ビジネスパーソンインタビュー

「あなたの部下は“年収の上がる転職”ができますか?」motoさんが本気で語るマネジメント論

「『部下が電話をする場所』で、状態がわかります」

「あなたの部下は“年収の上がる転職”ができますか?」motoさんが本気で語るマネジメント論

新R25編集部

2020/01/05

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リンクのコピー

最近メディアで、この不思議なイラストの顔を見かけることも増えました。

彼の名はmotoさん。ホームセンター→人材広告会社→リクルート→スタートアップ(買収されて楽天)→上場ベンチャー→ベンチャーと渡り歩き、本業年収1000万円超、ブログによる副業年収は4000万円超というジョブホッパーなサラリーマンです。

転職、副業、お金については、今もっとも発言が注目されている人の1人と言っても過言ではないかもしれません。

そんなmotoさんが、今回「ぜひR25世代に伝えたい」というのが「自分だけじゃなく、まわりを稼げるようにするマネジメント術」とのこと…。

お金の話は大好きだけど、あんまり他人に興味がない印象のmotoさん(めっちゃ失礼)だけにちょっと意外なテーマでしたが、納得感たっぷりのお話をいただくことができました。

〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉

【motoさん】32歳6社目のジョブホッパー。地方の短大を卒業後、新卒で地方中小企業(ホームセンター)へ入社し、人材広告会社→リクルート→スタートアップ(買収されて楽天)→上場ベンチャー→ベンチャーというキャリアを歩む。現在年収1000万円超のサラリーマン。同時に「転職アンテナ」というブログを運営中

天野

motoさん、このツイートに出てくるヤバイ上司の話って本当ですか??

うそみたいだろ…

motoさん

本当です(笑)。「俺がお前らの世話してるんだからおごれよ」って言ってて、飲み会にサイフを持ってきたことはなかったです。

しかも3次会まで強制参加でした。あれは地獄

天野

ヤバ…

motoさん

僕はこれまで6社を経験するなかで、「マネジメントの反面教師」をたくさんつくってきました。

“こういう上司にだけはなるまい”と、自分の感覚でマネジメントの手法を作ってきたんです。

顔出しNGのmotoさん。これまでは紙で作った「お面」で取材を受けてこられましたが、今回からiPadにアップデート。手プルプルしてません?

motoさん

今日は、その結果僕がたどりついた、「部下の年収を上げるマネジメント手法」をお伝えしましょう。

天野

「部下の年収」まで考えるんですか…?

motoさん

そこなんですよ。これまで経験した6社で、マネージャーが、自分の成績だけ考えている組織にいたときは辛かったんですよね。ハラオチしない仕事を振られるシーンも多くて。

一方で、僕らの「年収を上げるような仕事の振り方」をしてくれた上司は、すごく信頼できたし、仕事も楽しかったんです。

天野

それはわかる気がしますね…

motoさん

いろんな上司と仕事するなかで、「自分が頑張って結果を出す」よりも「メンバーひとりひとりが、成果を出せる環境を作ること」が重要だと思うようになって。

“メンバーの成果を最大化して彼らの年収を上げることが、自分の年収UPにつながるのではないか”と考えるようになりました。

自分だけで1億の売上作るより、自分と同じ成果を出せる人間を100人作ったほうが、僕の年収交渉もしやすそうだなって(笑)。

なるほど。俄然やる気になってきたぜ。よろしくお願いします!

motoさん、なんでも転職の話につなげようとしてません?

motoさん

僕が考えるマネジメントのキモは「転職の話をすること」。

マネジメントも、「転職」を軸にできるんです

天野

本当ですか?…なんでも自分の得意領域に持っていこうとしてません?

motoさん

してないって!!!(笑)

だって…毎回話がうますぎるんだもん…

天野

すいません、続けてください。

motoさん

極端な話、僕は、マネージャーは転職サイトや求人情報を日常的にチェックすべきだと思うんです。

天野

なんでですか?

