ビジネスパーソンインタビュー
鈴木祐著『ヤバい集中力』より
【難易度別】集中力を保つために「科学的に正しく休む方法」5パターン
新R25編集部
脳に眠る“獣の力”で、タスクを秒速でブッ潰せ!
鈴木祐さんの新著『ヤバい集中力』のキャッチコピーです。
鈴木さんは、1年間に5000本もの科学論文を読むこむ「日本一の文献オタク」と呼ばれており、著書『最高の体調 ACTIVE HEALTH』『超ストレス解消法 イライラが一瞬で消える100の科学的メソッド』はそれぞれAmazonでベストセラーとなっています。
鈴木さんによると、私たちの脳内では、「獣」と呼ばれる衝動的な力と、「調教師」と呼ばれる理性的な力がつねにせめぎあっていて、集中力を左右しているそうです。
また、獣は強力なので、調教師で抑え込むことは不可能ですが、獣を狙った方向に上手く誘導すれば深い集中状態に入ることができるとも。
莫大な力を持つ獣の“誘導テクニック”が書かれた『ヤバい集中力』から、メンタリストDaiGoさんも愛用するという集中法についての2記事を抜粋してご紹介。
「仕事中、メールの通知などですぐ気が散ってしまう」「すぐに疲れて集中力が続かない」
そんな悩みを持つ方、必見です!
長時間労働で失われた集中力を、少しでも取り戻そう
集中力を維持するうえで身につけておきたいのが、「正しく休む」スキルです。
肉体が疲れ切ったら集中力を保つのは不可能ですし、精神的なストレスがたまりすぎれば頭は動きません。
2016年、慶応大学とメルボルン大学がおもしろい調査を行いました。
研究チームは約6500人の男女を集め、全員に普段の仕事ぶりを聞いたうえで集中力や記憶力などのテストを実行。
すべてのデータをまとめて次の傾向をあきらかにしました。
・週に30時間より多く働くと、認知機能にネガティブな影響が出る
・女性の場合は、平均で週に22~27時間の労働がベスト
・男性の場合は、平均で週に25~30時間の労働がベスト
研究では3つの認知テストが行われ、いずれも認知機能が最大化したのは労働時間が週に25~30時間の範囲におさまった人でした。
一方で労働時間が週に50~60時間を超えた場合は、記憶力が下がり、頭の回転も遅くなり、集中力も激減していたそうです。
「労働時間が長くなるほど認知機能が下がる」との報告はほかにも多く、働きすぎの疲れが集中力に悪影響をもたらすのは間違いありません。
考えてみれば当然でしょう。
人類学の研究によれば、アフリカでいまも原始的な暮らしを送る狩猟採集民の労働時間は平均で週に20~28時間に過ぎず、残る時間の多くは、睡眠、休息、遊びのいずれかに費やされます。
人類が週に40時間も働くようになったのは、進化の過程から見ればごく最近のできごとなのです。
とはいえ、現代で週の労働を30時間におさめるのが難しいのも確かです。
ただ「働きすぎをなくそう!」と声をあげたところで、なんの解決にもならないでしょう。
そこで、疲労やストレスによる集中力の低下を防ぐために、ここから「科学的に正しく休む方法」をいくつか紹介していきます。
実践しやすい順番に並べていくので、もし現時点で適切な休憩を取れていないなら、レベル1から少しずつ取り入れてみてください。
レベル1:マイクロブレイク
「マイクロブレイク」は、数十秒から数分の休憩を細かく取る手法です。
もっと長く休めるならそれに越したことはないものの、どうしても長時間の休憩が取れないときは、せめて「マイクロブレイク」を実践してください。
ある研究では、被験者にPCのモニタを見つめ続ける作業を指示し、その合間にたった40秒だけ花と緑が映し出された自然の写真を見せたところ、作業への集中力が高いレベルで維持され、タスクのエラー率も大きく減ったとのこと。
もちろん肉体的なダメージを癒すには足りませんが、脳が感じた一時的なストレスを解くだけなら40秒でも効果は得られます。
