ビジネスパーソンインタビュー
「急にどっから出てきた? その第六感」
「腐れオカルト野郎か?」パートナーへの愛情の伝え方をアルピー平子さんに相談したら失笑された
新R25編集部
パートナーに対して、「あの人とは、言葉がなくても通じる」なんて考えてしまったことはありませんか?
今回は、「パートナーとのコミュニケーション」について考えるために、「奥様へ愛の言葉を贈り続けている」というお笑い芸人・アルコ&ピースの平子祐希さんにインタビュー。
平子さんは、今年9月に奥様とのエピソードをまとめた書籍『今日も嫁を口説こうか』(扶桑社)を上梓し、愛妻家芸人としてもテレビ・ラジオで奥様への愛情を露わにしています。
「正直、パートナーを口説き続けるなんてムリじゃない?」というのが本音なのですが…そんな考えで行った筆者に、「あなたはオカルト野郎ですよ」という厳しいお言葉をいただいてしまいました…。
パートナーへの愛の言葉をサボっている全読者に、平子さんの言葉を読んでいただきたいです。
〈聞き手=いぬいはやと〉
<プロフィール> 【平子祐希(ひらこ・ゆうき)】1978年生まれ、福島県出身。2006年に酒井健太とアルコ&ピースを結成。現在は太田プロダクションに所属し、テレビ番組『勇者ああああ』、ラジオ番組『アルコ&ピースD.C.GARAGE』などで活躍中
いつ離れるかわからない。だから『今日も嫁を口説こうか』
いぬい
平子さんのすごいところは、奥様と結婚して14年が経った今でも「この人に振り向いてほしい」って姿勢を崩さないところだと思います。
“愛妻家芸人”のような企画でも、世間に衝撃を与えてますよね。
平子さん
「愛妻」っぽいトークをして、こんなにマイノリティになるとは思ってなかったんですよ。
もっと「わかるわかる!」って声が集まると思ってました(笑)。
いぬい
恋人や奥さんがいるR25世代でも、パートナーを大事にしたり愛情表現したくなったりする気持ちって、長く一緒にいると保てないんじゃないかと思っていて…
平子さん
そうですか? 逆に僕は、どうして「この人に振り向いてほしい」が崩れちゃうんだろう?と思います。
質問に質問で返しちゃいますけど。
言われてみると、たしかに…
いぬい
えっと…なんというか、長く付き合うと「これだけ一緒にいるし、お互いのことはわかってるんじゃないか」と思ってしまって。
不安が少ないから、言葉で「振り向かせる」ことも少なくなるのかなと…
平子さん
あ、僕はそれがわからないんですよね。
平子さん
「不安がなくなる」「一緒にいるのが当たり前になる」って感覚がわからない。
「今は、一緒に居てもらってるな」って感覚です。
真由美(奥様)だっていつ外に走るかわからないですからね。
いぬい
ええっ!? でも、テレビでもラジオでも、書籍でも、あれだけラブラブな夫婦だと話してますよね?
平子さん
それでも、恐れはありますよ。
たとえば、窓の小さい、誰にも見られない小部屋があるとするじゃないですか。そこに奥さんがベッカムと二人きりになったら…
向こうからモーションをかけられたら…絶対何もしないとは限らないじゃないですか。
いぬい
ベッカム…?
