ビジネスパーソンインタビュー
田端信太郎「経営者マインドがないと、他人のレバレッジとして利用されつづける」

父として小学4年生の子どもにレバレッジを伝授

田端信太郎「経営者マインドがないと、他人のレバレッジとして利用されつづける」

新R25編集部

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2020/03/26

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記事提供:インベスタイムズ

スーパーサラリーマン・田端信太郎さんに“レバレッジの極意”を聞くインタビューもいよいよ最終回。

前々回と前回で“レバレッジの本質”と“レバレッジの活用術”を田端さんに教えてもらいましたが、いきなりレバレッジ使うのは少し怖気づいてしまう…。

そこで今回は田端さんに“レバレッジの心構え”を伝授してもらいました!

スーパーサラリーマンでありつつ、子の親でもある田端さん。

今回はそんな“お父さん”ならではの心構えも語ってくれました。意外とめずらしい?お父さんモードの田端さんも必見です!

全3回にわたってお送りしてきた当連載、最終回である第3回もボリュームたっぷりでお届けします!

【田端信太郎(たばた・しんたろう)】1975年石川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン『R25』を立ち上げる。2005年にライブドア入社、livedoorニュースを統括。その後、転職を重ね、多数のメディア事業に携わる。Twitterのフォロワーは20万人を超える。著書に『ブランド人になれ! 会社の奴隷解放宣言』(NewsPicks Book) 、『MEDIA MAKERSー社会が動く「影響力」の正体』(宣伝会議)

小学生だってレバレッジを活用できる!?

ライター・水嶋

前回は、田端さんのレバレッジ活用術についてお話を聞きましたが、田端さん以外にもお手本となるような人はいますか?

田端さん

上場企業の社長は全員、レバレッジを使うのがうまいですよ。

ZOZOの前澤社長もそうですけど。あの人はメディアや資本市場にあるレバレッジの特性をうまく捉えていますよ。

前澤社長は元々ミュージシャンだったんですけど、実はミュージシャンという職業もレバレッジと深い関係があって。

※前澤友作社長はハードコア・パンクバンド「Switch Style」のドラマーとして、2008年のバンド解散まで二足のわらじで活動していました

ライター・水嶋

どういうことでしょう?

田端さん

モーツァルトは貧乏なまま生涯を終えたといわれています。

なぜかわかります?

え、突然のクイズ!

ライター・水嶋

いや、わかりません…

田端さん

モーツァルトは自分の曲の権利を管理しなかったんですよ。

だからモーツァルトの収入はほとんどプレイヤー、演奏家としてのギャラなんですよ。

それはただの労働なので、レバレッジのかかっていない収入なんです。

参考文献『貧乏モーツァルトと金持ちプッチーニ』(サンライズパブリッシング)

ライター・水嶋

今でいう「著作権」を利用しなかったのですね。

田端さん

そう。現代で売れたミュージシャンがなぜ大金持ちのセレブになれるかというと、著作権がちゃんと管理されているから。かつ、テレビやラジオも活用する。

自分が演奏しなくても多くの人たちに聴かせることができて、そこからお金が入ってくる仕組みがあるからなんですよね。

著作権によって収入にレバレッジがかかっていく

ライター・水嶋

モーツァルトが著作権を利用していたら、どれほど稼いでいたのでしょう…

そう考えると、YouTuberのような職業が成り立つのも少し前なら想像できないことでした。

田端さん

YouTuberと言えばHIKAKINはすごいですよ。

YouTubeというレバレッジにいち早く気づいて、そこにコミットしたわけですから。

「彼はすごい」と息子さんに言い聞かせているそう

ライター・水嶋

今や“子どものヒーロー”になっていますもんね。

田端さん

そう、僕の息子も大好きなの。

彼は元々、スーパーの店員だったんですよね。寮住まいで、おそらく給料は高くなかった。

そういう環境で彼は、給料が入っても、飲みも遊びもせず、機材を買って、YouTuberになるためにがんばっていたらしいですね。

ライター・水嶋

その当時、多くの人には理解されない行動だったでしょうね。

田端さん

周囲の人からはYouTubeで飯食うなんて無理だと言われる。もちろん確実に売れる保証も何もない。

でも彼はリスクを取ってYouTuberになった

ライター・水嶋

僕なら思いついても、途中で心が折れる気がします…

田端さん

実はこの話、息子に言い聞かせたんですよ。

お前はそういうことができるか?」と。

親子の会話のレベルが高すぎ!

ライター・水嶋

求めるレベルが高い!

