ビジネスパーソンインタビュー

紀里谷和明に問い詰められた結果、僕たちが「まわりの目を気にする必要がない」本当の理由がわかった

「で、君はどうすんの?」

紀里谷和明に問い詰められた結果、僕たちが「まわりの目を気にする必要がない」本当の理由がわかった

新R25編集部

2020/08/06

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いま日本では、“頑張って行動する人たちと、それをバカにするヤツらの内戦”が起きてる

5年前、映画『ラスト・ナイツ』をハリウッドで監督された際、インタビューでそう語っていた映画監督・紀里谷和明さん。

「ここ10年くらいに起こった日本の衰退は、“ヤツら”のほうに耳を傾けすぎてしまったことによる衰退」とも仰っていましたが、たしかに今って、「頑張って行動する」のが少し恥ずかしいことのような空気もある気がします。

何頑張っちゃってんの」みたいな言葉もよく聞くし、自分自身もそんな目線で人のことを見てしまったことがあるような。

そこで今回、「“頑張って行動する人たち”がこの内戦に勝つには、どうすればいいか」というテーマで取材をしたのですが…取材序盤から筆者が質問攻めにあう思わぬ展開に

紀里谷監督が質問攻めをした真意とは…? ぜひ最後までお楽しみください。

〈聞き手=サノトモキ〉

KIRIYAPICTURES

【紀里谷和明(きりや・かずあき)】1968年生まれ。映画監督・写真家。Mr.Children、宇多田ヒカルなど数々のアーティストのジャケット撮影やミュージックビデオ、CMの制作など幅広く活躍。映画監督として、『新造人間キャシャーン』(2004)、『GOEMON』(2009)、『ラスト・ナイツ』(2015)を制作

取材開始、と思いきや…

サノ

紀里谷さんはしばらく前のインタビューで、「“頑張る人達とそれをバカにするヤツらの内戦”が起きている」と仰ってましたよね。

内戦は今、どんな状態になってるんでしょうか…?

紀里谷さん

逆に、俺が聞きたい

あのインタビュー、もう5年くらい前でしょ? 2020年、20代のあなたは今の日本を見てどう思いますか?

KIRIYAPICTURES

いきなりの質問返し…!

サノ

うーん…やっぱり、「頑張ってる人たち」のほうが肩身が狭いような気がします。

汗かいて頑張るより、効率的に生きていくほうが賢いのかな…」と思っちゃう人も少なくないのかなと。

紀里谷さん

なるほどね。

で、君はどう思ってるの?

サノ

ぼ、僕ですか…!?(紀里谷さんのインタビューだよなこれ…)

自分は…まわりの目を気にしてしまう人間で、「いい年してまだ夢追ってんの?」と思われるのが怖くて、夢を諦め普通に就職してしまった経験があり…

だからこそ、「情熱を持った若者が堂々と頑張れるようになるには、どうすればいいか」をお聞きしたかったんです。

すみません、めっちゃ個人的な話で…

紀里谷さん

いや、全然。僕はサノさんの考えが知りたかったから。

よくわかりました。それじゃあ、やりましょうか。

KIRIYAPICTURES

じつはこのやりとりこそが、「紀里谷道場」の幕開けだったのでした

頑張る人をバカにするのは、「自分がどうありたいのか」から逃げつづけた人たち

紀里谷さん

まず、「頑張る人達をバカにするヤツら」の話をしよう。

KIRIYAPICTURES

紀里谷さん

いつのころからか日本は、ある種の「諦め」のような同調圧力に支配されてしまったと思うんですよ。

みんな頑張ることを諦めて、「効率、効率」って言うようになったじゃん。

必死に頑張る誰かを、「何熱くなってんの」「何頑張っちゃってんの」ってバカにしながらさ。

サノ

「効率的な生き方こそスマートだ」みたいな風潮もありますよね。

僕も就活時代は結局、「やりたいこと」より「ホワイト企業かどうか」とかを優先したし…

紀里谷さん

僕自身、日本国に対してそういう危機感を抱いていたこそ、15歳でアメリカに行ったわけです。

僕は今もアメリカに住んでますけど、人はまあ働きますよ。

日本人は勤勉だとかいうけど、アメリカ人や中国人のほうがよっぽど勤勉だし、情熱的に夢に立ち向かってる。

※紀里谷さんは、中学2年時に単身アメリカのサンディエゴに向かい、アートハイスクール・Cambridge School of Westonに進学して、デザイン・音楽・絵画・写真などを学んでいます。

