ビジネスパーソンインタビュー
坊垣佳奈著『Makuake式「売れる」の新法則』より
人気ファストファッションブランドはなぜ消えた? 「大量生産、大量消費」が崩壊したワケ
新R25編集部
アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」が成功した理由。
それは、「クラウドファンディングの仕組みをアップデートさせて、新しい商品開発の方法を提示できているから」だと、運営に携わる坊垣佳奈(ぼうがきかな)さんは言います。
事業者やプロジェクト自体に資金力や宣伝力がなくても、これまでにない数々のヒット商品を生み出せた裏には、一体どのような秘策があったのでしょうか?
坊垣さんの著書『Makuake式「売れる」の新法則』より、「ファンを巻き込む方法」「これからの時代の“売れるもの”の条件」「うまくいくブランディングの法則」について抜粋してご紹介します。
「大量生産、大量消費」によるビジネスの崩壊
従来型の「大量生産、大量消費」によるビジネスは、生産過程や過剰在庫なども含め、 どこかに「負の要素」を抱えていることが多いものです。
近年では世界各国で掲げられた「SDGs」や、環境保全や地球への環境負荷に配慮した「エシカル」といったキーワードを耳にすることも多いと思いますが、インターネットによるオープンな情報環境は「負の要素」を明るみに出し、これらの課題に向き合ったものづくりは、消費者に訴えかける力を持ちます。
Makuake式「売れる」の新法則SDGs
Sustainable Development Goalsを略した言葉で、訳すと「持続可能な開発目標」となります。
2015年9月、世界193カ国の首脳が参加した国連サミットにて、全会一致で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。
「2030アジェンダ」には、世界中で2030年までに達成したい「17のゴール」が指針として挙げられています。
貧困や飢餓の撲滅、水・衛生の利用可能性、気候変動への対処といった諸問題に加えて、経済成長やジェンダー平等まで、人類と地球を取り巻く課題が網羅されています。
エシカル
「倫理的な」という意味で、人間が本来持つ良心から起きる社会的な規範姿勢。
人や地球、社会、地域に配慮した考え方や行動のこと。
正しく、好ましいものを消費者が選ぶべき空気が広がれば、作り手側もそれに応じたものを作らないといけません。
各社は生き残るためにも「負」を生み出さないものづくりを進めてきています。
ここには地球環境以外にも、人間の深い心理も関わります。
アメリカの心理学者であるマズローが、人間の欲求を5段階のピラミッドで構造化した「自己実現理論」を目にしたことがある方は多いことでしょう。
現代社会では、ピラミッドの下位にある衣食住といった生理的欲求や安全の欲求については、かなりの人が一定の水準で実現することができるようになってきました。
そうなると、人々は社会的欲求や承認欲求といった次なるステップへと進んでいきます。
「社会で自分はどんな役割を担うべきか?」という社会貢献にも意識が届き始めます。
国家としても、経済の発展につれて、文化度が上がっていく過程に入ります。
日本のことだけを考えても、今後はさらに上位のステップへ押し上がっていくでしょうし、世の中としてもその流れは止められません。
心理や行動が変わってくると、今後は「売れるもの」の条件も変わります。
たとえば、作られるまでの背景がちゃんと語られ、消費者がしっかり納得して選べることは、大事な観点です。
洋服の5〜6割は、一度も袖を通されることなく処分されている
サステナブルやエシカルというワードが先行して使われるようになったのは、アパレル業界です。
Makuake式「売れる」の新法則サステナブル
sustain(持続する)と、able(できる)からなる言葉で、「持続可能」と訳せます。
服の原材料であるコットン産業では、その労働実態が過酷であることが明るみに出ました。
さらに、コットンを作る過程では多くの農薬をまくため、環境や人体への負荷が懸念されます。
かといって、真にオーガニックコットンを作るには土壌を洗浄しなければならず、資金的な捻出が難しいという別の問題が発生します。
そして、原材料だけでなく、ファッション業界全体で、特にサステナブルというワードが叫ばれている理由の一つに廃棄問題があります。
全世界で生産されている洋服の5〜6割が一度も袖を通されることなく処分され、日本国内だけでも年間約10億着が廃棄されているといわれています。
そして、廃棄の割合が年々増加していることが数字として可視化されたことによって、より強く問題意識が広がりました。
この根底には、アパレル業界の需要予測の難しさが挙げられます。
ファッションは流行り廃りが激しく、トレンドを読むことが求められるのが一般的です。
流行った瞬間に潤沢な在庫があればビジネスはうまくいきますが、裏返すと、タイミングを外せば大量の在庫を抱えてしまうわけです。
ある種の博打的な要素のもとで商品を企画しなければならず、その結果として大量廃棄につながっています。
また、かつてはハイブランドの象徴といわれていた動物の毛皮なども、持続可能性の観点からは使用が制限されたり、ユーザーから避けられたりするなど、トレンドは日々変化しています。
洋服というのは世界中で必要とされる製品だけに、サステナブルな観点や廃棄問題、あるいは製造過程での環境汚染という課題に、企業がどのように向き合っているのかを消費者に示していく必要性が、今後は世界的にも高まっていきます。
人気ファストファッションブランドは、なぜ失くなった?
