ビジネスパーソンインタビュー
本橋亜土著『ありふれた言葉が武器になる 伝え方の法則』より
「話に“オチ”をつけよう」はNG。開始の1分で相手を惹きつける「つかみ」術3選
新R25編集部
ミーティングや商談がオンラインでおこなわれるようになった今、これまで以上に“伝える”力が求められます。
しかし、画面越しだと相手の顔がよく見えないことから、オンラインでのコミュニケーションに苦手意識を持ってしまう人も多いのではないでしょうか。
そんな方におすすめなのが、『嵐にしやがれ』『しゃべくり007』など人気番組のディレクターとして、視聴者を引きつける伝え方を磨いていた本橋 亜土さんの著書『ありふれた言葉が武器になる 伝え方の法則』。
「話がうまい人、説得力のある説明ができる人は、素晴らしい才能やセンスを備えているのではありません。
その差は、『伝え方の勝ちパターン』を知っているか、知らないかの違いなのです」
テレビ番組も実践している「伝え方の勝ちパターン」を同書から一部抜粋してお届けします。
掴みを制すもの、会話を制す
何事も最初が肝心と言いますが、日々のコミュニケーションでも同じことが言えます。
相手があなたの話をちゃんと聞くかどうか。
もしくは、あなたの書いた文章を最後まで読むかどうか。
それを判断するのは最初の1分です。
「この話、面白そうだな」「役に立ちそうだな」と思ってもらえるかどうかは、最初の「つかみ」がうまくいくかどうかで決まるのです。
伝え方を制する“つかみ”①オープニングアヴァンを使う
「アヴァン」。
変な言葉ですよね。
なんだと思いますか?
実は、この言葉、番組制作の現場では頻繁に使われています。
業界に入りたてのころ、「変な名前だなぁ」とよく思ったものです。
本書の執筆にあたり、初めて語源を調べてみました。
すると、フランス語で「〜の前に」という意味。
一体なんなのかというと、番組冒頭に配置されているダイジェスト映像のことです。
情報番組でこんなシーンをご覧になったことがあると思います。
『ありふれた言葉が武器になる 伝え方の法則』勢いのあるBGMとナレーションで…、
今週の「○○(番組名)」は、自由が丘最新スイーツ&ゼッタイ 目を惹く、超インスタ映えスポットを一挙ご紹介!
そこで目にしたものは!
「スゴーい!」(出演者リアクション)テーブルの上のスイーツに「絶品スイーツ」と書かれた隠し
要するに、「見どころはココだよ!」「チャンネルをステイする価値があるよ!」 という「番組の魅力」を冒頭で伝えているわけです。
どんなに面白い人気番組でも、全てが見どころで構成されているわけではありません。
中には、見どころへ持っていくための「ブリッジ」、前置きの「説明ブロック」など、視聴者にチャンネルを替えられてしまいやすい「ザッピングポイント」も存在します。
冒頭の「オープニングアヴァン」で、番組が盛り上がっているシーンをあらかじめ出しておくことで、「このまま観ていれば、あのお得情報や芸人が驚く面白いシーンがある」と、視聴者に意識させ、ザッピングを回避することができるのです。
とはいえ、単に番組のダイジェスト映像を流せばいいというわけではありません。
これからはじまる話には、こんな面白い「有益な情報」があるんですよ!ということをしっかりと示す必要があります。
つまり、視聴者(話を聞く人)のメリットをしっかり示してあげるということです。
そこまでして初めて、相手の話を聞くコンディションが整います。
そこから本題に入れば、相手の集中力も続き、伝わり方が格段に向上するのです。
人は、自分にメリットがあって初めて動きます。
これからどんな話をするつもりなのか、その話を聞くとどんなメリットがあるのか…。
話の全貌を明かして 期待感を高めたうえで話をはじめる。
このテクニックは、ビジネス、プライベートにかかわらず、交渉や提案、説明などのシーンで活躍しますので、ぜひ覚えておいてください。
伝え方を制する“つかみ”②共感こそ伝え方の鉄則
共感を得ることこそが、伝え方の鉄則。
これがあるのとないのとでは、相手の話を聞く姿勢が大きく変わってきます。
