ビジネスパーソンインタビュー
鴨頭嘉人YouTubeチャンネルより
倒産寸前のマクドナルドを救った原田元社長から学ぶ、本当の「リーダーシップ」
新R25編集部
R25世代のなかには、そろそろ「リーダー」や「マネージャー」という立場に就きはじめる人もでてきたはず。
でも、「リーダーシップ」と「マネジメント」という2つの言葉は、しばしば意味を混同されがちです。改めて「何が違うの?」と聞かれると、答えに詰まってしまう人も多いかもしれません。
かつて日本マクドナルドで“伝説の店長”と呼ばれ、自身の講演を発信しているYouTubeチャンネルは登録者数82万人(2019/10/29現在)を誇る“炎の講演家”・鴨頭嘉人さんは、「リーダーシップ」と「マネジメント」には明確な違いがあると断言しています。
そして、それぞれの違いと役割を理解している人だけが、真の「リーダーシップ」を発揮できるというのです。
かつて鴨頭さんが目の当たりにしたというマクドナルドの“復活劇”から、「リーダーシップ」と「マネジメント」の本質を探ります。
【鴨頭嘉人(かもがしら・よしひと)】高校卒業後、東京に引越し19歳で日本マクドナルドにアルバイトとして入社。30歳で店長に昇進。32歳の時にはマクドナルド3300店舗中、お客様満足度日本一、従業員満足度日本一、セールス伸び率日本一を獲得し最優秀店長で表彰される。その後も最優秀コンサルタント。米国プレジデントアワード、米国サークルオブエクセレンスと国内のみならず全世界のマクドナルド表彰もすべて受賞する功績を残す。2010年に独立。現在は組織構築・人材育成・セールス獲得についての講演・研修を行う「炎の講演家」として活躍している
「リーダーシップ」と「マネジメント」の関係性
みなさんは、「リーダーシップ」と「マネジメント」の違いを理解していますか?
実はこの2つの違いって、感覚で理解している人は多いですけど、説明するのがなかなか難しい。
今日はそんな、小難しく捉えられがちな「リーダーシップ」と「マネジメント」の違いを、とてもシンプルにお伝えしようと思います。
まずは「リーダーシップ」。これは、ゴールを指し示し、メンバーを導くことを言います。
それも、なりゆきのゴールではありません。そのままではたどりつけそうもない“新たなゴール”を指し示し、そこにみんなを連れていく人のことです。
たとえばメンバーに「どこに行きたい?」と聞いて、全員が「ディズニーランド」と答えたとする。
それを聞いて「よし、わかった。富士山に登るぞ!」と答えるのが「リーダシップ」です。
もちろん、みんな「はぁ? 何を言っているんだ」と反発するでしょう。すんなりと「わかりました、登りましょう!」とはなりません。
そこで必要になるのが「マネジメント」です。
マネジメントとは、モチベーションを高く保ち、安心・安全が確保された状態で、ゴールにたどり着くために必要なあらゆるサポートをすることを指します。
たとえば富士山に登るなら、「この時期の山頂はすごく寒い。防寒着を重ねて、帽子と耳当ても用意しよう。水は1人2リットル以上、食べ物は3食分持っていこう」など、細かく指示を出す必要があります。
登りはじめてからも、全員が理解できるような言葉で指示を出し、ハッパをかけつづけなきゃならない。
「まだ3合目だから食べ物は取っておいたほうがいい」「5合目に着いたから、ここで休憩しよう」といった具体的な指示はもちろん、
「みんなで絶対に頂上に行こう!」「辛そうな人がいたら、すぐに声をかけて!」といった精神的なフォローも必要です。
そうしてようやく山頂にたどりついて、今まで見たこともないような美しい景色を目の当たりにしたメンバーたちはこう言います。
「リーダー、ここまで連れてきてくれて、ありがとうございます」と。
リーダーがみんなの意見を聞いて「よし、ディズニーランドに行こう」と言っていたら、山頂の美しい景色を見ることはできなかった。
つまり、組織が想像を超えた成長を遂げることはできなかったわけです。
リーダーシップでいまだかつてたどりついたことのないゴールを指し示し、マネジメントでそれを実現する。
これが、リーダーシップとマネジメントの関係です。
強力な「リーダーシップ」が、大企業のピンチを救った
この「リーダーシップ」を、実際にやり遂げた人がいます。僕がマクドナルドで働いていた当時の社長・原田泳幸さんです。
当時のマクドナルドは、業績が下がりつづけていて、もはや経営が危うい状態。
それでも1年に400店舗以上新しい店舗をオープンさせて、赤字の店舗が続出…という状況でした。
そこに別の企業から引き抜かれた原田さんがやってきた。原田さんはまず、すべての部署に「売り上げが落ちた原因は何?」と聞いてまわりました。
するとみんな、当然のように「お店が増えすぎたからだ」と答えます。「店舗が密集しすぎて、売り上げを食いあってしまっている。業績を回復するためには、赤字の店舗を閉店するしかないと思います」と。
でも、原田さんが出した結論は「1店舗も閉めてはならない」でした。
売り上げが落ちている原因は、店舗が増えすぎたせいじゃない。1つひとつの店舗の運営レベルが下がっているせいだと、スタッフの話を聞いて気づいたんです。
原田さんは、それまで進んでいたすべてのマーケティングや施策をストップするように言いました。
