ビジネスパーソンインタビュー

マクドナルドには、従業員限定の「大学」がある。クルーが“自ら成長できる仕組み”を開発するまで

日本マクドナルド著『日本マクドナルド 「挑戦と変革」の経営』より

マクドナルドには、従業員限定の「大学」がある。クルーが“自ら成長できる仕組み”を開発するまで

新R25編集部

2022/11/28

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「顧客満足という視点で考えると、マクドナルドの主役は間違いなくクルーたちです」

日本マクドナルド株式会社は、著書『日本マクドナルド 「挑戦と変革」の経営 “スマイル”と共に歩んだ50年』において、そのように語っています。

それゆえに、人材育成に対する時間や費用は惜しみなく使い、従業員が通う独自の大学まで設立されているそう。

今回は同書より、マクドナルドが開校した従業員専用の大学について抜粋して紹介。

「スマイル0円」というキャッチコピーの背景にある、“おもてなしの教育”とは…?

この記事はこんな人におすすめ(読了目安:5分)
・マクドナルドの接客の秘訣を知りたい人
・日本マクドナルドの経営に興味がある人

マクドナルドの主役はクルー

現在、日本のマクドナルドに来店されるお客様の数は年間でのべ14億人に達しています。

たくさんのお客様に相対するのは約19万人にもおよぶクルーの皆さんです(マクドナルドでは、一つの船で共に働く「乗組員」にたとえ、アルバイトのことを「クルー」と呼びます)。

人事担当者はこう話します。

「顧客満足という視点で考えると、マクドナルドの主役は間違いなくクルーたちです。クルーたちが顧客満足を意識し、行動することで、マクドナルドに対するお客様の満足度が高まります。そのため、日本マクドナルドは高いモチベーションやプライドをもって仕事に臨むクルーが顧客価値の起点であると考え、クルーのエンゲージメントを高める文化や仕組みをつくってきた。これはまぎれもなくマクドナルド『らしさ』であり、『強み』です。『強み』と『らしさ』がしっかりとオーバーラップしているのです」

クルー一人ひとりの成長を真剣に考え、行動することが人材育成のスタートとなります。

彼ら彼女らがやりがいを感じ、成長できる環境をつくることこそが、マクドナルドの成長の原動力です。

その人材に対するマクドナルドの考え方を如実に表しているのが、ハンバーガー大学です。

日本にハンバーガー大学を開校

華やかな1号店のオープニングから遡ること1カ月。

日本マクドナルドは「日本で一番人材を育てる企業でありたい」という強い思いをビジョンに掲げて、ハンバーガー大学を開校しました。

ハンバーガー大学の機能や役割についてはのちに詳しく解説しますが、米マクドナルドが1961年に開設した、マクドナルドの経営理念からオペレーションに至る知識の習得を目的としたトレーニングセンターと同様の教育機関を、藤田田(ふじた・でん,日本マクドナルドの創業者)の提言により1店開業前に開校したのです。

店を開く前にまず先に人材育成の場をつくる

この決断は、人材育成を何よりも重要視するマクドナルドの哲学をよく表しています。

ハンバーガー大学が設置されたのは、大田区の雑色にあったパン工場内。

そこの食堂をぶち抜き、米マクドナルドで実際に使われていた厨房機器が設置された小さなモデルショップをつくり、アメリカ本国とグアムで実習を受けた3人の従業員がトレーニングにあたりました。

人間が集中できる時間は20分が限度であるとの考えから、20分間のトレーニングビデオが30巻ほどつくられ、従業員の即戦力化も図られました

1号店のオープン1カ月前に入社し、銀座三越店(正式名称:銀座店)の店長を命じられた山迫毅は当時をこう振り返ります。

「とにかく時間がなかったのですが、開店までに体裁を整えないといけないので、厨房の中でのオペレーションだけは精通しようと一生懸命頑張りました。お客様から注文が入ったときに、焼き方がわからないではどうしようもないですからね。」

