ビジネスパーソンインタビュー
実は服以外のこだわりもハンパじゃない!? MBが語り尽くす「ユニクロのスゴさ」

ユニクロの高品質・低価格の理由を徹底解説

実は服以外のこだわりもハンパじゃない!? MBが語り尽くす「ユニクロのスゴさ」

新R25編集部

2020/03/06

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この10年で、ユニクロのブランドイメージは大きく変わっています。

もともとは安価で服を買える店というイメージのせいか、「ちょっとダサい」という印象を持っていた人も少なくないはず。

しかし、「ヒートテック」や「ウルトラライトダウン」など最新技術を用いた製品や、元エルメスのデザイナーであるルメールとのコラボレーションブランド「Uniqlo U」などの登場もあって、「ニクロ=高品質なのに低価格」というイメージに変わってきていると思います。

カリスマファッションバイヤーのMBさんは、自身のYouTubeチャンネルでも数多くのユニクロ製品をオススメしている「ユニクロ研究家」。

新R25のYouTubeチャンネルで、MBさんに「ユニクロのスゴさ」を語りつくしてもらったのでその内容をお届けします。

【MB(右)】メンズファッションブロガー。アパレル店舗のスタッフから、店長、マネージメント、バイヤー、コンサルティング、EC運営など多岐にわたる経験を持つ。ブログ「最も早くオシャレになる方法KnowerMag」を運営。「最速でおしゃれに見せる方法」(扶桑社)はAmazon最高3位をマークし、過去10年最も売れたメンズファッション書籍として認知されている。監修するファッションHOWTO漫画「服を着るならこんなふうに」(KADOKAWA)は2018年現在累計70万部突破

「質が高い」って言うけどどれくらい?

渡辺

今日は人気ファッションバイヤーのMBさんにユニクロのすごさを語りつくしてもらおうと思います。

ぜひ読者がユニクロを買いたくなるようなお話をきければと!

MBさん

わかりました。わりと得意な分野だと思います(笑)。

渡辺

ユニクロってよく「質が高い」と言われるじゃないですか。

MBさんもよくお話しされていますが、「ユニクロのジーンズって2900円だけど、もっと高い値段でもおかしくない」というように表現されています。

それって実際にいくらくらいなのでしょうか?

MBさん

たとえばユニクロが得意しているデニムパンツは「カイハラ」というデニムメーカーの素材を使っているんです。

「カイハラ」って海外のハイブランドとかに卸している素材メーカーなんです。つまり、その素材は2~3万円くらいのデニムパンツに使われています。

しかも「カイハラ」の社長はインタビューで、「ユニクロとハイブランドで使っている素材の違いって何なんですか?」という質問に対し、「変わらないよ」って答えていたんですよ。

渡辺

じゃあ極端なことを言えば、ハイブランドの10分の1くらいの値段で提供できていると。

MBさん

そうです。本来2~3万円の商品が、ユニクロだと2000~3000円くらいになっていると言ってもいいですね。

MBさん

素材だけで比べるのが、アパレルの世界では必ずしも正しいとは限りません。

ただ、単純に「いい素材を安く買うのに一番適しているお店はどこですか?」って聞かれたら、ユニクロと答えます。

価格破壊の理由は「スローな商品つくり」

MBさん

次は仕組みとして、どうやって低価格で実現できているのかという話に移りましょう。

ユニクロって実はファストファッションではないんですよ

極めて商品をスローなつくり方をしていて、僕はスローファッションとよく言っています。

渡辺

それはどうして?

