ビジネスパーソンインタビュー

大谷翔平を輝かせた“キーパーソン”の仕事術。組織で天才を活かす3つのマネジメント法とは?

ジェフ・フレッチャー著『SHOーTIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』より

大谷翔平を輝かせた“キーパーソン”の仕事術。組織で天才を活かす3つのマネジメント法とは?

新R25編集部

2022/07/30

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MLB(メジャーリーグベースボール)のMVP選手にも輝き、2022シーズンも投手・打者として二刀流で活躍する大谷翔平選手

そんな彼のメジャーで1460日間をエンゼルスの番記者のジェフ・フレッチャー氏が追いかけた新著『SHOーTIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』(徳間書店)が発売されました。

彼が日本で野球少年として生まれ、海外で活躍する現在までの、圧倒的な活躍の秘密に迫った同書。大谷翔平のプロとしての圧倒的な成果はどのように生まれたのでしょうか?

同書より、周囲を巻き込むマインド面での学びや、120年に一度の天才を輝かせた野球界のキーパーソン達の努力から学べるマネジメントの秘訣など、抜粋してお届けしていきます。

①天才を招へいするカギは「熱量を伝える」

代理人バレロはメジャーの30球団すべてに質問状を送り付け、大谷が球団選びをしやすいようにした。

大谷を投手と打者のそれぞれでどのように評価しているのか。今後の選手としての育成計画はどうなのか。医療体制はどうなっているか。選手として活躍するための環境と施設をどのように整えているか。どのように大谷が球団の一員として馴染んでいけるようにしていくのか。そして、なぜ大谷にとってあなたの球団が望ましい場所なのか。

ロサンゼルス・エンゼルスのGM、ビリー・エップラーは準備万端だった。

プレゼンテーションを要求してきた際、エンゼルスのフロントは「全員総出」 状態で、必要な資料をあっという間につくり上げた。エップラーとスタッフ一同は数えきれないほどの文書をやりとりし、書き直しや加筆修正を繰り返した。

大谷がエンゼルスを選んだという一報が世界に広まるやいなや、次に出てきたのは「なぜ?」 という疑問だった。 その後、数日、数週間、数カ月にわたり、この問いに対する答えはあいまいなままだった。

当初の声明によると、大谷がこの球団を選んだ理由はこうだった。

「エンゼルスとの強いつながりを本人が感じて、メジャーリーグで今後目標を達成していくうえでいちばん手助けになりそうな組織だったから」

「ショウヘイの決断の背後に何があったか、いろいろな憶測が飛び交っているが、彼にとっていちばん重要だったのは市場の大きさでもなく、時差でもなく、リーグでもなく、エンゼルスとの間に感じた絆だった。キャリアの中で次のゴールを目指すという点で、最高の環境だとじたのが理由ということだ」

次の日、エンゼルスはスタジアムのすぐ外で記者会見を開き、大谷が高座に腰かけ、自身の言葉で、なぜ今回の決断に至ったかについて語り始めた。

「説明するのは難しいのですが、エンゼルスなら、何かが性に合う気がしたんです......。細かく切り分けていくと、沢山の要素が絡んでくるわけですが、僕はただエンゼルスでやってみたいと思った。この思いは言葉では説明しきれないものです」

大谷が今回のような大きな決断を迫られたのは、2012年にファイターズとの契約とメジャー行きのどちらかを選ばなければならなかった18歳以来のことだった。

あの当時も、ファイターズを選んだのは「フィーリングだ」と語っていた。ファイターズとの間に何か縁を感じ、お互いのためになると心で感じたのだろう。あの決断が正しかったことはすでに証明されていた。

エップラーの果たした役割は非常に大きかった。

42歳だったエップラーは、24歳のときにスカウト業に入ってからずっと球界にいるが、いろいろな人の声に傾聴する姿勢と外部の名案を積極的に導入する姿勢を貫き、ここまでの地位に登りつめてきた。

エンゼルスでベースボールオペレーションディレクターを務めたジャスティン・ホリアンダーが振り返る。

「ビリーは、とにかく熱量がすごいんだ」「ものすごくポジティブな性格でね。器が大きい。いつも誰かがGMのオフィスに入り浸っているくらいさ。すごく親しみやすくて、誰とでも仲良くなれる人だよ」

それがエップラーという男──親しみやすく、器が大きく、オープンマインドだ。だから、大谷を納得させてエンゼルスに呼び込むことができたのだ。

大谷の選択がニュースとなったあと、とある代理人が言ったとおりだ。

「エップラーの功績だよ。100%間違いない。オオタニが高校にいたころからずっと追っていて、間違いなくプレゼンテーションで感嘆させたはずだ。この功績は大きいよ」

エップラーはそんな称賛の声に嬉しさを隠さないが、あくまでも自分ではなく、エンゼルスが大谷を呼び込んだのだと強調している。

「ここには、家族のような居心地のよさがあると感じてくれたんだ。そして、今後、何年もそんな家族の一員になりたいと思ってくれたんだよ」

②天才のサポートは「役割の枠にとらわれない」パートナーに

大谷がアメリカメディアと直接話すときには、専属通訳の水原一平の助けを借りている。

水原の存在は、大谷の物語のうえで重要な意味をもつことになる。

彼の任務は、大谷のインタビュー対応という枠をはるかに超えているからだ。エンゼルスが大谷の特殊な才能をいかに活かすかを模索する際に、水原こそがコーチ、トレーナー、球団に大谷の現状を正確に伝えられる存在なのだ。

