ビジネスパーソンインタビュー
【どのメディアも信用できない】SNS研究者に相談したら「今はどうにもできない」と言われてしまいました...

【どのメディアも信用できない】SNS研究者に相談したら「今はどうにもできない」と言われてしまいました...

新R25編集部

2025/03/03

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「複雑なはずのビジパの悩みを、単純化して取材していた」「本質的じゃない悩みをでっちあげていた」

という反省のうえ、「個人のリアルな悩みにひもづいた取材」を改めてしていくことを方針とした新R25編集部。

今回は、新R25インターン・りんたろうの「メディアが信用できない」という悩み。

SNS含め、さまざまなメディアが乱立する現代において、何を信じればいいのかわからないというりんたろうに、救いを差し伸べる手はあるのでしょうか?

ちょっと難しい話ですが…Z世代・りんたろうが“メディア”に対して思うこと

りんたろう

端的に言うと、もはや「どのメディアも信用できなくなった」っていう話なんですけど…

渡辺

とがってる(笑)。

りんたろう

最近、フジテレビ騒動があったじゃないですか。これまで蓄積されてきた“メディアに対する不信感”が一気に出たと思って。

メディア自体に対する信用が揺らぎつつあるなと思うんです

りんたろう

SNSでも、フェイクニュースや偏った情報が流されてるし…Z世代の我々は、もう何を信じて、情報をどう摂取していけばいいのかわからなくなってきて。

渡辺

理想論では、ニュースの原文やエビデンスを確認しよう、って話になるけど、限られた時間のなかでは無理じゃん。

じゃあどうすればいいの?って、俺もよく思う。

自然と“自分が信頼する専門家やインフルエンサーをウォッチして、その人の言うことに乗っかる”ことになるじゃん…

天野

自分も、「信頼できる人の発信、偏りのない情報を見てる」って思ってるけど…それもバイアスにすぎないですもんね

我々が新入社員のころは、「新聞読まなきゃ」とか「ちゃんとしたメディアとはこういうもんだ感」があったと思うんですけど…

渡辺

それが崩れ去ったなかで、Z世代はどういうふうに情報を取って、何を信じればいいのか。

りんたろう

ニュースの切り抜きで、法政大学の藤代先生が「SNSのリテラシーというのは、もう無理なんです」って言ってたのを見かけたんですよ。

りんたろう

それがけっこう衝撃で。

「今こそリテラシーが大事だ」って叫ばれてるのに「そんなの無理でしょ」というスタンスの人もいるんだと

とはいえ、リテラシーに代わる“新しい何か”があるのかどうか、気になります。

「SNSリテラシーはもう無理」の真意とは?

りんたろう

藤代先生、よろしくお願いします。

先生の「SNSリテラシーはもう無理なんです」という言葉が衝撃だったんです。

SNSにおいてもリテラシーを持って、“自分なりの選球眼”を意識しながら使っていこうというスタンスだったので、「マジか」って思って。

「SNSリテラシーはもう無理」という言葉の真意について聞かせてもらえますか?

藤代さん

今年1月、北九州のマクドナルドで若い方が刺されてお亡くなりになった事件がありましたよね。

事件後、SNSには不確実な情報がいっぱい出て、地元の放送局から「(そういう情報に対して)どうしたらいいんですか?」って聞かれたときに、回答として答えたのが「SNSリテラシーはもう無理」でした。

【藤代裕之(ふじしろ・ひろゆき)】フェイクニュース・ソーシャルメディアなどを専門とするメディア研究者。法政大学社会学部メディア社会学科教授であり、日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表運営委員も務めている。著書には『ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか』(光文社新書)など

藤代さん

このところ、Xがものすごく使いにくくなってると思いませんか?

