BJ・フォッグ著『習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』より

暴飲暴食も夜ふかしもやめられる。行動デザインの専門家がたどり着いた“悪習慣”の断ち方

仕事
「勉強の習慣を身につけたい」「毎日筋トレを続けたい」

毎年、「今年こそ何かを継続しよう」と思うけれど、上手くいかずに終わってしまう...。

「習慣化できないのは、自分の意思が弱いからだ」と、落ち込んだ経験がある方も多いはず。

しかし、スタンフォード大学行動デザイン研究所所長である、BJ・フォッグ氏は、自身の著書『習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』にて、「習慣化できないのはあなたの問題ではない。行動の構成要素を知りアプローチの仕方を変えたら、誰だって続けられる」と断言しています。

20年以上にわたる研究と、指導者としての経験から分かった習慣のコツとは?

一部抜粋してご紹介します。

“具体的習慣”を洗い出していないから、やめられない

悪習をやめたい場合によくあるまちがいは、抽象的な対象に対してモチベーションを高めようとすることだ。

たとえば、「職場でイライラしない」とか「ジャンクフードを食べるのをやめる」といったことだ。

どちらも具体的に聞こえるかもしれないが、じつはそうとはいえない。

あくまでも習慣のもつれに対する抽象的なラベルにすぎず、私はこういったものを「漠然とした習慣」と呼んでいる。

漠然とした習慣に照準を合わせると、おそらくいい成果は得られないだろう。

ちょうど、絡み合ったロープ全体を一度にほどこうとしてもほぐせないのと同じだ。

前進するにはもつれた箇所を一つひとつ解消する必要がある。

つまり、着目すべき具体的な習慣を特定しなくてはならない

そして、ここで役に立つのが「行動の群れ」だ。

下記の図の雲の中に、あなたがやめたいと思っている漠然とした習慣を書いてみよう。
出典

習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法

次に、漠然とした習慣を構成している「具体的習慣」を、雲のまわりの枠の中に書いていこう。

参考までに、漠然とした習慣を「ジャンクフードを食べすぎる」とした例を作成したので紹介する。
出典

習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法

なぜ“具体的習慣”の洗い出しが重要なのか?

漠然とした習慣だけに意識を集中すると、ストレスを感じたり、おじけづいたりしてしまう。

そうなると、「いまは時間がない」とか「あとでやろう」と思い、回避する原因になりかねない。

だが、漠然とした習慣に関係する具体的な習慣をリストアップすると、この大きな悪習を解きほぐすことが、より簡単に感じられるようになるだろう。

私は望ましくない習慣をやめるために初めてこの方法を使ったとき、家で「使ったものを元の場所に戻さない」という漠然とした習慣を構成している具体的習慣を何個も挙げることができた。

自分がこんなに家を散らかす習慣を持っているなんてと、多少の自己嫌悪に陥った。

自分はそんなにだらしないのか?

どうやら、そうらしい。

あなたがこの手法を利用するときは、こんなふうに一時的に落ち込むことに驚かないでもらいたい。

自分の悪習と向き合うと、ほとんどの人はそのような経験をするようだ。

だが、落ち込んでもすぐに立ち直れる。

私は家の片づけに関する具体的習慣を眺めながら、素早く簡単に解決できるものがいくつかあると気づいた。

チェストの上にセーターを置いたままにするのも、キッチンカウンターに本を山積みにするのも、すぐにやめられそうだ。

そう思うと気持ちが晴れた。

この手法を実践したとき、私は自分が主導権を握っていると感じた。

それどころか、かなり楽観的になった。

そしてきっと、あなたもそうだろう。

また、1つ目の成功(チェストの上にセーターを置きっぱなしにしない)を土台として、より難しいことに取り組めるようになるはずだ。

「いちばんやめやすいこと」から始める

そこで私はこう言いたい。

解決すべき具体的習慣が山ほどあるのを目の当たりにしても、そこで立ち止まらないこと。

そして、圧倒されないこと

まずはもつれた習慣の中から1つだけ選び、人生から取り除けるようにデザインするのだ。

だが、どの習慣から取り組むべきか?

