ビジネスパーソンインタビュー
「今後」についてきいてみました
「少なくとも、僕はテレビに出続けないといけない」児嶋一哉が語る“続ける”ということ
新R25編集部
誰かにグチを聞いてもらいたい。
そう思ったことはありませんか?
【児嶋一哉(こじま・かずや)】1972年生まれ、東京都出身。1993年、アンジャッシュとしてデビュー。2003年に『爆笑オンエアバトルチャンピオン大会』で第5回チャンピオンとなる。2020年にYouTubeチャンネル「児嶋だよ!」を開設。2021年3月には初の著書となる『俺の本だよ!!』(世界文化社)を上梓
昨日に引き続き児嶋一哉さんにいろいろ聞かせていただいております。
今回は、児嶋さんたち2人がつくり出した“アンジャッシュっぽい”というオリジナルなブランドについて。
自分らしい成果を出すにはどうすれば…という話から、気になる「アンジャッシュの今後」についてまで、いろいろ聞いてきました。
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
「アンジャッシュっぽい」という超オリジナルなブランドをつくれたのはなぜ?
天野
次に話したいのが「オリジナルな結果が出せない」っていうグチで。
誰かができることじゃなくて、「○○さんにしかできないよね」って言われる仕事をしたいと思うんですが…
アンジャッシュは、「アンジャッシュっぽいコント」っていうブランドがあると思うんですけど、どうやったらそういう仕事ができるのかなと。
児嶋さん
アンジャッシュのコント、あれ、全然オリジナルじゃないんですよね。
名倉潤さんがやってたののパクリなんで。
まさかの潤ちゃん
児嶋さん
名倉さん、ネプチューンの前に「ジュンカッツ」っていうコンビを組んでそういうコントをやってるんですよ。
オシャレなオチをきれいに決めて、最後暗転するときに「都会のコントだ~!」って思って、衝撃を受けましたね。
天野
まさにアンジャッシュのコントだ…
児嶋さん
それを見て、ちょっとアウトなぐらい影響受けているから、ほぼパクリみたいなもんなんです。
でも名倉さんに「こんな感じでやってるんですけど…」って言いにいったら「ええやん、やれやれ!」って言ってくれて。
天野
名倉さん優しい。
児嶋さん
もっと言えば「すれ違い」が面白いパターンって大昔からあるじゃないですか。
落語とかそういう話いっぱいあるし、三谷幸喜さんの映画とかもそうでしょ。
天野
たしかにそうだ。でも今や、すれ違いコントといえば「アンジャッシュっぽい」と言われるじゃないですか。それはなぜなんですかね?
児嶋さん
それはやっぱり、やり続けたからですよね。
児嶋さん
2003年ごろから『エンタの神様』に出て、何年かしたらすれ違いの状況を「今日アンジャッシュしちゃった」って言う、みたいな話を聞くようになって…そのへんから「アンジャッシュっぽい」というイメージができた。
僕らが生み出したものでもなんでもないからラッキーなんですけど、やり続けて、突き詰めてると「オリジナルだね」って言われるようになるんですよね。
今、若手もこういうコントやりづらいでしょうね(笑)。
天野
たしかに。
児嶋さん
ただまあ、今では「やり続けたらオリジナルになる」みたいにカッコいいこと言えるけど…
そういうオリジナリティってだいたい“苦肉の策”だと思うんですよね。
天野
苦肉の策?
児嶋さん
僕らがコントをやったのは、大してキャラもないし、ボケ・ツッコミの技術もセンスもないからなんですよ。
じゃあどうすれば勝てるのかな?っていう答えが「台本で勝負しよう」。それでこういう芸風に至ったという、全然手放しで喜べない話なんです。
児嶋さん
だから、どっちがボケとかもそんなにないんです。2人がどっちの役をやるかも考えないまま作って、最後の最後に決まるし。
オーディションでよく言われたのは、「面白いけど、もっとうまい俳優さんがやったらもっと面白いのにね」って。
天野
ええっ。
児嶋さん
でも本当にそうだと思う。
たしかに、ひとつの台本をとことん磨いたり削ったりする作業は嫌いじゃないですよ。
でも、そればっかりずっとやってたのは、逆に言えば他ができなかったから。ほんと、苦肉の策がいい評価につながるんですよね。
アンジャッシュはどうなる。「少なくとも僕は出続けてないと」
天野
「コントをやり続けた」っていう話ですけど…
今はアンジャッシュとしての活動は中断されている状態じゃないですか。今後どうされるか、予定はあるんですか…?
