「今は冒険が楽しいって心から思えますが、そう言えるまでには経験が必要でした。経験を重ねるのって本当に楽しいですよ。年を重ねれば重ねるほど、分かることが増えてきて、ますます人生が楽しくなる

だから今はそう思えなくても大丈夫です。いつかきっと変われる日が来ますから。できると思って進めば絶対にできます」

最後はからっとした笑顔で、永作さんはエールをくれた。
仕事の責任も大きくなり、プライベートでもいろいろな変化があるのが30歳前後。プレッシャーだらけの毎日の中で大事なのは、決して無理をしないこと。

自分から立ち向かえる日が来るまで待つことは、決して逃げではない。それまでは、誠実に経験を重ねて、自信と勇気をストックしていけばいい。

それが、「楽じゃない方が楽しい」と軽やかに笑い飛ばせる大人になるための、Around30の過ごし方だ。

〈取材・文=横川良明/撮影=洞澤佐智子(CROSSOVER)/企画・編集=栗原千明(編集部)〉

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