田端さん

最近だと、ポテトチップスの新商品をHIKAKINが紹介して売り切れ続出って話がありましたよね。

しかも、買い占められたものがネットオークションに出品されて、2000円とかになったと。で、息子が「HIAKIKINすごくない?」って言うから、傍観者だよなお前と。

同じように動画を見ているんだったら、なんで見た瞬間にお年玉を握りしめて、コンビニに走らないんだと。

ライター・水嶋

…ちなみに、息子さんは今おいくつなんですか。

田端さん

小学校4年生です。

ライター・水嶋

小学生にそんな話を!

大人だってそこまで思いつくかどうか…

田端さん

そういうときにぼけっとただ動画を見ているだけで。

ゲーム買うお小遣いがないとか言っているけど、増やすチャンスはいくらでもあったんだぞ。

それで、今度そういう機会があったらやるようにと諭したんです。

ライター・水嶋

英才教育すぎる…

田端さん

息子の話だと、もうひとつ面白いことがあって。

彼が好きな児童書シリーズに偽札を造る話があったんですよ。

それを読んだ息子が「ねえ、パパ、偽札って作っていいの?」って聞いてきたわけですよ。

スーパーサラリーマンから“お父さん”モードへ

ライター・水嶋

子どもならではの素朴な疑問ですね。

田端さん

さすがに偽札は作るとおまわりさんに捕まるから、それはダメだと。

身内から逮捕者を出すわけにはいかない(笑)。

でも、息子が作った工作と絵が棚に飾ってあったのを見て、ピンときたんですよ。

偽札もレバレッジだ、とはさすがに言わない

田端さん

あの工作と絵を近所で売ってこいと。

誰かが納得して1000円で買ってくれるって言う人がいたら、お前は1000円札を作ったのと一緒じゃん」って言ったんですよ。

ライター・水嶋

とても小学4年生にしているとは思えない、ビジネス的な話になってきました(笑)。

田端さん

「え、いいの?」って聞くから、売れるかどうかはわからないけど、少なくとも犯罪ではない。だから、やってみろと。

それでも迷っているから、お前に失うものがあるかと、どうせ暇なんだからやってみろとけしかけた。

そうしたら、工作を抱えて家から出て行ったんですよ。

ライター・水嶋

おー、すごい。行動に移したんですね!

田端さん

ドアが閉まった瞬間、父親としてこの日ほどうれしかった瞬間はないと思いましたね。

誇らしい気持ちになるんですよ。

お父さん、泣いてしまうよ…

ライター・水嶋

いい話だ…

田端さん

涙が出そうなぐらいだった。

でも、嫁はどうせ売れるはずないでしょって冷めてる(笑)。

ライター・水嶋

まあ売れるか売れないかは…

田端さん

いいんだと。もう家から出てってくれただけで、僕は胸いっぱいになって。

ところが1時間ぐらいたっても帰ってこない。

どんな風にやっているか見に行ったら、売れない営業マンの典型みたいにベンチに座ってぼけーっとしてるわけですよ。

ライター・水嶋

小学生じゃ営業のやり方がわからないですもんね(笑)。

でも、家を出ただけでもすごいです。

田端さん

こういうとき、2つのタイプの人間がいるんですよ。

どうせできないし、売れねーじゃんっていうタイプと、まあ別に失うものがないんだったらやってみようと思うタイプ

今回の話でいうと、彼にとって失うものは時間ぐらいだから、リスクなんてないわけですよ。

そうやって、やってみるタイプの方が、人生は楽しいじゃないですか。

まずはやってみないと何も始まらない

ライター・水嶋

好奇心旺盛でリクステイカーな田端さんの性格が、息子さんにも受け継がれているようですね。

田端さん

行動力とか勇気っていうのは無限のレバレッジですから。

レバレッジに大人も子どもも関係ない

ライター・水嶋

子どもでもできるんだから、僕たち大人がびびってちゃダメですね。

時間の価値を知らないと他人のレバレッジになりっぱなし

ライター・水嶋

レバレッジは子どものうちからでも活用できる。

では、レバレッジ活用は早いうちから始めた方がいいのでしょうか。

田端さん

大人になって急にやるよりはいいでしょうね。

始めるのは早い方がいい

ライター・水嶋

そうはいっても、今までの人生で、僕を含めレバレッジを意識したことのない人も多いと思うんです。

そんな人たちがレバレッジを始めるのに必要な心構えはありますか?

田端さん

まずは、自分の時間価値を考えた方がいい。時間は一番貴重な資本ですから。

失った時間は戻らない

ライター・水嶋

時間価値とは?