また、スカウティングレポートの内容を大谷に理解させ、マウンド上で大谷と捕手がゲームプランどおりに進めていく際の最重要人物でもある。

水原は大谷のキャッチボールの相手を務めることもあったが、それはほかの投手陣たちが別の練習に入っていて、大谷のルーティンを守るのに必要だったからだ。

ときにはオフシーズンのブルペンで、水原が大谷の捕手を務めることすらあった。水原はスプリングトレーニングのあらゆる場所に顔を出し、大谷が必要とする場所にはどこへでも姿を現した。

③天才をフルで活かすなら「対話を怠らず、本人を信じること」

エンゼルスが新型コロナウイルスのせいで短縮された2020年シーズンを終え、エップラーのGM就任以来、5年連続となる負け越しが決まり、エンゼルスは彼を解任した。

エップラーの後任探しは6週間におよび、最終的にチームが選んだのは、アトランタ・ブレーブスのアシスタントGMだったペリー・ミナシアン。

ミナシアンは言った。

「私が選手とふれた経験では、制限自体がよくないものだと思っている。特にメジャーリーガーに対しては、だ。だって、メジャーにたどり着くこと自体が偉業なのだからね」「肉体的に恵まれているだけでは不十分で、メンタルも強くないとここまではこられない。私の見るところ、ショウヘイはまさにそんな一人だ」

エンゼルスの大谷起用法を大きく変えようとしたのだ。

就任後の数週間、ミナシアンGMはマドン監督に対して、大谷の起用制限を緩めてみてはどうかと提言した。そして、ミナシアンは大谷の代理人、ネズ・バレロとも対話した。

大谷翔平は、2021年のスプリングトレーニング入りしてすぐに大きな変化を起こした。思考回路も新しくなり、エンゼルスの大谷起用計画も大きく更新されていた。

大谷はこう話した。

「なんというか、2018年の気分を取り戻していますね。重圧を感じるというよりも、とにかく気分よく楽しみたい。それで、与えられた仕事を毎回きっちりとこなしていくということ。そうしてジョー(監督)に可能な限り沢山使ってもらいたいなと思います」

これまでの3年間、エンゼルスは大谷を繊細で脺弱な工芸品のような扱いをしていたが、それを責めることは誰にもできない。エンゼルスは、大谷の1年目の計画表に縛られていた。

本人もシーズン開幕後2週間で「慎重すぎる」という意見を口にしていたが、それでもチームの方針は尊重していた。

メジャーリーグで、これほど高いレベルで投手と打者を兼任する選手が登場したのは1世紀ぶりなのだから。1918年と1919年にベーブ・ルースがやったときでさえ、肉体的負担が大きすぎると本人がこぼしていたのだ。

対照的に、大谷は、二刀流を極めるためにメジャーへやってきたのであり、負担が大きくなりすぎないようエンゼルスが配慮するのは当然だった。

大谷の起用法に関して、エンゼルスで最終決定を下していたのはビリー・エップラーGMだった。日本にいたころの大谷の実績に基づいて、試合の出場時間に制限をかけることが必要だと考えていた。

「僕は、もっと沢山試合に出たいです」「でもそれでダメなら、そういうものです。僕は、首脳陣に従わないといけないですから」

「ジョーに話してみたら、1000%乗ってくれた。この案を気に入ってくれたんだ。それでネズもこの案を気に入ってくれて、あちらも似たような考え方をしていたようだ」

大谷は、もっと出番が増えてもいいように準備万端だった。ドライブライン入門の主目的の一つは、テクノロジーを活用して自身の疲労数値を研究し、自分が本当に休むべきとき、そして休まなくていいときを見極めることだった。

こういう情報こそが、大谷が労働量を増やしても自身の健康状態やパフォーマンスを落とさないようにするうえで死活的に重要だったのだ。

大谷が自身の状態についてすべて正直に話す場合にこの計画がうまくいく。日本にいたころの大谷の監督は、彼が疲れを自分からは絶対に認めたがらないタイプだと繰り返していた。

バレロによると、この点は2018年以来、大きく変わったという。

「この3年間を乗り越えてきて、ショウヘイもいつ何をすべきか、つねに正直であるべきだと悟ってきたよ」

2021年春は、大谷にとって新時代の幕開けとなるはず。あらゆる制限が取り除かれ、マドン監督自身が何度も繰り返していた。

「あいつにコレはやれ、コレはやるな、などと指図はしたくない。それはGMも同じだ」「まずは様子を見よう、話し合おう。意思疎通を図り、できるだけ試合に出そう。日本では成功できたのだから。出せる限り試合に出して、結果がどうなるかを見て判断すればいいので、やる前から偏見とか予断をもって起用法を決めるべきではない

世界レベルの一流として、突き抜ける理由

オールスターゲームに2年連続で選出され、2022シーズンもより一層活躍することが期待されている大谷選手。

彼の野球選手としてパフォーマンスの秘密に迫った同書ですが、ビジネスパーソンも共通する「一流とは何か?」を考えさせられるような内容が詰まっています。

個人でも組織でも突き抜けた成果を出すために必要なエッセンスが感じ取れますので、ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

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