ビジネスパーソンインタビュー

年収と「仕事の満足度」はほぼ無関係。昇給よりも幸福感が“60倍以上”も上昇する方法

鈴木祐著『科学的な適職』より

年収と「仕事の満足度」はほぼ無関係。昇給よりも幸福感が“60倍以上”も上昇する方法

新R25編集部

2019/12/25

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自分の将来的なキャリアへの不安を感じている新R25世代は少なくないでしょう。

まわりに相談しても、「好きなことを仕事にしよう」「安定した業種を選ぼう」「フリーランスこそ至高の働き方だ」「スキルアップできる会社に入ろう」「自分だけの強みを生かそう」など多種多様すぎるキャリアアドバイスが返ってきます。

どの考え方にも一定の説得力があるので、相談したことで「何が正解なんだろう…?」とよけいに混乱することもありますよね…。

そんな悩める我々にとって特効薬になりそうな書籍『科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方』が発売されました。

著者は、1年間に5000本もの科学論文を読みこむことから「日本一の文献オタク」と呼ばれる鈴木祐さんメンタリストDaiGoさんが尊敬する人物としても知られています。

今回は、ビジネス書の中でもかなりの注目を集めている同書のなかから3記事を抜粋してご紹介。

今後のキャリア選択に不安を感じている方、必見の内容です!

お金で幸せはどこまで買えるか

どうせ働くなら誰でもお金は欲しいもの。

収入の多さで仕事を選びたくなるのは自然なことですし、「とりあえず給料が高い求人から優先的に探す」 という人も少なくないでしょう。

ところが、 こちらも幸福度アップの点では問題があります。給料が多いか少ないかは、私たちの幸福や仕事の満足度とはほぼ関係がないからです。

代表的なのは、フロリダ大学などが行ったメタ分析でしょう。

その結果は次のようなものです。

◎給料と仕事の満足度は 「r=0.15」 の相関係数しかない

相関係数は2つのデータの関係を表す指標で、この数が1に近いほど関係が強いとみなされ、多くの場面では0.5以上の値を取れば 「関係がある」 と判断されます。

一例をあげると、多くの人が生まれつきの性格に沿った行動を取りやすいのは当然の話でしょう。

内向的な人は積極的にパーティには参加しないでしょうし、好奇心が強い性格に生まれた人は海外旅行や美術展などへ積極的に出向くはずです。

両者の関係性を調べた研究によれば、性格と行動の長期的な相関係数は0.9でした。

人は性格どおりの行動を取る」という考え方は実に当たり前なだけに、 やはり実際にも高い数値を弾き出すわけです

これに比べると0.15という数値はかなり小さく、統計的には 「ほぼ無関係」 と言えるレベルです。

日常的な言葉で言い換えれば 「給料が高くなれば仕事の満足度はほんの少しだけ上がるかもしれないものの、現実的にはまず意味がない」 ぐらいの意味になるでしょう。

「金で幸せは買えない」 とは言い古されたフレーズですが、 科学的にはまぎれもなく真実だったようです。

お金を稼ぐより6000%も手軽に幸せになれることとは?

経済学の世界では、 「お金から得られる幸福」 と 「その他のライフイベントから得られる幸福」 のレベルを比べる研究が過去に何度か行われています。

たとえば収入アップと結婚の幸福を比べた場合に、どちらのほうが私たちを幸せにしてくれるのかを比較したわけです。

具体的な結論をいくつか紹介します。

◉仲が良いパートナーとの結婚から得られる幸福度の上昇率は、収入アップから得られる幸福より767%も大きい(年収が平均値から上位10%に上昇した場合との比較)

◉健康レベルが 「普通」 から 「ちょっと体調がいい」 に改善したときの幸福度の上昇は、収入アップから得られる幸福より6531%も大きい(年収が平均値から上位1%に上昇した場合との比較)

