

仕事や人生のテーマ、見つけられてますか?
「飲食業始めるとまわりは8割方“マジか”。でも…」。MiL杉岡が語る“人生のテーマ”の見つけ方
新R25編集部
あなたの「テーマ」はなんですか?
…いきなり失礼いたしました。
最近、「仕事や人生のテーマを決める」ということの重要性を聞くことが増えました。
自分の人生で何をテーマにするのかを決めることで、強いモチベーションになったり、選択の軸がブレなくなったりする…。
すごく大事だなと思う一方で、「そんなもん、簡単に決められないでしょ」と思ってしまいます。
「自分のテーマ」って、どうやって決めればいいのでしょうか。
今回は、「食」というテーマでキャリアを築いた、ベビー・キッズブランド「カインデスト」を運営する株式会社MiLの杉岡侑也さんに、「テーマの見つけ方」を聞いてみました。
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
不登校→高卒フリーター…。同じ境遇の若者を助けようとした杉岡さんの“ある挫折”

天野
杉岡さん、もともと不登校・高卒というところからキャリアをスタートされたんですね…!

杉岡さん
そうなんですよ。
高校2年生で完全に不登校状態になって…なんとか高校を卒業したんですが、ちょうどリーマンショックのあとで。
「東大生でも就職が難しい」って新聞記事が出るぐらいだったので、当然就職はできず、フリーター生活に突入しました。
「印象に残ってるアルバイトは、冷蔵の工場でナスの袋詰めをする仕事になぜかサンダルで行っちゃって、すごい寒かったことです…」

杉岡さん
「このままじゃマズい」と思って、23歳のときに、途中までウソをついて就職活動を始めたんです。2次面接ぐらいまでは“大学生”ってことにして…

天野
すごい話ですね…

杉岡さん
ある会社に「21世紀枠だぞ」って拾ってもらうことができたんですが、「楽しそうに仕事をしている人が少ない」と気付いて、24歳で、先輩に借りた10万円で起業することにしたんです。
売る商品もサービスもないけど、「俺は世の中を変える!」と思って。

天野
アツい人生だな…。どんな事業を立ち上げたんですか?

杉岡さん
「非大卒者」をメインに、人材と企業をマッチングする事業を立ち上げました。
非大卒者を対象に、“面接対策”はもちろんビジネス知識もレクチャーして、3カ月かけて訓練する。トレーニング型のエージェントです。

天野
「非大卒」という自分の境遇からテーマを見つけて事業化したんですね…!

杉岡さん
でも、想像よりうまくいかなかったんですよ。
“求めてない人”もたくさんいて…

天野
企業にそういう人材を採りたいニーズがなかったんですか?

杉岡さん
いや、“若者たちが”求めてなかったんです。

杉岡さん
変われるかもしれないチャンスを求めてないんです。
「トレーニングの機会があります!」と言っても来ないし、来てもやる気ないし、「当日になって『お腹痛いんで休みます』」とか…
“俺はもっとできるんじゃないか”という期待や怒りが、そもそもない若者が多い。

天野
なるほど………

杉岡さん
約20年生きてきたなかで、“価値観形成”がある程度終わってしまっている。
「自分は社会に必要な存在だ」とか「何だってできるぞ」といった自己肯定感を味わうことがないまま大人になっているんです。
「本人がそういう状態だと、こちらが何を言っても難しくて…」

杉岡さん
“3カ月”とかの小手先では、人を変えることは非常に難しかったんです。
ずっと続いている社会の空気感は、長い時間軸で考えないと、とても変えられないなと。

天野
「文化資本」みたいな言葉や、「東大生の親は年収が高い傾向がある」という話題もよく聞きますもんね…
「これからの時代は、キャリアのテーマに“揺らぎ”があったほうがいい」

天野
その挫折から、なぜ「食」というテーマに?

杉岡さん
そういった想いを抱えていたタイミングで、大企業で若くして過労死してしまう人のニュースがあって…
もともと、「人」を中心にテーマを考えていたなかで、もっと根本的な“心と身体”…つまり「ウェルネス」がテーマとして浮かび上がってきたんです。

杉岡さん
今、「カインデスト」で腕をふるってくれているシェフ・若松の料理を食べて、衝撃を受けたことも大きかったです。
「食べる」という行為はエンタメにもコミュニケーションにもなる。多くの人の「ウェルネス」を実現するには、人が生きるうえで欠かすことのできない「食」なんじゃないかと思い…現在の株式会社MiLを創業しました。
テストマーケティングも兼ねてレストランを開業し、そこから「赤ちゃんからの食育」をテーマに、現在運営しているベビーフードブランド「カインデスト」を立ち上げたんです。

天野
あえてお伺いしたいんですが、「飲食」ってあまりビジネスパーソンがテーマにしないなと思っていて…それに関してはどう思われてますか?

