ビジネスパーソンインタビュー
20代のターニングポイントは、「●●さんの膝ぽん事変」…!?
ふかわりょう「“生きづらさ”は幸せへの案内表示。足並みなんてそろわなくていい」
新R25編集部
まわりに合わせなくちゃいけない瞬間って、たくさんありますよね。
職場で、社会で、友人関係で…まわりに合わせてばかりで、生きづらさを感じてしまっている人もいるのでは…。
そこで今回は、日常で感じる“生きづらさ”をつづったエッセイ『世の中と足並みがそろわない』(新潮社)で、「足並みなんてそう簡単にそろってたまるか」と書かれているふかわりょうさんに取材。
まわりに合わせること、自分らしさを貫くこと。どうバランス取ればいいの…?
教えてください、ふかわさん!
〈聞き手=サノトモキ〉
【ふかわりょう】1974年生まれ。慶應義塾大学在学中にお笑い芸人としてデビュー。長髪に白いターバンを装着し、「小心者克服講座」でブレイク。「シュールの貴公子」「いじられ芸人」を経て、現在は『5時に夢中!』のMCや『ひるおび!』のコメンテーターを務めるほか、DJとして活動するなど活躍の幅は多岐にわたる
まわりに合わせて無理をしていたふかわさんを導いたのは…出川哲朗の“膝ぽん”
サノ
書籍は、「小学校の入学式ですでに“生きづらさ”を感じていた」という早熟すぎるエピソードから始まってますが…
独自の道を行ってるイメージが強いふかわさんも、「まわりに合わせてた」時期ってあるんですか?
ふかわさん
もちろんありましたよ。20代はまわりに合わせてばかりで…自分にウソをつきながら仕事をしていた10年間だったと思います。
ふかわさん
私は、20歳で芸能界の門を叩いてわりとすぐに、エアロビクスの音楽に合わせてあるあるをつぶやく「小心者講座」がうまくいって、チヤホヤしてもらえるようになったんですね。
“絡みづらい”という欠点も「シュールの貴公子」「一言王子」ともてはやしてもらって、「いじられ芸人」として居場所をもらえるようになった。
サノ
真顔で「お前んち、天井低くない?」って言ってんのめっちゃ好きだったな…
デビューしてすぐ自分のポジションを手に入れて、好調なスタートですね。
ふかわさん
ただ、当時の私はいじられるのがイヤだったんですよ。「自分はいじる側の人間だ」と思っていたので、「こんなの本当の自分じゃない」とモヤモヤしていました。
でも当時は「テレビに出たい」の一心でガムシャラに仕事してたので、モヤモヤを言語化する余裕もなく、まわりに求められるがままに続けていたんですね。
20代、こういう人少なくないのでは…?
ふかわさん
でも20代後半になって、「こんなに力を入れなくちゃできない仕事はすぐに限界が来る」と思うようになったんです。
タモリさん、ビートたけしさん…長く活躍されてる先輩方はみなさん自然体。
「無理が生じている、“自分らしさ”のないキャラクターではいずれ精神が破綻する」と思い、気持ちがグラつきはじめました。
サノ
無理が生じている状況では長続きしない。どんな仕事でも同じだな…
どう折り合いをつけたんですか?
ふかわさん
ターニングポイントは、「出川哲朗さんの膝ぽん事変」ですね。
「膝ぽん事変」…?
ふかわさん
当時すでに「いじられ芸人」の神様だった出川哲朗さんが、ロケの合間に腰を下ろして…
私の膝にポンと手を置いて、こう言うんです。
「ポスト出川は、お前だからな」と。
サノ
いじられの神様からの後継者指名…!
スタンスに迷ってるなか…どう受け止めたんですか?
ふかわさん
出川さんの一言で、「俺の道はこっちじゃない」と心が決まりました。
あっ、神様の思いとは逆方向に…
ふかわさん
生半可な気持ちでは、「ポスト出川」は務まらない。
そこで私は大きく舵を切ったんですね。
サノ
それが結果的に「ふかわりょう」につながったと。
まさか出川さん、ふかわさんの「自分らしさ」を開花させるために、わざと…
ふかわさん
いや、なんも考えてないでしょう(笑)。
違いました
自分らしく生きたい人こそ…「自分らしさなんて、いったん捨てちまえ」
サノ
でも、つい流されちゃう人って少なくないと思うんです。
どうすればふかわさんのように、自分らしく生きられるようになるんでしょうか?
