ビジネスパーソンインタビュー
話題騒然ではありますが…
「※注釈」がたくさんあるんでしょ?docomoの月2970円(税込)プラン・ahamoにツッコんだ
新R25編集部
各社からさまざまな新商品が登場する現在。
でも、その商品ってよく考えてみると、ちょっとツッコミどころもありませんか?
「新商品ポリス」では、新R25編集部が企業にお邪魔して、商品やサービスに読者目線(?)で切り込みます。はたして担当者はツッコミを見事跳ね返し、商品の良さをアピールできるのか…。
今回ツッコミにいくのは、docomoから3月にローンチされる新料金プラン「ahamo」。
月間データ容量20GB、2970円(税込)。国内通話が5分無料。
その驚きの安さとシンプルなプラン設計が大きな反響を呼び、Twitterでも即トレンド入り。
しかし、「携帯料金の安さ」ってなんだかすっきり信じられない。何かウラがあるのでは????
そこで新R25編集部は、NTTドコモの本社に直撃。画期的だけどどこか怪しい(!?)新プランについて、読者目線であれこれツッコミを入れてきました。
〈聞き手=石川みく(新R25編集部)〉
お話を伺ったのは、株式会社NTTドコモ マーケティング部 高山賢人さん(右)、サービスデザイン部 佐々木千枝さん(左)です
ツッコミの前に…おふたりとも、めちゃくちゃ若くないですか?
石川
大変失礼ですけど…おふたりとも、まだお若いですよね? てっきり、もっと上の世代の方がいらっしゃるのかと…!
高山さん
そうですよね(笑)。私は入社5年目、佐々木は3年目です。
ahamoは、いわゆるZ世代やデジタルネイティブ世代と言われる20代の方をターゲットとした料金プランです。
なので開発やマーケティングに関わっている社員も、若手が中心なんですよ。
石川
へぇ~! でも、docomoさんって大きな会社だし、若手だけでうまく進行するイメージがないんですが…
上の人の説得とか、大変そうだよなあ…
高山さん
そこはかなり気を遣いましたね。単に「若い人はこう思ってます」と伝えるだけでは、「君たちの主観でしょ」と言われますから。
上を説得するためには、僕らの感覚が正しいと証明できるエビデンスが必要だな、と。
石川
感覚を証明する…なかなか難しそうですが…
高山さん
はい。プロジェクトの最初の仕事は、5万人へのアンケート調査を取ることでした。
石川
5万も!?
高山さん
普通、こういうプロジェクトを立ち上げるときは5000サンプルくらいで進めることが多いので、量を集めるのに苦戦しました…
その調査をもとに、どんなプランならお客さまに喜んでもらえて、事業として成立するのかを考えたうえで、2020年3月に幹部の了承を取ったんです。
高山さん
ほかにも、オンラインで30人くらいの学生を呼んでヒアリングしたりとか。
私たちが立てていた「若い世代は通信キャリアにそこまで興味がない」「従来のわかりづらい料金プランに不信感を持っている」という仮説が、おおよそ正しいと確信が持てました。
ツッコミ①:月々2970円(税込)って言うけど…どうせ「※注釈」がついてるんでしょ?
石川
ここからは、肝心のプラン内容についてツッコませてください!
高山さん
プランについては、ツッコミどころがないくらいシンプルなんですよ(笑)。
「20GBで月々2970円(税込)、5分通話無料」。基本的にはこれがすべてです。
高山さん
私たちのような通信キャリアにズブズブの人間が説明しないと伝わらないような、ややこしいプランにはしたくなくて。
スマホに詳しくない方でも、友達にサクッと説明できるくらいシンプルな設計にしています。
石川
(ズブズブ…)
とはいっても、安いのは期間限定だったりとか、謎のオプションがたくさんついてきて結局高くなったりとかするんじゃないですか…?
筆者の料金プランを見てみたところ、オプションだけで3000円近く払ってたんですけど…
高山さん
いや、そういうのは一切ないんですよ!