田端さん

僕はとにかく費用を最小化しようとする日本の今のムードが嫌いなんです。

安いガソリンスタンドに2時間行列とか、クーポンで牛丼が食べられるから並ぶとか。

その時間の価値を考えないの?と思うわけ。

時間とリターンが見合っているかどうかを考える

ライター・水嶋

なるほど、自分の時間の価値を知る必要があるというわけですね。

そのためには具体的にどうすればよいでしょうか?

田端さん

例えば月収から時給を割り出すとかね。

ただし、サラリーマンがドツボにはまりがちなのは、時給2000円だとわかったとして、いきなり浮いた1時間で2000円の価値を生めないところなんですよ。

ライター・水嶋

確かに自分の1時間をいきなりお金に変えろと言われても、息子さんのお話じゃないですけど、途方に暮れてしまいます。

田端さん

だから、その1時間をアルバイトで埋めるとかじゃなく、100時間これに投資したらきっとこれくらいのリターンが得られるはずだと考える

例えば100時間は英語の勉強をしてTOEICのスコアを上げて、それによって社内の評価を上げるとか。

時間を投資するというマインドを持つべき

ライター・水嶋

単純労働ではなく、自己投資に使うということですね。

田端さん

TOEICのスコアを730まで上げて、そうしたら収入これぐらい上がるはずだからと考える。

それで、掛けた時間で割り算してリターンを測るとかね。

自分をひとつの会社として捉えてみて、事業計画はどうなんだと

追加で1時間、余裕が生まれたときにいくらまで投資できるかってことに対して、常に意識的であるべきですよ。

ライター・水嶋

そこまで考えることで、レバレッジをかけるための資本が生まれるわけですね。

田端さん

自分のBS(バランスシート)/PL(損益計算書)を書いてみたことありますかって話ですよね。

自分のバランスシートに自己資本がないのに、他人資本も何もないわけだから。

レバレッジもかけられない。自分の人生をどう経営するかというマインドを持つべきです。

自分の人生を会社に置き換えてみる

田端さん

自分の人生を自分でどう経営するかというマインドを持たないと、サラリーマンは、ずっと他人のレバレッジとして利用され続けるんですよ。

時間を切り売りする労働力なんだから。

ライター・水嶋

会社は社員の時間をレバレッジとして利用しているわけですもんね。

レバレッジは利用する、されるの関係。利用したもん勝ち

ライター・水嶋

自分の価値を知るという点では、就活や転職にも役立ちそうですね。

田端さん

転職しないとしても、自分が転職するとしたら、どういう会社にどれぐらいの報酬水準で雇われるかということを知っておくといいですよ。

ヘッドハンターを利用するという手もある。

「インフォメーションイズパワーですから」

ライター・水嶋

実際に転職をしなくても、意味があるんですか?

田端さん

例えば、意に沿わない嫌な上司がきたりとか、嫌な転勤の話が出てきたりしてから慌てて準備するようでは間に合わないじゃないですか。

会議室に呼ばれて、こういう異動があるんだけど、って言われた瞬間に、じゃあ辞めますと。

即座に切り返せるとしたら、一気に交渉ごととしては有利になるんですよ。

ライター・水嶋

おお、なるほど!