オープンの1週間前に、山迫は忙しい合間をぬってグアムの直営店舗に研修に出かけています。

日本から一番近いマクドナルドの実店舗で店頭に立ち、お客様と直にやり取りをして、日本のハンバーガー大学では体験できない実務を経験するためです。

研修センターではなく、人材育成の場

1961年、レイ・A・クロック(マクドナルドの創業者)は全日制のトレーニングセンター、通称ハンバーガー大学をイリノイ州シカゴに開校しました。

開校当時は、企業内の研修センターに「大学」という名称が冠されていることを揶揄する声もありましたが、やがてその実態が明らかになると、ハンバーガー大学への評価は一変しました。

そのパッションとカリキュラムの内容が高く評価され、いかにマクドナルドが真剣に人材教育に取り組んでいるかが理解されることとなったのです。

その名称ゆえに、ハンバーガーをつくって売る作業を教える研修センターと誤解されることもありますが、ハンバーガー大学は一人ひとりの成長を加速させ、可能性を広げる人材育成の専門機関です。

マクドナルドで働くすべてのピープルが一人のビジネスパーソンとして学び、成長し続けることができる企業でありたいという思いがベースにあります。

教えている内容は小手先のノウハウなどではありません

最新の教育理論や手法を用いて、生涯にわたって活かせるリーダーシップスキルなどを学ぶ場であり、人材育成とそのシステム開発に取り組んでいます。

店舗で働く社員は皆、ハンバーガー大学でレストランビジネスに関わるカリキュラムを受講し、卒業しなければなりません。

ハンバーガー大学は、マクドナルドの社員すべてが学ぶ最高学府です。

日本の“おもてなしリーダー”を育成

マクドナルドは世界100以上の国と地域で展開していますが、ハンバーガー大学があるのは日本を含めて9カ国だけです。

その中でも、日本のハンバーガー大学は世界で2番目に古い歴史をもっています

企業内大学を設ける企業は増えていますが、マクドナルドのハンバーガー大学は企業内大学の草分け的存在といえるかもしれません。

受講者数は社員、パートタイムの従業員を合わせて年間約1万人。

社員として入社してから店長になるまでには、店舗営業時間内の責任を担う「シフトマネージャー」、そしてピープル・サービス・フードクオリティそれぞれを担う「デパートメントマネージャー」、そして「店長」と段階別の教育カリキュラムが組まれています。

またアルバイトとして入社してからも基本的なオペレーションを習得したあと、「シフトマネージャー」、「デパートメントマネージャー」といった役割に必要なスキルをハンバーガー大学で学びます。

お客様に最高のおもてなしをご提供する“おもてなしリーダー”を育成するカリキュラムもあります。

マクドナルドで働きながら自分のリーダーシップスキルを磨き、チームへの影響力を強化していくための段階的なカリキュラムです。

もちろん、オフィススタッフへのカリキュラムもポジション別に用意されています。

役割に応じて自身の成長のために学ぶことができる環境が整備されているからこそ、“働くことで成長を感じられる”とマクドナルドがいわれるゆえんなのです。

ハンバーガー大学で大切にしている三つの考え方がオプティミズムエナジーコンフィデンスです。

周りの人たち全員を元気にするオプティミズム、人を奮い立たせるエナジー、人の可能性を広げるコンフィデンスの三つを軸に、体験型の実践的なアクティブラーニングを取り入れています。

参加しているうちに楽しみながら必要なスキルに気づき、習得できる教育を提供しているのです。

自分の頭で考えずに、ただ知識やスキルをインプットするだけでは、パフォーマンスのアップにはつながりません。

しかし、相手がどう思い、どう反応するか、それに対して自分はどうすべきなのかという答えや感想を常に求められるうちに、受講者は今何が必要なのか、どんなことが大切なのか、何が求められているのかに気づき始めます。

この「自然な気づき」があればモチベーションはおのずと上がり、自らこうなりたいと思うようになり、自分の能力を最大限に発揮できるようになります。

それがブランドへのロイヤルティの醸成につながるのです。

スマイルとともに歩んだ50年に密着した一冊

現在は全国に約2,900店舗を運営している日本マクドナルド株式会社。

おいしさと笑顔を地域の皆様にお届けすること」を存在意義に掲げているほど、“笑顔”を大切にされています。

同書では日本マクドナルド初の公式ビジネス書として、笑顔にこだわり続ける意味やその裏側にあった危機についても赤裸々に公開。

トップであり続ける日本マクドナルドの成長への道のりを覗いてみてはいかがでしょうか。

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