ビジネスパーソンインタビュー
「真面目」を追求するために、多少のリスクも恐れない
利用者のプレッシャーになる機能も。「Omiai」はなぜ“真面目路線”を突き進む?
新R25編集部
レッドオーシャンであるマッチングアプリ市場。ビジネスのことを考えたら、そのなかで競合との差別化になるポジショニングは重要になってきますよね。
そんななか、「悩みがあるんです」と新R25に相談してくれたのが、2012年日本ではじめてマッチングアプリという市場を生み出した老舗サービス、「Omiai」。
Omiaiが独自のポジションとして打ち出していきたいのは “真面目さ”なのですが、それゆえに悩みもまた多いようで…
〈聞き手=宮内麻希(新R25編集部)〉
宮内
なにやらOmiaiさんには根深い(?)お悩みがあると聞きまして…
お話をお伺いするのは、Omiaiを運営する株式会社ネットマーケティング マーケティングチームの有江さん
有江さん
サービス名からか、マッチングアプリなのに「ガチガチの結婚相談サービス」だと勘違いされてしまうことが多いんです。
特にR25世代の方からすると、“ハードルの高いマッチングアプリ”だと思われてしまうという悩みがあって…
「ネット上での安全な出会い」という市場を切り拓いたOmiai
宮内
でも、どうしてそんな「ガチガチの結婚相談サービス」っぽい名前にしてしまったんですか…?
有江さん
それを説明するために、Omiaiが誕生した背景からお話しさせてください。
サービスがリリースした2012年頃、ネット上での出会いといえば “出会い系サイト”が主流でした。
そんななかで、弊社代表の宮本が目をつけたのが、当時アメリカで盛り上がっていたデーティングサービスだったんです。
宮内
いわゆる、今でいうマッチングアプリのようなイメージですかね?
有江さん
そうですね。ただ、当時の日本の市場は「ネットの出会い」=「出会い系」だったので、どうしても怪しいイメージが強くて、ネットではまともな出会いなんてできないと思われていたんですよ。
有江さん
そこで日本にも、ネットで安全に真面目な出会いができるサービスには需要があるんじゃないかと考え、“出会い系と結婚相談所のちょうど間の存在”を目指してOmiaiをつくったんです。
宮内
「ネット上での安全な出会い」という新しい市場への挑戦だったんですね。
有江さん
当時はまだマッチングアプリという市場がなかったので、運営側への不信感がとても強かったんですよね。
それをできるかぎり払拭したいという想いから、本名で登録しているFacebookアカウントとの連携を必須にして、あえて出会い系のイメージとは正反対の「Omiai」(お見合い)というサービス名にしました。
「利用者よりも、退会者を増やしていきたい」
有江さん
ただ、日本でもここ2〜3年でマッチングアプリ市場が盛り上がってきて、社内では「サービス名を変えた方がいいかもしれない」という意見が出るようになったんですよね。
宮内
あ、そうだったんですね…!
有江さん
カジュアルな出会いを求めてサービスを使ってもらった方が課金機会が多くなるので、商売としてはメリットが多いんですよ。
宮内
そうですよね。「とにかく気軽に異性に会いたい」という人は何度もリピートしてくれますもんね。
有江さん
正直な話、カジュアル路線で人気になっているアプリをみると、羨ましいなと思うこともあります(笑)。
それでも名前を変えなかったのは、Omiaiが立ち上がったときから掲げていた「人を幸せにするためのサービス」という理念を守りたかったからなんです。
有江さん
恋愛の失敗って、いろんな人と真剣に向き合うことで経験値ができて、少なくなっていくと思うんですよ。
それで最終的に「この人と結婚したら幸せになれそうだ」という自分なりの確信を持って、結婚に踏み切ってもらいたいんです。
宮内
そんなステキな想いがあったんですね。
有江さん
だから、Omiaiは利用者よりも退会者を増やしていきたいと思っています。
どういうことでしょう…?
有江さん
真面目に恋愛をして、幸せな結婚を増やしていく。そうなると、最終的にはサービスを離れてもらうことになりますよね。
宮内
たしかにそうですね…!
その分だけ幸せを生み出しているってことか…!
“真面目な出会い”なら、結婚相談所でもいいのでは…?
宮内
とてもステキなお話だと思ったのですが、ぶっちゃけ、真面目な出会いなら結婚相談所に行った方が効率がよいと感じてしまう気も…?
25歳独身OLの無機質な質問ですみません
今の発言にいたたまれなくなったマーケ担当Bさん(既婚者)
「結婚相手を探す」という目的だけでは、息苦しいじゃないですか。
僕たちは、「この人と一緒にいたいから結婚する」という選択をできることが幸せな人生につながると考えています。
ちなみに宮内さんは、いつまでに結婚したいとかあります?