杉岡さん
たしかにそうですよね(笑)。レストランを始めたときは、まわりの経営者たちの8割は「マジか」っていう反応でした。
ITやスタートアップみたいな業界と、飲食産業の隔たりが大きいんですよね…。それは、食のビジネスモデルが複雑で“揺らぎ”が大きいから。
これを入れたらこう返ってくる…という、コンピューターサイエンスの世界とは大きく異なってますよね。

天野
はい。

杉岡さん
でも、これからの時代はキャリアのテーマのなかに“揺らぎ”があったほうが絶対にいいと思うんです。

杉岡さん
AIの進歩した世界では、経済活動の多くがいらなくなり、残るのは“遊び”になってくる。
では遊びって何だろう? と考えると、「自発的で、強制や命令がなく、不確実で緊張感があり、非生産的で利害がなく無意味・無目的」なもの…と言われています。
だから、感受性が高い若いうちから、「イケてるIT企業でロジカルな仕事をしてるから大丈夫です」みたいなキャリアは正直かなり危ないと思ってます(笑)。仕事と言われる時間の多くはなくなり、残るのは遊びしかないんだから。

天野
だいたいのIT企業にいる若者に刺さってしまう発言…

杉岡さん
でもそうですよね?人生で、エクセルを触る回数よりも、モノを食べる回数のほうが100パー多いじゃないですか。
そこに目を向けずに「合理性を突き詰めるような仕事」しかしていないと、主体性のないキャリアになってしまうかもしれない。
これを読んでいるR25世代には「食」をはじめとした、遊び、つまり不確実で揺らぎのある領域をテーマに仕事をしたほうがいい! とオススメしたいですね。
こだわり抜いた“揺らぎ”があるフード。「食」から、豊かな人生の土台をつくる
「カインデスト」で提供しているベビーフードを出していただきました

天野
今の杉岡さんは「赤ちゃんからの食育」をテーマに活動されているんですか?

杉岡さん
そうです。さっき「長い時間軸でないと人は変えられない」とお話しした答えでもあるんですが…
赤ちゃんのうちから「食を自分で選べるようになる力」「長く継続する力」「食に感謝し楽しめる力」に働きかけたいと思っているんです。

天野
若者の“自己肯定感”を、「食」でつくっていくという。

杉岡さん
両親が選択する「食」は確実に子供に受け継がれます。そして人生における価値観につながります。
最近は親御さんもとても忙しい時代。そんななかで、「これが自分たちの愛情の表れだ」と思えるようなサービスや商品設計を「カインデスト」の基本コンセプトにしています。

天野
だいぶ思想が理解できました…。食材はどんなものを使われているんですか?

杉岡さん
たとえば魚は、五島列島で水揚げされた美味しい鮮魚にこだわるなど。
野菜も肉も、自分が家庭で大切な子どもに食べてもらうとしたらどんな人、どんなところから買いたいか?を考え真剣に選んでいます。

天野
それはきっとおいしそう。どういう方々が開発されているんですか?

杉岡さん
シェフはフレンチ一筋20年以上。レストランで研鑽を積んだ人です。
シェフの働き方の多様性を作るためにもチャレンジすべきという意志を持って、一流店で腕を振るってた人間が商品開発を5年間一緒にやってきました。
パティシエは、西麻布にある、本国スペインで星を獲得しているレストラン出身のパティシエが参画してくれています。
食べたい

杉岡さん
うちの商品は、お世辞にも「すべての生産ロットで同じ味が再現できている」とは言えません。
そのときどきで収穫される原材料が違うがゆえに、味やかたちが違うものができている。
でも、それが「食べる」ってことじゃないですか。季節や地域によって異なる、食の複雑さや揺らぎを体感できるような商品になっていますし、私たちはそれに誇りを持っています。

天野
たしかに、ふだん僕らがどの季節でもまったく同じものを食べてるのもおかしなことなのかも…

杉岡さん
ベビーフード、離乳食というと、「手づくりしないといけない」といった社会からのプレッシャーがあると思うんです。
でも、共働きが当たり前になっているR25世代の方々こそ、「カインデスト」を活用しながら、子どもとかけがえのない時間を過ごしてほしいと思いますね。
「食べる力」は「生きる力」そのもの。できる範囲で取り組んでいただけると、次の世代の子どもたちが豊かに生きられる社会につながるんじゃないかと。
いろんなご意見もあると思いますが、興味を持っていただけたり、サービスを応援していただけたりしたらうれしく思います。
「自分のテーマ」が見つかっていないR25世代は、ロジカルな仕事で安心するのではなく“揺らぎ”を取り入れるべき…。
非常に腑に落ちました。
あと、「カインデスト」の食材の説明を聞いているうちに、ふだんの自分の揺らぎのない食生活(同じものばっかり食べている)が恥ずかしくなってきました。
お子さまがいる方は、ぜひ、お子さまの豊かな人生のためにもカインデストを利用した「食育」をはじめてみてください!
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉

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