ビジネスパーソンインタビュー

「誹謗中傷する気持ちを理解できる?」 田村淳らビジネス賢者に直撃 #この指とめよう

やめられない人は中毒になっている?

「誹謗中傷する気持ちを理解できる?」 田村淳らビジネス賢者に直撃 #この指とめよう

新R25編集部

2020/11/24

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現在、SNSでの誹謗中傷を減らす啓発広告を掲出する資金調達プロジェクトが動いています。

そのプロジェクト名は「#この指とめよう」。

タレントの田村淳さんやインフルエンサーのけんすうさんが声を上げたことで、注目を集めるこのプロジェクト。

プロジェクト紹介文の冒頭には「指一本で、人は人を追い込むことができる。だから指一本で、人を救うこともできるはずだ」とつづられています。

誰かの背中を押す、ポジティブな情報発信をする」という編集方針をもっとも大切にしている新R25もまた、この思想に共感しました。

ただ、もしかしたら読者のなかには、「悪いことだとわかっていながらも、誹謗中傷をしてしまう人」もいるかもしれない。そんな方に対して、どんなメッセージを届ければいいだろうか…。

そこで新R25は考えました。

これまで記事に登場していただいた方をはじめとしたビジネス賢者たちだったら、「誹謗中傷している人」にどんな言葉をかけるのだろうか?

今回は8人の方に、以下の2つの質問に答えてもらいました。

誹謗中傷する気持ちを理解できる?

悪いことだとわかっていながらも、誹謗中傷する人たちにどんな声をかける

この質問に対し、「自分ならどう答えるか?」と意識しながら読んでみてください。

田村淳「理解するために、誹謗中傷してくる人にDM取材を申し込んでいる」

【田村淳(たむら・あつし)】1973年山口県生まれ。1993年ロンドンブーツ1号2号結成。バラエティ番組や経済・情報番組などでレギュラー番組多数。慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科に在学中。そして今春にはYouTube「ロンブーチャンネル」を開設するなど、テレビタレントの枠を超えさらなる可能性を追求しつづける

誹謗中傷する気持ちを理解できる?

淳さん

まったく理解できないです

だから理解するために、誹謗中傷してくる人にDM取材を申し込むのですが…受けてくれる人は1人もいません。

公の場所に出て語ってくれる人がいれば、理解が進むと感じています。

誹謗中傷する人たちにどんな声をかける?

淳さん

悪いことだとわかって誹謗中傷する人にかける言葉は、悪いことだからおやめなさいってことしかないですね…

悪いことだと認識していない人にも同様、悪いことだからおやめなさい。

茂木健一郎「温かい血が流れた人間だからこそ、ときには他人の悪口を言ってしまう」

撮影=長谷英史

【茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)】1962年、東京都生まれ。脳科学者。脳科学を切り口にさまざまなメディアに出演している。著書多数

誹謗中傷する気持ちを理解できる?

茂木さん

理解できないと思ったら、そこに「」ができる。

「壁」を超えなくては、人生も世の中もよくならない

脳の前頭葉を中心としてつくられる「心の理論」は、共感できない相手の内面こそ「モデル」にして理解しようとする。

嫌だと思ってしまいがちな卑劣な相手こそ、「心の理論」を用いて理解することで、自分の世界を大きくできるはずなのだ

誹謗中傷する人たちにどんな声をかける?

茂木さん

誹謗中傷をするのは、もっとよくなりたい素晴らしい人生を送りたいという気持ちがあるから。

石ころは誹謗中傷などしない。

温かい血が流れた人間だからこそ、ときには嫉妬や心の混乱のなかで他人の悪口を言ってしまう

でも、だいじょうぶ。

脳の感情の中枢である扁桃体は「反転」が得意。

誹謗中傷のネガティヴが、自分をよりよく生きためのポジティヴに反転すれば、誹謗中傷のエネルギーを自分への応援にする、まさかの「反転倍返し」ができる。

治部れんげ「『自分は正しい。相手は間違っている』が誹謗中傷につながる」

【治部れんげ(じぶ・れんげ)】1997年、一橋大学法学部卒。日経BP社にて経済誌記者。2006~07年、ミシガン大学フルブライト客員研究員。2014年よりフリージャーナリスト。2018年、一橋大学経営学修士課程修了。メディア・経営・教育とジェンダーやダイバーシティについて執筆。現在、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。東京大学大学院情報学環客員研究員。日本政府主催の国際女性会議WAW!国内アドバイザー。G20に女性政策を提言するW20日本運営委員会委員(2019年)、東京都男女平等参画審議会委員(第5期)。豊島区男女共同参画推進会議会長。朝日新聞論壇委員。公益財団法人ジョイセフ理事。一般財団法人女性労働協会評議員。上場企業の女性役員3割を目指す30%ClubJapan運営委員。UN Women日本事務所による広告のバイアスをなくす「アンステレオタイプアライアンス日本支部」アドバイザー

誹謗中傷する気持ちを理解できる?

