ビジネスパーソンインタビュー
佐俣アンリ著『僕は君の「熱」に投資しよう』より
“熱”さえあれば、元手ゼロのド素人でも成功できる。佐俣アンリがなぜ起業を勧めるのか #熱投
新R25編集部
世の中には新たなビジネスやサービスが生まれやすくなりました。
ただ、そんな時代の煽りを受けて「起業しよう」と思っても、「何から手をつければいいのかわからない」「失敗したら大損失になるんじゃないか」と二の足を踏んでしまう人も多いはず。
先日出版された『僕は君の「熱」に投資しよう』(ダイヤモンド社)のなかで、ベンチャーキャピタリストの佐俣アンリさんは、そんなくすぶった10代、20代の若者たちに向けて挑戦を後押ししています。
「やり場のない熱をもったやつ。君の暴走本能を、僕はとことんまで応援する」
「僕は言い続ける。世界の誰に何を言われようと。世界がどんな危機的な状況にあろうと。君はかならず、成功する」
heyやMirrativ、アルなどに投資している佐俣さんが、若者を応援する熱量、起業を勧める理由とは何か。そして、事業を成功させるには何が大切なのか。
起業家や投資家以外にも活かせる学びを、同書から抜粋のうえ一部再構成してお届けします。
起業とは、夢を「見続ける」生き方
君が人生で何かをしでかす人間になりたいと思うなら、まずは自分の熱源に気づくことだ。
才能が人を起業家にするんじゃない。行き場のない妄想でもなんでもいい、熱が人を起業家にするんだ。
起業というのは、熱でできているんだ。
べつに起業しろって言いたいわけじゃない。
起業に向いていない人だって大勢いるし、起業家が偉いわけでもない。
アートでも、社会活動でも、スポーツでもなんでも、君の熱が存分に発揮されればそれでいい。
若く強い熱を持っていて、それを発揮しようとしている君が何かを実現するということが、君にとってもっとも大切だ。
熱をぶつける先はなんだっていい。だが、ダントツで僕が勧めるのは、やはり起業だ。
熱を持った若者にとって起業は圧倒的に「コスパがいい」からだ。
君に青年の僕が持っていたような熱があるなら、一度はやってみるべきだ。
起業は熱だけでできるし、活躍するプロ野球選手並みの金銭的成功すら狙うことができる。
起業とは、実はローリスク・ハイリターンなゲームなんだ。
失敗しても、君の熱と若かりし日々の一部が消えるだけ。他に失うものは特にない。
一方でプロ野球選手の人生は、ハイリスク・ハイリターンなゲームの代表格だろう。
まず、ほとんどのプロ野球選手は小学校くらいから野球に人生を捧げ、その後、中学校の全国大会、高校の甲子園、その成果によってドラフトで選ばれなければプロへの道はほぼない。
晴れてプロ球団へ入団できても、同僚は小学校から第一線で活躍を続けたサラブレッドばかりだ。
この中でさらに頭ひとつ抜き出た成功をするためには、単なる野球ゲームではなく、「体格ゲーム」を戦わなければならない。
野球選手は、最後には体格がモノを言う。
ダルビッシュや大谷が大リーグで戦うことができるのは、尋常ではない精神力と努力、そして奇跡的に配列されたDNAによって生物学的に体格が他の選手を凌駕しているからだ。
さらにプロ野球選手は万が一、致命的なケガをしたら「それまで」だ。
人生を野球に捧げてきた人から野球がなくなれば、ただの一般人以下だからだ。
コーチや解説者になれる人はほんの一握り。引退後、突然、年収100万円台の世界に転落するリスクすらあるだろう。
しかし起業というのは、とくにアプリ開発などのインターネット事業の場合、ほとんど元手ゼロのド素人で、今、この瞬間からでも始められる、超ローリスクのゲームだ。
もちろん開発のためのパソコンやインターネット、プログラミングの知識は必要になるが、機材はフリマアプリなどで格安で入手できるし、プログラミングは今や子供向けの教育講座があるくらいだ。
少しググれば無料のテキストや格安のオンライン講座がある。
モノを売りたければメルカリ、ウェブサイトがつくりたければ制作サービスも格安のものがある。起業するために必要なツールやノウハウはすべてインターネット上にあると思っておいて間違いないだろう。
さらに「ほどほどの成功」で人並みに食っていくこともできる。
世の中には、誰も気づかないほどニッチな事業で巨万の富を得ている起業家もいれば、ほどほどの収益だが、自分の趣味と仕事を両立できるような事業を行い、人生を楽しんでいる起業家もいる。
人に称賛されるような大成功をしなくても、人知れずほどほどの成功さえしていれば食っていくことができる。
プロ野球選手などのように戦力外通告があるわけでもなければケガをしたら終わりということもない。年齢制限もない。
うまくいかなければ事業を変え、また成功を追いかけることができる。
いいか、起業というのはもはや職業ではない。
いわば終わらない夢を見せてくれる、生き方なんだ。
人生には夢が大事だと大人は誰でも言う。そして夢は誰でも見ることができる。
プロ野球選手を夢見たっていい。
歌手を夢見たっていい。
君の自由だ。
しかし、夢に生きることを選択肢として君の人生のテーブルに並べたとき、その夢を「見続けられるかどうか」は重要な判断基準にならないだろうか?