5ちゃんねるとかTwitterでも「どうせ下のほうにちっちゃい字で書いてある、※の注釈でごまかしてるんでしょ」とか書かれまくってるんですけど…
心を痛めながらスレッドをチェックしている高山さん
佐々木さん
「どこかに落とし穴があるんじゃないか」と言う方が本当に多いんです。
高山さん
これはもう…私たち通信キャリアが長年やってきた不親切なコミュニケーションの結果なので、本当に襟を正さないといけないなと。
なのでahamoのプラン設計は、「押し付けないこと、隠さないこと、迷わせないこと」を徹底しています。
12月の発表会の資料も、「※」を極力使わないように意識しました。
高山さん
「ahamo」という名前にも、その想いを込めているんですよ。
石川
どういう意味なんですか?
高山さん
3つの意味があって、まず1つは、わからなかったことを瞬時に理解する「aha moment(アハ体験)」の「aha」。
そして、「なるほど~」というときに使う相槌の英語表現「A-Ha」。
最後に、楽しいときやうれしいときの「アハハ」という笑い声。
高山さん
従来の料金プランにある「複雑でわかりづらい」イメージを払拭して、「なるほどわかった、結構いいじゃん!」と感じてほしいという願いを込めました。
石川
そういう意味なんだ…!
ちなみに、通話無料の「5分」にも何かこだわりがあるんですか? 今の若い世代って、キャリアの電話はあまり使わないイメージがあるんですが…
高山さん
ahamoは20代のなかでも特に「はじめて一人暮らしをする新社会人」をイメージして設計しているんです。
はじめての一人暮らしとなると、不動産会社に連絡をしたり、電気や水道の開通をしたり…通話アプリではしづらいような電話をする機会が意外と増えますよね。
高山さん
そういう細々した電話はだいたい5分くらいあれば事足りるかな、ということで、5分通話無料を入れています。
ツッコミ②:この安さで、本当にデメリットはないの?
石川
これまで1万円近く携帯料金を払ってきた身からすると、やっぱり「2970円(税込)は安すぎる!」と思ってしまうんですよね…
この金額で、本当にデメリットはないんですか?
佐々木さん
私たちは「デメリットではなく“割り切り”」と捉えているんですが、使用頻度に対して開発費がかかりすぎてしまう機能はいくつか省いています。
そういった費用がかさむと、結局お客さまからいただく料金が上がることになってしまうので…
石川
あっ、やっぱり何か使えないものがあるんですね!
これまであった機能で、今回“割り切った”のは…?
高山さん
一番大きいのは「キャリアメール(docomo.ne.jp)」なんですけど…石川さん、キャリアメールって使ってますか?
石川
えっと……使ってないな……
Amazonの登録にしか使ってなかった
佐々木さん
Z世代の方は、ほとんどアプリでやりとりされてますよね。
キャリアメールが使えないことより、使えるデータ量が少なくて速度制限がかかってしまうほうが不便だと思います。
Z世代が頻度高く使う機能は申し分なく提供して、使わない機能は割り切る。そうやって、2970円(税込)という価格を実現しています。
石川
あ、速度制限についてもツッコみたいです!
私は家でずっと動画を垂れ流してるせいか、たまに20GBでも制限がかかっちゃうんですよ。
そうなるとメールすら満足に開けなくて超不便なんですけど…ahamoもそうなっちゃうんでしょうか…
(家にWi-Fi引けよって思われてそう)
佐々木さん
それはたぶん、128kbpsまで速度が下がった状態ですね。
高山さん
一般的な料金プランで速度制限がかかった状態は128kbpsが多いんですが、ahamoで20GBを超えた場合の速度は1Mbps。およそ8倍です。
1Mbpsは、YouTubeの普通画質であれば問題なく再生できるくらいの速度ですね。
石川
ほんとに!? じゃあ、仕事のやりとりくらいはストレスなくできちゃいますね。
ツッコミ③:料金プランの変更って、なにかとめんどくさいんでしょ?
石川
ahamoの魅力はわかってきましたが、わざわざショップまで行くのがめんどくさすぎるんですよね…
佐々木さん
ahamoはオンラインで契約が完結できるので、ショップに行かなくていいんですよ。
佐々木さん
専用フォームに住所やお支払い方法など、基本情報を入力していただくだけで完了します。ふつうのECサイトに会員登録するくらいの時間で終わるはずです。
石川
それはめちゃくちゃ助かります!
ただ…ここまで言えなかったんですが、私は他社のキャリアに契約してるんです。
ぶっちゃけ、他社から乗り換えることにメリットってありますか…?