MBさん

ZARAとかH&Mとかって、企画が立ち上がってお店に商品が届けるまで、だいたい3週間なんです。

たとえばトレンドがパリやミラノのコレクションで発表されて「これは流行りそうだな」と判断されたらすぐにつくって届けられる。

それが彼らのビジネスモデルです。

渡辺

そんな早いんですね。

MBさん

一方のでユニクロの商品開発は、下手すると1年以上の開発期間を取ってつくっているんです。

そうすると、ファストファッションの本来の意味からは外れていますよね。

では、何でそんなことをするかと言うと、大量に売ろうとしているんですよ。これがユニクロが安くできる理由につながります。

MBさん

ZARAとかとかH&Mもひとつの商品を何万ロットレベルで生産しています。

でも、「ヒートテック」が今まで何枚売れているかというと、数億枚も売れているんです。ケタが違う。

その理由は、どんな時代にもあてはまる「究極的に優れたハイクオリティースタンダード」ってものをつくろうとしているからなんです。

1年間かけて開発してもいいけど、10年間売りつづけられる商品をつくろうと。

渡辺

それが単価を下げられる秘密だと。

MBさん

そうです。洋服って工業製品と同じで、大量につくればつくるほど安くなる。

世界のハイブランドというのは100枚1000枚のロットで販売しているので、そこまで安くは売れない。

でもユニクロは数億枚の販売を見据えているからこそ、コストを下げられるんです。

素材が同じでも価格に大きな開きがあるのは、そういうビジネスモデルが背景にあるからですね。

ユニクロはいつからオシャレになった?

渡辺

これは5年~10年前との比較になると思いますけど、ユニクロのブランドイメージが圧倒的に変わったような気がしていて。

本当にオシャレになりましたよね。

MBさん

まさにおっしゃる通りで、ユニクロのイメージはおそらく2008年~2009年くらいにガラッと変わっていると思うんですよ。

それはなぜかと言うと、「+J」の登場です。

MBさん

それまでのユニクロって「日本の小さな田舎から出てきた量販店でしょ?」という感覚が強かった。

でも2008年に「+J」が出たことで、オシャレな人やアパレル業界の人がユニクロを着だして、世界観が変わってきたんですよ。

「+J」のデザイナーであるジル・サンダーって、アパレル業界の人にとっては否定できない存在なんです。

渡辺

そんな影響力がある方なんですね。

MBさん

ジル・サンダーはドイツ出身のデザイナーで、はじめはパリからスタートし、ミラノに移ったあとにどんどん成長していった人です。

その後ブランドがプラダグループに買収されたんですけど、ほどなくしてプラダグループと揉めて引退してしまいました。

なぜ揉めたかと言うと、そのきっかけは素材。プラダグループが「コストを考えて素材を変えるべき」と提案したことに反発して辞めているんです。

渡辺

かなりの職人気質だったと。

MBさん

そうです。「鉄の女」とよばれるくらい頑固で、素材に対して究極のこだわりがある人。

そんな人が「量販店の象徴」だと思われていたユニクロをコラボ相手に選んだのが、アパレル業界でも衝撃だったんですよ。

ユニクロって本当はすごいいじゃないか!?」って風向きが変わりはじめたんです。

MBさん

これまでのユニクロは安価な服を量産していたことで、ピラミッドで言うと、裾野の消費者層を取り込んでいました。

そこで、「+J」を出したことでピラミッドの上位にいるファッションバイヤーやアパレル業界の人を取りにいきました。

ファッション感度の高い層を取り込んだことで、もうユニクロはもう誰にも止められない存在になったはず。

渡辺

「Uniqlo U」も話題になりましたよね。

ルメールというすごいデザイナーの服が1万円以内で買えるなんて、と。

MBさん

クリストフ・ルメールなんて、エルメスのデザインを担当した“世界で5本の指に入る”デザイナーですよ。

彼自身がデザインしているブランド「ルメール」と「Uniqlo U」を見比べてみると、やっぱりデザインは似ています。

つまり「ルメール」だと20万円で販売しているコートも、「Uniqlo U」だったら1万円台で買えるわけです。

もちろんまったく同じものでないんですけど、ユニクロを見ていると「これ、本当にこの値段で売って大丈夫!?」と思いますね(笑)。

社員の情熱がハンパじゃない

MBさん

僕が思うには、ユニクロの商品開発の人たちってずっと悔しかったんだと思うんですよ。

ユニクロってすごくいい商品をつくっているのに、オシャレな人たちがずっと見下してきていた。

だから、「アイツら見返してやろう」って気持ちが絶対どこかにあったと思います。

渡辺

その文脈を変えるために「+J」などをつくって印象を変えたと。

実際にユニクロの人とお話していて、それを感じることはありますか?

