ビジネスパーソンインタビュー
「真面目=不器用」なんて、言い訳。
「“テメェなんてサラリーマンだろ!”と罵られて…」40年“真面目”に生きてきたラッパーの結論
新R25編集部
「新R25ワイドショー」がリリースされました。
これは「ビジネスパーソンの知見が集まるスマホ版ワイドショー」をコンセプトにしたサービスで、構想から約1年近くかけて開発を進めてきたもの。
編集部が毎日1~2個更新するこだわりの「テーマ」に対して、新R25アプリから会員登録したユーザーが自由に自分の知見を回答することができます。
新R25では、そんな「新R25ワイドショー」のテーマを著名なビジネスパーソンの方にぶつけ、深掘りインタビューさせていただく連載をスタート…!
今回は、株式会社リクルート出身のラッパー・KENTHE 390さんにこちらのテーマを質問!
新卒でリクルートに就職、フルタイムでサラリーマンをやりながら毎晩歌詞を綴りラップバトルにも精力的に出場していたというKENTHE390さん(以下ケンザさん)。
会社員時代、ラッパー一筋で挑戦する勇気がない自分の「真面目さ」にずっと悩んでいたものの、今ではそのコンプレックスが一番の武器につながっているのだそう。
彼は自分の真面目さと、どう向き合ってきたのでしょう?
〈聞き手=いしかわゆき〉
【KEN THE 390(ケン・ザ・サンキューマル)】1981年生まれ、東京都出身。ヒップホップMC、株式会社ドリームボーイ代表取締役。17歳でラップを始め、フリースタイルバトルで実績を重ねる。株式会社リクルートに3年近く在籍しながらも精力的にアルバムをリリースし、2011年に主宰レーベル・ドリームボーイを設立。現在はアーティスト活動を続けながら、レーベル運営からイベントプロデュース、ラップ監修など多方面で活躍中。
「テメェなんてサラリーマンだろ!」ラップバトルで“真面目”ディスを受けた会社員時代
いしかわ
ケンザさんが「真面目コンプレックス」を感じたのは、どんな瞬間だったんですか?
KEN THE 390さん
いやもう、いっぱいありますよ。
会社員とラッパーの二足の草鞋を履いてたリクルート時代は、「テメェなんてサラリーマンだろ!」ってMCバトルでも散々ディスられてたんで(笑)。
正直めちゃくちゃ効きそう
KEN THE 390さん
MCバトルに出ながら、昼間はサラリーマンとして働くヤツなんて珍しかったですからね。
まあ俺からしたら「お前もバイトしてんだろ」って感じなんですけど(笑)。
いしかわ
(たしかに)
KEN THE 390さん
でもたしかに、音楽1本で勝負する覚悟はできてないよなと。
ヒップホップシーンにいる破天荒な人たちと夜ラップをしていても、朝になったら「俺会社あるから…」と去っていく自分。
もともと進学校出身で、後先考えないワルでルード(不良、無作法などの意)なヒップホップカルチャーに憧れたはずなのに、結局会社でクソ真面目に働いてる自分に当時はすごくコンプレックスがありましたね。
いしかわ
でも、夜ラップバトルしにいく会社員って、そこそこ破天荒なのでは…?
KEN THE 390さん
いや、それが…根が真面目なんで仕事もめちゃめちゃちゃんとやってたんですよ(笑)。
ちゃんと8時に起きて出社してたし、22時くらいまでがっつり残業して結果も出してましたから。
それはそれでかっこいいな
40年真面目に生きてきたラッパーの結論「真面目は、得しかない」
いしかわ
真面目な人って損をするイメージがあるのですが、ケンザさんはどうでしたか?
KEN THE 390さん
「損だな~」と思った時期もありましたよ。
でも、「真面目って“得”しかねえぞ」ってのが、40年生きてきた僕の結論です。
え!?
いしかわ
コンプレックスだったのに、どういう心変わりが?
KEN THE 390さん
真面目な人が損と言われるのって、「何でもちゃんとやっちゃうから」だと思うんですね。
一言で言えば、サボれない。だから、面倒ごとからうまく逃げてる人に「真面目だね~(笑)」みたいに言われちゃうというか。
いしかわ
うっ…まさにそれです。本当はやりたくないこともちゃんとやっちゃうし、頼まれれば断れずに引き受けちゃう。
結果、気づけばひとりで勝手にパンクして…やっぱりこれ、完全に損してますよね?