イーロン・マスクが運営方針を変えて…アテンション・エコノミーというか、「とにかく盛り上がったらいいんだ」っていう感じにしてる。

そうなると、不確実性の高い情報が広がっていく。皆さんリテラシーがゼロでもなくて、若い人も自分なりの価値判断を持ってると思うんですよ。

でも、情報の量が多すぎる

りんたろう

そうですよね。

藤代さん

総量のせいで、探しに行こうとしている情報に当たらない。

そうなると、情報に“当たる確率”の問題になってくるので、だったらもう「大事な情報探しにSNSを使うのはやめましょうよ」と。

おもしろ情報とか推し活とかはいいけど、選挙とか災害についてSNSで情報収集するのは、リテラシーではカバーできません、ということです。

りんたろう

僕自身、SNSで情報探すって正直“無理ゲー”だという思いがあって、その流れで「どんなメディアも信用できなくね?」と思い始めてるんです。

りんたろう

今回聞きたい1つめのテーマは「Z世代がメディアに対するスタンスをどう持てばいいのか」ということです。

2つめは「情報を俯瞰したうえで、自分の主義・主張を持つ方法について」です。

藤代さん

去年、都知事選挙の際、大学の学生たちにせっかくメディアを勉強しているんだから、みんな行こうねと呼びかけたんです。

そしたら、学生から言われたのは「選挙に行くのはいいけど、どこを見たらいいんですか?」と。

りんたろう

そうなりますよね。

藤代さん

最近の若い人たちは、みんな真面目。「丸腰で選挙に行くのは恥ずかしい」「何も考えてない人が一票を投じるのはどうなの?」みたいな感覚があるらしいんです。

りんたろう

めちゃくちゃそう思います。

藤代さん

自分なりに考えて票を入れたいって思ってる。だけど、どんなメディアの情報を参考にしたらいいかわからない。

結局、りんたろうさんの1つめの問いへの回答は、「今はどうにもできない」ということになります

りんたろう

えええ…どうにもできないのか…

藤代さん

僕としては、新聞社とかメディア側がもっときちんとやりなさいよ、と思います。

りんたろう

きちんと、とは?

藤代さん

たとえば、選挙期間中はメディア全体が連携して、選挙のニュースを読もうとか、動画を制作するようなキャンペーンをするとか。

新R25もABEMAも一緒に、選挙フェスみたいにして、情報を広く届ける努力をしたらいい。

りんたろう

まずはメディア側が、情報の受け手の射程圏内にちゃんと情報を持ってくるべきってことか…

メディアの栄枯盛衰を面白がってるばかりじゃいられない…「メディアや情報の選び方」

藤代さん

テレビを含めたメディア界が混乱しているのは、現段階でユーザーにはどうしようもないんだけど、一方で、これは最高の娯楽なんですよ

今まで栄華を誇っていた王朝が、見るも無残なダサいかたちで崩れていく様を「哀れだな」って思いながら見る。

それが崩れたあとに王朝はないので、戦国時代が始まるわけですね

りんたろう

ただ、面白がってる自分はそれでいいのかっていう思いが常にあるのですが。

「ちゃんと選びたい」という思いをどう消化して、どう情報を選んでいけばいいですかね?

藤代さん

すごく今っぽい問いですね

…そう思うのは、りんたろうさんが「自分で選びたい」と思ってる点

りんたろう

そうなんですか…?

藤代さん

昔の人だったら「NHKでいいんじゃない?」みたいな感じだったと思うんですが、今の時代はそんな簡単にいかない。

でも今の若い人たちは、自分でしっかり見定めたうえで選んでいきたい欲がある

そのために最近私が唱えているのは、メディア側がすべきこととして、中身の話じゃなくて“製造プロセス”の話をきちんとしましょうということ。

つまり「きちんと取材してます」とか、ニュースを制作するプロセスを明らかにして、皆さんに選んでもらう。

りんたろう

ソースを聞いたときに、それが不明瞭な場合は信頼に値しない、と。

藤代さん

この仕組みは、すでにヨーロッパでは試みられていて。

EUの仕組みとして、国際規格に基づいたニュースの製造プロセスのISO(=国際規格)があるんですよ。

りんたろう

戦国時代のなかでそういった動きが進んでいけば、ある程度「摂取すべき情報」が見分けられるようになっていくんでしょうか?