児嶋さん
うーん、これからどうするかは、本当に決まってないんですよね…。復帰できるかだってわからないし。
でも、もともとは僕がやろうって誘ってはじまったコンビだから…
だから僕から解散って言うことは絶対ないですね。
児嶋さん
1人で養成所入ったんですけど、コンビ組む相手もいなくて。
大スターのとんねるずもダウンタウンも同級生コンビじゃないですか。だから高校の同級生と組もう!と思って。
天野
それで真っ先に声を…
児嶋さん
いえ、5番目に。けっこう断られたんで、もう同級生なら誰でもいいやってなって。
愛があるのかないのかまったくわからん温度感
児嶋さん
まあまあ見た目がいいヤツならいいかなって。
それまでほとんど遊んだこともなかったんですけどね(笑)。
天野
(そうだったのか…)
児嶋さん
もしこの先またいっしょにできたら、すごく爆笑を取れるかもしれないし、やっぱりもうムリだってなるかもしれないですよね。
わからないけど、でも、少なくとも僕はテレビには出続けてないといけないですね。
あいつが戻れるってときに、その場所がないといけないんで。それまではね。
ちょっとだけ…グッときてしまいました
「センスがないヤツは変わらない。でも…」児嶋さんが“一番衝撃を受けた”芸人とは
児嶋さん
でも、「オリジナルな成果を出したい」っていうのはどういう状況なんですか?お笑いで言うなら、ネタを作ってもライブでウケないみたいなことなのかな。
天野
誰かがやっているようなことはできるというか…
芸人の世界も、よくある漫才より、オリジナルなセンスが光ってるほうがいいじゃないですか。
児嶋さん
ああ~、ハイハイなるほど。
それで言うと、めちゃくちゃセンスないヤツがセンスあるふうに変わることはないですよ。
!!
児嶋さん
バカリズムも最初からやっぱセンスありましたし。バナナマンはやっぱああいう感じで。
「あいつ、急にセンス磨いて面白くなった」って、あんまりないんですよね。
技術は磨けるけど、センスは磨けない。
天野
それはすごくわかる気がします…
児嶋さん
オリジナリティみたいなことを言うんだったら、やっぱり“苦肉の策”で何か見つけるしかないんじゃないかな。
僕、今までいろんな芸人を見てて、一番衝撃を受けたのがダンディ坂野なんです。
養成所の後輩なんですけど、ダンディって全然センスないじゃないですか。
天野
はい。あっ、はいって言っちゃった。
児嶋さん
働いてたんだけど辞めて養成所に入ってきたのかな。5個ぐらい年上で、そのときからすでにオジさんなんですよ。
で、それこそ“アンジャッシュっぽい”、ちょっとシャレたコントとかやろうとしてたんです。絶対向いてないじゃないですか。
はい…あっ
児嶋さん
だけどあの人めちゃくちゃ売れたじゃないですか。
それは、センスもなくダサいおじさんだからこそ、逆手に取ってあの芸風を見つけたから。それがすごくないですか。「ゲッツ」とかくだらないジョークを言う、自分を生かせる世界観を見つけたのが大成功。
ほんと、ダンディが売れたことには一番衝撃を受けましたね。
天野
今も営業でめちゃくちゃ稼いでるって有名ですもんね。
児嶋さん
ダンディが売れたのを見て、「絶対この人成功しない」っていう考えは危険だなと思ったんですよ。よくそういうこと言う人いると思うんですけど、僕は絶対言わないようにしてます。
センスないヤツがあるようにはならないんだけど、でも「絶対売れない」「成果が出ない」って考えるのは間違いだって。
児嶋さん
苦肉の策でいいから、自分なりの何かを突き詰めていけば、きっと何かがあるんですよ。
キャラが本当にまったくなかったとしても、それもキャラじゃないですか。
天野
たしかに児嶋さん自身も最初は“キャラがない”状態だったけど今ではすごくイジられてますもんね。
本の帯にも小木さんに「笑いなし! 涙なし! これぞ児嶋ワールド!」みたいに書かれていて。
児嶋さん
ねえ、本当に僕のキャラに合ったことを書いてくれて…
まあ、小木さんはたぶん読んでもないと思いますけど。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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