ビジネスパーソンインタビュー
「ずっと足りないのは『賞レースで勝つことです』と答えてました」
先輩の「そのままでいい」を誤解してた。“賞レース”に囚われていたニューヨークが変わるまで
新R25編集部
「ネクストブレイク芸人」として長く名前を挙げられていたニューヨーク。
いまや「NEWニューヨーク」や「ニューヨーク恋愛市場」などの冠番組を持つ人気のおふたりですが、少し前までは先輩芸人に「いつか売れる」と評価されてるのに「キングオブコント」や「M-1」で結果を出せずモヤモヤしていたそう。
そこで今回は、12月28日に放送する「ニューヨーク恋愛市場」の収録終わりの2人に突撃。
まわりの期待に応えられないもどかしさを聞いたところ…語られる等身大のエピソードに共感せざるをえませんでした…
〈聞き手:福田啄也(新R25編集部)〉
【嶋佐和也(しまさ・かずや)/屋敷裕政(やしき・ひろまさ)】吉本興業東京本社所属のお笑いコンビ。「キングオブコント2020」準優勝
何年も「ネクストブレイク芸人」と呼ばれて。ニューヨークのモヤモヤ期
福田
「ニューヨーク恋愛市場」の撮影、お疲れさまでした!!
今日は「周囲からの期待に応えられないもどかしさ」についておふたりに伺えればと思っています。
というのも、ニューヨークさんは「ネクストブレイク芸人」と呼ばれつつ…現在のような活躍に至るまで時間がかかった印象で…
屋敷さん
自分たちでも言ってましたからね。
「何年もネクストブレイク芸人と呼ばれてます」って(笑)。
屋敷さん
僕ら、デビューして2~3年のころに吉本内の若手トップを決める大会でトップ5に入ったんですよ。
当時のなかでは最年少だったこともあり、そこから劇場の出番が増えたり、単独ライブをさせてもらったりして。
そのときは、自分たちに追い風が吹いてきたなって感じていたんです。
福田
当時は、まだ20代中盤ですよね。
会社にプッシュされるのはうれしい一方で、プレッシャーにはならなかったんですか?
まだ実力がともなっていないかもしれないのに、大丈夫かな…って。
嶋佐さん
そこまで深く考えてなかったですね。
お世話になってる意識はあったので、なんとか恩返ししたいなとは思ってましたけど。
屋敷さん
ただ、実際にテレビに出させてもらったとき、まわりに厚切りジェイソンさんや日本エレキテル連合さんといったインパクトが強い人がたくさんいて。
「俺らはあんまり目立たんかったな…」っていう不甲斐ない気持ちが芽生えることがだんだん多くなって。
嶋佐さん
ちょいちょいお笑い番組や深夜番組でネタをやらせてもらっても、一番には目立ててない感じがありましたね。
どこ行っても、そんなに反響がないというか。
屋敷さん
まだ当時は「楽しい」という気持ちが強かったものの…
やっぱり爪痕を残せないまま回数を重ねても、なかなかブレイクできないんやろうなって、心のどこかで感じてました。
重い…
福田
当時、そういう状況をどう打破しようと思っていたんですか?
屋敷さん
いくら小当たりが連続していてもしょうがない。
「M-1」とか「キングオブコント」とかの“賞レース”で大当たりして、一気に売れるしかないと思っていました。
インタビューで「あと何が足りないと思いますか?」「今後の目標は?」って聞かれたときは、毎回「賞レースで勝つことです」って答えてましたね。
「このままだと落ちていく」10年目にして変わった転機
福田
期待に応えらない焦燥感って、ビジネスパーソンにもすごく多いと思っていて。
おふたりは、そこからどうやって抜け出したんでしょうか?
屋敷さん
「自分たちは、誰かに引き上げてもらおうとしてたんやな」と気づいたときですね。
引き上げてもらう?
屋敷さん
2018年、キングオブコントとM-1で予選敗退したとき…
それまではなんだかんだゆっくり上がってはいるはずって感じてたキャリアが、初めて“落ちてきているかもしれない”と感じたんです。
福田
2018年…キングオブコントはハナコさん、M-1は霜降り明星さんが優勝してましたね。
今や第7世代と言われている若手の台頭がその原因なのでしょうか?
屋敷さん
どうなんでしょうね?
ただ、これまで楽しかった仕事が、楽しくなくなる瞬間が出てきたんですよ。
芸人には、30歳を超えてきたのに仕事がうまくいかないとき、急に“パーン”と酔いが冷めたように辞めてしまう人もいるんです。
自分たちのなかにも、そんな予感が出てきて。
嶋佐さん
コンビとしてお互い腐りかけてたんですよね。
もうダメかもしれないって。
屋敷さん
そこで、翌年2019年に「このままやとあかんな」と、YouTubeを始めたんです。
これが明らかな転機でした。
YouTubeをきっかけに、またキャリアが上がってきた感覚があるので。
福田
当時はまだYouTubeチャンネルを始めてた芸人さんって、すごく少なかったですよね。
YouTubeを始めたことで、どんな影響があったんですか?
