阿部 広太郎著『それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』より
もっとロマンチックに捉えていい。コピーライターが提唱するキャリアの“魅力的”な解釈法
新R25編集部
ペストの渦中、休校期間を“創造的休暇”と解釈して「万有引力の法則」を発見したニュートンの発想に「ビビッときた!」という、コピーライター・作詞家の阿部広太郎さん。
ニュートンのように「自分なりの解釈」を持つことで、誰でも“自由への翼”を手に入れられる...そんな思いから、“解釈の練習をするための本”を書いたのだそうです。
東進ハイスクール・林修さんの「今でしょ」が話題になったCM「生徒への檄文」篇の制作に携わった阿部さんが紡ぐ話題の新著『それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』から、その一部を抜粋してお届けします。
あなたの仕事に、“自分なりの名前”をつけてみよう
あなたは今、どんな仕事をしていますか?
自分の仕事を、自分自身はどう捉えているのか?
まずは深呼吸、姿勢を正して、自分に投げかけよう。
この問いを自分の心の井戸に掘り下げていった時に、そこには思いがあふれていると思うのだ。
不安と期待が混じった初心。
秘かに抱いていた目標。
それに、野心や野望。
汲み上げてきた思いを、見つめて、触って、包み込んで、自分なりに名前をつけてみよう。
そうすることで、原点回帰ができて、心が整う感覚を得られる。
さらには、相手に自分の仕事を紹介しやすくなる。
コピーライター→言葉をあつかう商人
先陣を切って僕の仕事への解釈を紹介したい。
僕の仕事はコピーライター。
コピーライターという職業に、どんなイメージを抱くだろうか?
オシャレな言葉を書く人?
お笑い芸人さんみたいにうまいことを言う人?
広告に入っている言葉を書く人?
こんな感じかなと思っていたのは他ならぬ僕自身だ。
オシャレって何だよ、とかつての自分にツッコミたくなりつつ、コピーライターになる前の僕は、超ざっくりとした表面的なイメージしか持っていなかった。
仕事をしながら僕自身が思ったことはこうだった。
コピーライターは、普段みんなが当たり前のように使っている言葉をあつかう。
言葉を選び、言葉を磨き、言葉を贈る。
その結果、人と人をつなぎ、商売をつくり、経済を動かす。
そしてこう名前をつけた。
コピーライターとは「言葉をあつかう商人」なんだ。
「コピーライター」というような職種の肩書きじゃなくてもいい。
仕事を語る上で、少々のロマンチックは必要だと僕は思う。
どんな風に解釈するかにドラマがある。
額に汗する自分を誇れる、そんな気持ちを込めていい。
自分の仕事に名前をつけることで浮かびあがる、百人百色の解釈
大学で、企業で、ワークショップをしてきた100名分の「自分の仕事に名前をつける」をここに紹介する。
十人十色ならぬ百人百色の解釈を感じてもらいたいし、「自分ならどう名付けるかな?」という視点で見てもらいたい。
それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習
それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習
ずらりと並ぶ100名の「仕事の解釈」。
「なるほど!」と、100名の解釈の中に膝をぽんと叩きたくなる名前のつけ方もあったと思う。
何度も眺めてしまう。
知らなかった仕事に対して、どんどん想像が広がっていく。
その名前から、仕事に向けた情熱を感じられてワクワクしてくる。
たとえ同じ仕事だとしても、人によって捉え方は違う。
それが面白い。
一人ひとり違う人生観があるように、本当に色々な仕事観があり、それを感じることができる幸せがある。
あなた自身と、あなたの目の前の仕事の掛け算から、世界で一つの言葉が生まれる。
「うまく名前がつけられない...」あなたの中に言葉はある
仮に、自分の仕事にうまく名前がつけられないAさんがいたとする。
その隣に僕がいたとしたら、こんな風に質問を重ねていく。
僕のスタンスは「あなたの中に言葉はある」だ。
それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習A「編集の仕事をしてるんですけど、うまく思いつかなくて…」
僕「僕だと、広告業のことを関係創造業って言い換えたみたいに『編集』を言い換えてみると何になりますか?」
