そもそも、どうやってこんな業態が生まれたの?
「アイデアは、オープンにしたほうがいい」“相席ラウンジ”経営者のビジネス発想法
新R25編集部
初対面の男女が同じテーブルを囲み、お酒を飲む…。
“相席”的なスタイルのお店がずいぶん浸透しています。
「斬新な業態だ!」ということで数年前にブームが起こって以来、すっかり広まっていますが…そもそも、どうやってこんなスタイルが生まれたんでしょう?
今回は、「相席ラウンジ」経営者に、ビジネスアイデアの源流をきいてみることに。
登場してくれたのは、「オリエンタルラウンジ」経営者の西山喜洋さんです。
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
「学生のころは行ってた」と言われる“安っぽい店”。反省を生かし、人気店へ
天野
今日は、“相席”のお店がどうやって生まれたのか語っていただけるとのことで、うかがいました!
西山さん
いいでしょう! お話しいたしましょう。
話は僕の大学時代にさかのぼります。北海道出身で、地元の大学に進学したんですが、そこが「土木科」で。
天野
土木科…?
西山さん
ダムや建物を造るのに必要な「土木工学」を学ぶんです。ひとくくりにしてはいけないと思うんですが…まあ、女の子が全然いないんですよ。
それで、20歳のころからナンパを始めまして…
オリエンタルラウンジの店内で取材させていただきました
西山さん
札幌にある、すべての大学、専門学校、短大に女の子の知り合いがいましたね。
天野
(ホントかな…)
西山さん
そういう知り合いをたくさん呼んで、男女50人対50人みたいな大きい飲み会をよく開いてました。
女の子の知り合いが少ない、まわりの友達が喜んでくれたんですよね。
その流れで、卒業したあとも就職せずに、23歳のときに「合コンバー」みたいなお店を開いたんです。
西山さん
ただこれは、正直学生の延長線上でやってた、“安っぽい店”だったんですね。大学生ぐらいしか来ないという。
天野
なるほど。
西山さん
オープンして数年後に「あそこ、俺の店なんだよね」って言ったら、こう言われたんです。
「あ~、大人になったら恥ずかしくて行けない」って。
天野
たしかに、社会人になるとちょっとキツいかな…って思っちゃう店って正直ありますよね…
西山さん
言われた通り、そんなにイケてないお店で…
利益もあまり出てなかったので、そこはもうやめようと。
それで2011年、僕が30歳のときに、札幌に新しくお店をオープンしたんです。
天野
新しいお店の「勝算」はどこにあったんでしょうか?
西山さん
たとえば、社会人の男性同士で会食をして、“女性と飲もう”みたいな流れになることってあると思うんです。
そういうときに、いわゆるキャバクラみたいなお店しか選択肢がない。でも…自分もそうだったんですが、そういう「水商売」的なお店がそんなに好きじゃない人も多いじゃないですか。
たしかに。共感するR25世代は多そうです
西山さん
男性って、細かく予定を立てない人が多いから、その日に合コンをするなんて無理だし(笑)。
そこで、自分のお店に「大人になったら行けない」って言われたことを思い出したんです。
「ちゃんとした大人が行けるお店ができたら、流行るんじゃないか?」って思ったんですよね。
天野
なるほど!
西山さん
で、2011年に札幌でお店をオープンしたら、ものすごくヒットしたんですよ。
店の前に行列ができるほどだったとか
西山さん
全国からマネしようっていう人がめちゃくちゃ来ましたね(笑)。
それで、全国展開することを決めました。
天野
それが、いわゆる「相席」のお店の発祥なんですか?
西山さん
僕が「合コンバー」をやっていたように、各地にちょっとはあったみたいです。
ただ、市民権を得たという意味では初と言っていいんじゃないかな。
アイデアは、どうせマネされるもの。可能な限りオープンにせよ
天野
そのように、ヒットするビジネスモデルを考えつくコツがあれば教えてほしいんですが…
西山さん
ちょっとでも「こういうビジネスモデルに可能性があるんじゃないか」と思ったら、すぐ口に出したほうがいいですね。
西山さん
たとえば、「オリエンタルラウンジ」がいよいよ東京・新宿の歌舞伎町に進出するとなったとき、僕は「新宿店には、内装などの総工費で2億円以上をつぎこむ」って、まわりのみんなに宣言したんです。
天野
そんなに!
西山さん
案の定、「歌舞伎町に“相席”なんて絶対ムリ」「240坪!? 大きすぎる」など、まわりにいた全員に反対されました。
そのときに確認するのは、「自分が、反対されたことに対して、その場でちゃんと説明できるかどうか」。反対意見にすべて理論的に答えられて、自分のなかで本質的な手応えをつかんでさえいれば、問題ないんです。
また、自分が答えられないような反対意見があっても、アイデアをさらにブラッシュアップさせる機会になりますよね。
天野
なるほど。内装にそんなにお金をかけた理由は何だったんですか?
西山さん
これは…誤解を恐れずに言うと「客層をコントロールするため」です。
西山さん
「学生しか行かない」ようなお店から脱却するには、お店のトータル的な雰囲気をつくることが本当に大事なんです。「客層がいいお店」は、そういうところからつくられる。
だからこそ、うちのお店はドレスコードを設けるなど、空気感が壊れないように細心の注意を払っています。内装に最大限の投資をしたのも、その観点からです。
天野
たしかに、内装やどんな人がいるかで、お店のクオリティって大きく変わりますもんね。
西山さん
アイデアを「これ、まだちょっと言えないな」って口を閉ざしてしまう人って多いと思うんですけど、そういう人はだいたいショボいです(笑)。
頭の中にあるアイデアは全部言って、周囲のリアクションを見るべきです。
天野
でも、そんなにオープンに言ってマネされたら嫌じゃないですか?
西山さん
アイデア自体にそんなに価値はないです。いずれはオープンになって、マネされるわけですからね。
外側はマネできても、本質の理解とビジネスに対する情熱がなければ、マネしたものはすぐ消えていきますし、気になりません。
「出会い」を求める人間の気持ちって、変わらない
天野
最後に気になったんですが、お店のWebサイトを見ると「世の中の寂しさを埋めていきたい」って書いてあるじゃないですか。これはどういうメッセージなんでしょうか?
今の時代は、「寂しさ」を感じている人が増えていると思いますか?
西山さん
いや、どんな時代でも、どんな人でも寂しいと思うものなんですよ。それは学生時代に合コンを組んでいるころから思っていました。
だから最近、「オリエンタルラウンジ」では、一緒にお店に来る同性を募るための「男性同士」「女性同士」の掲示板(アプリ)をつくったんです。
天野
え~、そうなんですね…!
西山さん
社会人になると、コミュニティって狭くなりますよね。
朝から晩まで会社にいて、一緒にいる同僚や後輩に「今から飲もうよ」って言いにくいじゃないですか。
「全然ちがうところで同性の友達をつくる」ニーズはありそうだなと思ったんです。
天野
それはめちゃくちゃわかります…
西山さん
広い意味で、「出会い」を求める人間の気持ちって、ずっと変わらないと思うんです。
どんなにネット上のサービスがさかんになっても、“相席”の業態は廃れないだろうと考えています。
お店オープン前の貴重な時間をありがとうございました!!
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=森久保発万(@vneck_now)〉
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