藤代さん

それもあるでしょうし、我々自身が、「自分が思っているものと同じ情報があるから」といって飛びつかないようにすることが大事でしょうね。

ネットの反応とかSNSの声の部分こそ、自分なりに判断するという意識をもっておく。

「俺もそう思ってた!」と感じる、その行為に誘導する力が強いから

りんたろう

たしかに、その意識があるだけでだいぶ考え方が変わりそうですね。

藤代さん

起こったことは自分で判断すればよくて、「みんながこう言ってる」っていう部分に注意するということです。

「その人が言ってること、みんな信用してるんで」って言う人は、大体ヤバイじゃない(笑)。

藤代さん

「みんな」っていうのは、もしかしたらすごく少ない「みんな」かもしれないわけよね。

「みんな」に振り回されず、ニュースを見たときに、「嫌だな」とか「いいな」って思う自分の直感を頼りにしていけば、最終的にはニュースを見極められる“ある種のリテラシー”はついていくのかなと思いますね。

りんたろう

それはめちゃくちゃ大事な視線かもしれないですね。

ユーザーは「みんな」の意見に流されないことだけを意識していればOKで、あとはメディアが変わるのを待つスタンスでいいと。

藤代さん

そう。

りんたろう

これは新しい視点だ。僕らはユーザー側がどうするかっていう話ばかりしてたので…

藤代さん

ユーザー側にリテラシーを求めるのは、もはやメディア側のビジネスモデルの放棄というか、職務放棄

「おいしい」「まずい」の感想は人によるけど、食べ物屋さんが原材料の産地とか書いているのは、製造プロセスを信頼してほしいからだよね。「うちはなんとかさんの栽培したイチゴを使ってます」とか、「なんとかの味噌でラーメン作ってます」って。

それもなくて、「うちはきちんと作っています」とだけ言われても、「いや、味噌はその辺で買ってるじゃん!」ってなるじゃない(笑)。

りんたろう

メディア側が説明責任を果たさなきゃいけない。

藤代さん

メディアの責任が果たされたときに、はじめてユーザー側のリテラシーという責任が出てくる。

今、ユーザーはメディアを選びようもない状態。順番が違うと思います。

「悪いのは大人です」メディア不信を生み出した原因

りんたろう

Z世代の間で、メディア不信が高まっているという現実があって。

今後僕が危惧するのは、若い世代が何も信じられないからと、情報や政治、経済から距離を置いてしまわないか、ということなんです。

こういう時代において、藤代先生から我々世代に向けて何かメッセージをお願いできますか。

藤代さん

いや~、Z世代の皆さん、大変だなと。変化の激しい社会でいろんなものを求められて。

でも、ものすごく真面目にやってると思う。だから、「今頑張ってれば大丈夫だよ」って言っておきたいですね

今こうなっているのは大人が悪い。僕らみたいな大人がZ世代に負荷をかけている。

メディアもそうです。自分たちがやることをやらずに、「リテラシーが!」「若い人たちのリテラシーが問題です!」とか言ってるわけで。

藤代さん

皆さんは真面目で十分一生懸命だと思うし、社会課題にもすごく問題意識をもっているんです。

パワハラとかセクハラもどんどん問題になって、平穏な社会に向かってきている。

だから僕は皆さんには、「頑張ってね」じゃなくて、今のまま丁寧に真面目にやってくれたら世の中が変わっていって、必ずZ世代の人たちが報われるようになる、と言っておきたいですね。

りんたろう

おお~。僕らは丁寧に諦めずに、コツコツやっていけばいいと。

あたたかいメッセージだ…

藤代さん

若い人たちの真面目さを大人が搾取してると思うんです。その1つにリテラシーがあって、若い人たちに責任を押しつけている。

大人側の責任は、真面目な人が報われる社会をきちんとつくっていくことだと思います。

上の人たちってメディアの文句ばっかり言ってるじゃないですか(笑)。でも皆さんはそうじゃなくて、期待もあると思うし。

メディアっていうのが面白い時代になって、みんなで一緒に信頼できるメディアをつくれるといいんじゃないかなと。

りんたろう

お話をうかがって、あまり絶望することはないんだなって思えました。

今のメディアの状況をエンタメとして楽しみつつ、「みんな」の意見に流されないように、コツコツと情報を集めていけばいいですね。

僕は今後メディア側の立場にもなるので、メディア側が変わるというスタンスやメッセージを、若い僕から発信していきたいと思います!

藤代さん

楽しみにしています…!

「メディアを信用できない」と嘆いていても、今の自分にできることはまだまだ少ない。というか、「ユーザーとしてできることはない」とハッキリ言ってもらえると、やるべきことと進む道が明確になった気がしますね。

もしかしたら、今という時代にメディアを見られているって、めちゃくちゃ貴重で面白いことなのでは?

りんたろうの今後を、ぜひ見守ってください!

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