ビジネスパーソンインタビュー
村上臣著『転職2.0』より
ベンチャーで活躍できる人は外資だと評価されにくい!? 知っておきたい“企業の特徴”4つ
新R25編集部
「我慢しながら働く時代はもう終わった」
「変わらないことのほうがリスクの時代」
と、「LinkedIn(リンクトイン)」の日本代表を務める村上臣さんは言います。
村上さんは、国内外の雇用事情に精通したキャリアのプロ。
そんな村上さんが考える「正しい転職の価値観」とは、どのようなものなのでしょうか?
著書『転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール』より、「転職1.0(旧型のキャリアの価値観)」から「転職2.0(新型のキャリアの価値観)」へとシフトする「転職のあり方」について抜粋します。
① ベンチャー企業に転職を考える場合
一言で「ベンチャー」といっても、創業からの時間経過や人員規模によって会社の在り方は大きく異なります。
ベンチャー経営者同士の会話には「50人の壁」「100人の壁」といった言葉が頻繁に登場します。
それぞれのステージによって、経営の仕方が全然違うため、いかに壁を乗り越えるかが課題となっているのです。
創業初期、社員が50人以内の場合、そこで働く人のポジションは非常に流動的です。
この時期は「自分自身で仕事を作り出し、どんな仕事にも対応する」働き方が求められます。
「与えられた仕事を忠実に全うする」受動的な働き方に慣れている人が、創業初期のベンチャー企業に飛び込むと、苦しい思いをします。
社員が100人を超える前後は、ビジョンやミッション、就業に関わるルールが厳格に定められるなど、会社が会社らしくなる時期であると言えます。
この時期に入社した人は、一般的な中途入社と同じような形で仕事をすることになります。
ただし、会社はまだ大きなトライアンドエラーを経験している途上にあるため、エラーを主体的に見つけて改善できるような人材でないと、適応は難しいでしょう。
300人を超える規模となると、上場しているベンチャー企業も出てきており、普通の中小企業と同じような環境で働くことになります。
このように、ベンチャーは規模によって求められる働き方が異なっているのです。
本記事の読者には、ある程度成長が見えてきている100人前後の規模のベンチャー企業に入るのが向いているかもしれません。
この規模の会社は「成長しているけれど、それほど目立っていない」という意味で穴場です。
成長しているけれど、目立っていないから思うように人が集まらないというジレンマを抱えており、それほど突出して優秀な人がいない傾向があるのです。
こういった会社に入社すると、厳しい競争に巻き込まれる心配も少なく、伸び伸びとした環境で成果を出すことができます。
成果を出せば、昇進できるチャンスも膨らみます。
② 外資系企業に転職を考える場合
外資系企業と言っても実態はさまざまですが、まず大きな傾向として言えるのは、徹底的なポジション思考であることです。
基本的に、外資系企業で行う仕事はジョブディスクリプションに明記されています。
入社前には、与えられた役割や期待されている成果について、マネージャーと入念にコミュニケーションを取りながら確認しておくことが求められます。
逆に言えば、外資系企業ではポジションを越えて働く行為はあまり良しとはされません。
日本企業では、一人の社員がストレッチをしてさまざまな仕事に取り組むのが美徳とされるのですが、外資系企業(特にアメリカの企業)ではネガティブに評価される可能性が大です。
ポジションを越境すると、他のポジションを奪おうとしていると見なされるのです。
こういったポジションに対する捉え方は、日本企業と外資系企業で、それぞれメリット・デメリットがあります。
日本型雇用の場合、社内でいろいろなポジションを経験できるという意味では良い面もあります。
ですから、どちらがいい・悪いではなく、違いを理解して対応することがポイントです。
外資系企業でポジションを越えて仕事をする場合は、「なぜそうするのか」を丁寧に説明して理解してもらう段取りが不可欠となります。
また、意外かもしれませんが、外資系では「根回し」が非常に重視されています。
というのも、日本企業の場合は組織=承認ラインであるため、目の前にいる上司から承認を取ることがすべてです。
一方で、外資系の場合、ポジションと紐づいて責任が与えられており、例えば営業の予算とマーケティングの予算では決裁者が異なります。
