桜井章一・藤田晋著『運を支配する』より

社長になれて喜んでいる人の会社は伸びない。リーダーに必要な“現実的ネガティブ思考”

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先駆者のシゴトの極意

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新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、多くの企業がリモートワークに切り替わりました。

若手ビジネスパーソンのなかには「この期間に何かしたほうがいいのだろうか」という不安になっている人もいるでしょう。

そんな不安を払拭するべく、新R25では特集「先駆者のシゴトの極意」をお届け。

最前線で活躍する先駆者たちの著書より、どの時代でも通用する、若手ビジネスパーソンが大切にすべき仕事の心構えをご紹介します!
今回は、サイバーエージェント代表取締役社長・藤田晋さんと、20年間無敗の伝説を持ち「雀鬼」の異名で呼ばれる雀士・桜井章一さんとの共著『運を支配する』より、藤田社長の「シゴトの極意」をご紹介します。

経営者でありながら、実は2014年「麻雀最強位」のタイトルホルダーでもある藤田社長は、ビジネスに必要な勝負勘、運やツキは、麻雀から学んできたと言います。

運を味方につけるには一体どうしたらいいのか?

ビジネスマンが知っておきたい“チャンスがくる人”の極意を、同書より3記事に渡ってご紹介します!

社長に抜擢されて、危機感を持つ人が会社を伸ばせる

うちの会社では若くて能力の高い社員を、突然子会社の社長に抜擢することがあります。

そのとき2通りの反応があります。

ひとつは「やったあ~社長になれた!」といって、ものすごく喜ぶ人。

もうひとつは「社長になっちゃったよ…」といって、うれしいという感情が湧く以前に、責任とプレッシャーを強く感じている人。

どちらが会社を伸ばすかというと、間違いなく後者です。

「社長になってしまった、やばい…」と思っているのは、自分が下手な経営でもしたら会社を潰すかもしれないし、とんでもなく多くの人に迷惑をかけるかもしれないという危機感を強く抱いているからです。

そしてなんとかしなくてはと自分自身が全力を出しきり、そんな姿勢が伝わって、一緒に働く仲間の能力も存分に引き出すことができるのです。

サイバーエージェントは普段は自由で個人の意思を尊重する会社ですが、僕は数年に一度、とくに業績が落ち込んでいるわけでもない部署の人数を半分にしたり、大胆な人事異動をうながしたりして、意図的に組織をかき乱すことがあります。

これはマンネリ化してきた組織を活性化させることが狙いですが、たいがいは功を奏します。

人数が大幅に減ったり、キーマンが抜けて危機的な状況になると、最初は「いままでもギリギリだったのに、こんな状況ではとても戦えません!」というように強く反発するのですが、結果的にはその逆境を乗り越えて、さらに強い組織に成長します。

残った人たちの中に危機意識が芽生え、能力をフルに発揮することで組織全体が活性化するからです。

人間の能力を100%引き出せるのは、残念ながら、夢や希望に燃えているときではありません。

むしろその逆で、危機的な状況に追い込まれているときに100%の力が出せるのです。

仕事が順風満帆のときは、自分たちの力が発揮しきれない状況ではないかと疑うべきかもしれません。

仕事が追い風のときはすいすい進んで気持ちがいいものですが、ちょっと油断をするとたちまち急降下することがあります。

緊張感が失われていて足をすくわれやすいからです。

反対に逆風は辛くて苦しいものですが、危機感を持ってそれを乗り越えれば、その過程が厳しいだけに他の人が真似できない、高い次元に到達することができます。

その意味では、うまく利用すれば順風よりも逆風のほうがむしろ遠くへ飛んでいける可能性を持っています

完全な順風と思われるときは、神輿を担がれ、踊らされている可能性を疑ってみる必要があります。

これは経営者ではよくあるパターンで、周りがどんどん持ち上げてくるので、しまいには「自分ほどの人間が…」といった尊大さを身につけてしまうのです。

そうなると、やがてがむしゃらな努力をしなくなり、下から苦しい思いをして頑張って這い上がってきた人に勝てなくなってきます。

ポジティブでいすぎない

会社はポジティブな人をマジョリティにしてつくるべきだと思っていますが、一方でポジティブな人には弱点があります。

それは仕事の詰めが甘くなる傾向があることです。

仕事というものは、最後の最後にどれだけ粘れるかによって、結果に圧倒的な差がつくものです。

うちの社内では書道家の武田双雲さんに書いてもらった「集中深掘細部」という大きな書が新規サービスをつくる部署のあちこちに貼ってあるのですが、仕事は細部にこだわり、いかに深みをつくれるかで完成度が変わってきます。

