ビジネスパーソンインタビュー
「新サービスを作るときの“3カ条”」とは?
「ここまで考えて、マネタイズするのが商売」光本×佐藤コンビがモバイルオーダーアプリにガチ指導
新R25編集部
新R25が“自分でつくれる本格的なネットショップ”「STORES.jp」とコラボして、「新R25ストア」を開設しているのを知っていますか?
そのなかの特別商品として、「ヘイ株式会社(STORES.jpの運営会社)代表取締役社長・佐藤裕介氏と取締役・光本勇介さんが、あなたの会社が抱える悩みや広めたいモノ・サービスにアドバイスします!」というものがありました。
超高額にもかかわらず、商品は当日SOLD OUT。今回は、数ある応募者から選定された勇気ある若手起業家が、さっそく登場!
heyのお二人から「自社サービスの広げ方」についてアドバイスをもらおうという企画なのですが…佐藤さん、光本さんともに容赦は一切なし。「お金をいただいてコンサルするからには手を抜けない」と本気で若手に向き合い、当初の想定とはまったく違う展開となってしまいました。
【左:光本勇介(みつもと・ゆうすけ)】ヘイ株式会社取締役。STORES.jpの創業者・取締役会長でもあり、2013年にZOZOへ売却。過去にはCASHやTRAVEL NOWを運営していた株式会社バンクの創業者でもある。【右:佐藤裕介(さとう・ゆうすけ)】ヘイ株式会社の代表取締役。25歳でGoogleを退職、広告技術スタートアップのフリークアウトを創業し、設立3年半で東証マザーズに上場させている。これまで90社ほどのスタートアップへ個人投資をしている
神原さん
今回応募した、株式会社weltall(ウェルトール)の神原と申します!
こちらは、開発責任者の森川です。
森川さん
よろしくお願いします。
佐藤さん
よろしくお願いします!
会社はいつ設立されたんですか?
神原さん
去年の9月です! 今回は、3カ月前にリリースしたばかりの自社サービス「Onakasuita(オナカスイタ)」についてアドバイスをいただきたくて。
光本さん
「Onakasuita」、ですね…。どんなサービスなんですか?
光本さん、すでに何かが引っかかっている…?
weltall・神原さん、「Onakasuita」の熱烈プレゼン! しかし…?
神原さん
「Onakasuita」は、スマホ一つでメニューの注文・決済を完了できる、飲食店向けのモバイルオーダーサービスでして、現状個人店を中心に約140店舗の飲食店に導入いただいています。
お店の各テーブルに設置されたQRコードにスマホをかざすとメニューが表示され、そのまま注文・会計が可能。店員を呼ぶことも、食事後レジに並ぶこともなくお店を出ることができます。
佐藤さん
たしかに注文・会計時のストレスってけっこうありますよね。
「すいませーん!」って声かけてもスルーされちゃったりとか…
ここまでは順調だった
光本さん
利益はどこで作ってるんですか?
神原さん
Onakasuitaで注文いただいたものに対して、ユーザーさんに5%上乗せしてお支払いいただいてます。
基本的には、店舗からは手数料も月額費も一切いただきません。
佐藤さん
ん、ユーザーから手数料取るんですか?
常連さんからしたら、今まで400円だったアイスコーヒーが420円になると?
神原さん
はい。
通常のオーダーがいい方は、手を挙げて注文してもらえばいいかなと。Onakasuitaにメリットを感じる方だけにご利用いただければ。
佐藤さん
…なるほど。
光本さん
…
なんだこの不穏な間は
神原さん
またOnakasuitaでは、周辺地域の登録店舗がメニューや画像とともに表示されるので、お店探しにもご利用いただけます。
店側としては、無料でPRできるツールとしてもご利用いただればと。
光本さん
モバイルオーダー機能とは、ずいぶん別ベクトルの機能ですね。
神原さん
先ほどお店からは手数料をもらわないと言いましたが、僕らはとにかく、「飲食店が不利な状況を強いられがち」な現状に課題感を感じていて、彼らの背中を押せるサービスを展開したいんです。
熱い想いを感じる
光本さん
わかりました。
…ひょっとして、他にも機能あったりします?
神原さん
はい! Onakasuita導入店舗は、スマホを使ったテイクアウト注文やデリバリー注文にも対応できるようになるので、ビジネスチャンスを広げることもできます。
また、フードコートやフェスなどのイベント会場でも、すべての出店店舗とメニューをスマホで検索でき、注文から決済まで手元で完了。長蛇の列を解消できるかと思います!