一例として、日本でも人気を博したファストファッションブランドの「FOREVER21」が、2019年10月末に日本市場から撤退を決めたのは印象的な出来事でした。
失速したのは、同業他社の攻勢も要因の一つですが、最も大きなダメージとなったのが「サステナブルな意識の高まり」だったといわれます。
ファッションメディア「WWDジャパン」の記事では、主な顧客ターゲットだった若者世代が、安価な製品を使い捨てで着ることを嫌い、フリマアプリや古着店といった2次流通でも高値で取引できる品質を求めるようになったことなどを、失速の背景に挙げていました。
若い世代の感覚がサステナブルやエシカルに惹かれるほど、「業界的な負を抱えているものを買う意味」について考えるようになっている。
ファストファッションと呼ばれるブランドの多くに、製造過程の「負」の面があることは有名な話であり、そのあたりを一つずつクリアにしていかなければ、消費者から信用されない時代が来ています。
ひと頃、日本企業では盛んにCSRといって「企業の社会的責任」を果たそうとする活動が盛り上がりを見せましたが、本業と関係のない環境保護活動などに終始している企業も多くあったようです。
サステナブルやエシカルに対しての課題に、そのような意識で臨んでいてはいけません。
もっと根本的かつ深い部分まで消費者は見ているのです。
企業の意思表示が消費者への「信頼」につながる
アパレル業界だけではなく、あらゆる日本企業でも同様に「クリアにすること」は求められます。
インターネットによって作り手と受け手が直接的にコミュニケーションを取れる環境になった今、むしろ「ものづくりの過程を明かさないということは、公開できないやましい理由があるのでは?」と詮索する意識さえ、消費者に与えてしまうのです。
たとえば、アパレル業界以外からのケースを引くならば、タイガー魔法瓶株式会社はサステナブルやSDGsの文脈から、製造するステンレスボトルに対して、ユーザーに「4つの約束」を公表しています。
それは「NO・紛争鉱物」「NO・フッ素コート」「NO・丸投げ生産」「NO・プラスチックごみ」の4点です。
たとえば「NO・紛争鉱物」は、武装勢力の資金源として採掘されている鉱物を用いず、15歳以下の労働者のいる企業には発注しないという意思表示です。
児童労働の問題は、アフリカ諸国をはじめとして今なお根深く残っています。
タイガー魔法瓶は「人の苦しみの上に作られた原材料は、一切使いません」と宣言文に記していますが、このような意思表示をして信頼感を高めることが、消費の後押しにもなるのです。
簡単に言えば、同じような価格帯の、同じような機能性を持つ製品があった場合、よりサステナブルで、よりエシカルな製品を、消費者は選ぶ。
そのほうが、地球環境に配慮でき、SDGsの達成にも近づくからです。
売り手と買い手が直接繋がれる時代の「ものの売り方」
SDGsやエシカルなどが重要視され、消費者の「ものを選ぶ基準」が変わってきている今、“伝統”や“らしさ”を大切にしながら、新しい価値を生み出し続けているサービス・Makuake。
『Makuake式「売れる」の新法則』では、Makuake式のマーケティングの考え方や、「新たなものの売り方」についての参考事例がいくつも紹介されています。
売り手と買い手が直接繋がれる時代の「ものの売り方」を知りたい方は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
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