ビジネスパーソンインタビュー

ニュースキャスターから女性初の都知事に。小池百合子に"女性のキャリア"について相談した

女性がもっと活躍できる社会を実現するには?

ニュースキャスターから女性初の都知事に。小池百合子に"女性のキャリア"について相談した

新R25編集部

2021/04/01

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編集部の宮内です

近年、女性の社会進出が推進される一方で、「ライフイベントとキャリアの両立」など、さまざまな悩みを抱えている女性は多いのではないでしょうか?

活躍する女性たちはどのようなことでモヤモヤを感じ、どう突破してきたのか。リアルな話を聞いてみたいと思っていたところ…

小池都知事への取材が実現してしまいました…!!!!!

【小池百合子(こいけ・ゆりこ)】1952年生まれ、兵庫県出身。『ワールドビジネスサテライト』初代キャスターを経て、1993年、総務政務次官に就任。その後、環境大臣、防衛大臣を歴任。2016年、東京都知事に就任

最近では、テレビで見ない日はない都知事。

ですが、1988年に当時としては珍しかった「ビジネス番組の女性メインキャスター」に就任。防衛大臣や東京都知事も“女性初”…など、先陣を切って女性のキャリアを切り拓いてきた方なのです。

このご時世、とてもお忙しいなかでいただいた時間は20分…!

超緊張して臨んだ取材。

「女性のキャリア」をテーマに、思うところを聞いてきました…!

〈聞き手=宮内麻希(新R25編集部)〉

取材開始早々、なにやら気になることがある様子の小池都知事

小池都知事

あら、この子は?

いきなり頭をつかまれたR25くん

宮内

あっ…、「新R25」のキャラクターで、R25くんといいます!

小池都知事

なんだか…

すわりが悪いわねえ。

宮内

そ、そうなんです。背骨がないので後ろに倒れてしまうんです!(←緊張で変なことを言っている)

小池都知事

あら、背骨がないの(笑)。

20分しかないんだった…はやく本題に入ります…!

小池都知事が20代のころ意識していたことは?

宮内

今日は「女性のキャリア」をテーマにお話を伺いたいです。

まず、小池都知事はキャリアをスタートするときに意識していたことはありますか?

小池都知事

昔から「T型人間」になることを意識していましたね

Tの横棒は一般的な常識や知識といった、“どこでも求められるスキル”。そして縦棒はより専門性を持って掘り下げる、自分オリジナルのスキルです。

20代を「30代や40代へのジャンピングボード」にするには、オリジナルな縦の棒を伸ばしていく必要があると考えていました。

宮内

でも、自分だけのスキルってどのように深めればいいんでしょう?

小池都知事

私は20代のはじめに、世界中のいろいろな国に実際に行ってみたんです。

それも先進国ではなく、中東やアフリカのような「他の日本人があまり行かない国から行こう」と決めてね。

宮内

なぜ他の人が行かない国に…?

小池都知事

自分ならではの経験こそが、専門性の取得につながるからです。

私もそこで、中東の文化やエネルギーに関する知見を得ることができましたし、そのうち税関の雰囲気や空港の匂いだけで、なんとなくその国の情勢がわかるようになりました。

現場に行くことはとても重要で、本を読んでもわからない“自分だけの発見”に出会えるんですよね

ただ、これは途中で断念してしまうんですけれども…

宮内

え、そうなんですか。

小池都知事

冷戦構造が崩壊したことで、国数が増加してゴールが遠のいてしまったから。

宮内

(冷戦崩壊で断念…)

時代性とスケールの大きさを感じられるお話でした

「“うるさい”とクレームが来て…」小池都知事がテレビ番組のアシスタント時代に感じたこと

宮内

いろいろな国に行かれるなかで、ご自身の考えに変化はありましたか?

小池都知事

私が留学していたアラブの国々では、主張しなければ存在がないとみなされるので、女性も自分の意見をガンガン言うんですね。

宮内

そうなんですね。なんとなく逆のイメージがありましたが…

小池都知事

そうでしょう? でも実際に行ってみたら全然違ってた。

日本に戻ってからは、フリーランスで通訳やライターをしていて…。27歳ごろから、アシスタントとしてテレビ番組に出演するようになったんです。

小池都知事

驚いたのは、私が番組で積極的に意見を言っていたら、視聴者から「アシスタントがうるさい」とクレームが来たこと。

宮内

当時は今以上にそういうことがありそうですよね…

小池都知事

そのとき思ったことは、日本では、女性アシスタントは「ハ行」を言ってると“いいアシスタント”と評価されるということ

宮内

ハ行?