あとは、メニューの自動翻訳機能もあるので、海外のお客様にも安心して利用いただけます。
これにてサービス紹介は終了。普通によさそうなサービスだな~と思いますが…
神原さん
ただ、飲食店に営業しても「よさそうだけど、よくわかんないからいいや」となかなか導入に至らなくて…
「新しいサービスへの漠然とした抵抗感」を払拭できるような広め方を教えてほしい…というのが、本日コンサルしていただきたい内容です!
光本さん
うーん、申し訳ないのですが…
今日は「サービスの広め方」以前に、「新しいサービスの作り方」のお話になってしまう気がしてきました…。
今のOnakasuitaには、新しいサービスとしていくつか「致命傷」がある気がするので。
神原さん
えっ。
佐藤さん
そうですね…一つずついきましょうか。
heyコンビが教える新サービスの作り方①「圧倒的な引力を用意しろ」
光本さん
まず一つ目は、申し訳ないのですが「圧倒的なメリット」が一つも伝わってきませんでした。
僕は、このサービスの価値がどこにあるのか、説明を聞いても全然ピンと来ませんでした。
明らかにピンと来てないお顔
光本さん
というのも、いろんな機能があるのはよくわかったんですけど、「これを使わないのはバカだよね」と思わせる決定的な魅力がなかった。
新しいサービスを使ってもらうときは、「圧倒的な引力」を用意しなきゃいけないと思うのですよね。
神原さん
引力?
光本さん
たとえば、今人気の某フリマアプリはリリース当初、当時主流だったネットオークションに比べて、商品が売れるスピードも、売れる値段でも負けていたんです。
なのに、アプリのユーザーはリリース当初からバンバン増えていった。
神原さん
なぜでしょう…?
光本さん
「他サービスに比べて、出品するのが劇的に簡単だったから」。
その圧倒的なメリットを用意していたから、立ち上げ当初から結果を出せた。
光本さん
何が言いたいかというと、「店舗数が“1”でも効果を発揮するような引力を作れ」ってことです。
たしかに、Onakasuitaが全国に普及して、「どの飲食店でもスマホ1台でオーダー・決済ができる社会」を実現できたら、すごく便利ですよね。
でも現状は、「80万近くある全国の飲食店のうち、140カ所の個人店でしか使えないアプリ」ですよね?
神原さん
…おっしゃる通りです。
光本さん
あるお客さんが、たまたまOnakasuita導入店舗に入って、「こんなアプリを待ってた!」と思ったとする。
でも、一歩お店の外に出れば全国140店舗の飲食店でしか使えない。それでダウンロードしたりクレカ情報登録したりしようって本当になりますかね?
僕ならその場でスマホを閉じて、店員さんに「アイスコーヒー!」って言ってしまうと思うのですよね…。
光本さん
これが今Onakasuitaを利用するユーザーの視点。
世間に浸透していないサービス開始直後だからこそ、利用できる場所の数やサイズに左右されない、絶対的なメリットが必要だと思うんです。
神原さん
私は「スマホ一つで注文と決済が終わる」というところが、店・客双方の大きなメリットになると思っていたのですが…
佐藤さん
「フルモバイルオーダー」にするなら可能性はあると思いますよ。
佐藤さん
Onakasuitaの一番もったいないところは、「モバイルオーダー」と「通常注文」の二重管理にしているところ。
これだと店側は接客注文も残しておかなくちゃいけないから、何も楽になってないんです。むしろ、新しいオペレーションが増えて、スタッフに教える手間やミスの増加など、懸念点のほうが多くなってる。
神原さん
あっ…
光本さん
佐藤君は50席規模のコーヒー屋をやっていたから、このあたりは実感があるよね。
佐藤さん
でも、「このお店での注文・決済はOnakasuitaのみでお願いします」というところまで振り切れば、店側としては「オーダー」と「レジ」、2つが完全になくなるので、人件費が確実に浮く。
このほうが、サービスの引力が上がると思いませんか?
神原さん
そうか…
heyコンビが教える新サービスの作り方②「八方美人になるな」
神原さん
でも、そうしたらお客さんが減ってしまいませんか?