その代わり、お店のレベルを上げるための「店長の育成」に最大限のお金と人材を投資する、と決断した。
そして、その宣言を本当にやりきりました。1年間なんのキャンペーンも打たず、店舗の縮小もせず、ほぼすべてのリソースを人材育成に割いたのです。
その結果、お客さま満足度と従業員満足度が、ともに前年の何倍にも跳ね上がったことが調査でわかりました。
その結果を見た原田さんの次の言葉は、「よし、今こそマーケティングだ」。
そうして、次は大幅な改革に舵を切った。100円マックや24時間営業など、みなさんもよく知っている強力な施策を次々に打ちだし、業績を大きく回復させました。
約3,700店舗、約5,600人の従業員を抱えて沈没しかけていた「マクドナルド」という大型船が、原田泳幸という男の「リーダーシップ」によって復活を遂げたんです。
リーダーシップに必要なのは「ブレない心」と「向上心」
原田さんの例からもわかるとおり、リーダーシップを取る人に必要なのは「ブレない心」です。
もし原田さんが、途中で「いや、やっぱり店舗を縮小しよう」と言いだしていたら、今ごろマクドナルドはなくなっていたでしょう。
ひとりでみんなと違うゴールを指し示すと、きっと反発が起こります。でも、ブレてはいけない。
どんなにメンバーに「いいからディズニーランドに行きましょうよ」と説得されても、「いや!富士山に行くんだ」と言いつづけなければならない。
この強い意志が、結果的には組織を大きな成長へと導きます。
一方で、見当違いのゴールを指し示してしまうと、全員を不幸のどん底に連れていってしまう危険性もあります。
一番怖いのは、過去の成功体験にしがみついてしまうこと。
以前富士山をゴールにして成功していたとしても、次はディズニーランドに行ったほうがいい場合だって十分考えらえます。
だからリーダーは、世の中の目まぐるしい変化を捉え、学びつづけなければならない。
いいリーダーの条件は、頭のよさや知識の量ではありません。もっと言えば、一生懸命かどうかすら関係ない。
いいリーダーの根底には、常に学びつづける向上心があるはずです。
マネジメントに必要なのは「愛」と「お節介」
では、次に「マネジメント」。「マネジメント」をおこなう人に必要なのは、とにかく徹底したきめ細やかさです。
なぜそのゴールを目指すのか、どうやったらゴールにたどり着けるのかを、メンバーが理解してくれるまで何度も何度も繰り返し伝えましょう。
よく企業のリーダー研修などに行くと、「部下に何度同じことを言えばわかってもらえるのでしょうか」といった質問をされますが、答えは簡単。
「伝わるまで、何回でも」です。
伝える回数は、部下の人柄や要件の難易度によって大きく変わります。メンバーが理解してくれるまで、根気強く伝えつづけなければいけません。
そのためには、チームへの愛と情熱が欠かせないはずです。
「リーダーシップ」が組織のお父さんだとしたら、「マネジメント」はお母さんのようなもの。
小学生のころ「教科書持った?ハンカチ入れた?」としつこく聞いてきたお母さんのように。
無償の「愛」と「お節介」で、諦めずにチームをゴールへと導きましょう。
役割を理解しなければ、人数が増えても意味はない
立ち上がったばかりのスタートアップや、小さな会社の場合、社長が「リーダーシップ」と「マネジメント」の両方を請け負うことが多いでしょう。
でも組織が大きくなってくると、「リーダーシップ係」と「マネジメント係」が複数人に分かれ、チームのメンバーもどんどん増えていきます。
ここで大切なのが、どんなに人数が増えても、リーダー陣がその役割を忘れないこと。
リーダーが役割を理解していれば、チームのメンバーも自然と「ワンランク上」の仕事をするようになります。
たとえばマクドナルドでいうと、アルバイトマネージャーは「私が社員だったらどうするだろう」と考える。
店長はお店の管理だけでなく、その上のスーパーバイザーの立場になって収益を伸ばすことを考える。
逆に、全員が「ワンランク下」の仕事をしてしまうチームも存在します。つまり、店長がお店の管理を放棄して、自分でハンバーガーを作りだしてしまうような状態です。
こういう店長は、アルバイトの仕事を奪っているだけなのに「俺は忙しい」などと平気で言う。
そんな店長に「こんなに忙しいのに、お前らはなんで働かないんだ」と言われても、当然士気が上がるはずもありません。
リーダー陣が自分の役割を理解せず、部下の仕事を奪うようなことを始めたチームは最悪です。
本当にいいリーダーは、「リーダーシップ」と「マネジメント」の違いを理解している。そして、ブレない心でチームにゴールを示し、きめ細やかな指示でゴールへと導く。
「ワンランク上」を目指したいなら、このことを心に留めておきましょう。
鴨頭さんのYouTubeチャンネルには、仕事に役立つ話が満載です!
「リーダーシップ」と「マネジメント」の違いを語ってくださった鴨頭さん。
鴨頭さんのYouTubeチャンネルでは、今回の動画のような「日々の仕事に役立つ情報」が毎日更新されています。
「人間関係を円滑にするコミュニケーション」や「人生をよりよくする習慣」など、幸せに働くためのノウハウが詰まった鴨頭さんのYouTubeチャンネルを、ぜひチェックしてみてください!
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