この答えはとても大切なので、言い方を変えて3回繰り返したい。
いちばん簡単な習慣を選ぶこと

「できそうだ」といちばん強く思える習慣を選ぶこと

大がかりだと感じない習慣を選ぶこと

出典 習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法

人はよく、解消するのがいちばん難しく、面倒な習慣を選びたくなるが、それはまちがっている。

まるで大きく絡まったロープのかたまりの奥深くにある、もっともかたい結び目からほどこうとするようなものだ。

そうではなく、やめるのがいちばん簡単そうな具体的習慣から始めよう

また、解消する習慣は複数選んでもかまわない。

それはあなたの自由だが、どんな決断をしても、自分に負担をかけてはいけない。

まずは変化のスキルを磨くのが先決だということを忘れないように。

難しい課題は、さらに多くのスキルを身につけ、勢いを得たときのためにとっておこう。

ノウハウ自信を得るにつれ、結び目を解きほぐしていくのが簡単になるのに気づくだろう。

しかも、具体的習慣の中には自然と消えていくものもあるので、すべての習慣に向き合わずにすむかもしれない。

悪習の「きっかけ」のつぶし方

状況によっては、きっかけに働きかけるだけで習慣をやめられることがあり、それには3通りの方法がある。

きっかけを取り除く」「きっかけを避ける」「きっかけを無視する」のいずれかだ。

(1)きっかけを取り除く

「きっかけを取り除く」ことは、望ましくない習慣をやめるうえでもっとも単純な選択肢だ。

そして、きっかけを取り除く最善の方法は環境のデザインを修正することだ。

たとえば、仕事中にSNSをチェックするのをやめたいと思っているとしよう。

対策としては、スマートフォンの電源を切る、機内モードにする、アプリの通知機能をオフにするなどが考えられる。

いずれもきっかけを取り除くものだ。

たったそれだけで悪習を解消できる可能性がある。

(2)きっかけを避ける

きっかけを取り除くことができない場合は、「きっかけを避ける」工夫をしてみよう。

たとえば、朝のコーヒーと一緒に砂糖たっぷりの菓子パンを買う習慣をやめたいなら、カフェに寄るのをやめて、家でコーヒーを入れる。

そうすれば、カフェに付随する誘惑に遭遇せずにすむ。

きっかけを避けるにはこんな方法がある。
きっかけに出合う場所に行かない

きっかけの原因になる人に近寄らない

他人からきっかけが持ち込まれないようにする

きっかけとなるようなメディアを避ける

出典 習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法

(3)きっかけを無視する

最後の選択肢は「きっかけを無視する」ことだが、これは意志の力を必要とするので難しいかもしれない。

行動曲線を上回る習慣(モチベーションと能力が十分にある習慣)については、きっかけを無視するにはとくに大きな努力を要する

あなたにもこんな経験があるだろう。

きっかけを提示されても抵抗し、はねのけることができた。

ところが、きっかけに「ノー」と言い続けられず、やがて意志が弱くなる。

パーティで一度や二度なら飲み物を断ることもできる。

しかし、周囲から何度も勧められたら(そして自分でも飲みたいと思っていたなら)、そのうち我慢しきれなくなる

「誘い」に抵抗するには、そのたびに意志の力をふりしぼらないといけない

とくにくじけやすいのは、余裕がないときだ。

たとえばある朝、家で健康的な食事を取れず、しかも会議があって何か食べておかないと乗り切れなければ、カフェでブルーベリーマフィンを買うことになる。

また、不安に駆られると逃避したい衝動が高まることもある。

長期的な視点からは、きっかけを無視するのは最適な解決策とはいいがたい。

しかし、意志の力がとりわけ強く、無視し続ける力があるのであれば、この方法も選択肢となる。

きっかけを無視して望ましくない習慣を見送れたときは、かならずその成功を祝福すること

ここまでをまとめると、きっかけには「取り除く」「避ける」「無視する」の3つの方法で対処できる。

あなたにとって、このうちのどれか1つでも効果があれば素晴らしいことだ。

人生から排除したい具体的習慣をやめるために、もっとも簡単な解決策が見つかったのだから。

具体的習慣を1つ解決できたら、「行動の群れ」に戻り、次に解消すべき具体的習慣をさらに1つ選ぶ

ガソリンスタンドで朝食を買う習慣をやめられたら、職場の受付にあるキャンディを食べる習慣に移る、という具合に。

「自分や他人の『行動』を変えたい」あなたへ贈る一冊

習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法 
BJ・フォッグ 著/須川綾子 訳(ダイヤモンド社)

習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法  BJ・フォッグ 著/須川綾子 訳(ダイヤモンド社)

同書は、行動を生む3つの要素のメカニズムを始め、それぞれの要素の調整の仕方、小さな習慣を大きく育てる方法、他人の行動を変える方法など、550ページにわたり習慣についてのノウハウが詳しく書かれています。

分かりやすく、どれも今日から実践できることばかり。

読み終わる頃には習慣に対するハードルがぐっと下がったように感じます。

今年こそ何かにチャレンジしてみたい」そんな人たちの背中を押す一冊です。
写真:©️Stephanie Weldy