夢は見ることより、見続けられることのほうがはるかに重要だ。その点で起業家は、非常に良い選択肢になる。
起業は果てしない夢などではなく、君にどうしようもない熱があるなら、人生において一度は選んでおいて損はない、ただの選択肢のひとつなんだ。
事業で大切なことは、世の中にある「価値のズレ」に気づくこと
「とはいっても、起業するにはアイデアがないと…」と誰もが最初に思うものだ。
難しく考えるな。そんな君に、こんな小学1年生の言葉を贈ろう。
「ごみでもかんがえたらうれる」
少し前、ある小学1年生の少年が「シーグラス」をメルカリで販売し、ネットメディア『バズフィード』で紹介されるほど話題になった。
シーグラスというのは、海に捨てられた瓶などのガラスが、波によって砂や岩で削られ、美しい石のようになったもののことを言う。
この少年は香川で出会った漁師に、「シーグラスが高く売れる」ということを教わって、それを実際にメルカリで1000円で売ってみせた。
この少年の行動こそが、起業家にとって必要な唯一のスキルと言ってもいい。
起業に興味がある人ほど、メディアの報道や起業セミナーを真に受けてしまって、始める前に二の足を踏む。
難しく考えず、まずはメルカリでガラクタを売ることから始めればいい。
小学1年生でもできるんだ。楽勝だろ?
起業、さらには事業をつくるうえで重要なことは、世の中にある「価値のズレ」に気づくことだ。
起業の基本的な原理は、古本の販売などに代表される「せどり(背取り)」だろう。
せどりとは、掘り出し物を安く見つけて、高く売り、利益(差益)を得る商売法だ。
せどりをするためにはまず、世の中で価値がズレているものに気づかなくてはならない。
たとえば近所の古本屋で見つけた100円の古本が、アマゾンじゃ1000円で売られていたりする。こうした価値のズレだ。
シーグラスなんてどこの浜辺にでもある「ごみ」だ。あの少年はそれをメルカリで売れば価値が出ることを知り、実際に利益を出した。
せどりとはつまり、世の中では価値が無い(もしくは価値が低い)とされているものに気づき、価値が出る場所で売って利益(差益)を得ることだ。
エアビーも、最初は「せどり」だった
たとえば民泊サービスの「Airbnb(以下、エアビー)」や、タクシーの概念を変えたサービス「Uber(以下、ウーバー)」も、ここ10年間でもっとも成功したスタートアップ、と言うと仰々しいが、商売の原理的には単なるせどりだ。
エアビーは、世界最大手の「民泊サイト」である。
登録すれば、誰でも自分の家を貸すことができるし、世界中の人の家に泊まることができる。サービスは世界220カ国以上へ展開され、登録されている宿泊場所は700万件以上になる(2020年6月現在)。
現在はフェイスブックやインスタグラムを通して、友達がエアビーの宿泊先で楽しそうに交流している様子を見ることはさほど珍しいことではなくなった。
しかしエアビーが創業された当時は、誰もが最悪のビジネスモデルとしか思えないものだった。
考えてもみてくれ、いつの間に「赤の他人の家でも人はお金を出して泊まる」なんてことがあたりまえになったんだ?
このアイデアが生まれたのは2007年。
のちにエアビーを共同創業することになるジョー・ゲビアとブライアン・チェスキーは、ある日、サンフランシスコにある自宅のアパートをインターネットを通じて貸し出すことを思いつく。
その当時、地元で大きなイベントがあり、周囲の宿泊施設が満杯になっていた。
インターネットで呼びかければ、誰かがお金を払って泊まりに来るのではないかと考えたのだ。
すると瞬く間に借り手が見つかり、得られた宿泊料は意外な収入になった。
言ってみれば、なんの価値もない自分の家を臨時のホテルとして売ってみたら、買い手がついたということだ。
つまりエアビーの始まりは、誰にでもできるせどりだったのだ。
彼らはこの小さな成功を仮説とし、2008年にエアビーを創業したわけだが、まともな投資家ならプレゼンを聞いて爆笑し、こう言ったに違いない。
「君の家に見知らぬ誰かが泊まりに来たからって、どうしてそれがビジネスチャンスの根拠になるんだ?」と。
しかし結果的に彼らのせどりは成功した。それも世の中の価値体系に大きな影響を与えるほどの大成功だ。
「起業のアイデア」ではなく、「世の中の価値のズレを見つける」「せどりのアイデアを考える」となれば、誰でも思いつきそうなものだ。
起業は、まずそうしたハードルの低いところから始めていくのが、無駄に二の足を踏まないコツと言えるだろう。
挑戦を楽しもう
淡々と、しかし力強く、若者の起業、挑戦を後押しする佐俣さん。
新たな挑戦を始めたいときにこそ、一度読んでみてはいかがでしょうか。
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