宮内
(えっ)
そうですね…今25歳ですが、30歳くらいまでには…
Bさん
であれば、28歳くらいまでには「この人と一緒にいたい」という男性をみつけられるのがベストですよね。
宮内
(うっ)
Bさん
それなら、いまからいろんな人と真剣なお付き合いをしておいたほうが、早い段階で審美眼を養えるじゃないですか。
宮内
…さっきから心にグサグサきてます。
Bさん
あはは(笑)、すみません。
いざ自分が結婚すると思っていた年代になったときに相手がおらず、焦って手近で見つけた相手と結婚するのはもったいないと思うんですよ。恋愛の一番の醍醐味って、話してみないとわからない内面をお互いに理解していく過程じゃないですか。
だから本当にその相手が自分にとってベストな相手なのかは、ゆっくりと時間をかけて判断して欲しいと思っています。
宮内
ふ、深いです…
Bさん
「いつまでに結婚したい!」という目標がはっきりしている方は、結婚相談所を使われたほうが効率は良いと思います。
結婚相談所って希望の条件を伝えると、まずはじめに「あなたは高望みです」って条件を正されるらしいんです。つまり、「あなたが結婚できる相手は現実的にこういう方です」と突きつけられるところから会話がはじまる。
それってたしかにリアルなんですけど、やっぱり一生のことですから、夢も見たいじゃないですか(笑)。
有江さん
そういう人と出会える機会って、自分の生活圏内だと限られますよね。年齢が上がるにつれて母数も減っていきますし…
有江さん
それがもし、マッチングアプリを使って、まるで職場や友人紹介のような安心感のなかで出会えるとしたらどうですか?
宮内
それは天国ですね。
有江さん
人生の可能性が広がりますよね。
安心していろんな人に出会いながら、自分が一番幸せになれる相手を探すことができる。それがOmiaiの目指す“真面目な恋愛”なんです。
ビジネス面のリスクがあっても、真面目な目的以外のユーザーは排除する
宮内
ただ気になるのが、マッチングアプリがユーザーにとって身近になればなるほど、市場に不真面目な出会いを求める人も多くなってしまうんじゃないかという点です。
有江さん
それは正直あると思います。
なのでOmiaiでは、“真面目な恋愛”というサービスの純度を守るために、真面目な目的でない人が居づらい空気をつくることを徹底しているんです。
有江さん
そのための機能の最たる例が、ユーザーが“問題がある”と感じた相手を運営に報告することで、イエローカードが付与される機能です。
複数の方から通報されているなど、利用態度に問題のある可能性があるユーザーには事務局が事実確認を行ったうえでイエローカードを付与することがあります。
イエローカードを付与された方とマッチングしているユーザーには「この方がイエローカード付与されてますよ」という通知が行くシステムになっていて、マッチング相手にこれが伝わるのは、マッチングアプリのなかでもOmiaiだけなんですよ。
宮内
それすごいですね。そこまでプレッシャーを与えたら、ユーザーがサービスを使わなくなるリスクもありますよね。
有江さん
そうですね。
でもOmiaiが実現したい世界観を伝えるためには、多少のリスクがあったとしても真面目な姿勢を徹底して、“ここまでやってるんだ”というのをユーザーさんに感じてほしいと思っています。
宮内
アツい…!
ほかにも、24時間365日有人のオンラインパトロールをするなど、安心安全のための取り組みを徹底しています
マッチングアプリの第一人者として、ネットの出会いは安全であることを世の中に伝えていきたい
宮内
最後にお伺いしたいのですが、Omiaiはなぜ流されずにここまで理念を徹底することができているんでしょうか?
有江さん
それは、マッチングアプリという市場をつくった老舗サービスとして、「ネット上でも安心して出会うことができる」というメッセージを率先して世の中に伝えていく責任があると感じているからです。
有江さん
いまって、すべてがインターネットのなかで完結するのではなく、そこから外に出ていく動きが加速しているじゃないですか。
宮内
どんどんネットとリアルがつながってきていますよね。
有江さん
はい。だから恋愛に限らず、ネット上で出会った人と安心してリアルで会える環境をつくっていくことは、社会的に意義のあることだと思っていて。
Omiaiは、恋愛というジャンルでその可能性を伝えていきたいんです。
有江さん
そして、「本気で恋人がほしい」と思ったときに、一番最初に安心して手に取ってもらえるサービスを目指していきたい。
Omiaiはユーザーさんに幸せになってもらうことを本気で考えているので、信頼して試してもらえるとうれしいです。
失礼ながら、取材前に抱いていた“マッチングアプリ”という言葉のイメージからは想像できない言葉に、話を聞いている私もなんだか幸せな気持ちに。
そういえば最近、「マッチングアプリで彼氏ができたんだ!」と報告をしてきた友人に「大丈夫? ちゃんとした人?」と返してしまったことを思い出し…
なにも知らずにそう言ってしまった自分が、ちょっと恥ずかしくなりました。
〈取材・文=宮内麻希(@haribo1126)/撮影=山口まゆこ〉
ビジネスパーソンインタビュー
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