まさかの同窓会対談が実現!
20代に“失敗”なんて存在しない。令和ロマン×サイバーエージェント若手トップが語る「若者の戦い方」
新R25編集部
お笑いネクストブレイク世代の筆頭を走る「令和ロマン」。
松井ケムリさん(左)、髙比良くるまさん(右)
ボケ担当・くるまさんには、お笑いとは別の形で“令和の20代”を引っ張っている、こんな同級生たちがいます。
株式会社サイバーエージェントの若手横断組織「YMCA」で理事を務める上田武蔵さん(右)と、副理事を務める稲富龍太郎さん(左)。
彼らは我々『新R25』も属するサイバーエージェントグループを率いる、名実ともに“20代のトップ社員”と言える存在なんです。
この不思議なご縁にかこつけて、「令和ロマン×YMCA」のスペシャル同窓会対談を敢行!
それぞれの形で若手のトップをひた走る4名が考える、「令和の若者の戦い方」とは?
…と、けっこうマジメな企画を用意していたはずなんですが。
取材が始まるやいなや、「キセキの世代」の男子トークに花が咲いてしまいました…。
「エスパーダって呼ばれてて…」10年ぶりに振り返る、男子高校生の日常
ーー(編集部)くるまさんと上田さん、稲富さんは中高の同級生なんだそうですね。
上田さん
そうなんですよ。本郷中高っていうゴリゴリの男子校で、6年間。
稲富さん
僕と髙比良なんて、ほぼずっとクラス一緒だったもんね。
くるまさん
上田は頭良かったから特進クラスだったけど、俺らは「私立文系クラス」っていう史上最弱のクラスで、そのなかでもぶっちぎりの落ちこぼれで。
俺と稲富を含めた後ろ側のトップのメンバーが「十刃(エスパーダ)」って呼ばれてた。
男子校すぎるエピソード。ちなみに「エスパーダ」とは漫画『BLEACH』に登場する悪霊集団です
稲富さん
授業間の10分休みに、コントとかもやってたよね?
くるまさん
コントって言うな、 ダサいから! こいつが急に『DEATH NOTE』の最後の倉庫のシーンを吹っかけてくるんですよ。
稲富さん
「どうしたんですか、こんなところに集めて」「このなかにキラがいるってことですね…」って、ずーっと2人で再現してました。
「イェーイ」じゃないんですよ
上田さん
…そんな男子高校生がまさか、10年後にこんな対談をすることになるとはね。
ケムリさん
いや、俺はいつかこうなると思ってたよ。
くるまさん
誰だお前。なんで今日来たんだよ!
高校も違えば年齢も1つ上のケムリさん。YMCAのふたりとは「めちゃくちゃ初対面」だそうです
「20代って言うだけでフリになる」令和の若者の“アドバンテージ”
ーー(編集部)今日のテーマは「令和の20代の戦い方」なんですが、みなさんは20代ならではの強みを感じたことはありますか?
ケムリさん
一足先に30歳になった立場から言うと、29と30ではまったく印象が違うなと思いましたね。
ケムリさん
お笑いの世界で、20代で売れた人って本当に少ないんで。
「20代です」って言うだけで「若いね」って、いい感じのフリみたいになってた気がするんですよ。
逆に言うと、お笑いだと30代が一番普通の年齢なんで。あと10年は一番面白くない年齢で過ごさなきゃいけない(笑)。
くるまさん
たしかにね。40歳ならちょっと遅咲きみたいな感じで注目されたりするけど、今ガーンと売れてもねぇ。
ケムリさん
向こう10年は売れなくていいよ、もう。
もう売れちゃってませんか?
稲富さん
それは僕らビジネスパーソンも同じで、20代は“下駄を履かせてもらってる期間”だと捉えてます。
20代と30代が同じように頑張ったとしても、身の丈以上のチャンスをもらえるのは20代だけの特権だと思ってて。
30になった瞬間に“若手”という下駄を脱いで、全員でもう一度、よーいドンで戦うことになる。
だから、20代のうちにどれだけ身の丈以上の経験ができて、どこまで成長できるかどうかで、30歳のスタートラインの高さが変わってくると思うんですよね。
たとえ失敗しても、チャレンジしてるヤツが一番偉い
上田さん
令和ロマンはまさに、20代に刺さるお笑いをやってると思うんだけど…戦略的に同世代を狙ってるの?