もし脳になんらかの疲れを覚えたら、ちょっと自然の画像を見てリフレッシュするか、部屋の窓から大きな雲などを眺めてみてください。
それだけでも、生産性の低下を防ぐことができます。
レベル2:タスクブレイク
休憩が下手な人にありがちなのが、作業を止めて休んだとたんに脳の中で衝動を司る「獣」が暴走を始めてしまうケース。
ちょっと5分だけと思って手を出したスマホのゲームにのめりこみ、気づいたら30分が過ぎて仕事のやる気を失ってしまうようなパターンです。
心当たりがある方は、「タスクブレイク」を試してみてください。
重要で難しい仕事のあいまに、簡単なタスクをこなしてみるという方法です。
簡単なタスクの内容はなんでもありで、メールチェックをするもよし、業務のメッセージにスタンプを返すもよし、今後のスケジューリングをするもよし、プライベートで必要な日用品をネットで買うもよし。
深く考えずにすぐに完了できそうな作業なら、「タスクブレイク」として使えます。
簡単なタスクには一時的に脳の回転数を落とす作用があり、これでもある程度まで調教師の疲れを癒せます。
と同時に、完全に獣を仕事から切り離すわけではないため、作業へのモチベーションも保つことができるわけです。
重要な作業を行う前に、簡単にできそうなタスクをいくつもリストアップしておくといいでしょう。
レベル3:アクティブレスト
「アクティブレスト」は、軽く体を動かして脳をリフレッシュさせる方法です。
休憩中に軽く散歩をする人は多いでしょうが、最近の研究では、どんなに軽い運動でも想像以上のメリットを得られることがわかってきました。
たとえば学生を対象にした実験では、最大心拍数の約30%という負荷で10分の運動を行っただけでも被験者の脳機能が改善し、認知テストの結果では集中力と記憶力に有意な向上が見られています。
「最大心拍数の約30%」という負荷は、ほぼ普通のウォーキングと変わりません。
このレベルの運動で集中力が上がる理由はハッキリしませんが、多くの研究者は血流アップと脳内ホルモンの変化が原因だと考えています。
ほんの10分の軽い散歩でも集中力が上がるのだから、定期的に実践すべきでしょう。
レベル4:ハイパーアクティブブレイク
ハイパーアクティブブレイクは、散歩よりもさらに激しい運動で脳を休ませるテクニックです。
「そんなに運動したら疲れてしまう!」と思うかもしれませんが、こと集中力アップについてはまったく話が異なります。
マギル大学の実験データによれば、エアロバイクで15分のスプリントをした被験者は、その後で行った認知タスクの成績が大幅に改善したとのこと。
激しい運動には、かなりの集中力アップ効果があるようです。
このような現象が起きるのは、激しい運動が脳のメモリを解放してくれるからです。
スプリントなどで心拍数の限界まで体を動かすと、誰でも難しいことは考えられなくなるでしょう。
そのおかげで脳にたまったストレスが解き放たれ、調教師が重荷を下ろしたような状態に変わります。
結果として大きなリフレッシュ効果が生まれて、次のタスクへの集中力が上がるわけです。
運動の強度は、息が荒くなって会話ができないレベルを目指してください。
この基準さえ満たせば、エクササイズの種類はランニングでもなわとびでもなんでも構いません。
ただし、言わずもがなですが、睡眠不足のときや体が疲れ切ったときなどには、激しい運動は厳禁です。
肉体のダメージが回復していない状態で心拍数を上げると、ストレスが強くなりすぎて脳機能が下がってしまいます。
この手法は、あくまで体調が良いときに使いましょう。
レベル5:米軍式快眠エクササイズ
ストレスや疲労の回復には質の良い睡眠が必須。
目覚めの悪かった日には、誰でも頭が働かなくなるのが普通です。
基本的に、睡眠不足による集中力の低下は、しっかりと眠りなおすことでしかリカバーできません。
日中の眠気が原因で作業に集中できないときは、毎晩の睡眠を見なおすのはもちろん、せめて30分の昼寝をしてダメージを回復させてください。