嶋佐さん
「自分たちから仕掛ける」という意識が、すべての仕事に対して生まれるようになったんですよ。
自分たちで企画も考えて、編集してくださる方も募集して…こんなことは今までなかったんですよね!
屋敷さん
そこで気づいたんが、「俺ら、ずっと他力本願やったな」ってこと。
「賞レースに勝てば売れる」というのも、その結果を見て自分たちを使ってくれる人が増えるはずだって考えていたから。
そこの意識が違ったかもしれないって思ったんです。自分らで仕掛けなアカンのちゃうかと。
福田
なるほど…!
嶋佐さん
今までは入った仕事を頑張ってやるみたいな感じだったんですけど…
屋敷さん
初めて自分からやりたいって、10年目にして動いたのがコンビにとってはいい変化でした。
誰かからもらうチャンスを待つんじゃなくて、自分たちから勝負しにいく姿勢になったので。
ちょいちょいコンビとしての息のよさが見えるのめっちゃいい(感想)
自分から仕掛けにいくことで、泥臭く動く姿勢が生まれる
福田
ほかにも、YouTubeをはじめたことで、仕事上の変化はあったんでしょうか?
屋敷さん
自分たちの泥臭いバックボーンを全面に出すようになったことですね。
すべてをさらけだすというか。これやるようになって、さらに好転した気はします。
屋敷さん
これまでの僕らって、“ネタをしっかりつくってるシュッとした芸人”だったんです。
でも、それだとあんまり笑ってくれなくて。
福田
たしかに…ニューヨークさんって「王道の漫才をやっているコンビ」という印象でした。
屋敷さん
でも、YouTubeでやっているように「俺ら第7世代でも入られへん」とか「ネクストブレイクって言われて何年もやってます」とか弱い部分も全部言うようになったら、テレビに呼んでいただける機会もどんどん増えてきました。
結局兄さん方って、変なやつか可愛そうなやつしか笑わないんですよね(笑)。
ニューヨークのちょっと性格の悪いところ出てきた
屋敷さん
ただ、だいぶ肩の力が抜けたなとは思います。
賞レースだけに全BETするのは違うってなって気づきました。
売れるための手段は、ほかにもたくさんあるって。
福田
「賞レースしかない」と言っていた時期からは大きな変化ですね…
今回のインタビューでちょっと意外だったのが、今のおふたりってすごく肩の力が抜けてますよね。
2017年のころとかは、先輩芸人に「僕らはこのままでいいんでしょうか?」って相談しているのが印象的で。
屋敷さん
してましたね(笑)。
諸先輩方には「ニューヨークはそのまま何もせんでいい」って言われてたのに、ずーっと低空飛行だったので。
でも、それは芸風のことを言ってただけで、「なんも動かんでいい」っていうわけではなかったんですよ。
福田
なるほど…同じように“待ちの姿勢”のビジネスパーソンには、「動いたほうがいい」ってメッセージはいいアドバイスになりますね。
屋敷さん
そんな説教がましいこと言えないっすね(笑)。
こんなの見てやる気になるやつは胡散臭いです。
さらっとメディアを否定しないでください
屋敷さん
ただ強いて言うなら、「このままでいいんかな…」と思っている人は、本気でヤバいと思う瞬間が必ず来ると思うんです。
だったら、そのときに動けばいいだけで。
嶋佐さん
まわりに合わせて何かするよりも、「自分が動かないと」って突き動かされるときじゃないと本気で変わらないと思います。
僕らはそれが本当に遅すぎただけ。
屋敷さん
そう。だから偉そうなことは言えません(笑)。
〈取材・文=福田啄也(@fkd1111)/編集=サノトモキ(@mlby_sns)/撮影=森カズシゲ〉
「ニューヨーク恋愛市場」のスペシャル番組が12月28日に放送!
ABEMAで毎週火曜日に放送している「ニューヨーク恋愛市場」
12月28日は年末ということで「ニューヨーク恋愛市場 年末大納会90分拡大スペシャル!」を放送します。
“毒舌芸人”であるニューヨークのおふたりが、オトコとオンナのリアルを射抜く恋愛バラエティですが、「M-1グランプリ 2021」で優勝の錦鯉、準優勝のオズワルドがゲストとして出演します!
今回はその収録終わりだったので、見どころを聞いてみました。
屋敷さん
もう…めちゃくちゃ疲れましたけど、とにかく収録は楽しかったですね。
嶋佐さん
年末スペシャルだけあって、ゲストがとても豪華です。
オズワルドや錦鯉さんといった芸人仲間も来るし、小嶋陽菜さんも登場してくださって。
屋敷さん
ずっと笑いっぱなしで楽しめる内容になっているので、仕事納めのサラリーマンにとってはいい年末になると思います。
ぜひご覧ください!
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