くるまさん
いや、戦略とかはなくて。
1年目でいきなり劇場に出て、とにかくファンを増やさないとってときに…僕らができるのは“日常の延長線上”のお笑いで、同世代を笑わせることだけだったんですよ。
好きなアニメとか漫画とか、時事ネタとかネットミームとか。それこそ高校の10分休みのノリと一緒で。
稲富さん
あの伝説の10分休みが活きてるんだ(笑)。
くるまさん
お笑いのセオリー的には邪道で、本当はもっとオリジナリティのある芸風で勝負できたらいいんだろうけど。
でもそんなことより目の前のお客さんを笑わせないといけないから、“男子校ノウハウ”に縋るしかなかったって感じですね。
結果的には「令和ロマン=若者受けすることを言うヤツら」っていうイメージが根付いてきたから、今がすごく楽な状態ではある。
くるまさん
僕らは芸人のなかでも特に“当事者”として、今流行ってるコンテンツを享受してるほうだと思うんですよ。
僕もABEMAの『今日好き』(『今日、好きになりました。』)とか、面白すぎて全部観ちゃって、ネタにもしたし。
YouTubeもTikTokも自然に観てる。彼(ケムリさん)もそうですけど。
ケムリさん
俺はHIKAKINが好き。
なんでみんなピースするの
くるまさん
でもそういう人って芸人にはあんまりいないんですよね。
業界全体としてはやっぱり、TikTokとかYouTubeにはお客さんを取られないようにって対抗意識は多少なりともあるし。
若いヤツを笑わせてるのはなんかシャバいみたいな風潮もあって。その結果、“20代に支持されるお笑い芸人”の枠がガッツリ空いていたという。
稲富さん
当事者の声が一番ユーザーに“響く”っていうのは、サイバーエージェントにいてもすごく感じることかもしれない。
サイバーは、20代がメインユーザーのサービスが多いんですよ。ABEMAなんかはまさにそうだし。
ということは、当事者である僕ら20代が積極的に発言することが、そのままこの会社の競争力になるんじゃないかなと思ってて。
稲富さん
逆に違和感があるのに「それイケてないと思いますよ」って言えないと、結果的には会社の損になっちゃうかもしれない。
だからこそサイバーには、20代の挑戦を歓迎する文化が根付いてるんです。
くるまさん
サイバーって「年功序列」とかはないの?
稲富さん
一切ない。役員・社長含めて、上との距離感がめちゃめちゃ近いよね。
上田さん
うん。社長にはゼルビアのことをほぼ毎日メッセで相談してる。
恋人みたいな頻度で藤田社長とメッセする上田さん。ちなみにゼルビアとは、上田さんが代表取締役COOを務めるサッカーチーム「FC町田ゼルビア」のことです
上田さん
サイバーには、たとえ失敗しても「チャレンジしてるヤツが一番偉い」っていう文化があるんですよ。
失敗しても「ナイスチャレンジだったよね!」ってみんなで言い合える心理的安全性があるし、もっとデッカいことをやってこうぜって夢を語れる人のほうがかっこいい。
ケムリさん
失敗したほうがかっこいいっていうのは、芸人も似たようなところがある気がしますね。
何もしないヤツよりはスベってるヤツのほうが、なんとなく芸人のなかでは評価されてるというか。
くるまさん
お笑いの場合は、“失敗”って概念自体が存在しないよね。
もしスベっても、何年後かの『アメトーーク!』でネタにできるかもしれないし(笑)。「失敗」と思ってしまうことが一番の失敗。
ケムリさん
マジでそうだね。ミルクボーイさんなんか『M-1』優勝まで全部失敗してたし。
くるまさん
なんかずっと「努力してた」みたいな美談になってるけど、違うからね!全部間違ってただけだから!
「それ言っちゃダメ!」
上田さん
まあ、失敗を財産にできるのも20代の特権ってことじゃないですか?
くるまさん
めっちゃまとめるじゃん。さすが特進クラス。
奇跡的にまとまった。この対談に優等生がいてよかった…
20代のトップラインを引き上げる。「YMCA」の運営理念と取り組み
上田さん
「YMCA」も、まさに20代の社員が“当事者意識”を持って、会社の未来を考えられるようになることが目標のひとつなんですよ。
くるまさん
「ワ〜イエムシエ!」でしょ?「C」の向きがどっちかわかんないやつ。
それは関係ないやつ。「Young Man Cyber Agent」を略して「YMCA」だそうです
上田さん
「YMCA」は、サイバーエージェントの20代社員で運営している全社横断の組織です。
上田さん
運営理念はふたつあって…
ひとつは「20代のトップラインを引き上げる」こと。エース級の若手社員が、より成長できるような機会を提供しています。
もうひとつは「サイバーエージェントのカルチャーの創造と継承」。同じ20代と言っても、新卒と僕らでは立ち位置が違うし、所属している子会社や部署、職種によっても違うんですよ。
それぞれの場所で頑張ってる若手に、きちんと「全社のカルチャー」を継承していく機会が必要だよねってことで、8年前に始動しました。
上田さん
今年の運営メンバーは約30人。今は8個ぐらいのプロジェクトを同時並行で進めてます。
くるまさん
「YMCA」のなかで、さらにいろんなプロジェクトをやってるってこと?
