与沢翼著『お金の真理』より
与沢翼「お金持ちを目指すなら“個人の純利益”を把握せよ。それがあなたの“本当の年収”だ」
新R25編集部
「お金を稼いで自由に生きたい」「豊かな生活が送りたい」
そう願う人々に向けて、実業家で投資家の与沢翼さんは『お金の真理』(宝島社)を上梓しました。
お金持ちになるために何をすべきか。逆に、やってはいけないことは何なのか。
同書には、与沢さんのお金や人生に関する「本音」が語られています。
今回は同書のなかから、「本当の年収」についてお届け。あなたの本当の年収は、いくらなのでしょうか。
お金を「守る」
お金持ちを目指すならお金を守るという習慣を持つ必要があります。
お金を守ると聞くと、すでに裕福な人が自分の純資産を減らさないための方法と思うかもしれませんが、まったく違います。
これは今後みなさんがお金をつくっていくすべての過程で、絶対にやらなければいけないことです。
世の中には、あなたから大切なお金を奪おうとする危険な罠がたくさん仕掛けられています。
お金をつくりながら、そうした罠からお金を守っていかなければ、一向に純資産は増えず、堂々巡りのラットレースが続くことになってしまうのです。
まずは自分の「本当の年収」を細かく把握しておかなければなりません。
本当の年収とは、年収から生活上必要なお金をすべて差し引いた「可処分所得(個人の純利益)」のことです。
生活には会社経営と同様に多くの経費がかかっています。
それらの支出は大きく分けて「固定費」「変動費」の2つがあり、おもな内訳はそれぞれ次のとおりです。
『お金の真理』より【固定費】住居費(家賃、住宅ローン)、保険料、水道・光熱費、通信費、教育費などのうち、毎月定額で必要な支出
【変動費】食費、日用品費、医療費、被服費、娯楽・交際費、雑費など自身で支出をコントロール可能な変動的支出
個人の場合には、固定費と変動費について、会計上の定義に従って考える必要はありません。
単純に不変で固定的な支出と自分の意思で変動を管理することが可能な変動費という字句どおりの意味で理解してください。
節約バカになってはいけない
まず、可処分所得の低い人がそれを増やすためには、普通ならこうした支出を限界まで削っていくのがセオリーだと思われがちです。
ファイナンシャルプランナーや節約アドバイザーなら、きっと「これとあれの支出は無駄なので全部削ってください」と紋切り型にアドバイスするはずです。
しかし、私は単純に「出費をとにかく抑えろ」と言うつもりはないです。
やみくもな問答無用の節約は、実はよい考え方ではないからです。
たしかに、起きるかどうかも不明な未来のことに備えた保険料や定額課金型のサービスなどは個人的には停止する必要があると思います。
しかし、食事と住環境だけは良好に保つべきです。
これから、在宅、家での作業が重要になると考えた場合に、食と住はパフォーマンスに影響を大きく及ぼすからです。
衛生的な住環境に快適なインターネット、健康を維持するための適切な食事、この辺りの投資を惜しむと中長期的にはいい結果を出せないはずです。
また変動費を考えた場合、交際費は真っ先にカットされがちな支出ですが、友人知人とお酒を飲んだり、食事に行ったりすることでストレス緩和などの一定の効果があります。
そうした機会が頑張る動機の一環となっている人もいます。
活力に満ちて生きていくためには精神的な栄養も必要であり、娯楽を単純にすべてカットすればいいというわけでもありません。
したがって、恋人とのデートの支出なども私は否定しません。
また、勉強のための本を買ったりすることは当然大切です。
私がどん底に落ちたときでもやめなかったのは書籍への投資です。
知恵がなければ次に進むことはできなかったのです。
これらは、言ってみれば日本国憲法にある条文と同じ考え方です。
憲法は、第25条第1項で「健康で文化的な最低限度の生活」を国民の権利として保障しています。
人間は心の健康を保てていないと思考が鈍って何もできなくなります。
状況に応じて適切に物事を考え、現実的な問題解決ができるのは、心の健康が保てていることが大前提です。
お金持ちを目指すためにはまず「気持ちよく息を吸って生きること」が大切なのです。
こうした最低限の精神衛生を保つために必要な支出を、私は「ライフコスト」と考えています。
それは勝負するために必要な前提となるコストです。
ですから、何がなんでも切ればよいというわけではないのです。