治部さん

生きていると色々なことがあります。

特定の相手を「許せない」と思ったり、怒りをコントロールできなくなったりすることもあるでしょう。その気持ちはよくわかります。

ただし、怒りを感じることと、誹謗中傷という形で発散することには距離があると思います。

誹謗中傷する人たちにどんな声をかける?

治部さん

誹謗中傷は、した側はすぐ忘れてしまうかもしれませんが、された側は忘れられないものですし、傷は長く残ります。

ほとんどの人は「誹謗中傷してやろう」とは思っておらず、「自分は正しい。相手は間違っている」と強い言葉で相手を非難するうちに、それが誹謗中傷になります。

誹謗中傷した相手との関係は、壊れて取り戻せません。

はあちゅう「自分の実名・顔写真つきで、一生残っていい言葉だけ書いてほしい」

撮影=長谷英史

【はあちゅう】作家・ブロガー。慶應義塾大学法学部卒業後、電通、トレンダーズを経て独立。「人生全部コンテンツ」をモットーに、ネット時代の新たな作家の形を探り、媒体を横断した発信を続ける。2018年にAV男優の「しみけん」氏との事実婚を発表し、2019年9月に第一子を出産。著書に『「自分」を仕事にする生き方』(幻冬舎)、『旦那観察日記』(スクウェア・エニックス)など

誹謗中傷する気持ちを理解できる?

はあちゅうさん

理解はできる。誹謗中傷と批判の区別がついていないのだと思う。

「批判」とは、相手に最低限の敬意を払い、褒めるとき以上の綿密なリサーチをして、信念にもとづいておこなう言論行為です。

批判という「意見」は表現の自由で守られます。

相手をおとしめ、事情や背景をよく調べもせず、一時的な感情に流されて吐く汚い言葉は「誹謗中傷」です

これは大人によるいじめであり、相手の権利を侵害するもので、裁判では「違法」とされます。

誹謗中傷する人たちにどんな声をかける?

はあちゅうさん

自分が口に出した言葉は、いつかすべて自分に返ってきます。

自分の実名・顔写真つきで、一生残っていい言葉だけを書いてください。

それがSNSで発言するということです。

けんすう「悪いことだと思ってもやめられないのは、中毒になっているから」

撮影=長谷英史

【けんすう】アル株式会社代表取締役社長。1981年生まれ。19才で学生コミュニティ「ミルクカフェ」を立ち上げ、大学在学中にネット企業の社長に就任。2006年、リクルートに入社。2009年に退職し、nanapi代表取締役に就任。2018年にはアル株式会社を設立し、2019年1月にマンガ情報Webサービス「アル」をリリース

誹謗中傷する気持ちを理解できる?

けんすうさん

理解できます!

人間の感情はだいたい反射神経だと思うので、長期的な視点とか相手の気持ちを考えたりする前に、反射で何でも書いちゃったりするんじゃないかなぁと思います。

反射で何でも書いてたら、正義感から相手を叩きたくなることもあるのが普通じゃないかなと。

誹謗中傷する人たちにどんな声をかける?

けんすうさん

たぶん、悪いことだと思ってやっている人はほとんどいないと思ってはいて、みんな「自分は正義側に立っている」と思って爽快な気分でやっているんじゃないかと思います。

悪いことだと思ってもやめられないのは、中毒になっていると思うので、適切にSNS断ちとかを医療の力を借りてやったほうがいいかと…

倉持由香「嫌いなものに時間を割くのは辞めて、楽しいことで毎日の生活を満たそう」

撮影=長谷英史

【倉持由香(くらもち・ゆか)】1991年生まれ。グラビアアイドル、タレント。SNS上で「グラドル自画撮り部」を立ち上げ、自らに「尻職人」とキャッチコピーを付ける。長年の努力が実り、憧れのタワマン暮らしをはじめるなど、「ビジネスが語れるグラビアアイドル」としてもブレイク中。2019年にはプロゲーマーのふ~どさんとの結婚を発表した

誹謗中傷する気持ちを理解できる?

倉持さん

人間なので、やっぱり好き嫌いという感情は生まれるものだとは思います。

それは押さえ込もうと思っても難しいですよね。

ただ、だからと言って本人に直接リプライで攻撃したり、掲示板やコメントに誹謗中傷を書き込むという気持ちはまったくわからないのです…

誹謗中傷する人たちにどんな声をかける?