motoさん

客観的な金額で人の評価を伝えられるようになるからです。

「ウチの会社では600万円もらえてるかもしれないけど、今のスキルだと、転職市場では正直500万円ぐらいの転職先しかないよ」と。

「転職を隠しごとにしない」ことで、市場価値にもとづいたマネジメントができるんです。

天野

それは納得感ありますね…

じゃあ、「外出たらもっと給料もらえるだろうな」という優秀な人にはなんて伝えるんですか?

motoさん

それも、隠しごとにせず伝えます。「今、600万円もらってるけど、ぶっちゃけキミならもっと上も狙える可能性がある。でもそれには○○の能力があったほうがいいと思う」と。

天野

そんなこと言って、今の仕事を頑張ってもらえますか?

motoさん

“彼らの市場価値が上がる仕事”をセットで伝えることが必要です。

「こういうスキルを身につけたら将来的に1000万円も狙えるかもしれない。だから、次はこういう仕事をしてみない?」と。

天野

なるほど。でも会社で転職の話するなんて発想がなかったな…

motoさん

転職って、ビジネスパーソンの働き方や収入と密接に結びついてる。そこをちゃんと話さずに“会社の組織事情”ベースで話をすると、上辺だけのコミュニケーションになっちゃうんですよ。

そのモヤモヤが積み重なると、ある日突然「わたし会社辞めます。理由ですか? ぶっちゃけもっと給料ほしいからです」みたいな事態が起こるわけです。

全国の職場で繰り返されまくっている話だ…

motoさん

なので、僕は転職トークができるぐらい、メンバーとオープンな関係を築くことを目指してます。

“転職トークができるぐらい、オープンな関係を築けているか?”のチェックポイント

motoさん

ちなみに、「自分とメンバーがオープンな関係性を築けているかどうかがわかる」、僕なりのチェックポイントがあります。

天野

なんでしょう?

motoさん

“上司が隣にいる状態で電話がかかってきたとき、どこで通話するか”です。

「あ、はい、はい、えぇ…」みたいな通話をしながら、どんどん遠ざかっていって電話をしている状態は、関係値が浅い証拠だと思ってます。

天野

よく見る光景だ…

motoさん

上司に聞かれないように電話するのは、自分の仕事の進め方に自信がないからだと思うんです。実際、僕もそうでしたし。

「上司に何を言われるかわからない」と思っていると、本来伝えるべき話もしにくくなる。そういう関係値では“言いたいことも言えない関係”になって、上辺だけの付き合いになってしまう。

コミュニケーションコストを下げるためにも、「仕事についてオープンに話せる状態」を構築することが大切なんです。

元リクルートのmotoさんが「Will・Can・Mustシート」を否定する理由

天野

仕事に自信がない人って結構いると思うんですけど、motoさんは、メンバーのモチベーションを上げるにはどうしたらいいと思いますか?

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motoさん

僕はしなくていいと思ってます。「モチベーションをいじるマネジメント」をすると、「自分コミット型」の働き方に陥れてしまう可能性があるんですよ。

例えば、「もっと成長したいです!」みたいなモチベーションの人っていますよね。「もっと成長して、どこでも活躍できる人材になりたいです!」みたいな。

天野

いますね。

motoさん

「成長したいです!」っていうのは、自分にコミットしているだけなんですよ。

成長したいっていう言葉は、向上心があるように見えて、実は受け身なんです。会社は学校と違って、会社としてやりたいことを実現するための場所なので、受け身でいられては困るわけです。

天野

「会社は学校じゃねぇんだよ」の意味が、はじめてしっくりきています。

motoさん

なので、モチベーションに紐づけて個々の成長に向かわせるんじゃなくて、数値目標などの「コトに向かう主義」にすることがポイントなんです。

天野

でも、仕事を“個人の成長”に結びつける企業は多いですよね。成長したいと考えさせるのはダメなんですか?