「昔、真由美がベッカムのこと『かっこいい』って言ってて…」
平子さん
関係なんていつ壊れるか分かんないし、だからこそ慈しまなきゃいけない、大切に愛でなきゃいけないっていう感覚なんですよ。
真由美だってひとりの女性として、30代後半、もう少しで40歳を迎えますけど…熟年の女性特有の色香がいつ騒ぎ出すかっていうことに対して、僕は常に緊張感を持っている。
相手の目をいかにこっちに向けさせ続けるかっていうのは、多分一生ついて回る課題だと思うんですよね。
いぬい
決して「安心」はないと…
平子さん
実際、僕はいまだに試行錯誤の毎日ですね。結局は(女心と)秋の空というか。昨日よかったものが真由美にとって今日もいい、明日もいいとは限らないと思うので。
1日単位、1時間単位でお伺いを立ててる気持ちですね。
これが好きなのかな、これについてはどう思ってるのかなって。「この服どうかな…?」って、十何年間常に、ドキドキしながら嫁の評価を待ってます。
いぬい
なるほど、そういう気持ちがあって『今日も嫁を口説こうか』なんですね…本のタイトルの意味が、ようやくしっくりきました。
「言葉に出さなくても伝わる」は、ただのロマンチスト
いぬい
僕、実は平子さんに相談してみたかったことがあって…
平子さん
なんですか?
いぬい
1年以上前に恋人と別れたんですけど、そのとき「あなたが私のことを好きかわからないから」って言われたんですね。
当時の自分としては、お互いそんなに“好き好き”言ってなくても、居心地がいいし、当然伝わってるだろうっていう気持ちになってしまっていて…
どうしたらよかったんでしょう?
平子さん
そういう人たちって、多分ロマンチストだと思うんですよね。
いぬい
ロマンチストですか…?
平子さん
言葉に出さずとも、頭で思ってることが“空気感”“雰囲気”だけで伝わるんじゃないかってどっかで思ってる。逆にロマンチックすぎるでしょ。
僕は超現実主義者なんですよ。「言葉に出して伝えてないことが、伝わるわけがない」と思うから一生懸命言葉に出してるだけであって。
いぬいさんみたいな大多数の人のことは、「自分がテレパシーかなんか使えると思ってるのかな? 超ロマンチックだな」って思います。
いぬい
ちょっと耳が痛いですね…!
平子さん
相手の気持ちも自分の気持ちも、伝えあってないのに「言葉に出さずとも伝わるはず」っていう感覚自体が…急にどっから出てきた?その第六感?っていう。
いぬい
…オブラートに包んで「ロマンチスト」と言ってくれてますけど、それはつまり「妄想にすぎない」と…
平子さん
そうですね…
はっきり言うと、「腐れオカルト野郎」ですよね(笑)。
く、腐れ…
平子さん
2人で過ごしてる日常をPVかなんかだと思って、現実が見えていないんじゃないかって。
いぬい
……奥様への愛を伝え続けている平子さんから言われると、ものすごく説得力があります……
平子さん
だからこそ、ちゃんと言葉にして愛を伝える。
妻である真由美のことを「PVのなかのきれいな女性」ではなく、「一生悩み続ける恋愛相手」として見ているんです。
いぬい
すごい…
「言葉にしなくても伝わる、はありえないこと」だと、心に強く刻みます…
愛の言葉はダサくていい。わからなかったら平子をなぞれ
いぬい
とはいえ、いきなり「愛を伝えろ」と言われても難しいですよね…
平子さんは、どういう伝え方をしてるんですか?
平子さん
パートナーに愛を伝えるのは、ダサい言い方であるほどいいんです。
平子さん
カッコいい言葉だと、放ったほうの加点ポイントになっちゃうんですよ。
歴史上の名言みたいなカッコいい言葉は言えるかもしれないけど、それが相手に本当に浸透しているとは限らない。
いぬい
確かに、言いまわしとかに気を取られて、自分本位の言葉を放ってしまうこともあるかも。
平子さん
大人になってから伝える言葉って、自分の見た目よりも幼いくらいの言葉のほうが、ギャップが武器になって、受け取りやすくなると思うんです。
「愛してるよ」よりも、「いっぱい愛してるよ」「たくさん大好き」のほうが、相手への浸透率が上がる気がする。
「たくさん大好き」…
平子さん
もちろん、子供っぽい人が言うと子供に聞こえるので…バランスは必要ですけど。
いぬい
大人がピュアに要望・感情を伝えるから、素敵に聞こえるんですね。
「ダサい言葉で愛を伝える」ことを、読者が真似するとしたら何に気をつけたらいいですか?
