ビジネスパーソンインタビュー
藤野英人著『投資家みたいに生きろ』より
「頑張っても給料は増えない」という思考は社畜になる。“目に見えない資産”を増やせ
新R25編集部
「お金だけではなく、“目に見えない資産”に投資しよう」
ファンドマネジャーとして約30年のキャリアを持ち、投資信託「ひふみ投信」を運用する藤野英人さんの著書『投資家みたいに生きろ』からの引用です。
20代半ばになると仕事に慣れ、将来についても考え始める時期。資産を増やそうと「投資」に興味が湧いている人も多いかもしれません。
しかし、目に見えるものばかりに投資をしては、行き着く先は空虚な人生になる、というのが藤野さんが同書で伝えたいことなんだとか。
ビジネスパーソンが投資したい“目に見えない資産”とは、一体なんでしょうか?
同書から2記事抜粋してお届けします。
目に見える資産ばかり追うと、人生は空虚になる
ファンドマネジャーは、個人投資家や機関投資家から預かったお金を「成長する企業」に投資し、リターンとして利益(お金)を得ています。
しかし、リターンとしてお金を受け取るのは、投資家だけに限りません。
一般的なサラリーマンであっても、見方を変えると、自分の時間や労力を会社に投入することで、お返しとして「給料(お金)」を受け取っています。
また、人だけでなく企業も同じです。企業に向けて投資家やサラリーマンがお金や時間を投資することで、商品やサービスなどの「プロダクト」を生み出しています。
このように、人や企業に投資をおこなうことでわかりやすく返ってくるのは、お金やプロダクトなどの「目に見える資産」です。
短期的に見ると、お金やプロダクトが得られるから、私たちはエネルギーを投入しています。日常における消費活動も、お金を使うことでモノやサービスを手に入れる行為ですからね。
お金を得る、家や車を買う、飲食店でサービスを受ける…これらの「目に見えるもの」を受け取ることは生きる上で必要なことです。
しかし、ここで大事なのは、「目に見えるものばかりを追い求めると、人生は空虚なものになる」ということです。
「社畜生活」が待っているかもしれない
たとえば、サラリーマンの場合を考えてみましょう。
サラリーマンは、平日の8時間という「時間」を会社に投じることで、毎月の給与である「お金」を得ています。
そのお金は、家賃あるいは家のローン、食料、衣服などの「プロダクト」に消費され、残ったお金は定年以降の生活のために「貯金」に回されます。
これが一般的なサラリーマンの生活だと思います。
もし、それだけに終始してしまうと、とても味気ない人生に陥るかもしれません。
「頑張ったってどうせ給料は増えない」「食事はすべて安いチェーン店だけで済ませよう」というように、どんどん消極的な思考・行動に変わっていくからです。
その考えの行き着く先は、サラリーマンであれば「社畜」と呼ばれる人たちです。
「主体性」(やりたいこと)や「決断」(成功体験の積み重ね)が欠如すると、そのような一生で終わってしまいます。
もちろん、「目に見える資産」は生活に必要です。
しかし、それだけで十分なわけではありません。そこで、「目に見えない資産」の重要性が出てくるのです。
目に見えない資産とは?
時間やお金を主体的に「見えないもの」に使う例として、とてもわかりやすいものがあります。
それは、教育です。受験勉強や資格の勉強に時間やお金を投じることで、学歴や資格、語学などの「スキル」が得られますよね。
私たちは、小中学校で基礎的な学力を身につけ、さらに高校や大学、専門学校などで専門的な分野を学び、社会に出る人がほとんどです。
つまり、22歳くらいまでが「学ぶ期間」で、そこから60歳くらいまでが「働く期間」に分かれます。工業化社会だった昭和の時代であれば、この2つは明確に切り分けられました。
終身雇用を期待して1つの会社に特化した能力さえ身につければ、60歳の定年まで、安定した生活が送れました。
しかし、これからはそうはいきません。
令和の時代になり、経団連の中西宏明会長やトヨタ自動車の豊田章男社長など、経済界の重鎮が相次いで終身雇用の見直しについて言及するようになりました。
各産業は成長スピードが速くなり、仕事に必要なスキルは日進月歩で変わり続けます。
その一方で、人間の寿命は延びていき、人生100年時代が叫ばれています。『ライフ・シフト』(東洋経済新報社)がベストセラーになりましたが、そこで書かれている大きなメッセージは、「目に見えない資産を意識して増やしていくこと」でした。
本当の投資は「エネルギーを投入して未来からお返しをいただくこと」
多くの人は、投資とは「お金でお金を稼ぐこと」だと考えています。しかし、それだけの意味ではないのです。
私の考えでは、投資とは、「エネルギーを投入して未来からお返しをいただくこと」です。
そうすることで、希望を最大化する人になることができ、あなた自身の市場価値を高め、これからの変化の時代を生き抜くことができます。
習慣を変えれば生涯賃金だって変わってきますし、そして何より主体的に生きることの充実感は、何物にも代えがたい価値があります。