佐々木さん
docomo回線を安く使えるというのはメリットになると思います。
石川
ほかのプランと、使える回線はまったく変わらないんですか?
佐々木さん
はい! 4Gだけでなく、5Gにも対応しています。
docomoは地方や混んでいるところでもつながりやすいというお声をたくさんいただいているので、ストレスなく使っていただけると思います。
石川
なるほど…。でも、他社から乗り換える場合は、さすがにドコモショップに行く必要がありますよね?
佐々木さん
いえ、その場合もオンラインで完結できます。
ただ、同じ電話番号を使いたい場合は、MNP(電話番号はそのままで、移転先の携帯電話会社のサービスを使える制度)の手続きが必要です。
石川
手数料とかはかからないんでしょうか?
佐々木さん
もともと使っていたキャリア側でかかる手数料は各社で定められていますが、ahamo側でかかる手数料はありません。
石川
ほう…!
ahamoええやん。ツッコむことがなくなってきた
ツッコミ④:他社からも似たようなサービスが出てますが…
石川
12月にahamoを発表してから、すでに先行申し込みが100万件近く集まっているというニュースを見たんですが、これは想定と比べてどうでしたか?
高山さん
(佐々木さんと顔を見合わせて)
…めちゃくちゃ多いよね(笑)!!
年度末までにこのくらいいけば…と思っていた目標を、開始3日間で達成してしまいました。
じゃあ今年度はもう働かなくていいのかな…うらやましい…
石川
ただ、他社からも同じような価格帯のプランが次々と発表されていますよね? ますます競争が激しくなりそうですが…
高山さん
正直、他社さんにキャッチアップされるのは織り込み済みでした。
それでも、docomoが最初に新プランを発表して、従来の料金プランの“流れを変える”ことに大きな意味があると考えたうえでの決断だったんです。
高山さん
実際、まだサービス自体はスタートしていないにもかかわらず、12年ぶりにdocomoのMNPがプラスになった、つまりdocomoから出ていくよりも入ってくる方が増えたんです。
弊社の姿勢を少なからず評価していただけたのかな、と受け止めています。
佐々木さん
若い世代が「通信キャリアに“愛着”を持っていない」のがすごく悲しいんですよね。
もっと、ahamoやdocomoを好きになってもらいたいなと思っています。
佐々木さん
3月にリリースされる申し込みページも、イラストなどを多用して、見ている人がワクワクできる仕上がりを心がけています。
Z世代のみなさんに共感していただけるように、そういった些細な部分にもこだわっていきたいですね。
たしかに、公式サイトは今までになくおしゃれな印象です
高山さん
今の通信キャリアは“無色透明”なんですよ。
でもこれからは、NetflixやYouTubeのように、ahamoというブランドに愛着を持ってくれる方を少しでも増やしたい。
単純な価格競争に勝つだけでなく、「好き」で選ばれるプランに育てていきます!
「安すぎて怪しいのでは!?」と思ってしまった画期的なプランの裏には、高山さんや佐々木さんをはじめとした若手世代たちの、並々ならぬ熱意とこだわりがありました。
これを読んで「ちょっといいじゃん」と思ったあなたはもう、ahamoのことを好きになりかけているのかもしれません。
私も彼らの熱意に敬意を表して、さっそく携帯プランの見直しにかかろうと思います!
〈取材・文=石川みく(@newfang298)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉
ビジネスパーソンインタビュー
またスゴいことを始めた前澤さんに「スケールの大きい人になる方法」を聞いたら、重たい宿題を出されてしまいました
新R25編集部
【不満も希望もないから燃えられない…】“悟っちゃってる”Z世代の悩みに共感する箕輪厚介さんが「幸せになる3つの方法」を伝授してくれた
新R25編集部
「実家のお店がなくなるのは悲しい… 家業を継ぐか迷ってます」実家のスーパーを全国区にした大山皓生さんに相談したら、感動的なアドバイスをいただきました
新R25編集部
「俯瞰するって、むしろ大人ではない」“エンタメ鑑賞タスク化してる問題”に佐渡島庸平が一石
新R25編集部
社内にたった一人で“違和感”を口にできるか?「BPaaS」推進するkubell桐谷豪が語るコミットの本質
新R25編集部
【仕事なくなる?そんなにすごい?】“AIがずっとしっくりこない”悩みへのけんすうさんの回答が超ハラオチ
新R25編集部