ビジネスパーソンインタビュー
成田悠輔著『22世紀の民主主義』より
必要なのは、若者の投票ではなく「革命」。政治停滞を覆す“独立国家”のレシピ
新R25編集部
22世紀の民主主義今世紀に入ってからの20年強の経済を見ると、民主主義的な国ほど、経済成長が低迷しつづけている。
選挙や政治、そして民主主義というゲームのルール自体をどう作り変えるか考えることが大事だ。ルールを変えること、つまりちょっとした革命である。
昼は日本で半熟仮想株式会社代表、夜はアメリカでイェール大学助教授として活躍する成田悠輔さんはこう言います。
まだまだ働き盛りのR25世代。社会や経済を好転させるための動きとして、どのような可能性が考えられるのでしょうか?
“民主主義のルールを変える革命”の構想が書かれた成田さん初の著書「22世紀の民主主義」(SB新書)より、似通った価値観や資産の人々でつくる“独立国家”のレシピについて一部抜粋してお届けします。
(読了目安:5分)
必要なのは、政治参加じゃなく“革命”
若者が選挙に行って世代交代を促し、政治の目を未来へと差し向けさせよう。
選挙のたびにそんな話を聞く。
だが、断言する。
若者が選挙に行って「政治参加」したくらいでは何も変わらない。
今の日本人の平均年齢は48歳くらいで、30歳未満の人口は全体の26%。
全有権者に占める30歳未満の有権者の割合は13.1%。
21年の衆議院選挙における全投票者に占める30歳未満の投票者の割合にいたっては8.6%でしかない。
若者は超超マイノリティである。
もっと言えば、今の日本の政治や社会は、若者の政治参加や選挙に行くといった生ぬるい行動で変わるような、そんな甘っちょろい状況にない。
数十年びくともしない慢性の停滞と危機に陥っており、それをひっくり返すのは錆びついて沈みゆく昭和の豪華客船を水中から引き揚げるような大事業だ。
具体的には、若者しか投票・立候補できない選挙区を作り出すとか、若者が反乱を起こして一定以上の年齢の人から(被)選挙権を奪い取るといった革命である。
あるいは、この国を諦めた若者が新しい独立国を建設する。
そんな出来損ないの小説のような稲妻が炸裂しないと、日本の政治や社会を覆う雲が晴れることはない。
革命を100とすれば、選挙に行くとか国会議員になるというのは、1とか5とかの焼け石に水程度。
中途半端なガス抜きで問題をぼやけさせるくらいなら、部屋でカフェラテでも飲みながらゲームでもやっている方が楽しいし、コスパもいいんじゃないかと思う。
革命か、ラテか?
究極の選択を助けるマニュアルがこの本である。
独立国家のレシピ① ゼロから作る
似通った価値観や資産を持つ同じ「階級」の人々だけが出入りできる居住地を作る試みが一部の国では増えている。
ゲイテッド・コミュニティだ。
ゲイテッド・コミュニティ内で完結した独自の税制を整え、警備や監視、保育・教育などを自前で準備することも多い。
こうなってくると準独立都市の様相を呈してくる。
さらに古くエモい逸話もある。
幻の独立国家「ローズ島」だ。
ローズ島は約20メートル四方の金属製の人工小島で、夢みがちな技師・GiorgioRosaと同志の数人のチームがイタリアの沖合ギリギリ公海になったあたりに作り上げた。
1968年5月のことだ。
貧弱なバーとクラブを兼ね備えたローズ島は、すぐに変わり種の観光スポットとして注目を集める。
そして建設者自身を大統領としてローズ島は勝手に独立を宣言、市民権やパスポートの発行などを手がけはじめる。
独立国家としての承認をもらおうと国連にも掛け合いはじめる。
だが、イタリア政府も黙っていなかった。
特に問題になったのは、公海上にあるローズ島にイタリアの主権が及ぶかどうかだ。
この点がイタリアの最高裁判所で争われ、翌年には政府側が勝訴した。
この判決を受け、ローズ島はイタリア海軍により爆破され、建設からわずか半年あまりの1969年2月に消滅した。
微小国家の最も極端でちょっと心躍る形態として、ローズ島は海上独立国家構想などにもインスピレーションを与えている。
さらに有名な海上微小国家として、1967年にイギリスの沖合に出現したシーランド公国もある。
既存国家に爆破されたローズ島と対照的に、シーランド公国は今でも現存して海上に浮かぶ。
独立国家のレシピ② すでにあるものを乗っ取る
ゼロから新たに作るのではなく、すでにある国家や自治体を再利用する手もある。
フランス革命も地方議会の奪取からはじまったことで有名だ。
現代でも、どこかの自治体に大量移住して住民の過半数を握れば、その自治体の選挙を支配できる。
千代田区の区長選ですら最新の当選者(2021年)の得票数は9534票である。
一万人を移住させられれば首都の重要区の区長選ですらジャックできる。
一万人が選挙遊牧民として団結すれば、各地の首長選を順に乗っ取って最年少首長を大量に誕生させることさえできる。
マイノリティとマジョリティの逆転も視野に入ってくる。
国全体を見れば超マイノリティでしかありえない若者も、大挙して特定の自治体に押しかければ、その場所ではマジョリティになれる。
マイノリティとマジョリティは局所的に逆転できる。
そんな自治体乗っ取りの先駆例が1980年代に存在した。
インド発で当時世界を席巻していた新興宗教指導者バグワン・シュリ・ラジニーシだ。
トラブルで祖国を追われた彼らは、アメリカはオレゴン州の片田舎にある町に集団移住した。
更地を開拓して住みつきはじめた彼らは、そこから驚きの戦略をとる。
無料バスを全国各地に派遣し、「生活拠点を提供する」という誘惑で大量のホームレスたちを移住させる。
そして町の住民の過半数を握ったのだ。
この試みも新興宗教団体も、結末は絵に描いたような悲劇に終わるのだが…。
海上国家・デジタル国家に逃げる未来は遠くない
独立国家をゼロから作ることもできる。
既存の自治体や国を乗っ取ったり、それに寄生しながら準自治区を育てることもできる。
ブロックチェーン技術に支えられたWeb3の勃興で、新しい政治経済制度(選挙・合意の仕組みや通貨・証券の仕組み)をデザインするオンラインコミュニティも雨後の筍状態である。
お気に入りの政治制度を実験する海上国家やデジタル国家に資産家たちが逃げ出す未来も遠くないかもしれない。
その視線の先には公海が、海底が、宇宙が、そしてメタバースが見えている。
読めば社会の見え方が変わる一冊
同書は、歴史で起きたことや今世界で起きていること、これからのトレンドなど、あらゆるデータをもとに“今とこれからの民主主義”を考える一冊です。
達観した成田さんの構想を読めば、きっと社会の見え方が変わって視野が広がるはず。
成田さんが、西野亮廣さん・箕輪厚介さん・尾原和啓さんと“ワンマイル(=身近)な未来”を語り尽くす『ワンマイル未来予測』も、チェックしてみてください!
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