ビジネスパーソンインタビュー
「1つの勉強をじっくり」VS「違う勉強を同時進行」…脳をうまく使った効率的な勉強法は?

菅原洋平著『超すぐやる!』より

「1つの勉強をじっくり」VS「違う勉強を同時進行」…脳をうまく使った効率的な勉強法は?

新R25編集部

2019/08/31

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急ぎで資料をつくらないといけないのに、全然作業が進まない。

1週間前から依頼されていたことに、上司から指摘されて思い出した。

このようなミスの原因はなんだと思いますか?

脳のリハビリを専門にしている作業療法士・菅原洋平さんは、脳のワーキングメモリ不足だと言います。

ワーキングメモリをトレーニングすれば、注意不足によるミスを減らしたり、仕事の効率をあげたりすることが可能。

普段の生活のなかでワーキングメモリを活性化させる方法が書かれた菅原さんの著書『超すぐやる!』から、「ダメなビジネスパーソン」から卒業するための3記事をお届けします。

短時間で、効果的に学習するための脳の扱い方

「職場でテストがあるので勉強しなければいけないんです。でも、勤務時間内には勉強できませんし、どれだけ頑張って早く帰宅しても22時くらいになっちゃってそこから勉強すると5時間くらいしか睡眠時間がとれないんです。短い時間で効率よく勉強できる方法ってあるんですかね」

「超すぐやる!」より

仕事でも家庭でもやるべきことがある社会人にとって、勉強する時間を確保するのはなかなか難しいことです。

受験生のように勉強に専念することはできないので、より短い時間で効率よく勉強の成果を上げることが求められます。

この効率のよい勉強の仕方にも、ワーキングメモリが関係します。

ここで、学習方法とその成績との関係を明らかにする実験を紹介しましょう。

ある集団に単語テストを行なった後、4グループに分け、それぞれ異なる方法で、学習と再テストに取り組んでもらいます。

その後、全グループに共通のテストを再度実施して、その成績を比べました。

4つの学習法は、次の通りです。

①すべての単語の復習と再テストを行なう

②前のテストで不正解だった単語のみを復習し、すべての単語の再テストを行なう

③すべての単語の復習を行ない、前のテストで不正解だった単語のみを再テストする

④前のテストで不正解だった単語のみの復習と再テストを行なう

さて、それぞれの学習法の結果は、どうなったと思いますか?

結果をまとめると、短い学習時間でよい成績をとれる効率のよい勉強法は、「復習は間違えたところだけ、テストはすべてを対象に行なう」②であることがわかりました。

復習よりもテストに時間を割いたほうがよい…つまり、情報のインプットよりアウトプットに時間を割いたほうが、成績の向上につながる、ということです。

脳はアウトプットしないとインプットできない

この実験結果を意外に感じた方の多くは「情報をインプットしてからでないとアウトプットはできない。だから、まずは試験範囲の教科書をすべて読んで理解する必要がある」と考えているのではないかと思います。

このインプット重視の方法は、情報をそのまま脳に貯める短期記憶を活用した勉強です。

しかし、忙しい人ほど、その学習の目的は、「なるべく時間をかけず、かつ学習内容を仕事や実社会で活かす」ことにあるのではないでしょうか。

そのために有効なのが、アウトプットを重視し、貯めた情報を適宜活用していく中で脳内の既存の情報とつなげて加工していくワーキングメモリを活用した勉強法なのです。

インプットよりアウトプットのほうが、学習効率が上がる、つまり「短期記憶よりワーキングメモリを使うことで学習効率が上がる」という結果は、他の研究でも示されています。

次の実験結果を見てみましょう。

この実験では、次の3つの学習方法で教科書の内容を覚えてもらい、1週間後のテストの成績を比べました。

①教科書をくり返し読む

②教科書を読み、コンセプトマップ(複数の概念、事柄をその関係性に応じて線で結んで図式化する)をつくる

③教科書を読んだ後で、学習内容に関する自由作文を書く

すると、もっとも成績がよかったのが、③の自由作文を書いたグループでした。

①と②は、成績の差はほとんど見られませんでした。

このことから、「教科書を読むインプットだけの学習よりアウトプットする学習がよい。そして、アウトプットの方法は、図式化するより自分の言葉に置き換えて言語化するほうがよい」ということがいえそうです。

「スキマ時間にコツコツ」VS.「時間をつくってまとめて」効率がいいのはどっち?

社会人の学習に関しては、もう1つ、多く寄せられる相談があります。

勉強はまとまった時間に集中して行なったほうがよいか、それとも、勉強時間が途切れてしまったりして短くなってもできるときに勉強したほうがよいか、という問題です。

「つい勉強するのを先延ばしにしてしまって、いつも、いよいよまずいとなってから夜中に一気に勉強するパターンになってしまいます。寝不足で翌日にも響くので、やり方を変えたほうがいいかなと思っているんですけど、追い込まれると集中できるような感じもしていて…実際のところ、どうなんでしょう?」

「超すぐやる!」より

このような質問をされる方に、「ちょっとした空き時間があっても、それだと全部終えられないから今はできないな、と思ってしまいませんか?」と尋ねると、皆さん、「そうそう。そうなんですよ」とおっしゃいます。

「時間がない」というのは、まとまった時間に一気に勉強することを前提としている悩みのようです。

まとまった時間をとって一気に集中して学習するのと、少しの空き時間でもこまめに学習するのとでは、どちらのほうが成績はよくなるのでしょうか?