特に、彼らはオープンな場で自由に意見を述べるので、事前に根回しをして賛同を得ておかないと、会議の場で反対意見が噴出して収拾がつかなくなる恐れがあります。
そのため、縦横斜めから社内のネットワークを駆使した事前の根回しが不可欠となるわけです。
会議に諮(はか)る前に「これで異論はないね?」と繰り返し、いろいろな人に確認を取っておくのがセオリーなのです。
外資系企業への転職を考える場合は、経験者などから十分なアドバイスを受けておくことが、ギャップを乗り越えるためのカギとなります。
③ 地方の会社に転職を考える場合
コロナ禍では、IT企業を中心に全面的に在宅勤務を認める動きが広がっており、その中で住まいを都市圏から地方に移すケースが見られるようになりました。
では、地方の会社への転職という選択肢についてはどう考えればよいのか。
現状では、地方の会社への転職は、まだまだハードルが高いように見受けられます。
私が知る範囲では、地方に転職する人は「この地域で貢献したい」という強い意志や地域への思い入れを持った人であり、柔軟な働き方を求めて転職をするケースは少数派です。
地方に転職をして仕事をするにあたっては、相応の地元への貢献が求められます。
具体的には、地域の一員として認めてもらうために、地域の年中行事や清掃活動などに積極的に参加する必要があります。
そういったもろもろの活動にコストや労力を要することを理解しておくべきです。
また、都市圏と地方では、依然として経済格差があります。
都市圏と同じ給与水準を期待するのは難しいという問題もあります。
特に、まったく地縁のない地域への転職・移住に関しては、本当に適応できるか慎重な判断が必要です。
十分なお試し期間を設けるなど、最低限の準備は行いたいところです。
ところで、そんな状況にあって今目立っているのは、地方転職ではなく、大都市圏の会社に勤務しながら地方の会社で副業をするという動きです。
副業解禁の流れとリモートワークの普及という条件が重なったおかげで、地方の会社が、最新の技術や知識を持った都市圏の人材の手を借りることができるようになった。
これは非常に大きな変化だと言えます。
例えば、製薬会社であるロート製薬には、2016年に制定された「社外チャレンジワーク」という制度があり、副業に参画できる環境が整っています。
中には、北海道の会社で林業に関わる副業をしている社員もいるのだそうです。
地方での転職を考える人は、まずは副業を通じて都市部と地方の両方に軸足を置き、そこからゆるやかに重心を移していく方法が現実的かもしれません。
④ オーナー企業に転職を考える場合
創業者一族などが経営を行っている、いわゆる「オーナー企業」「ファミリー企業」は中小企業の多くに存在しますし、上場企業にも一定の割合で存在します。
こういった会社は、働きやすいケースと働きにくいケースの両極端に分かれます。
そもそもオーナー企業には、目に見えない暗黙のルールが多くなる傾向があります。
特に家族経営で代々世襲しているような会社は、創業家のパワーが非常に強く、いつできたのかわからないような「謎ルール」が定着していたりします。
また、創業者が経営の一線を退いたのちも、会長職として強い権限を保持しているようなパターンもあります。
一方で、そういった風通しの悪さを打破しようと奮闘している若社長もいます。
その代表的な成功例の一つがJapan Taxi(現 Mobility Technologies)です。
社長の川鍋一朗氏は、負債を抱えていた会社を立て直し、業界のIT化を進めるなど、さまざまなチャレンジをしています。
こういった改革に成功している会社もあるので、慎重に会社の内情を理解した上で入社を決断すべきでしょう。
転職が“トレードオフ”の時代は終わった。新時代のキャリアの指南書
やりがい、年収、人間関係、ワークライフバランス…。
転職とは、何かを得ると何かを失う“トレードオフ”なもので、妥協して働くのがかつてのキャリアの常識でした。
しかし村上さんは『転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール』の中で、
「新時代には、“正しい転職の価値観”と“正しい転職の方法論”を知れば、これまでの経歴に関係なく誰もが“我慢しない自由な働き方”を手にすることができる」
と主張しており、正しい転職の“価値観”と“方法論”の考え方を丁寧に紹介しています。
転職に悩んでいる方はもちろん、これからのキャリアを考えるビジネスパーソンは、ぜひ読んでみてください。
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