相手の感情が動けば、こちらの話を聞く態勢ができ上がるので、感情を動かす手っ取り早い仕掛けとして、冒頭部分に「共感を得る」ための構造を置きます。
効果的な使い方としては、プレゼンや交渉の話しはじめや、文章の冒頭に、これから話す話題に関連するありきたりな質問を投げかけることです。
ポイントは「ありきたり」であること。
この質問は相手の共感を得るためのものなので、逆算して相手の答えが「そうですね」「そうなんですよ」となるように問いかけていきます。
冒頭部分で2〜3回共感が得られたら、本題へと進んでいきます。
相手にとっては何げないやりとりですが、「伝える側」「伝えられる側」が共通の話題で同じ意見を持つことになるので、「こちらの意見を好んで聞き入れる態勢」ができ上がります。
たとえば、オフィスの複合機を新しいものに入れ替えてもらう交渉をする場合
「最近、紙詰まりが多くありませんか?」「それって急いでいるときに限って起こりますよね?」「会議に間に合わず怒られたことありますよね?」
などと、よくある光景を質問してから交渉に入れば、提案を採用してもらえる可能性が高まります。
相手も同じような経験があるはずだからです。
あなたも、イラストのような街頭インタビューのシーンを観たことがあるのではないでしょうか。
通販番組は、観ている人の感情を刺激して、安くはない金額を消費させるところまで持っていく強力な構造ですので、ぜひプレゼンや商談などの参考にしてみてください。
伝え方を制する“つかみ”③出し惜しみはNG!話の強いものから出す。
「これはとっておきのネタだから、最後までとっておこう」
ちょっとした雑談から商談、プレゼンまで、コミュニケーションの場面で私たちはついこう考えてしまいます。
「話に“オチ”をつけよう」とか、「プレゼンの最後にインパクトを与えたい」 といった思いがあるのでしょう。
むしろ、そうすることがコミュニケーションの鉄則であると考えているフシすらあります。
言わば、「出し惜しみ精神」からくる後出し。
映画や小説など、ラストに大どんでん返しを持ってくるストーリー展開を見慣れているからなのでしょう。
しかし、映画や小説でそれが可能なのは、観客、読者の集中力を保つために緻密に計算されたストーリーや画撮り、音楽、役者の演技があるからこそ。
私たちが、話し相手の集中力を最後まで保つことは至難の業。
はっきり言って無理です。
たとえば、プレゼン終盤には集中力が欠けて、意識が別のところに行ってしまう、「隠れ離脱者」がかなりの確率で発生します。
特に、自宅から参加しているZoom会議の参加者は、途中でこっそりテレビをつけたり、スマホでネットサーフィンをはじめたり、LINEを送りはじめたりと、時間とともに話を聞くコンディションが悪くなってきます。
大事な情報を後出しすればするほど、インパクトが薄れてしまうのです。
では、どうすればいいのか?答えは簡単です。
とにかく、強いもの、印象深いもの、インパクトのあるものを早い段階で、先手先手で出していくのです。
テレビのレギュラー番組でも、ロケに出てみて、「撮れ高」のいい強いネタが急遽上がってきたときには、この法則に従って、仮にオンエアの予定日が1カ月後だったとしても、わざわざ放送のラインナップを変更して、できるだけ早いオンエアに入れ込みます。
有益な情報、要点はいち早く知りたい!もし、自分が「伝えられる立場」だったら、そう思いますよね?
ならば、それを叶えてあげればいいだけです。
「相手ファースト」を意識すれば話の伝わり方が格段に変わります。
明日から使える、聞かせる会話術
『ありふれた言葉が武器になる』では、「テレビの長い歴史の中で磨きつづけられている伝え方」「“相手に気づかれることなく”伝えたいことを確実に刻み込むテクニック」がわかりやすく紹介されています。
オンライン化が進んだ今だからこそ、改めて「伝え方」を学んでみてはいかがでしょう。
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