ところがポジティブすぎると、つい楽観的になって、最後のところで「本当にこれで大丈夫か」という確認を怠ってしまうのです。

うちの社員を見ていると、もっと粘るべきじゃないかと思うところで、「よし、できた。完璧だ。みんなで飲みに行こう!」となったりしています。

製品の開発などは、どこかに穴があるのではないかとネガティブな態度で最後にチェックを行うことが非常に重要で、僕がそれを口を酸っぱくしていったので、うちの会社では「ネガティブチェック」というのが合言葉になっています。

「よし、これでできた」と思っても、そこで立ち止まって「待てよ。もしかして重大な見落としがあるんじゃないか」とか「ひょっとしてユーザーが使ってくれないのではないか」と思って確認するべきだと思います。

最後の最後で「抜け漏れはないか」を徹底的にチェックして、はじめて完成といえるのです。

現実と向き合うことから逃げない

チームを率いる立場の管理職の人でも、ポジティブな振る舞いで、自分の力量不足をごまかす人がいます。

うまくいっていなくても「次は絶対成功するはず」と考えて逆転を狙う姿勢を見せるのですが、結局問題は何も解決されていなかったりします。

ポジティブさや熱意でごまかしても、いつまでたっても根本的な解決にはなりません。

問題が起きたときに、ポジティブ思考で楽観的に構えている人はとても気になります。

大丈夫ですから」「なんとかなりますよ」というのは逃げの裏返しでもあって、問題の深刻さと真剣に向き合っていないのではないかと僕には思えるからです。

ネガティブに考えるというのは、現実的にものごとを考えるということです。

現実と向き合うのは辛いことです。できることなら直視したくはない。

だから、たいていの人はそこから目をそむけて仕事をしたり、生きているのかもしれません。

製品の質が悪いのに、「これをなんとか成功させてみせます」と意気込んでも、まったく意味がありません。

悪いものは悪いのです。現実の姿をちゃんと見て、至らない部分を埋める努力をしないといけないのです。

もちろんいうまでもなく、ネガティブなだけではダメだし、最終的にはポジティブに構えなければならないのですが、ポジティブすぎる人は、ちゃんと現実と向き合えているかどうか、注意が必要です。

「成功」がすぐに古くなる時代だからこそ、危機感を持ち続けよう

僕は一度成功したことに関してはそれをチャラにして、フレッシュな気持ちを持つようにしています。

成功体験の記憶に執着し、「このパターンでいけば勝てる」と思い込んでいたら、そうそう勝てなくなるからです。

とくにいまのように変化が激しい時代であれば、なおさらです。

成功したのは、流れのタイミングが見事に合っていたとか、自分の年齢的な要素が大きくものをいったとか、かなり恵まれたポジションにいたとか、さまざまな偶然の条件が重なってのことです。

こうした条件は、時間の推移とともにどんどん変化していきます。

そうすると当然ながら、同じ条件がそろった成功パターンでも再びうまくいく確率は非常に小さくなります。

成功するということは皆に知られるということなので、あの方法で金が稼げると思えば、あっという間に研究され、真似をされて、同じ手法は二度と通じなくなってしまいます。

相手が変われば、状況は異なります。一度うまくいった成功の型に囚われてはダメなのです。

常にその場その場で状況を判断する力が問われます。

自分の過去の成功パターンがうまくいくと思い込んでいる間にも、周りはもっと変化し、進化しています。

その思い込みが強いと、やがて周りから時代遅れだと思われ、人が離れていき、結局は運を遠ざけてしまうことになるのです。

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