そのためには、今の一瞬一瞬の意識を変えることが必要です。ここまでの話を踏まえて、人生を変えるためのとっておきの質問が1つあります。
それが、「これって投資?それとも浪費?」という自問自答です。
自己投資をするときに覚えておきたい3つのルール
投資家的な考え方を「習慣」につなげていきましょう。
自分にリターンが返ってくる投資という意味では、「自己投資」という言葉がわかりやすいかもしれません。
自己投資を実践する際には、次の3つのルールを念頭におきましょう。
・ルール1 お金をかけなくてもいい(ベンチャー精神)
・ルール2 三日坊主上等(脱サンクコスト)
・ルール3 プロセスを楽しむ(手段を目的に)
それぞれ順番に見ていきましょう。
1. 「お金をかけなくてもいい」(ベンチャー精神)
まずは、「お金をかけなくてもいい」についてです。投資=お金とは限らない話です。
「お金はないけど、やる気と時間だけはある」そんなベンチャー精神があれば、若い人であっても、学生でも、投資家みたいに生きることは可能です。
私はこれまで、数多くのベンチャー起業家を見てきました。
彼らはみな、初めからお金持ちだったケースは少なく、「お金も人脈もほとんど持っていない。けれど、情熱だけはあった」という状況から人生を切り開いていった人が多数派なのです。
「将来、お金が貯まったら何かやろう」という意識では、もう遅いのかもしれません。
2. 「三日坊主上等」(脱サンクコスト)
2つ目は、「三日坊主上等」についてです。
「継続は力なり」であることはたしかです。しかし、完璧主義はときに悲劇を生みます。
投資の世界には、「サンクコスト」という概念があります。投資したお金や時間、労力を、せっかくだから取り返したいと思う気持ちのことです。
100万円で買った株式が70万円に下がったとき、多くの人は、売ることができなくなってしまいます。
なぜなら、売った瞬間に30万円を損することになり、その事実を認められないからです。
過去に向けられた100万円への執念が、サンクコストであり、それにとらわれると身動きがとれなくなります。
繰り返しお伝えしたように、投資をする際、リターンを意識することは大事です。
しかし、それはつねに「未来に向けられたもの」です。サンクコスト的な判断は、私たちの日常でも襲いかかります。
「今の会社にいても成長しない。けれど、ここで辞めてしまったら、今までの苦労がムダになる」
「10年前にボーナスを奮発して買ったスーツ。型が古くなったけれど、もったいないから着続けよう」
このように、サンクコストにとらわれてしまうと、現在の価値が見えなくなり、賢く判断する感覚が鈍ってしまいます。
そうならないためには、つねに未来志向で、「今」を判断基準にすることです。
70万円に株価が落ちて、さらにそれ以上、下がると判断したら売る。
今の会社でこれ以上の成長がないと判断したら転職する。今の時代に合っていないスーツは早く捨てて新しいものを買う…そのように、「今」を軸にして考えるのです。
自己投資をする場合、一度はじめたのだから毎日欠かさずやらないといけない、と力を入れて考えなくてもいいのです。三日坊主上等です。
過去にとらわれず、今を判断軸にしましょう。
3. 「プロセスを楽しむ」(手段を目的に)
最後のルールは、「プロセスを楽しむ」ということです。
投資という行為にはメリットがたくさんあり、サラリーマンにとってはスキルを磨く手段になりますし、目に見えない資産を増やすための手段にもなります。
しかし、その行為自体を「目的」として楽しめることこそがベストな考え方です。ジャーナリストの立花隆さんは、著書『立花隆のすべて』(文春文庫)の中で、次のように書いています。
「私にとって取材は本を書くための手段である、でも実は違う、私は取材そのものが楽しいんだ」
この言葉に、私も共感します。
投資という行為は、結果だけを求めてしまうと、報われないときの失望が大きく、つらいものになってしまいます。また、効率のよい方法ばかりを追い求めると、その時間が味気ないものになってしまいます。
たとえば勉強をするとき、もちろん受験の合格や資格の取得が目的になるでしょう。しかし、勉強そのものに楽しみを見出し、学ぶこと自体が楽しめると、勉強した内容が血肉となり、学びの効果は加速します。
そうなれば、まさに最強の状態です。長期的に成長するためには、プロセス自体を楽しむことが一番です。
人は楽しいからこそ熱中して意欲がわき、続けることができるものです。結果や効率にこだわりすぎず、プロセス自体を楽しめることを優先しましょう。
「見えない資産」を貯めて、将来への不安をなくそう
「投資」と聞くと、ついお金のことばかりをイメージしてしまいますが、20代はとくに、スキルや人間関係などの“見えない資産”づくりに注力したいもの。
そのためには、藤野さんのいう「投資家視点」という第3の目が必要になると言います。
第3の目を意識して、見える世界を拡大していけば、きっと自分の資産を増やせるはずです!
ビジネスパーソンインタビュー
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