平子さん
ガワ(外見)をしっかり整えろ、ってことですかね…身なりをきれいにして、整えて、ってしていると、内側から出た愛の言葉が幼いほど、ギャップが出て説得力を帯びる。
あとは、文字面のままで言ってみることですかね。変にオリジナリティを出そうとせず「いっぱい愛してるよ」「たくさん大好き」…
“言えない”と思った人は、この通りに平子のセリフをなぞってみるといいですよ。
身なりもシックな平子さんが言うと、説得力がある…
いぬい
でも、いつも同じ言葉だと“マンネリ化”しませんか?
平子さん
パートナーとの関係において、まったく同じ“2周目”ってないと思うんですよ。
1年目、2年目、3年目で、相手との関係性もすることの内容も、まわりの環境も違うはず。
なのに「同じ景色だ」って思っちゃうから飽きにつながると思っていて。“2周目以降”がこれまで過ごした時間と同じじゃないことに、気づくか気づかないかの差だと思いますね。
愛妻家・平子さんなりの夫婦ケンカのやり方
いぬい
ちなみに、長く一緒にいるとパートナーとケンカすることもあると思います。そういうときは、どうコミュニケーションをとりますか?
平子さん
本にも書いたんですが、僕は「ケンカは好みの異性のカタログの見せ合い」だと思っていて。
そもそも、ケンカって「もっとこうあってほしい」「ここが直れば素敵なのに」って要望の伝え合いだと思うんです。
いぬい
好みの異性のカタログ…!
平子さん
だから、僕は真由美の言ってくれたことはすべていったん受け入れてみようと思ってます。もともとお互いの趣味嗜好も違うほうなので、けっこういろいろ言われるんです。
この髪型もそうですね。真由美が「ふわふわのパーマにしてみて」って言ってきたので、この間変えて。
だからこんなにふわふわに
平子さん
芸人だと、コロコロ髪型を変えて洒落っ気を出して…なんてイジリの対象なんですけど、僕は真由美のタイプに近づけることのほうが快感です。
だから、外見に関しては僕のオリジナリティなんてほぼなくて、“真由美の好みのカタログ”の内容通りになってます。
いぬい
逆に、平子さんから真由美さんに何か言うことはありますか?
平子さん
付き合いたてのころは、話し方を“直してほしい”と言ってましたね。けっこうキャピッてたというか、よく言えば明るい子で、人見知りせずに一瞬で懐に入り込んでくるタイプだったんで。
口調が幼かったので、「きれいだからもったいないよ」と思って。
いぬい
好みの伝え合い、と捉えたら、感情的にならずに話し合いできるかもしれないです。
ただ…だいたいのカップルってそうは言っても感情をぶつけてケンカしちゃうじゃないですか。
平子さん
どうしても感情的になってしまう人は、「自分の意見を伝えるときは、相手の手を握りながら話す」と決めるといいですよ。
体温を感じながら、相手を傷つけようとするのは難しいですから。
いぬい
最後までカッコよすぎる教え…
ありがとうございました…!
平子さんの言葉の端々から、彼の愛情表現が心の底から湧き出ているものだということが伝わってきました。
「パートナーとのコミュニケーションに悩んでいる」という人がいたら、平子さんの書籍から、恋人との関係の作り方を学んでみてはいかがでしょうか。
きっと、今まで使っていなかった愛の言葉を、恥ずかしがらず伝えたくなるはずです。
〈取材・文=いぬいはやと(@inuiiii_)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=藤原慶(@ph_fujiwarakei)〉
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記事のなかで出たお話のほかにも、「高2で付き合い始めて2カ月目の感覚が16年続いてる」「いつだって『これが最後』と思って抱いている」など、気になりすぎる内容がたくさん…
ツッコミなしで展開される、平子さんの“異常な愛情”をお楽しみください!
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