さて、睡眠の改善法は類書でも広く扱われているため、ここでは「米軍式快眠エクササイズ」だけをご紹介します。
その名のとおり米軍がパイロットのメンタル改善用に開発したテクニックで、スポーツ心理学の知見をベースに組み立てられたものです。
米軍の実験では、この方法を使ったパイロットのうち、96%が120秒以内に眠れるようになったというから驚くべき成果です。
夜中にぐっすり眠れない人や、昼寝が苦手な人などはぜひ試してみてください。
「米軍式快眠エクササイズ」は、5つのステップで行います。
STEP1:顔リリース
イスに座るかベッドに横たわってリラックスしたら、まずは顔のパーツに意識を向けていきます。
ゆっくり呼吸をしながら、次の順番で顔の筋肉をゆるめていってください。
おでこ→眉間→こめかみ→目の周り→頬→口の周り→あご
筋肉の力を抜く感覚がわからないときは、いったん各パーツに思いっきり力を込めてから、ふっと弛緩させてみましょう。
特に目のまわりの筋肉はリラックスが難しいので、眼球が頭の奥に沈み込んでいくようなイメージを浮かべるとやりやすいはずです。
STEP2:肩リリース
顔の次は肩の力を抜きます。
肩が生命を失って地中に沈み込んでいくようなイメージを浮かべつつ、ダラリと力を抜くのがポイント。
ゆっくり呼吸しながら、肩の力をゆるめてください。
STEP3:腕リリース
次は腕に意識を向けましょう。
肩と同じよう両腕が地中に沈むイメージで、力を抜いていきます。
なかなか力みが取れなければ、いったん手をギュッと握ってから開いてみましょう。
腕をゆるめた後は、手のひらや指からも同じように力を抜いて終了です。
STEP4:足リリース
足も同じように力を抜いていきます。
両足が床に沈み込む様子をイメージし、足の自重が地面を押すに任せてください。
こちらでも、力みが取れないときは、いったん足全体に力を込めてからゆるめましょう。
STEP5:思考リリース
最後に10秒だけ「何も考えない」時間を作ります。
獣はネガティブな思考に弱いため、明日の仕事や過去に起きた嫌な体験などが頭に浮かぶだけでも筋肉に力が入ってしまいます。
これを防ぐために、10秒だけ思考を遮断してください。
もっとも、いざ「考えるな」と言われると逆に身構えてしまい、頭のなかにネガティブな思考がめぐってしまう人もいるでしょう。
そんな時は、以下のようなテクニックを使うのが有効です。
・「考えるな、考えるな」と10秒だけ頭のなかでくり返す
・静かな湖畔でカヌーに乗り、青空をボーッと見ているイメージを浮かべる
・暗い部屋でハンモックに揺られている様子をイメージする
これでエクササイズは終了です。
この手法の効果には個人差があり、人によっては顔から力を抜いただけで寝入るケースもあれば、思考をリリースしても入眠できないケースもあるでしょう。
もし最後のステップで眠りに入れなかったときは、気にせず最初の手順からくり返してください。
何度かエクササイズを行ううちに、体から緊張が解ける感覚がつかめるようになり、睡眠の質も上がっていくはずです。
オーバーワークが当たり前な現代では、「諦めて休む」スキルは重要な自衛策のひとつです。
すでに最善を尽くしたなら、それ以上はいくら心配しても事態は改善しません。
あとは三十六計、休むにしかずです。
獣の誘導テクニックを学んで、強力な集中力を手に入れよう
『ヤバい集中力』の著者・鈴木祐さんは、1日に2万〜4万文字を書き、これまで計100冊以上の書籍を手がけた超人的な集中力の持ち主。
これも、同書に記されている方法を実践した結果だと言います。
「集中が続かず、仕事の生産性が上がらない」と感じる方は、ぜひ同書の内容を実践して、脳に眠る集中力を目覚めさせましょう!
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