それを確かめた実験では、

①2日間使ってそれぞれ1回ずつ勉強する(普段からこまめに勉強している条件)

②1日使って2回勉強する(テスト前にだけ追い込みをする条件)

③1日使って1回勉強する(追い込みをしてなおかつ勉強時間が少ない条件)

という3つの勉強法に分けて検証されました。

1回の勉強時間の長さは同じという条件なので、①と②は同じ時間勉強していて、③は勉強時間が少ないことになります。

この実験では、それぞれ対になった単語を覚えるという課題のテストを、間隔を空けて2回行ないました。

1回目のテストでは、③のグループの成績が悪く、①と②は成績に差がありませんでした。

勉強時間が少ない③の成績が悪く、総勉強時間の等しい①と②の成績は変わらないということから、勉強は、普段からしていてもテスト前に追い込みをしてもどちらの方法でもよい、ということになります。

ただしこの結果は、時間を空けて行なわれた2回目のテストで変化しました。

①がもっとも高い成績となり、②と③の差が大きく縮まったそうです。

この2回のテストからわかるのは、次のような結論です。

大学受験のように合格しさえすればよい短期的な勉強は、時間を確保すれば追い込み型でもコツコツ型でも変わらないのに対し、テスト後にもその知識が必要になる長期的な勉強の場合は、分割して勉強したほうがよいのです。

私たち社会人に求められるのは後者であり、「まとまった時間がとれないから先に延ばす」と考えず、時間があるときにできるところまで勉強しておくほうが、効率がよいということになります。

この結果には、情報入力・加工・活用という一連の働きから成るワーキングメモリの特徴がよく表れているといえます。

テストとテストの間に時間が空いた場合、その間に別の作業が入ります。

そのとき、勉強によってインプットされた情報は脳内に蓄えられていた別の情報につなげられたり、別の関係ない作業によってインプットされた情報とつなげられたりして使える情報に加工されています。

つまり、入力すればすぐに勉強したことになるわけではなく、脳内での加工作業が挟まることで、「丸暗記」から「使える知識」になるのです。

1つのことを続けられない──飽きっぽさと継続力

今度は、1つのことを勉強するのではなく、複数のことの勉強をするという場面で考えてみましょう。

「1つのことをじっくり勉強したほうが身につきそうな気がするのですが、そればかりやっていると飽きちゃうんですよね。だから途中で別のことに手をつけてしまうんです。そのときの気分でコロコロ勉強内容を変えるほうが飽きずに続けられるような気もして。それに、関係ない勉強をしているときに限ってアイデアが出ることがあります。実際、どっちがいいんですかね?」

「超すぐやる!」より

日常生活において社会人は、仕事だけでなくプライベートで勉強することもあり、1つのことだけ勉強していればよいわけではないことが多いものです。

実際のところ、「1つの勉強にくり返し取り組む」のと、「違う種類の勉強を同時進行で取り組む」のでは、どちらがより高い学習効果を得られるのでしょうか。

その実験は、文字の順番を入れ替えて別の意味の単語をつくるアナグラムを使って検証されました。

後で行なうテストとまったく同じ文字列を使ったアナグラムをくり返し練習したグループと、テストとは違う文字列を使ってアナグラムをつくる練習をしたグループとに分けます。

前者が同じ勉強をくり返した条件、後者が同時進行で違う勉強をしている条件、というわけです。

テストは、1つのアナグラムを30秒以内でつくり、合計50個のアナグラムをつくるまでのタイムを計るというものです。

このテストは、日をまたいで3回行なわれました。

結果は、1回目のテストでは、テストと同じ文字列で練習したグループのほうが高い成績をおさめました。

練習通りにやればいい成績が出た、という感じです。

しかし、2回目、3回目とテストを行なうと成績は変化していき、3回目のテストでは、テストとは違う文字列で練習をしたグループのほうが、高い成績になりました

ここでも関係するのは、ワーキングメモリの「情報を得る目的が重要」という特徴です。

テストと同じ文字列で練習すれば、その練習は「本番のテストでも同じように解答すること」が目的になります。

一方で、テストと違う文字列で練習すれば、「アナグラムをつくる能力を高めること」が目的になります。

後者では、テストはあくまでも能力向上のための手段に位置付けられる、というわけです。

テストより先の目標が設定されていることで、情報は使えるかたちに加工されているのです。

このことを社会人の勉強に当てはめて考えてみましょう。

社会人にとってのテストは、あくまでもスキル向上のための手段です。

テストを合格した後には、そのテストよりも複雑な事例をたくさん扱わなければなりません。

ということは、仕事とは無関係のことだとしても、しっかり勉強していけば、長い目で見ると仕事力が向上する、ということ。

1つのことだけやっていると飽きてしまう、と悲観する必要はなく、様々な分野に挑戦したほうがよい、といえます。

日常の学習場面は1つもムダにしない。

これこそが、効率のよい勉強法なのです。

ワーキングメモリを鍛えて仕事の効率をあげよう

記憶力、情報処理力、時間管理力…。

一般的に「地頭のよさ」とされているこれらの能力は、ワーキングメモリを鍛えることですべて底上げできます

仕事でミスをしてしまい、「自分には才能がない」「この業務に向いてない」と悩んでいる方がいたら、まずはこちらの本を読んでみてはいかがでしょうか。

生活のなかでワーキングメモリを訓練して、「ダメなビジネスパーソン」を卒業しましょう!

このほかの勉強法についてもこちらで解説してます

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