KEN THE 390さん
いや、確実に“得”しかありません。
「ちゃんとやってきた」って成功体験は、将来的にマジでどんなスキルより強い武器になるんで。
KEN THE 390さん
「頑張れちゃう」というのは、シンプルに“最強の力業”だと思うんです。
僕、大学を卒業して社会人になってからの2年半で計4枚のアルバムを出しているんですね。
当時、そんなに出しているラッパーはいなかったけど、僕は日中ゴリゴリ仕事しながらそれをやった。それも、クソ真面目なやりかたでやったんですよ。
いしかわ
どうやったんですか?
KEN THE 390さん
仕事で計画的に業務を進行する習慣がついていたので、ビジネスパーソンとしてもラッパーとしても結果を出せるよう、逆算してタスクを日割りにして計画を立ててました。
「23時に帰宅、0~3時で詩を書き、10時に出社」みたいな。
いしかわ
スケジュールがど根性。
KEN THE 390さん
でも、なんせ真面目なんで(笑)。結局どっちもちゃんと「やっちゃう」んですよね。
とくに僕が選んだ会社は常に100%で頑張っていないと置いていかれる環境だったので、大変でした。
でも、仕事もちゃんと頑張ってるからこそラップも安心して頑張れた部分は大きくて。真面目だったからこそラップでも結果が出て、ラッパーとして会社員を辞められたんだと思います。
いしかわ
「テメェなんてサラリーマンだろ!」と言われても、ちゃんとラッパーとして結果を出してる以上、相手も何も言えないですね。
KEN THE 390さん
「言ってっけど俺仕事してお前より曲もライブもやってっから」「テメェが寝てるあいだにラップしてんだよ」と言うとだいたい「そ、そうだよね〜」ってなってましたね(笑)。
無双状態でした。
ド正論で殴るスタイル
KEN THE 390さん
そうやって「なんだかんだ、どんなこともやりきってきた」という成功体験って、何が来ても打ち返していける自信になるんですよね。
仕事って、思いがけないことがたくさんあるじゃないですか。職種が変わったり、やることが急に変わったりすることもたくさんある。
そういうときも「やりきれる」って、スキル云々よりももっと大きな意味があることだから。
いしかわ
なるほど…今はつらくても未来の自分が救われていくんですね。
KEN THE 390さん
絶対そういう瞬間が来ると思う。
目の前の“楽”を考えたら、たしかにうまく逃げてる人より損をしてるのかもしれない。
でも、しんどいしんどい言いながらやりきれちゃった経験って、全部自分の武器になって返ってくるから。
真面目な自分の使い方①「不自由であるほうが羽ばたける」
いしかわ
とはいえ、なんだかんだ「なんでもやっちゃう」ってしんどいですよね。
自分の真面目さとのいい付き合い方ってあるんでしょうか?
KEN THE 390さん
真面目タイプの人は、「制限があるからこそ自分は頑張れる」と自覚するとかなり楽になると思います。
いしかわ
どういうことですか?
KEN THE 390さん
真面目な人ってなんでもやっちゃうから、だいたい常にパンク状態じゃないですか。
人からいろいろ押し付け…頼まれやすかったりもするし(笑)。
一瞬心の声漏れた?
KEN THE 390さん
でも真面目な人って、制限があるからこそ頑張れるところがあると思うんですよね。
僕も振り返ると、会社員×ラッパーの激動の時代が一番ペースよくラップできていたと思うんですよね。
時間が限られてたからやれていた。逆に会社を辞めてから1年間は、気が抜けてゲームをしちゃったんですよ(笑)。
いしかわ
ちょっとわかるかも…(笑)
いざ好きにしていいよと言われると、案外頑張れないというか。
KEN THE 390さん
そう。やるべきことや自分のポジションを与えられたときにガッと力を出せるのが、真面目な人。
真面目な人って、やるべきことを決められていたほうがイキイキと輝けるんです。
KEN THE 390さん
任されて大変…とか言いつつ、「何をやるか」から自分で決めなきゃいけない自由な環境になると、真面目な僕らは意外と居心地が悪いんです(笑)。
任されたことを妥協なく頑張ってきた人は、やるべきことがなくなったとき、「真面目の発揮どころ(やり場)」を失ってしまうんですよ。
いしかわ
め、めちゃくちゃわかる…!