ふかわさん
うーん、ここまで「自分らしさ」の話をしてきてなんですけど…
自分らしく生きたい人は、「自分らしさ」とか言ってないでまずはガムシャラに頑張ったほうがいいと思います。
簡単に言えば、「自分らしさなんていったん捨てちまえ」って話です。
なるほど、全然わからん
ふかわさん
「自分らしさ」なんて、頭で考えて答えが出るものでも、昨日今日で手に入るものでもないんですよ。
考えはじめたら、終わりのない地獄しか待ってない。心当たりありません?(笑)
サノ
…あるかも。
ふかわさん
「自分らしさ」って、社会やまわりの人との関わり合いのなかでしか見えてこないんです。
「自分と価値観が違う人たち」「しっくりこない場所」こそが、自分のかたちを浮かび上がらせるので。
今っていろんな情報をキャッチできるから、周囲の芝がより青く見えてすぐ環境を変えたくなっちゃうかもしれないけど…そこでモヤモヤを蓄積させながらも全力疾走できる人は強い。
「何も考えずにがむしゃらに頑張る20代」というのは、人生において本当に重要な熟成期間だと思いますよ。
「これ、20代の方にはぜひ頭の片隅に置いておいていただきたいですね」
生きづらさがあるからこそ、人間は「次の場所」に動きだせる
サノ
ただ、「ガムシャラに走れ」といっても、どうしても悩むことってあると思うんですよね。「何も考えずに頑張る」ってかなり難しい気が…
ふかわさん
たしかに、今回の『世の中と足並みがそろわない』というタイトルがSNSでかなり反響をいただいて…
想像以上に多くの人が、生きづらさに悩んでるんだなと感じました。
ただ、ですよ。
ふかわさん
足並みなんか、そろわなくていいんです。むしろ、生きづらさやまわりへの違和感がなくなったら終わり。
「こんなもんだよね」と無理やりしっくりこさせた瞬間、私たちの人生は止まってしまうんです。
サノ
…!?
ふかわさん
今の場所にしっくりこないから、私たちは次の場所に向かって動き出せるんですよ。
私も、「出川哲朗さんの膝ぽん事変」がなく、あのまま自分らしさのない「いじられ芸人」に落ち着いていたら、この年齢まで走り続けられなかったと思います。
なんだかんだ、“生きづらさ”って人間の動力になるんですよね。
ふかわさん
物質は、傾きがあるから動き出すんです。
それと同じで、世の中と自分のズレが生んだ傾斜が、人間を前に転がしていくんですよ。
「もう自分はここで完璧! 落ち着いた~」となっているときは、むしろ危険だと思います。やりたいことがなくなって、人生が止まってしまう。
サノ
そうか…
違和感とか生きづらさって、悪いことのように思いがちですけど、実はその傾斜の先に転がっていくべき「次」が待ってるんですね。
ふかわさん
そうそう。「あなたの幸せ、こっちにあるかもしれませんよ」って案内表示だと思ってしまえばいい。
ピタゴラスイッチのように、世の中との傾斜を楽しんで転がっていくのが人生だ、と捉えたほうがいいんです。
私もいまだに、世の中への違和感とか、まわりにイヤイヤ合わせることもいっぱいありますよ。この本のタイトルだって、イヤイヤ出版社さんに足並みそろえてるんだから…
サノ
(そうなんだ)
「なんか…やさしく寄り添ってる感じがイヤなんですよ。この本むしろ、世の中に対するお小言なので(笑)」
サノ
今日はありがとうございました。
まわりに合わせて自分を押し殺しちゃってる人、すごく背中を押されるお話だったと思います。
ふかわさん
20代の方はとくに、「自分らしさ」より「生きづらさ」を当てにして歩いたほうがいいと思います。
思う存分、「生きづらさ」が作る坂道を転がってみてはいかがでしょうか!
「まあ私のような人間になっちゃうかもしれないので、お好みによるかと思いますけど(笑)」
まわりに合わせること、自分らしく生きること。
この2つ、どちらか片方しか選べないトレードオフだと思ってしまっていました。ふかわさんが教えてくれた「まわりに合わせる経験を積むなかで、自分らしさが磨かれていく」という相関関係…すごく「まわりに合わせる毎日」を前向きに捉えられる気がしました。
僕も生きづらさの先に待つ未来を楽しみに、思い切り転がってやろうと思います!
〈取材・文=サノトモキ(@mkby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉
ふかわさんの書籍『世の中と足並みがそろわない』が絶賛発売中!
ふかわさんが「世の中へのお小言」と表現したエッセイ『世の中と足並みがそろわない』が絶賛発売中!
スマホ画面が割れたままの女性、「ポスト出川」から舵を切った30歳、どうしても略せない言葉、アイスランドで感じる死生観、タモリさんからの突然の電話…。
どこにもなじめない、何にも染まれない。世の中との隔たりと向き合う“隔たリスト”ふかわさんの、ちょっと歪で愉快なエッセイ集。
気になった方はぜひチェックしてみてください!
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