ビジネスパーソンインタビュー
藤原麻里菜著『考える術』より
発明家・藤原麻里菜「まわりと違うアイディアを出すなら、“自分の欲望”と向き合おう」
新R25編集部
「アイディアが出てこない」
「いつも同じような企画になりがち」
仕事でアイディアを練る機会は多いと思いますが、うまく発想ができずに悩んでしまう人も多いと思います。
そんな皆さんにおすすめなのが、日本のみならず、アメリカ、ヨーロッパ、中国など海外からも注目を集めている、発明家・藤原麻里菜さんの著書『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』(ダイヤモンド社)です。
無駄なものをつくる「無駄づくり」というコンテンツを2013年から始め、これまで200以上の無駄な発明品を作ってきたと言います。
毎週1〜2個以上のアイディアを考え、実践してきている藤原さんの、アイディアに対する「ユニークさ」「スピード」「量」は一体どうやって生まれているのか?
ものを考えるきっかけとなるヒントを、同書より抜粋してお届けします!
「欲」から考える
アイディアは「欲」から生まれやすい。というのが、わたし個人の考えだ。
というか、考えるという行為の動機は、だいたい根底に何かしらの欲がある。
朝、着る洋服を考えるとき、機能性を重視するのか、人の目を意識するのか。どちらにせよ欲である。
もっと抽象的な思考、たとえば将来のことを考えるようなときだって、お金や名声など、内にある欲をベースに考えていくと思う。
生活の中には、意外とたくさんの欲が潜んでいる。
そんな欲に意識的になることで、みるみるうちにたくさんのことを考えられるようになる。
世の中にあるさまざまなものは、人々の欲望を叶えるために生まれてきた。
電車や車は、「ラクして遠くまで行きたい」という欲望を叶えるために生まれたものだし、魔法瓶は「温かい飲み物をそのまま持ち運びたい」という欲を叶えるために生まれたものだ。
欲というのは、わたしたちに新しい視点をくれるのだ。
わたしの発明品も、欲望をきっかけにして発想されたものが多い。
「欲望」という言葉は、ふだんの生活ではちょっとネガティブな響きを持つことが多いけれど、アイディアを考えるときには、とても重要なものだ。
ふだんの生活で、「あー仕事休みてー」とか「お金ほしいー」と思うことはないだろか。
わたしは毎日のように思っているのだが、こういった感情もアイディアにつながる欲の一つだ。
「あー仕事休みてー」のあとに、きっと、自分を奮い立たせて仕事に行ったり(えらい)、サボったりすると思うのだが、そんな「欲」を感じているとき、一度立ち止まって、その欲を観察したり、解消する方法を考えてみてほしい。
「欲」を深掘りする
なぜ仕事を休みたいのに休めないのだろうか。
それにはそれぞれの理由があると思うが、わたしの場合は仮病を使って休んだところでバレたら怖いからだ。
電話で休む連絡をするとき、声色が元気だったら上司に疑われてしまう。
わたしは気が弱いので、仮病を使って休んだとしても「バレてるのではないか」と、 一日中ビクビクしてしまう。仮病で休むなという話なのだが。
また、「仮病で休む」ことについて、他にどんな問題があるか考えると、「仮病のレパートリーが枯渇する」ということも思いついた。
「お腹が痛い」だけで休んでいると、「こいつ、いつもお腹痛いで休んでるな」と思われてしまうし、「親戚が亡くなった」という噓の理由は何度も使えない。
生活の中で生じる欲を深掘りし、その充足を妨げている障害を分析することで、問題が見えてくる。
朝起きて、仕事をして、帰ってきてダラダラして寝る。そんななにげない日常の中に、たくさんの欲が潜んでいる。
朝が苦手な人は「二度寝したい」と思うかもしれないし、会社に行ったら「昼寝したい」と思うかもしれない。 その欲にはどんな問題があるだろう。
「欲求の矛盾」に注目すると、アイディアが格段に考えやすくなる。
「仮病で休んじゃダメだけど、ダラダラしたい」、深夜には、「ラーメン食べたいけど太りたくない」などわがままな欲が生まれるかもしれない。
「欲求」を最大化させる
抽象的な「欲」をもう少し具体的にするために、マズローの欲求5段階説を参考にしながら考えてみよう。
心理学者のマズローによると、人間の欲求には「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5段階があるそうだが、この中でも「生理的欲求」と「承認欲求」に注目すると、アイディアを考えやすい。