田端さん

まあ、どうぞどうぞ辞めてくださいってことになるかもしれないけど(笑)。

それはちょっと困る…

ライター・水嶋

そういうリスクもありますね…

田端さん

でも、まさか相手はそんなこと言うまいと思っているはず。

自分の価値を常に知っておくことで、レバレッジを有効にかけられるんです。

ライター・水嶋

会社にしがみつかない生き方ができますね。

田端さん

そんなことすら知らずにサラリーマンをやっているのは、丸腰で戦いに挑むのと同じですよ。

ビジネスの世界は、お互いに利用する、されるの関係なわけじゃないですか。

ビジネスは互いが互いをレバレッジとして利用する場

ライター・水嶋

会社と従業員も、利用する、される関係ということですよね。

田端さん

基本的に経営というのは、社員という他人の時間を有効活用するものだから。

相手がノーと言わないぎりぎりまで、悪い言葉でいうと“使い倒そう”とするのが経営者というものですよね。

ライター・水嶋

会社と社員の関係にはそういう前提があることを、僕たちは頭に入れておかないといけないですね。

田端さん

それに対して、労働者、従業員側が自分の身を守るためには、会社がそこまでやるんだったら、こっちはここまでやりますと一線を引くこと

この緊張関係はどっちが良い悪いじゃなくて当たり前の関係なんですよ。

雇う側、働く側双方の大前提

ライター・水嶋

個人を犠牲にしてでも会社のためにがんばるというのが、これまでの日本の会社と社員の関係だったかもしれませんね。

田端さん

対等に交渉しようというマインドを持つべきなんですよ。

サラリーマンは会社にとってのレバレッジとして利用されているんだから。

ライター水嶋

自分の身は自分で守らないと…

田端さん

アメリカの金融業界で有名な話なんだけど、ポーカーをやっていて、始まって20分たって誰がカモかわからなかったら、お前がカモだと。

カモは嫌です…

ライター・水嶋

下手したらカモは自分がカモであることに気づかないまま、ということもありそうですね。教訓的だ…

田端さん

自分はこれをレバレッジにしている」と言えなかったら、あなたは他人のレバレッジにされるだけの存在なんですよ。

レバレッジを使う側に回れているかどうか考える

ライター・水嶋

肝に銘じます。

田端さん

自分が他人を利用するという気構えがなければ、他人のレバレッジとして利用されるだけ。

それに対して、格差だなんだって文句いってもしょうがないじゃないですか。

ライター・水嶋

でも、他人を利用するって、なんだか世知辛いですね。

田端さん

全然違う。それは全然エッセンスをわかってないです。

インタビュー終盤に何もわかっていなかったことが判明!

ライター・水嶋

え…?

田端さん

レバレッジをかけるということは、ゼロサムゲームではないんですよ。

ライター水嶋

ゼロサムゲーム…?

田端さん

例えば僕はスマホを利用して料金を払っているけど、利用料金以上にスマホのメリットを享受してるから全然OK。

それに対してスマホの会社も「田端さん、ちょっと利用料金以上に活用しすぎですよ」なんて言ってこないですし。

相手を“利用”するのは、損をさせるという意味ではない

ライター・水嶋

そんなスマホ会社は嫌だ(笑)。

田端さん

あるいはツイッター社から1円ももらってないのに、僕は日夜ツイッターで面白いネタを探してつぶやいている。

それで、20万人のフォロワーが僕のツイートを見てくれるというメリットを僕は得ている。

一方で、僕がツイートする限り、はツイッター社のレバレッジにされているとも言えるわけです。

ライター・水嶋

それは全然悪い感じがしないです。

田端さん

お互いがお互いにとってのレバレッジになって、お互いハッピーになることができるんですよ。フェアに関わり合って。

そこでゼロサムではなく、プラスサムのいいスパイラルが生まれるようにしなければならないんです。

なんだか明るい未来が描けそう!

ライター・水嶋

他人を利用するという性質がレバレッジには必ず含まれるわけですよね。

でもそれを悪いことのように感じてしまって手を出さないままだと…

田端さん

ほっといたら振り回される側になりますよ。

ライター・水嶋

それではプラスサムになりようがないですね。

田端さん

資本主義というゲームにみんなで参加してるわけだから。

それなのに、麻雀の役を覚えずに適当に牌をつまんで放ってみたいなことをやっているのが、ほとんどの人の人生だと思っているんです。

ライター・水嶋

まずはルールを覚えないと話にならないわけですね。

田端さん

レバレッジを活用できるかどうかで差が開く社会ですから。

幸せに、有利に生きたいなら、レバレッジについてみんなもっと考えて行動した方がいいのにと思います。

そうでなければ、他人の都合に振り回されるだけだぞと。

今すぐにでもレバレッジについて考えてみよう!

ライター・水嶋

いやはや、レバレッジとは現代社会を生き抜くために必要不可欠な要素だったんですね。早速、勉強して活用させていただきます!

では、最後に読者に向けてメッセージをいただきたいのですが。

盛りだくさんの内容を振り返ってもらいながら…何を書くか熟考

田端さん

何を書こうかな…

「クルマもスマホもレバレッジだよ」

そう、車もスマホもレバレッジでした。つまり、私たちは無意識のうちにレバレッジを活用していたことになります。

そう考えると、なんだか怖いイメージのあったレバレッジも俄然身近な存在に感じられますね。

全3回にわたってお送りしてきた当連載ですが、怖いイメージが強い「レバレッジ」の概念をアップデートすべく、レバレッジの本質、レバレッジの活用術、レバレッジの心構えと、“レバレッジの極意”がたっぷり詰まった内容でお届けしました!

田端さんが教えてくれた“レバレッジの極意”を参考にして、みなさんもぜひ、レバレッジについて考えるところから始めてみましょう!

・当記事に掲載の情報は、すべて執筆者および取材対象者の個人的見解であり、大和投資信託の見解を示すものではありません。

ライター・水嶋洋大

株式会社ケイ・ライターズクラブ所属。編集者兼ライターとしてビジネス関連の媒体制作に多数携わる。

老後資産に必要な2000万円を貯めるべく、フィーリング重視の個人投資を始めたばかり。塩漬けになりつつある株の様子をチェックするのが日課。失った時間は戻らなくとも、失ったお金は取り戻せると信じている。

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