MBさん

結構な頻度で、製品開発の方や取締役の方とお話させていただくんですけど、洋服へ執念というか「好き」という感情がハンパじゃなくて。

僕もいろんなブランドの方とお付き合いしているんですけど、「こんなに洋服に対して、情熱持って楽しんでいる人ってあんまりいないな」って思いました。

渡辺

MBさんでもそう感じるんですね。

MBさん

僕は悔しさも覚えましたね。

ユニクロの人が「このシャツがこうなっているのは、もともとJ.PRESS(アメリカの紳士服ブランド)の仕様があって…」って話してて、「俺これ知らないな…」って思うことがありましたから。

MBさん

日本の工場の方に「今どこのブランドが頑張っていますか?」って雑談で聞くと「ユニクロがやっぱり一番すごいです」って答えるんですよね。

こだわりがハンパじゃないから、サンプルをつくらせる量も全然違うそうで。

普通ブランドって3個サンプルをつくったら生産開始なんですよ。でもユニクロって10とか20とか、下手したら100くらいサンプルをつくっちゃうんです。

渡辺

それだけ一つの商品に対する熱量が並じゃないと。

カリスマ・柳井社長は強烈な服好き

MBさん

それに社長の柳井正さんもいまだにユニクロの全商品をチェックしているんですって。

柳井さんに商品プレゼンをして、その良し悪しを柳井さんが最終ジャッジするんですよ。

「行け」「ダメ」っていうのを日々、散々やっているんです。

渡辺

ちょっと失礼ですけど、ユニクロって若者にも支持されていますが、柳井さんには若者の感覚ってあるんですかね?

MBさん

やっぱり強烈な服好きらしくて、トレンド感もちゃんと持っているんですよ。

それにもっと驚いたのが、柳井さんって実際に全国の店舗を回っているんですよ!

渡辺

それで何が売れているのかチェックしているんですね。

MBさん

そうです。店舗に突然柳井さんが来るんですって。

スタッフからしたら、ビビりますよね(笑)。

渡辺

でも、まったく知らないアルバイトからしたら、「なんか…おじさんが来た」みたいに思っちゃいそうですね(笑)。

MBさん

ユニクロ内での柳井さんの存在はとても大きいです。

カリスマ性もあって、自分の感覚でトレンドもわかっていて、現場にも影響力がある。

だから逆にユニクロの最大の経営リスクは、柳井さんがいなくなったときですよね。

渡辺

本当にスティーブ・ジョブズ的な存在なんでしょうね。

…ただ、ユニクロの中の熱意とかってあまり伝わっていないですよね。中の人が商品に関して熱く語っているのはあまり見たことがないなと。

MBさん

ユニクロはそれが嫌いらしいですよ。

柳井さんからすると、「質が高いのは当たり前でしょ」っていう考えがあって、「そんなのをわざわざ打ち出すことじゃない」みたいに言っているんですって。

渡辺

それってつまり「そんなことをすごいと思うな」って、自分たちでつねに基準を上げているってことですよね。

MBさん

おっしゃるとおりだと思います。

マイナーチェンジを繰り返す異常なこだわり

MBさん

あとユニクロって大概の商品は、去年と同じものってないんですよ

フリースやパーカーは10年間売りつづけているんですけど、わずかなマイナーチェンジを必ず毎シーズンしているんです。

今のトレンドだったら、もう少し細いほうがいいよね」とか、「これ以上細くしたら、年配の方は着れないよね」とか、そういう調整をかなり細かく入れているんです。

MBさん

一番すごいのがインソックスです。

ローファーとかのときに履くインソックスって、中に滑り止めがあるんですけど、あの滑り止めの形って毎シーズン変わっているんですよ!

それに履き口の広さも。

渡辺

へええ。

MBさん

実際に開発者の方に、何で毎回変えているんですか?って聞いたら…

どんなに改良しても『脱げる』っていうクレームが来てて、二度と『脱げる』と言わせないようにするために毎回毎回挑戦している」って。

その努力の成果もあり、ここ1~2年の商品はマジで脱げなくなりました。

渡辺

あっ言われてみたら、たしかに脱げなくなってるかも…

MBさん

彼らはきっと、「長年愛されるスタンダードなものをつくる」っていう考え方のもとにおいて、やらなきゃいけないって感じているんでしょうね。

MBさんが特にオススメするユニクロ商品3選

渡辺

最後に、ユニクロのスタンダード系アイテムで「これは特にオススメだ」っていうものを教えていただけますか?