現金主義の方NGにしてしまったら、お店の売り上げが…
佐藤さん
それはそもそも、「ターゲットの決め方」が間違ってるんですよ。これが、二つ目の「致命傷」ですね。
今日の相談も「わかんないからいいや」という人の心をどう動かすか、だったと思うんですけど…
そもそも新しいサービスを始めるときには「変わる気がない人を相手にしない」が鉄則なんです。
佐藤さん
最初は、「ぴったりハマるお店が50店舗ある」くらいでいいんですよ。
とにかく、「自分たちの提案に乗ってくれそうな人たち」を探すことが初期顧客を設定するときのセオリー。
「勝ちやすい場所」以外には営業にいかないというのが、最初に考えるべき戦略だと思います。
神原さん
僕らとしても、大型モールなどに提案してその地域で一気に知名度が広げようと営業をかけてはいるんですけど、「先陣を切りたくない」と断られてしまい…
そこで、まずは母数を増やすしかないかと個人店にアプローチを。
佐藤さん
Onakasuita が解決可能な痛みに、死ぬほど悩んでいるであろうお店にしぼって営業してみたらいいんじゃないでしょうか。
「飲食店」というくくりで営業ローラーかけちゃうと、「変わりたくない人たち」に当たって、かなり無駄足を踏んでしまう気がします。
光本さん
あと、機能も多すぎますよね…。
どんなユーザーにも対応しようと、八方美人なサービスになっちゃってる感じがします。
飲食業ってとにかく多忙。長々と説明していたらその時点で相手にしてもらえないと思います。
神原さん
じつは、欲張って機能を増やしすぎてしまったことは、最近すごく課題に感じていまして…
これは、完全に私の責任なんです。
神原さん
「Onakasuitaは、ほかのサービスを全部解約しても問題ないくらい、『スマホ×飲食店』でできることは全部できるサービスにしよう」と森川に言ってしまって。
光本さん
機能を増やしちゃうのって、ようは「保険」をかけたいだけなんですよね。
全部入れとけば、誰かしらに使ってもらえるだろうっていう。
神原さん
ぐっ…完全に図星です。
光本さん
でも、最低限の状態で出してそのあと需要見て機能を足していったほうが、効率的に世の中で必要とされているサービスを育てられる。
まずは1回、「モバイルオーダー機能のみ」とか、超シンプルな状態に戻しちゃったほうがいい気がします。まだリリース3カ月ですし。
搭載してる機能自体はどれも優秀なので、今はいったん隠しておけばいいと思います。
ちょっと言いすぎたと思ったのか、後半になってややフォローが増える光本さん
神原さん
どんどん機能がふくらんだ結果サービスがぼやけてしまったのか…すぐに改善します!
heyコンビが教える新サービスの作り方③「誰も犠牲にならないマネタイズを考えろ」
佐藤さん
あと、価格弾力性が高い飲食店のユーザーから手数料をとるのもやっぱり「致命傷」ですよね。
「飲食店の味方になりたい」というポリシーはわかりますけど。
神原さん
そ、そうでしょうか…
話す必要なく、並んで待つ必要もなければ、たった5%の上乗せぐらい払ってもらえるんじゃないでしょうか?
佐藤さん
いや…5%って、すごく大きいと思いますよ。2%税金上がっただけでこんだけ世の中大騒ぎになってるわけですし。
大手電子決済サービスなんて、お金取るどころか10%~20%還元してますよね。彼らですら、そこまでしなくちゃ現金決済に勝てないと思ってるんです。
そのあたりはもっと、繊細に感じ取ったほうがいいかもしれません。
言われてみればたしかに、「支払い」にお金を出したくはないかも…
神原さん
だからといって店舗側からお金をいただこうとしたら、もっと警戒感が強まって、より手を出さなくなってしまうのでは?
光本さん
ここまで考えたうえで、「マネタイズする方法」を考えるのが「商売」ですよ。
weltallさんは、お店側に一切負担させることなく、これをお店のテーブルに置きたいわけですよね?
「このQRを!」
光本さん
僕なら、そうだな…
大型モールにいって「全飲食店にOnakasuitaをタダでご提供します」と提案します。
神原さん
タダ!?
光本さん
その代わり、さっき佐藤君が言ったように「オーダーはOnakasuitaのみ」にさせてもらう。
オーダーと会計を自動化できるかつ人件費も浮くわけで、労力的にも経済的にもプラスなわけじゃないですか。
これなら、モールや店にはメリットしかありませんよね?
