

深井龍之介著『世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する 歴史思考』より
65歳で全財産を失った「カーネル・サンダース」が世界的チェーン店を生み出せた理由
新R25編集部
「コロナの流行」や「価値観の変化」など、前例のない悩みと向き合い決断を迫られるビジネスパーソン。
しかし「大半の悩みは古代の人々が考え尽くしている」と、歴史事業を展開する株式会社COTEN代表・深井龍之介さんはいいます。
歴史をこよなく愛する深井さん。いま多くのビジネスパーソンや経営者が夢中になって聴いているポッドキャスト「歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)」では、ユニークかつディープなエピソードを紹介して歴史の“小難しいイメージ”を覆しています。
深井さん初の著書『世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する 歴史思考』より、読めばきっと悩みが軽くなる「ブッとんだ偉人エピソード」を一部抜粋してお届けします。

遅咲きの成功者「カーネル・サンダース」
僕はベンチャー畑でビジネスに関わってきました。
その世界でいつも感じているのが、「成功しなければいけない」という一種の強迫観念です。
それだけならまだしも、多くの場合、そこに「若いうちに」というおまけもつきます。
若くして成功すること。
どうやらそれが、現代社会での絶対的な価値になっているようなのです。
何をもって「成功」と呼ぶかには個人差があります。
しかし、現代人から見て分かりやすく成功者と呼べるのがカーネル・サンダース(1890年-1980年)でしょう。
世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する 歴史思考
イラスト/iziz
そう、あのケンタッキーフライドチキンの創業者です。
日本中、いや世界中にあるフライドチキンのチェーン店です。
マジで世界中にあります。
どのくらい世界中にあるかというと、2021年時点で世界百数十カ国に約2万3000店舗があるそうです。
そんなビジネスをつくり上げたカーネル・サンダースは、間違いなく大成功者でしょう。

予想外の社会変化によって65歳で全財産を失ったサンダース
第二次世界大戦後のアメリカでは高速道路の建設が盛んになりました。
サンダースカフェ(サンダースが運営していた、ガソリンスタンドの隣で軽食がとれるカフェ)があったコービンの外れにも高速道路が完成します。
すると、サンダースの店の前を通る国道の利用者が高速道路に流れ、客足が一気に遠のきました。
売り上げは落ちていき、ついには全盛期の半分以下になってしまいました。
店は大赤字です。
不屈のサンダースはこのとき、人生で初めて白旗をかかげます。
店を畳んで引退することにするんです。
無理もありませんが、このときばかりはサンダースらしくなく、決断までに時間がかかったようです。
それが致命傷になりました。
迷っているうちに負債が溜まっていき、最終的には店を売っても手元にお金が残らないくらいのダメージを負ってしまったのです。
その上、まじめに払ってきた年金の支給額は家族が暮らしていけないほど微々たるものでした。
65歳のサンダースは全財産を失いました。
普通ならあきらめますよね。
しかし、彼はカーネル・サンダース。
ここから、サンダース最後の挑戦が始まります。

「売るものがない? ならば…」
サンダースは考えます。
今の俺の手持ちの武器は何だ?
金はないから、店を作ることはもうできない。
体はヨボヨボ。
家族と中古車1台しかない老いぼれに何ができる?
そうだ、自分にはフライドチキンがあるじゃないか。
最高のフライドチキンの作り方を知っているじゃないか。
フライドチキンの店を出す体力は、金銭的にも年齢的にもありません。
でも、彼の頭の中にはレシピが入っています。
子供のころにお母さんに習ったレシピが。
サンダースはそれを売ろうと考えました。
今でいうフランチャイズです。
決めたら早いサンダースは、ピート・ハーマンというレストラン経営者の友人の家に押しかけて、「外にメシでも行こうぜ」というハーマンを無理やり座らせ、フライドチキンを作り始めます。
サンダースが工夫して開発したレシピを用いたフライドチキンは火力の劣る一般家庭の台所で作れる料理ではありませんから、調理にはものすごく時間がかかります。
イライラしながら待っていたハーマンと彼の家族ですが、出てきたフライドチキンを一口食べた途端、大感激。
それはそうですよね。
ただでさえおいしいのに、深夜まで待たされてペコペコのお腹で食べたら、言葉を失うでしょう。
サンダースからすると、狙い通り。
ハーマンにビジネスの話をもちかけます。
このレシピを使って商売をしないか?
前例のないビジネスにハーマンも少し迷ったようですが、少し経って決断しました。
「乗った。自分がチキンを1ピース売るたびに4セント払う。これでどうだい?」
サンダースはもちろん承諾。
こうしてフランチャイズ1号店がオープンしました。
ハーマンはこうも言ったようです。
「ここはケンタッキー。だから、これは『ケンタッキーフライドチキン』だ!」

若いうちから「成功」「失敗」を語るのは不毛
このとんでもない男の生涯から、僕たちは何を読み取ることができるでしょうか。
彼の生涯に社会の変化が大きな影響を与えている点は見逃せません。
しかし彼はあきらめず、ひたすらトライ&エラーを続けます。
するとあるとき、ふと、今までの人生で張ってきた伏線が一気に回収され、幼少時からなじんできた料理がきっかけとなって、人生がクライマックスを迎える。
彼の場合、それは65歳を過ぎてからのことでした。
僕はいつも思うのですが、30代や40代くらいで「成功した」「失敗した」と言うのはやめましょう。
不毛です。
そもそも何をもって成功というのか難しいですし、それは別にしても、せめて80歳くらいまでは待ちましょう。
人生、何がどうなるかなんて分かりません。
サンダースに限らず、歴史上の偉人は多くが遅咲きです。
ガンディーや孔子のことを思い出してください。
彼らも遅咲きでした。
それだけではありません。
劉邦(りゅうほう)も、桓武天皇も、伊能忠敬も、ヘンリー・フォードも、ネルソン・マンデラも、シルヴェスター・スタローンも、みな遅咲きです。
なぜ偉人は遅咲きが多いのでしょうか?
理由の一つは、人は歳を取るほどしょぼくれていくように思われがちですが、実際は逆にどんどん可能性が広がり、加速していくからではないでしょうか。
だから、まだ若いうちから絶望したり有頂天になるのはやめましょう。
あなたの人生はまだ、ちまちまと伏線を張っている段階にすぎません。
クライマックスはまだまだ、ずっと先なんです。
人間味あふれる“偉人エピソード”で新しい視点がひらける
世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する 歴史思考この本には、覚えるのが大変な年号はありません。
そうではなく、歴史上の偉人たちのおもしろいエピソードがたくさん詰まっています。
みなさんはそれを、僕らのポッドキャストを聞くように、楽しんで読んでくれればそれでOKです。
同書に登場する歴史上の偉人たちは、ソリッドでありながら人間くさい魅力を持ち合わせていて、必死で暗記した偉人たちとは少し見え方が違います。
偉人たちの新たな一面に自己投影できるので、読み終わりには自分を取り巻くモヤモヤがなんでもなく思えるはず。
未知の悩みに直面したときや新しいモノの見方・考え方を得たいとき、歴史を面白く学び直したいときに、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。

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