MBさん

わかりました。ではまず…

①スウェットプルパーカ

MBさん

これは絶対買って損はないよっていうのは、パーカーですね。

ユニクロのパーカーの商品開発の話が面白くて。

開発担当の方が市場にあるパーカーを全部買ってきたり、パーカーを着こなしているスナップを集めたりして、「どれがカッコいいんだ?」っていう比較をしたんです。

そしたら共通点が見えてきて、それが「フードが大きい人がどうやらカッコいいぞ」ってなったんです。

渡辺

フードが立っている状態ですよね。

MBさん

そうです。

だからフードにボリュームをつけようと思ってつくってみると、どうしても洗濯したときにフード部分だけ生乾きになってしまう。

そこでどうしたかと言うと、フードの裏側だけ化学繊維を入れて乾きやすくしたんです。

渡辺

僕もMBさんがそれを熱く語っている動画を見たあと、自分のパーカーのタグを見たら本当に「フード裏」だけ化学繊維になってて感動しました。

MBさん

これを聞いたとき、ユニクロって本当にすごいなと思って。

単純に「フードが立つ」「カッコいい」というだけではなく、機能面とかケア面もちゃんと考えてつくっている。

なんでユニクロのパーカーが長年売れつづけているのかって着るとわかるんですよ。

ぜひ手にとっていただきたい!

②サングラス

MBさん

次にサングラスですね。

これもすごく形がきれいで、専門メーカーのものと遜色ないデザインだと思います。

渡辺

へええ。こういう小物系の商品ってあんまり注目していませんでした。

MBさん

日本人とかアジア人ってサングラスがあまり似合わないって言われますけど、それは鼻に原因があるんですよ。

鼻の高さは欧米人とあまり変わらないけど、欧米人のほうが鼻の開始位置が高いから形が違う。

日本人は鼻がなだらかなので、サングラスをかけたらずり落ちてしまいます。

MBさん

さらにアジア人は、眉毛と目の距離が離れているんです。

逆に欧米人は眉毛と目の距離が近い。だから、サングラスをかけたときにちょうどすっぽり眉毛が収まるんです。

それで欧米人がサングラスをかけると、表情が見えなくなって怪しくカッコいい表情になる。

渡辺

なるほど。

MBさん

ただ、現状の商品だと日本人の表情が隠れるサングラスがない。

そこでユニクロのサングラスはノーズパッドに工夫をほどこして、その課題を解決できるようになっているんです。

だから、実際にかけてみると「あれ?カッコいいな」という印象を与えられるんです。

渡辺

MBさんにそう言ってもらえると、この商品の見え方が変わりますね。

普通に店舗で見ると「このサングラスは適当につくって置いてあるのかな?」って思ってました。

MBさん

そうですよね?

ユニクロの商品開発の人に「サングラスめっちゃいいですよね!」って伝えたら、「ですよね!誰も気づいてくれないんですよ!」って言ってました(笑)。

MBさん

僕はこのサングラスを初めて見つけたときに衝撃を受けましたよ。

こんなすごいものが1500円で売られていることに、誰も気づかなくていいのかな?って。

だから紹介したかったんですよね。

③コンパクトアンブレラ

MBさん

あと梅雨の時期には、をチェックしていただきたいですね。

渡辺

これまた意外な商品をピックアップされましたね。

MBさん

ユニクロの折りたたみ傘って、布の張り加減や質感、柄の強度がしっかり考えられています。

でも、一番すごいのは傘の部分がくるくる回るんですよ。

それは強風が吹いたときに、力を逃がすため。つまり、ビル風が強くても引っ張られないんです。

渡辺

その技術がすごいと。

MBさん

これは本当にすごいテクノロジーなんです。

テクノロジーって言うには大げさかもしれませんが、もやってなかったことを見つけたことがすごい

価格も1500円くらいなので、コンビニで変える折りたたみ傘よりもクオリティは数段上なのでオススメです!

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