ビジネスパーソンインタビュー
尾原 和啓著『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』より
“こんまり”の世界的大ヒットもプロセスエコノミー。誰でも実践できる「人生EX化」とは
新R25編集部
市場には今、低価格で高品質なサービスがあふれています。
商品やサービスたちにはそれぞれの強みがあり、どれを選べばいいのか迷ってしまう…ということも多いはず。
そんな現状に対し、発売前にも関わらずAmazonの書籍カテゴリー売れ筋ランキングで総合1位になるほど話題の新著『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』では以下のように語られています。
プロセスエコノミー あなたの物語が価値になるちょっとやそっとのクオリティでは、差別化が難しくなっているのが現状だと考えています。
アウトプットの差がなくなったことで、価値を出すならプロセスという感じになっているのです。
そして、プロセスに価値が増えていった先にあるのが、プロセスエコノミーです。
Google、マッキンゼー、楽天執行役員などを経験する尾原和啓さんと同書の編集者である箕輪厚介さんは、なぜ今「プロセスエコノミー」が重要だと唱えるのか?
ここ1年で話題になってきた「プロセスエコノミー」の正体・今後の可能性について、同書より一部抜粋してお届けします。
世界的ベストセラーを生んだプロセスエコノミー的な生き方
プロセスエコノミーが広がった世界において、個人の生き方はどう変わっていくかということを考えていきたいと思います。
2010年の年末に発売されたこんまり(近藤麻理恵)さんの著書『人生がときめく片づけの魔法改訂版』(河出書房新社)は、世界42カ国で翻訳されてシリーズ累計1300万部の大ベストセラーになりました。
こんまりさんの夫である川原卓巳さんは、こんまりさんの凄腕プロデューサーです。
2020年末、川原さんが『Be Your self 自分らしく輝いて人生を変える教科書』(ダイヤモンド社)という新刊を出版しました。
この本を読むと、こんまりさんの生き方はまさにプロセスエコノミーそのものであるということがよくわかります。
お母さんが主婦を楽しそうにしていたから、とにかく良い主婦になりたいというのがこんまりさんの当時の夢で、雑誌を読みながら家事を楽しんでいました。
料理はうまくなる、裁縫もうまくなる。
なのに、片付けだけはやれどもやれどもリバウンドしてキレイにならない。
その結果、逆に片付けにのめり込んでいったそうです。
「なんで片付けても片付けても散らかるんだろう」
それを研究し続け、15歳のときに「あ、なるほど。ときめくものだけを残せばいいのか」という着想を得て、初めて片付けがリバウンドしなくなったのです。
でももっと研究したいと、片付け終わると違う場所を片付け始めるのです。
学校やお兄さんの部屋、友達のところなどをぐるぐる回るようになる。
大学に入るとこんまりさんにとって思わぬ幸せが訪れます。
一人暮らしの友達が増えてきたのです。
彼ら彼女らの家は片付けられる格好の場所になりました。
友達に声をかけては、「ちょっとお願いだから片付けさせて」と言って、家を訪ね歩く。
すると「こんまりちゃんが遊びに来ると家がすごいキレイになる」と口コミが起こるようになります。
そのうちに自分の知らない人からも「お金を払うからやってほしい」と言われるようになり、19歳から仕事になっていきます。
片づけコンサルタントとして活動していく中で、あっという間に半年先まで予定が埋まるようになります。
新規のお客さんは半年後にしか受けられない。
そこで、片付けのメソッドを本にします。
その本が大ヒットし、日本中で知られる状態になるのです。
アメリカのニューヨークタイムズベストセラーリストでも1位になり、週連続1位を記録。
拠点をアメリカに移し、今ではこんまり流®︎片づけコンサルタントという片付けの資格の仕事を60カ国の方が取得し、約700名の方が日々片付けの仕事をしている状態になりました。
2019年初頭には、Netflixで「KonMari〜人生がときめく片づけの魔法〜」(原題:Tidying Up with Marie Kondo)というシリーズが公開されました。
こんまりさんが散らかった家庭に出かけて、一緒にお片付けをするドキュメンタリー番組です。
これもまたすさまじい大ヒットとなります。
ベストセラーを出版したいと思っていたわけでも、アメリカを拠点に活動したいと願っていたわけでもありません。
ただ片付けという行為自体に夢中になり、誰よりも楽しんでいただけなのです。
本来、片付けというのは、めんどくさいもの、後回しにしたいもの。
でもそれを片付けの変態のこんまりさんは、楽しいものとして捉え、さらに楽しいものとして表現をすることによって、こんまりメソッドに触れた人にも波及していき「お片付けって楽しいな」という口コミが連鎖的に起きていったのです。
人生をEX化する
この話はとても興味深い示唆を与えてくれます。
それはプロセスエコノミーの時代にはEXという考え方が大切なのではないかということです。
これは前述の川原さんが使い始めた言葉で「エンターテインメントトランスフォーメーション」と解釈します。
人はワクワクする生き物だから、あらゆるプロセスに楽しさを実装することでより可能性が広がっていくのではないかという発想です。
川原さんがEXという考え方を着想したのは田村耕太郎さんとの地方創生に関しての打ち合わせの中でした。
