ビジネスパーソンインタビュー
菅原健一著『小さく分けて考える』より
目標は“悲観と楽観”で考えよう。組織マネジメントで使える「分解思考」のケーススタディ
新R25編集部
今ある仕事を精一杯やっているはずなのに、飛び抜けた成果を出すことができていない。
そんな頑張っているのに報われていない方、もしかしたら“思考法”が足りてないかもしれません。
株式会社Moonshotの代表取締役で、企業にアドバイスを行っている菅原健一さんは、数多くの企業を相手に「壁打ち」をおこなっています。
菅原さんによると、多くの顧客に関わるうちに見えてきた、うまくいくプロジェクトの共通点があるそうです。
今回は『小さく分けて考える』にある「目標設計」に関するケーススタディをもとに、“分解思考”について理解を深めてみましょう!
「目標を立てるのが苦手。計画通りにうまくいったことがない」(Bさん)
悲観と楽観に分けるというのは、計画を立てる時に有効な分解です。
計画を立てることを、「客数が1万人に達する」「売上10億円に達する」など、一つの数字を決めることだと認識している人が少なくありません。
しかし現実には、計画した通りの数字をぴったりに達成するケースは、ほとんど皆無です。
だから、計画を立てる時には数字を決め打ちするのではなく、悲観と楽観の2パターンくらいに分けておくとよいでしょう。
たとえば、客数1万人×客単価10万円で10億円の売上を計画する場合、悲観的に考えると客数は8000人どまりになるかもしれませんし、楽観的に考えれば1万2000人まで伸びるかもしれません。
客単価も、悲観的に考えれば8万円、楽観的に考えれば12万円になる可能性があります。
「悲観×悲観」のシナリオでは8000人×8万円=6億4000万円。
10億円の売上目標からかなり遠ざかる計算になります。
一方で、「楽観×楽観」が実現すれば1万2000人×12万円=14億4000万円。
10億円を大きく超えることになります。
このくらいの幅を持たせて計画を立てることが重要です。
また、これと期間を組み合わせて、期間ごとに悲観的なシナリオと楽観的なシナリオを考えておけば、思ったようにいかなかった時に、次の策が打てるようになります。
繰り返しますが、計画は一つの数字をピッタリ言い当てるゲームではありません。
計画で大事なのは、「大体この辺だな」というゾーンを設定したうえで、さらによい結果を出そうと努力することなのです。
小さく分けて考える
「たくさんやることがあって、優先順位がつけられない……」(原田くん)
アイデアに優先順位をつける際には、「効果が大きい」「効果が小さい」「時間がかからない」「時間がかかる」の4象限に分類する方法が効果的です。
小さく分けて考える
最優先にすべきは「効果が大きくてすぐにできるもの」です。
逆に「効果が小さくて時間がかかるもの」は、あえて取り組まなくてもよいと判断できます。
悩みどころは「効果が大きいけれども、時間がかかるもの」に分類されるアイデアです。
この種のアイデアは、意識的に取り組まない限り、いつまでも後回しにされがちだからです。
たとえば、通販をする時に「新しい決済手段を導入するには半年はかかります」と言われると、後で取り組もうという心理が働きます。
しかし、冷静に考えれば決済手段の多様化は避けて通れない道です。
ずっと銀行振込だけというわけにはいかないので、いち早く手をつけるべきです。
アイデアを①「効果が大きくて時間がかからない」、②「効果が大きくて時間がかかる」、③「効果が小さくて時間がかからない」、④「効果が小さくて時間がかかる」の4つに分類したうえで、期間に分解していきます。
たとえば、1年を四半期で分解する場合、「効果が大きくて時間がかかる」項目は第1四半期からはじめなければなりません。
また、「効果が大きくて時間がかからない」項目も早期に着手するのが妥当です。
それらの効果も見つつ、「効果が小さくて時間がかからない」「効果が小さくて時間がかかる」項目は第2四半期以降で取り組むとよいでしょう。
もしくは「やらない」という判断もあると思います。
この方法は、自分の仕事の整理にも役立ちます。
「やりたいことがあっても、やる時間がない」
これは多くの人に共通する「あるある」の悩みです。
僕はいろんな人の相談に乗る機会があるのですが、理想の状態になるための要素を分解して整理してあげると、みんな「わあ、すごい! やることが見えてきました!」とテンションが上がります。