面談のときに、「自分の成長したい像を考えて、何をすべきか考えましょう」っていうシートを書いたりしますけど…

motoさん

僕がいたリクルートにも「Will・Can・Mustシート」っていうのがありました。

実際、書いていて思ったんですけど…

あれが何かの役に立ったこと、ありますかね???

motoさんのmotoは「元リクルート」の意味でつけたアカウント名なのに…

天野

いや~~~~、ないですね…

motoさん

でしょ(笑)。「面談の時期が来たから仕方なく書く」みたいな感じですよね?

天野

面談の前日になって慌ててコピペで埋めてる人多いですよね(笑)。

motoさん

あのシートって“社内における成長”を目的においているけど、今の時代は、会社での成長やキャリア以外を重視する人も増えたじゃないですか。「会社だけが人生!」みたいな時代とは違う。

そうなると、あのシートの「Will」には、将来の転職とか年収、働き方の話なども入れないと、本当の意味で本人のためにはならないんですよね。

天野

確かに、社内でのミッションしか言われたことがないですね…

motoさん

いまだに「君はうちの会社で何をしたい?」「じゃあこういう能力を身につけて成長しよう!」みたいなコミュニケーションになってるんですよね。

正直、それはもう厳しいんじゃないかと。これからは社外のこともちゃんと見せなきゃいけない。次世代に向けたシートを作る時期に差しかかっていると思います。

天野

完全に正しいな…。motoさんがやたらと「市場価値、市場価値」言うのは「コトに向かうべき」という思想から来てるんですね。

年収にこだわっていたので、ちょっと金の亡者っぽく思ってました…(小声)

iPadの画面暗くなってますよ

人を惹きつける「ツイッターのフォロー理論」

motoさん

マネジメントって、ツイッターで自分のフォロワーを増やす行動に近いところがあるなとも思ってます。

社内に自分のフォロワーを増やしていく感覚です。

天野

ツイッターですか。

motoさん

ツイッターで誰かをフォローするとき、“この人をフォローしたらどういう情報が得られるのかな”って、メリットを考えるじゃないですか。

それと同じで、「この人にマネジメントされてたら、自分にメリットがある」って思われるような発信や発言をするようにしてます。

天野

motoさんの場合、それが転職や副業に関する情報なんですね。

motoさん

そう。「こういうことしたら、年収上がりそうじゃない?」って自分にとって有益なことを教えてくれる人がいたら、とりあえずフォローしておくか…ってなりますよね。

逆に「もっとモチベーション上げろ!」みたいな、自分の利益しか考えていない発言ばかりしていると、フォローを外されてしまうんですよ。

なかでも一番ダサいのが…

今日のmotoさんは口が悪いな…

motoさん

「俺、フォロワー多いんだぜ」って誇る人。

社内で「自分には影響力がある」と思っているのはダサいと思います。裸の王様になってしまうので、誇るのは違いますよね。

天野

なるほど。

motoさん

あとは細かな手法論ですけど、「褒めるときこそ裏で褒める」というのは大事にしてます。「motoさんがすごく褒めてたよ」って、第三者から間接的に聞くほうがうれしさが増すんですよね。

僕自身、そうされてうれしかった経験があるので、このやり方を今でも使ってます。

天野

そうなんですね。「褒めるときはみんなの前で。叱るときは裏で」っていう意見もありそうですが…

motoさん

僕は、みんなの前で褒めているのを見ると、なんか嘘っぽいなって思っちゃうんですよね。

昔は人前で褒めていたりもしましたが、途中でやめました。

天野

それ、けっこうわかります…!

motoさんは、一般的なマネジメント論じゃなく、自分に合ったやりかたを作り上げてるんですね…

motoさん

そうかもしれないですね。マネジメントに正解はないし、誰もが素人の状態からはじめることなので、まわりが「こうしろ」と言うやり方だけでなく、自分の感覚やキャラクターも加味してスタイルを築き上げるのがいいと思います。

一般論ではなく、自分の体験を軸にすべきだっていうのは転職も同じで…

天野

また転職の話に持っていこうとしてる!!!

いつか彼の素顔が公開される日が来るのだろうか。to be continued…

〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=森カズシゲ〉

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