KEN THE 390さん
そういう真面目タイプの特性を理解すると、しんどい状況も逆に活力になるんですよね。
「なんだかんだ、こういう環境のほうが燃えるよね」って。
若いときは枠がない自由さに憧れて、無理矢理枠から外れたくなっちゃうけど、大人になると枠があることとないこと、それぞれにいいところがあるんだとわかってきますよ。
真面目な自分の使い方②“押し付けられたまま”無茶をするのは「バカ真面目」
KEN THE 390さん
ただ…勘違いしちゃいけないのは、「真面目=要領が悪い」ではないってこと。
「真面目だけど、要領がいい人」は成立できるんですよ。
何も考えずやみくもに頑張るのは、真面目は真面目でも「バカ真面目」。
バ、バカ真面目…!
KEN THE 390さん
真面目な人って、要領よく結果を出してる人を見て「こっちは真面目に頑張ってるのに…!」って思いがちなんですよ。
「不器用で要領が悪いかもしれないけど、こっちのほうが真面目に頑張ってる」って。
いしかわ
思いますね。
KEN THE 390さん
でも、仕事で本質的に求められているのは、「真面目に頑張ること」じゃなくて「結果を出すこと」じゃないですか。
いしかわ
たしかに…
KEN THE 390さん
だったら、プロセスじゃなく結果を出すことに「真面目」になるべきなんですよ。
“結果を出す”ことに真面目に向き合えば、「今の状況においては、目の前のすべてを100%で頑張るのはベストな選択じゃない」という判断も当然出てくるはず。
「真面目に考えると、ここは要領よく行くべきだな」という判断がね。
KEN THE 390さん
「真面目に頑張ること」が目的になっていないか。これは常に確認したほうがいいと思います。
本人は一生懸命なんだけど、客観的に見るとすげえ真面目に全然的外れな方向に突っ走ってることってけっこうあるので。
いしかわ
うっ…あるあるかも…
KEN THE 390さん
だから若いうちは、「バカ真面目」にならないようにしながら、目の前のことを「真面目」に100%でやりきって、やりきって、やりきる。
それでいいんじゃないかな。
30代やその先のどこかで、「あぁ、俺は真面目にやってきてよかったんだ」と自己肯定できる瞬間が絶対来るんで。
俺にもあったから、みんなにもきっと来ると思う。
ありがとうございました!
「真面目」を辞書で引いてみると、「嘘やいい加減なところがなく、真剣であること、本気であること、そのさま」と出てきます。
「真面目」はコンプレックスに思うことではなく、自分の個性。嫌だと思うのではなく、堂々とまっすぐに「真面目」でありつづければ、自分を成長させるパワーに変えていけるのだと、ポジティブな気付きをもらえた気がします。
何より、KEN THE 390さんの真面目な生き様のかっこいいこと…!
真面目な自分を肯定するために、真面目であれ。全国の「真面目の民」が励まされるお話、ありがとうございました!
〈取材・文=いしかわゆき(@milkprincess17)/編集=サノトモキ(@mlby_sns)/長谷英史(@hasehidephoto)〉
3マンライブイベント「3 PREMIER」が開催!
般若さん、梅田サイファーさんを迎えての3マンライブイベント『3 PREMIER』が開催決定!
■日時
2021年10月22日(金)OPEN 17:30 START 18:30 END 21:00
■出演者
KEN THE 390 / NORIKIYO / GADORO
■会場
SHIBUYA WOMB LIVE (〒150-0044 東京都渋谷区円山町2-16)
■チケット
前売り ¥4,500 当日 ¥5,500
※別途1ドリンク代、4歳以上チケット必要。
・KEN THE 390 OFFICIAL LINE先行8/23(月) 12:00~
■お問い合わせ
WOMB LIVE:03-5459-0039
【注意事項】※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ご来場頂く際はマスク着用が必須となります。
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