人によって何が精神衛生を保つために必要なコストかは異なります。
だから各自が真剣に考えて決断する必要があります。
これは必須、これは必須ではない、という形で分類していきます。なかには断腸の思いで切るものも出てきます。
固定費で言えば、いっときは家賃を抑えるために住居のグレードを下げることもあるでしょう。
すべての判断基準となるのは「心が満たされている状態を常につくるための最低限度の支出」という視点です。
「満たされる」と「最低限」と2つの矛盾する言葉が含まれています。
つまりバランス感覚が求められる意思決定になります。支出しすぎてはダメだし、削りすぎてもダメなのです。
このライフコストを除いたお金が本当の年収(可処分所得)となるのです。
本当の年収を知る
そう考えていくと、ある事実に突き当たります。
それは同じ年収1000万円でも、本当の年収は人によってそれぞれ違うということです。
たとえば、一流商社に勤務するエリート社員が2人いるとしましょう。
2人とも年齢は30歳前後で独身、同じように年収1000万円を受け取っています。
しかし、A社員の手元に残る可処分所得が年間300万円であるのに対して、B社員はその10分の1の30万円しかないということがあるのです。
もう少し現実的な年収をベースに可処分所得を考えてみましょう。
国税庁の民間給与実態調査によると、直近で出ているデータで日本の平均年収は約441万円だそうです。
みなさんよくご存じのように、会社から毎月受け取る給料からは、社会保険料、雇用保険料、所得税、住民税が差し引かれています。
社会保険料、所得税は給料の額によって税率が変わりますが、年収441万円の場合、その手取りは約354万円程度のようです。
この354万円から、1年間のライフコストを差し引いていきます。
『お金の真理』より【マンションなどの家賃】1カ月10万円×12カ月=120万円
【水道・ガス・電気代】1カ月2万円×12カ月=24万円
【食料品や外食代】1カ月8万円×12カ月=96万円
【日用品代】1カ月1万円×12カ月=12万円
【医療費】1カ月1万円×12カ月=12万円
【携帯電話やインターネット代】1カ月1万円×12カ月=12万円
【洋服代】1カ月2万円×12カ月=24万円
【友人や家族、恋人との交際費】1カ月2万円×12カ月=24万円
【その他の雑費】1カ月0.5万円×12カ月=6万円
合計330万円となり、354万円から引くと残りはたったの24万円です。
つまり年収が平均値である場合の可処分所得はせいぜい24万円ということです。知りたくない現実かもしれませんが、これがあなたの本当の年収なのです。
ひと月にならせば、月収は2万円です。
すべてをこのように純利益から考えて厳しい現実を知ることがスタートです。
グロスで年収を語っているようでは純資産を増やすことなど到底できません。
しかも、この月2万円という金額は使い切っていいお金ではないのです。
半分の1万円は「勝負を仕掛けるときのための資金」として貯金に回してください。
この貯めたお金を将来何に使うかという点こそ、お金持ちになれるかどうかを分ける最大のポイントです。
これはいわば虎の子の貯金で、このお金に手をつけて短期的欲求を叶えるなどは論外です。
お金持ちになるための方法は、各自が満足できる最低限度で質素倹約に過ごし、虎の子で勝負を仕掛ける。これ以外にはありえません。
これらを踏まえたうえで現状のキャッシュフロー(現金の流れ)を改善していくことになります。
先に示した例はすべての金額を適当に私が記入したものです。
ですから、実際にはもっと少ない支出でとどまっているケースもあるはずです。
逆に言えば、私が適当に入力した金額よりも大きい部分は再考が必要です。
ポイントは精神状態を良好に保てる最低限度の支出に切り詰めていくことなのです。
お金と真剣に付き合っていますか
同書の中で、どの話からもありありと伝わってくることがあります。
それは「本当のお金持ちは、お金に敬虔である」ということ。
豪快に大盤振る舞いをしているように見えていても、実は冷静にお金の価値を見極め、自分の性格や傾向をよく知ろうと努力しています。
与沢さんの本音を余さず語った『お金の真理』。
人間とお金の本当の関係を再度問い直させられるような一冊です。
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