A「言い換える時に、どんな工夫をするといいですか?」
僕「一般的にこうだよねという見方は一旦脇に置いておきましょう。
自分の場合はこうなんだ、と思うことが大切です。
Aさんは編集の中でもウェブ媒体にまつわる編集ですよね。
ウェブ編集の仕事をする時にどんなことを意識してますか?」
A「私の中で編集は『魅力発見』ですかね。
編集者は、魅力発見者かな」
僕「いいですね!他にも、イメージを探すというやり方もあります」
A「イメージ?」
僕「似た状況を探す、たとえるならこんな感じ、を見つけるやり方ですね。
広告業なら、僕の中では、一つの掛け声がみんなの気持ちを高めて円陣がどんどん盛り上がっていくイメージがあります。
Aさんの中で編集はどんなイメージが浮かびますか?」
A「うーん…船ですかね、船の進む先をガイドする… 水先案内人みたいな感じなんですよね」
僕「水先案内人!連想ゲームみたいに、そこから浮かんだ言葉をさらに言い換えてみるのもありです。
『水先』という言葉をずらしてみる。
その仕事を通じて何を案内している人なのか?」
A「ちょっといい未来案内人、とか、きっかけ案内人、とか。
みんなが本当は思っていたことの、その先に進んでいく感じなんですよね。
最後に、名付けを完成させる時は語呂が良いといいですよね?」
僕「きれいに語呂がそろってないといけない訳ではないですよ。
今の時点で、自分がしっくりくる言葉を探しつづけて、この先また見つかったら変えたらいいですし」
A「そしたら……『本音の先案内人』かな!そうします!」
この会話は僕の妄想ではなくて、実際にあったやりとりを思い出しながら書いたものだ。
大喜利みたい、と思った人もいるのではないだろうか?
その感覚は間違っていない。
今回のお題は…
あなたは自分の仕事にどんな名前をつけますか?
その名前にしっくりくるかどうか。
それを何よりも大切にしてほしい。
世間一般の「こんな感じでしょ」というイメージのその先にある、自分の肉体で獲得してきた言葉。
名付ける素材を集めるために、問いを重ねて思い出を集めていく。
仕事をはじめたきっかけから、嬉しいことやつらいことや、自分を支えるモチベーションや、その先に何を目指しているか?
入口から出口までを、自分自身にインタビューしていくのだ。
たとえばこんな問いかけを自分自身にしていくと良いと考えている。
それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習どうしてその仕事をはじめましたか?
どんな嬉しいことがありましたか?
どんなつらいことがありましたか?
どんなことがモチベーションですか?
どんなことを目指して働いていますか?
その上で、言い換える。
イメージを探す。
連想ゲームをしてみる。
語呂を考える。
先程の会話の例のように隣に僕がいなくても、あなたの隣にはあなた自身がいる。
考えること、創作することは、自分自身に問いかけていくことそのものだと思う。
自分に問いかけ、思い浮かんだことを書き出していくだけでもいい。
少しずつ、自分だけの仕事観が浮かび上がっていく。
するとどうだろう、一つひとつ迷いながらも決めた名前を通じて、自分にとってお馴染みの仕事がちょっと新鮮に見えてくる。
名付けたら愛着が湧いてくる。
今の仕事ではなくて、自分が本当にやりたい仕事に気づくきっかけになる人もいるかもしれない。
自分で選んだ仕事。
その仕事への思いは日々変わっていく。
自ら意識的に選んだ仕事に、今度は言葉を選んであげる。
せわしない毎日の中で、自分の思いに目を向ける時間をつくる。
その積み上げで、納得して過ごせる日々をつくりだしていけるのだ。
「誰かの出した正解」から解き放たれる、心ほぐれる一冊
同書は、読み終わった頃には心がほぐれて、自分を肯定したくなるような一冊です。
誰かのもっともらしい発言を受けて「そういうものなんだ...」と自分に言い聞かせてしまいそうになるとき、“自分なりの解釈”を見いだす一助となるはず。
それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習<こんな人におすすめ>
・自分の人生や将来についてモヤモヤしていることがある
・他人の意見を聞きすぎてしまう
・やりたいことがわからない
心当たりのある方は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?
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