神原さん
でも、それじゃ僕らの利益が…
光本さん
そのうえで、Onakasuitaを使って注文&決済が終わったとき、画面に周辺のOnakasuita導入店舗の「割引クーポン」がバーッと並ぶ機能をつけるんですよ。
そして、そのお客さんがモール内のべつのお店でクーポンを使ったら、送客料としてその売上の3%だけweltallがもらうんです。
佐藤さん
相互送客か。面白いね!
モール内では必ずOnakasuita決済だからクーポンを消化しないわけないし、これならモール内飲食店の総売上の3%が、毎日確実にweltallに入りますね。
光本さん
そうしたら今度は、「あのモール、注文も会計もスマホ1台でできて超楽だし、全店クーポンが使えてめっちゃお得なんだけど!」って、ユーザー側にも引力が生まれそうじゃないですか?
つまり、集客増加も見込めるのでモール的にはさらに引力が強化される。
神原さん
店舗からしたら広告費を払わずに広告できてる状態に近いのかも…!?
佐藤さん
モールで話題になったら、今度は周辺の個人店も巻き込んでいけるかもしれないよね。
相互送客システムに参加すれば、「大型モールの利用客」が流れてくるビッグチャンスがあるから。そうやって少しずつエリアを拡大できるかも。
光本さん
本気で考えれば、「店舗の負担を軽くする」というポリシーを守りながら商売することは、いくらでもできると思いますよ。
神原さん
導入側、消費者側、そして僕ら…全方位にメリットが発生する状況をもっともっと考え抜かなくちゃいけないんだな。
めちゃくちゃ勉強になります!
1時間以上にもおよんだガチコンサルを終えて…
光本さん
今日は言いたい放題すみませんでした(笑)。
…大丈夫ですか?
神原さん
なんかもうあれですねえ…作り直したほうがよさそうですねえ!!!
神原さん
店舗さん、ユーザーさんに喜んでもらいたいという気持ちは絶対的に持ってたつもりなんです。
でもたしかに、おじいちゃんおばあちゃんが孫になんでもあげちゃうみたいに、いらんもんばっかあげて孫全然喜んでないみたいな状況になってました…
一言でガツンと伝わるサービスに…ドラスティックに改善してみたいと思います!
光本さん
もしかしたら、名前も変えたほうがいいのかも…?(笑)
Onakasuitaって、サービス内容があんまり浮かんでこないから。
光本さん、そこが引っかかってたのか!
佐藤さん
ずっと沈黙を保ってらっしゃいましたけど…森川さんはいかがでした?
森川さん
光本さんが途中で提案してくださった「相互送客」、アイデアが素晴らしすぎて…
取材中に設計してしまいました。
佐藤さん
えっ!?
ざわつくふたり
佐藤さん
何やら紙に書きまくってるなとは思いましたけど…
森川さん
もう設計は終わったんで…作れますね。あと2、3週間くらいで。
光本さん
weltall、すごい人がいた(笑)。
佐藤さん
神原さんの熱量と森川さんの開発力を掛け合わせて、ぜひいいサービスを作ってくださいね。
今後のweltallに期待してます!
一切手を抜かずコンサル希望者に対峙した光本さん、佐藤さんのガチコンサル。はたから見ていて胸に来るものがありました。そして、さすがは歴戦のお二人…その場でアイデアを展開していくスピード感がすさまじかった。
また、厳しいコンサル終えたweltallさんはというと…取材の数時間後、大阪に到着したという神原さんから電話がありました。
「早速サービス改善に動き出しており、新サービスのアイデアも生まれてます。二人の言葉をきちんと今後に活かしたいので、録音した音源をください!」
weltallはすでに、前に向かって走り出しています。
「Onakasuita」はユーザーと機能を絞り込んだ形に変貌を遂げ、取材中に光本さんがボソッと仰った「そもそも、昼ご飯を考えること自体が面倒くさいよね」という一言から、近隣のランチのお店を勝手に決めてくれる新サービス「ランチゴー」も形になりつつあるとのこと。
取材中にアイデアを設計してしまった森川さんを見ても思いましたが…weltallのお二人、切り替えのスピードと行動力がハンパない。
スタートは誰しも転ぶ。違いが出てくるのは、そのあとの立ち上がり方。そんな前向きな勇気をいただいた気がします!
〈文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=中澤真央(@_maonamkazawa_)〉
新R25ストアでは、今後もコンサル商品を販売中!
今回実施した光本さん×佐藤さんコンビによるコンサル商品…好評につき追加販売決定です!
一切手抜きなしのガチコンサル。ご希望の方はドシドシご応募ください! 気になった方は、今すぐ下記ストアをチェック!
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