◉離婚や失職による幸福度の低下率は、 年収が3分の2も減ったときの幸福度の低下に匹敵する

つまり、がんばって世間でもトップクラスの年収を稼ぎ出したとしても、良いパートナーとめぐりあう喜びや、健康の改善による幸福度の上昇レベルにははるかに及びません。

金を稼いで幸福を目指すなら、まずは人間関係や健康の改善にリソースを注ぐほうが効果は大きいわけです。

給料アップの効果は1年しか続かない

お金で幸せが (ある程度までしか) 買えない」 のには、大きく2つの理由があります。

◉お金を持つほど限界効用が下がる

◉お金の幸福は相対的な価値で決まる

限界効用」 は経済学で使われる概念で、モノやサービスが増えるほどそこから得られるメリットが下がってしまう現象を表したものです。

何も難しい話ではなく、どれだけ好きなケーキでも本当に美味しいのは最初の1個だけで、 矢継ぎ早に2個、3個と食べていけば、 やがて味もわからなくなっていくでしょう。

この状態を、ちょっと難しく「限界効用が下がった」 と表現しただけです。

限界効用の低下はどの文化圏でも見られる現象で、私たちはいくら贅沢をしようがすぐに慣れてしまい、幸福度はもとのベースラインにもどります。

また、年収に限って言えば、給料アップによる幸福度の上昇は平均して1年しか続きません

3万3500件の年収データを分析したバーゼル大学の調査によれば、 たいていの人は給料がアップした直後に大きく幸福度が上がり、その感覚は1年まで上昇を続けます。

しかし、給料アップの効果が得られるのはそこまでで、1年が過ぎた後から幸福度は急降下を始め、それから3年もすればほぼもとのレベルまでもどっていくようです。

給料から得られる喜びは実に短命です

そしてもうひとつ、お金から得られる幸福は相対的に決まりやすい、という問題もあります。年収アップの喜びとは、給与明細の絶対額ではなく他人がもらう給料との比較で決まるのです。

たとえば、もしあなたが百万長者だったとしても、周囲が億万長者ばかりだったら幸福度は上がりません。

苦労して高価な腕時計を買ったとしても、友人がより高い腕時計を持っていれば、そこから得られる幸福感は低下します。

これは心理学で「ランク所得説」 とよばれる現象で、8万を超す観察研究で何度も確認されてきました。

「他人と自分を比べるな!」 とはよく聞くアドバイスですが、どうしても周囲の様子をうかがいたくなるのは人間の本能のようです。

もちろん、 以上の話をもって 「給料で仕事を選ぶな!」と主張したいわけではありません。

まったく条件が同じ仕事があれば収入が多い職を選ぶべきですし、少なくとも年収800~900万まではジリジリと幸福度は上がり続けるのだから、そこにリソースを投入して生きるのもまた人生でしょう。

が、劇作家のバーナード・ショーも言うように「20代の頃より10倍金持ちになったと言う60代の人間を見つけるのは簡単だが、そのうちの誰もが10倍幸せになったとは言わない」 はずです。

年収アップだけを追いかける人生は、どうしても費用対効果が低くなってしまいます。

それならば、数パーセントの幸福度を上げるためにあくせく働くのをやめて、最低限の衣食住を満たしたあとは空き時間を趣味に費やすというのもひとつの生き方でしょう。

すべてはあなたの選択次第です。

働き方が多様化しているからこそ知りたい、自分に適した仕事の見つけ方

同書の中で語られているのは、「就職と転職の失敗は、およそ7割が『視野狭窄』によって引き起こされる」という事実。

視野狭窄は、ものごとの一面にしか注目できなくなり、その他の可能性をまったく考えられない状態のことを示します。

だからこそ、自分の価値観やライフスタイルを組み込んだ“自分だけの適職”を選ぶには、自分の思う当たり前を一度壊して、さまざまな考えや価値観、選択に出会うことが必要なようです。

そんな当たり前を壊す一歩として、まずは同書で語られている「そんなはずがない!」と思うようなデータを、「そうなのかもしれない…」と受け止めるところから始めてみてはいかがでしょうか。

偉大な先人たちが磨き上げた4021の研究データを、今に生かさない手はないはずです!

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