紀里谷さん

一方で日本の人たちは、諦めのような感情を持ちつつ「あれも欲しい、これも欲しい」とは言うわけですよ。

頑張りたくないけど、欲は満たしたい」という矛盾。いつまでもこのバグが解決されないまま、クラッシュするPCを使い続けて嘆いてるような状態だよね。

すごく欲しがりなくせに、「それを手に入れるための努力をするか?」と問われると、「それはやりたくない」と答える。

サノ

たしかにそういう空気感じるかも…

紀里谷さん

で、そんな彼らがなぜ「頑張ってる人たち」をバカにするのかだけど、単純に嫉妬だよね。

KIRIYAPICTURES

紀里谷さん

頑張る人をバカにしてる人たちは、「自分がどうありたいのか」を自問することから、ずっと逃げてきた人たちなんですよ。

まあ、ある意味仕方ないんだけどね。自分と向き合うのって、めっちゃ大変だから。

「お前(自分)は本当は、こうやって生きたかったんじゃないの?」って気づいちゃうのって、めちゃくちゃしんどいじゃん。

サノ

自分の本当にありたい姿と現実のギャップを思い知らされるというか。

紀里谷さん

そう。でも、本当はみんなどこかで、自分がどう生きたいかなんて気づいてるのよ。

ただ、「できるわけがない」と自分で自分を否定してるだけ。

そんな人たちからしたら、辛さを乗り越えて頑張ってる人たちがもう、まぶしくて仕方ないわけだよ。

KIRIYAPICTURES

正論を突かれすぎてそろそろメンタルがもたない

紀里谷さん

だから、自分の本音から逃げ出した罪悪感や苦しさを紛らわせるために、頑張ってる人たちを否定したくなるんだよね。

口では「いやいや、俺はそんなリスクあることしないから(笑)」とか賢そうに語ってても、いざ本気で頑張ってる人を見ると、猛烈に嫉妬してしまう

内戦の正体は、“実態のない同調圧力” 「まわりの目なんて、そもそもないんだよ」

紀里谷さん

じゃあ、次。

どうしてそんなやつらに、「何かを頑張りたいと思ってる人」が潰されてしまうのかって話。

KIRIYAPICTURES

紀里谷さん

さっき「夢を諦めた」って言ってたけど、まわりの目を気にして自分の限界を決めちゃうってよくあることなのよ。

でも聞くけど、誰がそんなにあなたのことを厳しく問い詰めてるの?

サノ

えっ?

紀里谷さん

誰がそんなにあなたをバカにしてくるの?

誰かに、「いい歳してまだ夢追ってんの?」って言われたの?

サノ

…いや、誰にも言われてません。

紀里谷さん

じゃあ、「いい歳してまだ夢とか言ってんの?」って、どこから来た言葉なの?

「…」

サノ

…僕自身だ。

紀里谷さん

そう。「あなた」なんだよ

あなたが、ありもしない「まわりの目」を気にしてるだけなの。

KIRIYAPICTURES

紀里谷さん

さっき解説したような「頑張ってる人をバカにしてくるヤツら」なんて、実際には本当に少数なんだよ。

ほとんどの場合は、そういう「まわりの目」があると思い込んでるだけ。想像なの。虚構なの。

「あなた」に一番ストップをかけてるのは、他でもない「あなた」自身なの

サノ

…!

紀里谷さん

子どものころって、できるかどうかとか考えずに「やる」じゃん。平気で2階から飛び降りたりするじゃん。

大人は「なんでそんな危ないことするの!?」って思うけど、子どもは「だってやりたかったんだもん」で終わりでしょ?

もともと、ストッパーなんて存在しなかったわけだよ、我々のなかには。

KIRIYAPICTURES

たしかに後先考えず何でもやってたな…

紀里谷さん

「やりたいからやる」ってシンプルな気持ちは誰だって持ってたのに、親とか親戚とか先生とか、大人が教育する過程でいろんなストッパーを搭載しちゃうんだよ。

そのうち、自分でストップをかける思考回路がインストールされていって、ありもしない「まわりの目」を気にするようになってしまう。

「内戦が起きてる」と言ったけど、実際にはストッパーを搭載された一人ひとりが勝手に感じてる“同調圧力”でしかなくて、そんなヤツら存在しないんだよ。

サノ

「まわりの目」だと思ってるのは、本当は自分の目。

目から鱗だけど、めちゃくちゃわかる気がする…

“まわりの目”から解放されるシンプルな問い「で、お前はどうなの?」

サノ

「まわりの目」が自分にストップをかけるための虚構でしかなかったことはわかったんですけど…

「まわりの目を気にしなくなる方法」ってあるんでしょうか?

紀里谷さん

僕がいつも言ってるのは…

“内側の世界”と“外側の世界”、どっちとより真剣に向き合うべきかを考えてみなよってことです。

KIRIYAPICTURES

”内側”と”外側”…?

紀里谷さん

“内側の世界”は、自分の心のことね。“外側の世界”は、自分に見えてる世界。

君は、俺と話してる今この瞬間を…つまり“外側の世界”を、「夢じゃない」と証明できる?

サノ

えっ?

夢…いや、証明はできないです。

紀里谷さん

だよね。

量子物理学の観点から言っても、「この世界は実在しません」っていうのが今の定説なの。「世界は自分が見てるときにしか存在しない」ってことは、もう科学的にも証明されてる。

「二重スリット実験」とかネットで調べてみて。

KIRIYAPICTURES

調べたんですけど、字数の都合上説明は省きます。理解できなかったとかじゃないです

紀里谷さん

でもこの世界にも、「これは間違いなく存在してる」と言えるものが一つだけあるんだよ。

それは、何?