小池都知事

「ハイ」「へえ~」っていうリアクション(笑)

この相槌だけ打ってると、「いいアシスタントだ」って言われるんです。

メインキャスターは男性で、女性はあくまでアシスト役として横にいることが収まりがいいってことね。

宮内

ええ…。そのモヤモヤはどのように突破したんですか?

小池都知事

…そのときは、いったんは“いろんな人の話を聞くことが自分を鍛えてくれているんだ”という意識を持って過ごすようにしました。

番組に出演していただいたゲストの方とお話しした内容を、自分の知識として蓄えていき、また人との出会いからいろいろなチャンスを得ていく

そうしているうちに、アシスタントではないかたちで金融系の番組から声をかけてもらって、出演するように。さらにそこで得た知識をベースに、『ワールドビジネスサテライト』の初代キャスターへつながっていくんです。

宮内

当時の社会で、そうやってキャリアを築かれてきたこと、尊敬します。

小池都知事

「少年よ、大志を抱け」という言葉がありますが、あまりに遠い大志を掲げると疲れてしまうこともありますよね。

ならば、大志を小分けにして小志を積んでポイントを貯めるようにしていく

その積み重ねが、昔の自分なら滅相もないと思っていたことや、心に秘めていた夢に近づけてくれると思うんです。

「女性がもっと活躍できる社会」をつくるためにはどうしたらいい?

宮内

これまで防衛大臣や都知事など“女性初”のポジションを歴任されていますが、小池都知事は、なぜご自身が新しいキャリアを切り拓けるのだと思いますか?

小池都知事

私は大正生まれの母から「あなたの時代は何でもできるんだから、挑戦しないとダメよ」と子供のころから言われていたんですね。

小池都知事

だからこそ「女性だからできないんじゃないか」、逆に「男性だからできるんじゃないか」とは考えたことがないんです。

それよりも、自分が「面白い」「やってみたい」と思った分野の知識を深めていっただけで、今も挑戦し続けている感覚ですよね。

宮内

ただ、多くの女性が新しい挑戦をできる状態にするには、一人ひとりのマインドチェンジだけでは変わらない部分もあると思うんです。

「女性がもっと活躍できる社会をつくる」ためにはどうすればいいのでしょう?

小池都知事

働く女性の頑張り云々ではなく、環境を変えていく必要がありますよね。

まずは私自身が都知事として、人事の決定権を持つ者として「意思決定の場に女性がいる環境をつくること」で女性のキャリアをもっと豊かにできるのではないかと考えています。

小池都知事

実際、都庁の管理職は約20%が女性。国や民間企業に比べてその比率が高いんです。

そして東京都の審議会は現在女性の割合が32.9%ですが、再来年度には40%以上まで持っていくつもりです。

さらに、女性の力を最大限発揮できる社会の実現に向けて、全国の女性首長と経営者による会議「びじょネット」、女性起業家を後押しする「APT Women(Acceleration Program in Tokyo for Women)」」など、女性のキャリアを支援する環境もより充実させていきたいですね。

それから、女性だけでなく、男性も育児休暇を取れるようにしっかりと後押しをしていきます。

意思決定の場に女性がいることが、社会をより豊かにすると考えています

宮内

働く女性として、これからに期待しています!

小池都知事

ぜひ。女性のパワーをもっと活かせる社会にするために、現実的かつ大胆な女性政策を進めていきます。

取材終了後、インタビューを行った東京都庁の応接室でふと視線を上にやると、壁に掛かっていたのは、これまでの歴代都知事の写真。そこに、女性の姿はありません

私自身も小さなことを積み重ねて、今こうして都庁の応接室にいるわけです

小池都知事が取材中におっしゃった一言。

その強い生き方は誰もがマネできるものではないかもしれませんが、同じ働く女性として、強く背中を押された取材だったことは間違いありません。

〈取材・文=宮内麻希(@haribo1126)/構成=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉

小池百合子都知事をはじめ、日本のトップリーダー39名が女性のキャリアについて語る書籍『女性が共に、より羽ばたくために』発売中!

今年の3月8日(月)「国際女性デー」に出版された本著は、組織内での女性活躍やダイバーシティの発展を推進している大手グローバル企業13社の取り組みや想いを編纂。

日本の女性リーダーとして第一線で闘い続ける小池百合子都知事、さらにフリーキャスターの滝川クリステルさんも登場。著者はダイバーシティ&インクルージョンを主軸にするコンサルティング会社・The Dream Collective

本記事のテーマでもある「女性がもっと活躍できる社会にするためには?」という問いに対し、当事者の視点から考えていく一冊です。

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