倉持さん

お仕事や学校などで、日常生活のイラだち・ストレスなどを抱えていて、そのモヤモヤをどうにか発散しているのでしょうか…?

嫌いなもののことを考えたり、書き込んだりする時間は本当にもったいないです!

好きなもの、楽しいものは世の中にいっぱいあるので、嫌いなものに時間を割くのは辞めて、楽しいことで毎日の生活を満たしてください

嫌いなものには関わらないで大丈夫なんですよ!!

古田大輔「(誹謗中傷する人を)想像することはできても、わかっているとは言えない」

【古田大輔(ふるた・だいすけ)】朝日新聞記者として社会部、シンガポール支局長などを経てデジタル編集部。2015年に退社してBuzzFeed Japan創刊編集長に就任し、3年で国内有数のネットメディアに。2019年に独立してメディアのDXやコラボを支援する株式会社メディアコラボを設立し、ジャーナリスト/メディアコンサルとして活動。2020年9月よりGoogle News Labティーチングフェロー。その他にインターネットメディア協会理事、ファクトチェック・イニシアティブ理事など

誹謗中傷する気持ちを理解できる?

古田さん

誰かを傷つける言葉を言ったことがない人なんていないでしょう。

それでも、いきなり誰かを馬鹿だとか、日本から出ていけだとか、そこまで言う人の気持ちは、僕にはわかりません。

想像することはできても、わかっているとは言えない

直接、ゆっくりと話を聞いてみたい。

なぜ、あなたはその言葉を投げかけたんですか?

その言葉以外に、自分の考えや感情を伝える方法はなかったんでしょうか?

誹謗中傷する人たちにどんな声をかける?

古田さん

なぜ誹謗中傷をしたのか、その理由を色々と聞いたうえで、こう聞いてみたいです。

それらの理由があったとして、あなたがその言葉を相手に投げかけたことで、世の中の誰かが少しでも幸せになったでしょうか?

あなたにとってすら、世の中が少しトゲトゲしく、住みにくくなったのでは?

渡辺将基「“人間はみな弱いものだ”という認識を持ってほしい」

【渡辺将基(わたなべ・まさき)】1983年生まれ、静岡県出身。2008年、モンスター・ラボに入社。カカクコムを経て、2012年、サイバーエージェントに入社し、社長室に配属される。2017年9月に若手ビジネスパーソン向けメディア『新R25』編集長に就任

誹謗中傷する気持ちを理解できる?

渡辺

自分の心がすさんでいるときや余裕がないときに、他者に対して攻撃的になってしまう気持ちは理解できます。

かつ、世間の批判の的になっている人に対しては、口撃することの罪悪感も薄らいでしまうし、自分の声が深く本人には届かないだろうと思ってしまう

何のストッパーもない状況下であれば誰しもがそういった行為に手を染める可能性はあって、ただ「まわりから誹謗中傷をしている人だと見られたくない」というプライドで自分を守っている人も多いと思います。

自分自身もそうかもしれません。

誹謗中傷する人たちにどんな声をかける?

渡辺

改めて「人間はみな弱いものだ」という認識を持ってほしいです。

僕自身、そこそこ真面目に生きているほうだとは思いますが、それでも世間に知られなくない事実の一つや二つはあります。

これは誹謗中傷をしている人たちも同じだと思うんです(責めているわけではなくて、ごく普通のことだと思います)。

人間が当たり前に持っているそういった“弱さ”が公になってしまうというのは、本当に気の毒なことだと思います。

なので、せめて彼らをこれ以上追い込むのはやめてあげませんか。

僕は、自分のことを棚に上げて人を口撃するような人生を歩んでいたら、いつか天罰が下るだろうなと思って日々過ごしています。

SNSでの誹謗中傷をなくす「#この指とめよう」プロジェクトに参加しよう

賢者たちから「誹謗中傷をしている人たち」へかける言葉は厳しいものでした。

ただその一方で、「悪いと自覚できているならば、変わることができる」とも。

#この指とめよう」プロジェクトは、現在も資金調達をおこなっています。

もし、この記事を読んで「世の中の誹謗中傷をなくしたい」と思えたら、ぜひこのプロジェクトを応援してください。

指一本で人を追い込むことができてしまうのなら、指一本で人を救うこともできるはずだ」と新R25も信じています。

※「#この指とめよう」は、The Breakthrough Company GOのコピーライター・小竹海広さん(
@0dake
)が主宰したメッセージ広告プロジェクトです

〈記事構成=福田啄也(@fkd1111)〉

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