地方創生の課題解決の過程自体をエンタメ化していくのが非常に重要だと田村さんが指摘したのです。
「正しい」を「楽しい」にすると、そこに価値を感じられなかった人にも届き、色んな人を巻き込んでいける。
難しい課題も正しく解決するよりも楽しく解いていくほうがよいのではないか。
そんな田村さんの発言を川原さんはEXという言葉に変換します。
こんまりさんの人生はEXそのものでした。
夢中の3条件
あらゆる過程にエンターテインメントを実装しプロセス自体を楽しむ。
プロセスに夢中になるにはどうすればいいのでしょうか。
楽天大学学長の仲山進也さんは人間が夢中になるには3条件あると言います。
まず「得意」であること。
そして「その得意がやっているだけで楽しい」こと。
最後に「それが誰かの役に立つ」ものであるということです。
つまり得意なことを楽しむということ自体が目的になっていく。
それがいつの間にか利他的価値につながると人間はどんどん夢中になっていくそうです。
この「プロセス目的」な生き方は変化の時代にとても大切です。
昭和の時代は、ないものをあるに変えていくタイミングだったので、安くて良い車を作るとか、他社よりもコンパクトなコンピュータを作ればいいなど、「結果目的」でした。
しかし変化の時代は、どこにゴールがあるのか、そもそもわからないので、ただ走っていることが楽しいから走る。
そういう人が思わぬ結果を生むのです。
こんまりさんのように、片付けが楽しすぎて自分の家を片付ける、兄弟の部屋を片付ける、それがなくなったら友達の家を片付ける、他人の家も片付ける。
そうやって、「やりたい」と「強み」が掛け算になると、人は「時間を忘れて集中する」フローという状態になって、ますます成長する。
「得意」と「やりたい」が掛け算で増えていきます。
その成長した「得意」と「やりたい」を満たすためには、もっと大きな「片付け」の場所が必要になってきます。そうすると、自然と遠くへと旅をする。
もう日本の片付けを全部やりたい。
世界の片付けを全部やりたい、得意なことをやっているだけで幸せという状態の中で、それがやがて利他的な価値につながっていくのです。
このときに本人には利他という感覚はなく、自分が楽しいからやっている「自己中心的な利他」であり、片付けをすることが自分の「役目」と思えてくる。
しかも、まわりからは感謝されるので、片付けをすることが最上の喜びにすらなってくるのです。
プロセス目的であることが、フローとしての成長を加速し、成長に見合うやりたいことを探すようになる。
夢中で旅をしていると、他の人も夢の中に巻き込む、まわりを夢中にする大きなところまでたどり着くのです。
「ジグソーパズル型」から「レゴ型」へのパラダイムシフト
変化が激しい時代は正解の形もころころ変わります。
今までは1つの決まった正解に向かってパズルを埋めていきました。
正解はわかっていて、その最終形に向かって、他人よりも速く正確に作業をすることが求められました。
しかし、何が完成するかわからないレゴブロックを組み立てていくほうが、今の時代に合っています。
自分の得意なことを活かして、それ自体を楽しみながらレゴを組み立てていく。
自分ですら最終的なゴールはわからない。
ただこの瞬間が楽しいから、夢中になって没入していく。
そして、その熱がまわりに伝染していき、多くの人が巻き込まれていく。
自分でも想像していなかった遠いところまでたどり着き、最終的に誰かの喜びにもなっていく。
私たちは、「こうすればバズる」「こういうのが流行る」というモノをひたすら作る機械ではありません。
私たちは「自分が作りたいものを作る」ために命を燃やすべきなのです。
プロセスエコノミーは、そんな私たちの新しい生き方を実現するため、この大激動時代を生きる一人一人の武器にもなっていきます。
より創造的でよりワクワクする未来のために、あなたのこだわりを、さらけ出しながら走りましょう。
心から応援しています。
ビジネスのみならず生き方でも、役立つ新常識
プロセスエコノミー あなたの物語が価値になるプロセスエコノミーは、そんな私たちの新しい生き方を実現するため、この大激動時代を生きる一人一人の武器にもなっていきます。
上記にあるように、同書は今の時代で残っていくために必要な新常識がわかりやすく紹介されています。
同書を手にとって、自分のビジネスや生き方を見つめなおすのはいかがでしょうか。
きっと、あなたが普通だと思っている好きなものやこだわりも“プロセス”となり、その瞬間瞬間でベストな状態に導けるようになるはずです。
〈写真撮影=千川修〉
ビジネスパーソンインタビュー
またスゴいことを始めた前澤さんに「スケールの大きい人になる方法」を聞いたら、重たい宿題を出されてしまいました
新R25編集部
【不満も希望もないから燃えられない…】“悟っちゃってる”Z世代の悩みに共感する箕輪厚介さんが「幸せになる3つの方法」を伝授してくれた
新R25編集部
「実家のお店がなくなるのは悲しい… 家業を継ぐか迷ってます」実家のスーパーを全国区にした大山皓生さんに相談したら、感動的なアドバイスをいただきました
新R25編集部
「俯瞰するって、むしろ大人ではない」“エンタメ鑑賞タスク化してる問題”に佐渡島庸平が一石
新R25編集部
社内にたった一人で“違和感”を口にできるか?「BPaaS」推進するkubell桐谷豪が語るコミットの本質
新R25編集部
【仕事なくなる?そんなにすごい?】“AIがずっとしっくりこない”悩みへのけんすうさんの回答が超ハラオチ
新R25編集部