サノ

…自分?

紀里谷さん

そう、自分自身の「意識」。これだけは、夢のなかだろうがどこだろうか、確実に存在してるじゃん。

外の世界のことは、すべて「仮定」でしかない。「こう思われるかもしれない」みたいな人の目も、全部「仮定」の話。

でも、自分が「こうしたい」とか「これはイヤだ」って感じてるその意識自体は、間違いなく本物だよね。

サノ

たしかに…

紀里谷さん

で、「じゃあ内側と外側、どっちと向き合うべきなの」って俺は聞いてるの。

だから、「あなた”はどうなの?」って聞いてるのよ、最初から。

KIRIYAPICTURES

紀里谷さん

まわりの目もそうだけど、自分が勝手に作り上げた「ありもしないこと」にあたふたして、何の意味があるのって。

「やりたい」と思ってることに挑戦するとき、「失敗したらどうするんですか?」って言うのも同じ。いやそりゃ、やってみなきゃわかんないよ。

まだありもしない「失敗」に、気を病んだりオドオドしてるのって、なんか…バカらしくない?

サノ

まずは、絶対的に存在してる「やりたい」に応えてやればいい。

話はそれからだと。

紀里谷さん

そう。「“あなた”は、誰のために生きてるんですか?」ってことよ。

あるかもわからない「まわりの目」のために生きるのか、自分の気持ちのために生きるのか。

「お前はどっちなの?」ってことです。

「頑張る、頑張らない、どっちでもいいよ。あなたはどっちが楽なの?ってだけの話」

紀里谷さん

ただ、別にどっちでもいいのよ。

内側に向き合うことから逃げる人たちを、否定するつもりもない。本人がそれで幸せなら、とやかく言う筋合いないもん。

だけど、頑張りたいのに「まわりの目」が気になって頑張れずにいる人にはさ、「どうせ苦しむなら頑張って苦しんだほうが幸せだと思うよ」って伝えたいわけ。

KIRIYAPICTURES

紀里谷さん

たとえば、サッカー選手になりたいって人が、毎朝走るのがしんどくて、気持ちが辛くなったとする。

当然頑張るのって苦しいし、嫌なことじゃん。

サノ

はい。

紀里谷さん

それである朝、走るのサボって、ベッドで寝てたとするじゃない。

でも、それがその人にとって「本当に楽なのか」って話よ。じつは苦しんでませんか?って。どんどん理想から目を背けて、遠のいていく自分に苦しくなってない?

それが苦しい人は、走りにいくしかないわけだよ。

KIRIYAPICTURES

紀里谷さん

結局、「で、君はどうすんの」って話だよ。走りに行くのか、寝てんのか、どっちなの?

叶いもしないのに欲望だけ持ち続けてるの、辛くね? だったら走りに行ったほうが楽じゃね?」って俺は思うけど、自分に向き合ったうえで「寝てる」を選ぶならそれでいいんだよ。

ただ、自分でそっちを選んだ以上、毎朝走ってるやつらにワーワー言うのはやめようぜって。

おわりに…

サノ

今日紀里谷さんとお話ししていて…

この取材も「20代読者のために」とか「頑張りたい若者が」とか、他人事みたいな目線になってたなって痛感しました。

読者の方々にも何かが伝わったらもちろんうれしいけど、まずは今僕自身が「まわりを気にせず頑張れる人間になりたい」と強く思えていることが、何よりうれしいです。

紀里谷さん

それでよし。それで、よし!

KIRIYAPICTURES

紀里谷さん

日本をどう変えるとか同世代のみんながとか言ってないで、まずは君がそう生きればいいんだよ。

今の状況を一気にひっくり返す手立てなんてない。一人ひとりがそう生きるしかないんだよ。一人ひとりがその生き様をまわりの人に感染させるしかない。

サノ

なるほど…! 僕にいろいろ質問して語りかけてくれたのも、そういう意図だったのか…!

でも、「まわりの目」が気になっていた僕も、あるかもわからないものに気を悩ませるより、確実に存在する自分の「やりたい」って気持ちに向き合おうと思えました。

紀里谷さん

その感覚だよ! 誰だって、なんだってできるんだよ。自分でできなくしちゃってるだけ。

じゃあ最後に、1つ聞いていい?

サノ

はい?

紀里谷さん

君が持ってきた、「どうしたら“頑張ってる人”が内戦に勝てるか」っていう最初の問い。

それに対する、君の答えは何?

サノ

…「そもそも内戦なんて、起きてなかった」。

紀里谷さん

…それで、オッケーじゃない?

とても楽しい、1時間でした。頑張ってね!

KIRIYAPICTURES

まわりの目なんて気にするな」。

何度もそう言われてきた気がします。でも、全然そんなふうに思えないまま、何度も苦しんできた気がします。

それでも、紀里谷さんが教えてくれた「君の心以上に確かなものなど存在しない」という言葉は、「まわりの目」が気になったとき、たしかに自分の心を楽にしてくれると思うのです。

で、お前はどうすんの?」。

自信が持てないとき、流されそうなとき。自分に問い続けていきたいと思います。

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