上田さん
そう。なかでも大きなのが、稲富が責任者をやってる次世代経営幹部候補育成プログラム「BREAK8」っていうもので。
稲富さん
「BREAK8」は、サイバーエージェントの“若手トップ8人”を決めるプロジェクトなんですよ。
1,000人以上いる「20代の全社員」のなかから、まずは18人を選抜。その18人で半年かけて研修をして、さらに8人を選抜。最終的には社長相手のプレゼンで優勝者を決めます。
ケムリさん
すげえ!もう『M-1』じゃん。
上田さん
広告事業、ゲーム、メディア…それぞれの“エース”が集まってくるから、「BREAK8」は擬似的な市場みたいになるんです。
普通に仕事をしてると、ゲームの人はゲームのことしか知らない、ABEMAの人はABEMAしか知らないってことになりがちだけど…
10年後のサイバーエージェントを牽引していくのは僕らの世代だから、今のうちから自分の部署だけじゃなくて、隣の畑のことも知っておこうっていう意図もある。
ケムリさん
なるほどなぁ。“お山の大将”みたいにならないように、お互いが刺激し合う仕組みになってるんだ。
ーー(編集部)YMCAが始まってから、社内にどんな変化がありましたか?
上田さん
「若手抜擢」のチャンスはすごく増えたかなと思います。
上田さん
今のサイバーエージェントはかなり規模が大きくなってるから、役員のみなさんも活躍している若手を一人ひとり把握しづらくなってしまってたんです。
でもYMCAでは、若手が将来やりたいことを役員に直接プレゼンする機会もあるから、役員がイキのいい若手を覚えていてくれるようになって。
稲富さん
YMCAの取り組みをきっかけに、大きな仕事を任されたメンバーもどんどん増えてるよね。
それもあって、「BREAK8」の参加者は自薦がすごく多いんですよ。今年は100人弱くらい集まったんじゃないかな?
くるまさん
とんでもないな。いい会社すぎる。
「我こそはBREAK8だ!って100人が言ってるんでしょ?」
くるまさん
お笑いは今、どんどん排他的になっちゃってる感覚があるんですよ。
昔は事務所の垣根を越えてライブができる機会とかもあったけど、今はそういうのがなくなってきてる。
だから俺がそういう場所をつくりたいなって、ちょうど最近考えてて。同期とか後輩とか集めて、ちっちゃいYMCAをつくってみたい。
ケムリさん
いいじゃん。やろうよ、YMYS(ヤングマンよしもと)。
まさかの新プロジェクトが始まる…かも?
「イケイケとか意識高いとか、全部無視していい」令和ロマンからサイバー社員にエール!
くるまさん
僕らが学生のころは、サイバーエージェントっていうとイケイケとかギラギラとか、意識高いみたいな偏見はありましたよ、正直。
週刊誌とかにも載ってたじゃん。「合コンしたくない会社1位」みたいな…
上田さん
それはねぇ、今でも納得いってないです。
不名誉な1位
くるまさん
でも、上田とか稲富を見てるとわかるもん。「ああ、本気なんだな」って。
稲富さん
同級生にそう言われるのは素直にうれしいね。
くるまさん
俺らみたいな外野に、イケイケとか意識高いとかやいのやいの言われても、マジで全部無視していいからね。
イタいって言われようとなんだろうと、20代のうちに一生懸命頑張ったことが、こうやって財産になっていくわけだから。
このふたりが若手トップの会社なら、僕は安心ですよ。信じて突き進んだらいいと思う。
エモい…
くるまさん
お笑い業界にも、そろそろ“本気で頑張る”みたいなムードが来る気がするんですよ。
今の「斜めから世の中を見る」みたいなムードを否定するつもりはまったくないけど、そろそろ流れが変わる気がする。
ケムリさん
ほんとそうだね。俺たちも“お笑いBREAK8”になれるように頑張ります!
本気の人が、一番かっこいい。そう信じさせてくれるカルチャーこそが、これからのサイバーエージェントをますます強くしていくのかもしれません。
そして…“お笑いBREAK8”を目指すという(ほんとに?)、令和ロマンの今後の活躍にも注目です!
〈取材・文=石川みく(@newfang298)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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