でも、最後に「やれる時間はある?」と聞くと「それなんですよ…」とうつむいてしまう人が大半です。
せっかく整理したのに、それで終わってしまうパターンが少なくないのです。
「あれをやらなきゃ」「これをやらなきゃ」と毎日忙しくしている人は、まず分解思考で自分の仕事を整理しましょう。
分解して、いらない仕事はどんどん捨てていくのです。
いらない仕事を捨てるにあたっては、先ほどのように「時間がかかる─時間がかからない」「効果が大きい─効果が小さい」でマトリクス図を作って、手持ちの仕事を4象限に分解します。
もしくは自動化を進めます。
職場のチームで行なえば、チーム全体の仕事を見直せます。
たとえば、毎日のレポート業務は時間がかかるわりに効果がほとんどないという場合、「これ、いらなくないですか? やめましょうよ」と提案できます。
時間がかからず効果がある仕事は、継続しましょう。
時間がかかっているけれど効果がある仕事は、時間がかからないようにする方法を話し合うのもよいでしょう。
もちろん、効果がない仕事を効果がある仕事に変える方向もあります。
効果のあるなしを判断する時、「何のためにやっているのか」という視点を持つことも重要です。
会社では、最初は目的があって取り組んでいたはずの仕事が、時とともに形骸化していくケースがよくあります。
「これって何のためにやっているんだっけ?」と見直していくと、実は「この資料はもう1年くらい誰も見ていない」「そもそも法律が変わったから、この対応はいらなくなっている」といったことに気づきます。
意味がない仕事はどんどんやめて、理想の状態を実現するためのアクションを増やしましょう。
「何でうちのチームはうまくいかないの?」(山田さん)
僕は「原因を分解する」を「組織的な問題を見つける」と近いニュアンスで捉えています。
山田さんのチームは、売上目標10億円に対して10%未達という問題を抱えています。
その問題の根本には、組織的な原因があります。
たとえば「短期的な施策を思いつきで実行してしまう傾向がある」とか「目の前のデータばかり追いかけてしまう」といった組織や人の考え方の問題です。
こういった問題を見つけ出し、解決しなければなりません。
目標を達成している企業は、組織があるべき姿になっているからこそうまくいっているわけです。
組織が正しく機能すれば、目標達成を阻む問題が生まれる余地はなくなります。
逆にいえば、あるべき姿になっていないから目標を達成できないし、的外れな施策に走ってしまいます。
だから、組織的な問題を分解することも、目標達成にとって重要なプロセスなのです。
原因を分解する時には、目標を達成している企業やチームと、自社・自分の担当するチームを比較していく方法が有効です。
ロールモデルを見つけ、その企業・部署が行なっていることを分解していけば、自社や自分のチームの課題も浮き彫りになります。
たとえば、いつも目標を達成している隣のチームを見ると、
・最初の戦略が明確
・チームの仲がいい
・新しいアイデアに挑戦的
という要素が見つかったとします。
それに対し、現在の自分のチームの状況を書いていくと、手薄になっている部分が見つかるかもしれません。
小さく分けて考える
これは「目標にしている他の企業」と比べる時にも活用できます。
細かく比較していけば、「うちの会社はマーケティングとセールスが機能していない」「商品開発部がお客さんのレポートをまったく参照していない」といった課題が明らかになるかもしれません。
とはいえ、単純に「商品開発部に課題がある」などと主張すると、社内で大きな反発を受ける可能性があります。
「それは、あなたが他部署に責任を押しつけようとしているだけでしょ」
「自分の部署を棚に上げて、何を言っているんだ」
などと反論されかねません。
しかし、ロールモデル企業を分解したうえで発見した課題を提示すれば、社内を説得する有力な材料となるはずです。
「分解思考」でより人生の解像度を上げる
どんな仕事も目的・目標を「分解」すれば乗り越えられる。
そのすべては“解像度を高めること”にあると、菅原さんは言います。
分解思考は、仕事以外にも自分の人生を考えるときにも必ず役立つもの。
『小さく分けて考える』を読んで、自分のキャリアを振り返る機会にもぜひ役立ててみてください!
ビジネスパーソンインタビュー
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