わたしたちは、つねに何かしらの欲求を持っているが、その欲求が最大化したときにアイディアにつながりやすくなる。
おしっこを我慢しているときなんかがそうだ。
人間誰しも、おしっこを我慢したことがあるはずだが、我慢しているとき、この状況にどう対処しようかと精神が集中するのを感じたことはないだろうか。
体勢を変えて膀胱に空きをつくったり、深呼吸して気を静めたり、トイレに行く最短ルートをシミュレーションしたり。
このように、欲求が最大化するとそれをどう処理するかというところで脳がフル回転する。「窮すれば通ず」という言い回しもあるが、追いつめられたときにこそひらめきが生まれる。
つまり、強烈な欲求に対してその解決方法を素直に考えると、ひらめきが生まれる可能性が高いのだ。
「生理的欲求」が尿意を我慢しているときに最大化するとしたら、「承認欲求」 はどうだろうか。
たとえば、インスタグラムやフェイスブックで「いいね」がもらえないときに最大化するかもしれない。
また、これを利用して、そうでもない欲求を自分の中でわざと最大化させてみると、 また別のアイディアが出てきそうだ。
たとえば、「今日はラーメンの気分だなあ」くらいの欲求を、「いますぐにラーメンを食べなきゃ死ぬ」レベルまで自分の中で引き上げると、「10秒でラーメンが食べられる方法はないだろうか」「近所のラーメン屋が網羅されているマップがほしい」などと、思考を進めることができる。
客観的な視点も忘れない
欲望をはじめとする「自分ごと」からアイディアを考えるとき、重要なのは客観的な視点だ。
欲望から考えたアイディアは、不愉快だったり下品に思われる可能性があり、企画やイベントなど、世に出すアイディアを考えている際は、どこかのタイミングで一度立ち止まって客観視することが大切だ。
とくにわたしは、だいたい人と相談せずに一人で「無駄づくり」のアイディアを考えているので、公開する前に必ずアイディアを一度、冷静に見る時間を持つようにしている。
アイディアを客観的に見るためには、実際に人に見てもらうのがいいとは思うが、とくにそういう相手がいなければ、年の離れた会社の部下や上司、性別が反対の相手など、身近にいる自分とは感覚が違う人の顔を思い浮かべてみるといい。
「あの人はどう思うだろう?」と、少し想像してみてほしい。笑うだろうか、怒るだろうか。
そうやって想像力を働かせて他人の気持ちになってみると、誰かを不愉快にさせてしまうかもしれない要素や、もっとおもしろくできる方法が見えてくることもある。
また、もう一つチェックしたいのが、「法に抵触していないか」だ。
なんだそれ、 と思うかもしれないが、アイディアがちょっとした犯罪になってしまうこともあるのだ。
以前、「お金をせびれるマシーン」をつくった。ウィキペディアの寄付を募る広告に着想を得たものだが、友だちと話しているときに、それとなく寄付を募るメッセージを出すというものだ。
つくって公開してから知ったのだが、これは軽犯罪法に違反する行為らしい。 軽犯罪法には「こじきをし、又はこじきをさせた者」は罰せられるとあるのだが、 これに抵触してしまうようだ。
ただ、マシーンをつくって公開しただけで、実際にせびったわけではないのでセーフではあった。
また、「小銭を拾うマシーン」をつくったことがあるが、小銭を拾う行為は「遺失物等横領罪」である。わたしは法に抵触しまくっている。
最初から他人の視点を意識しすぎるとアイディアがありきたりなものになってしまうが、最後には「他人の視点」を想像することも必要なのだ。
自分の心を観察しながらアイディアを考えていると、自分という人間に気づけることがいろいろと出てくる。
ちょっと性格の悪い自分や、ちょっとわがままな自分に気づいてしまったときも、「自分にはそんな部分もある」ということを受け入れて、そこから思考を広げてみてほしい。
きっと、自分にしか考えられないおもしろいアイディアが生まれるはずだ。
考えることが楽しくなる!アイディアのヒントを得られる一冊
同書は、「言葉」「自分のこと」「情報」「感情」など、身近にあるところからアイディアを得られるヒントが満載。
どれも実際に試しやすいものばかりなので、読み進めるうちにどんどんアイディアを練りたくなりました。
考えに煮詰まったとき、ぜひパラパラとページをめくってみてください!
ビジネスパーソンインタビュー
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