ビジネスパーソンインタビュー
「コミュ力」を因数分解してみよ
【1万字抜粋】コミュニケーションが苦手でも成果を上げるには? 石倉秀明『コミュ力なんていらない』
新R25編集部
「初対面の人とうまく話せない」
「社内の人との連携がうまくいかない」
仕事をする上で必須と考えられている、“コミュニケーション能力”。場を盛り上げ、気軽に会話できる人が羨ましいと感じるビジネスパーソンは多いことでしょう。
しかし、「コミュ力がないからといって、決して仕事ができないわけではない」 と励ましてくれるのが、700名ほぼ全員がリモートワークで働いている株式会社キャスターの取締役COOで、個人でカンタンに仕事や人とのつながりを募集できるサービス「bosyu」の新規事業責任者の石倉秀明さん。
実は、著書『コミュ力なんていらない ー人間関係がラクになる空気を読まない仕事術ー』の中で、「『コミュ障』と言われるくらいコミュニケーション能力の低い人間です」と話す石倉さん。
コミュニケーションが苦手な石倉さんが、どうやって結果を出してきたのか。
「コミュ力」がなくても仕事の成果を上げられるヒントを、抜粋してお届けします!
「コミュ力がない」と思っている人は、コミュニケーションの“因数分解”ができていないだけだ
「コミュ力」を 因数分解しよう
「コミュ力」はさまざまな場面で重要視されます。それはまぎれもない事実です。
でも、「コミュ力とは何か?」という質問に対して、明確な答えを出せる人はほとんどいないのではないでしょうか。
おそらく100人に聞いたら、100とおりの答えが返ってくるはず。 それは「コミュ力」が複雑で多様な要素で成立しているからです。
たとえばコミュニケーションの「種類」にフォーカスすると、仕事のミーティングなどの目的があるものと、雑談のような目的がないものに大きく分けられます。
また「手法」について考えると、話す、聞く、書く、あとは身振りや手振りなどもありますよね。それらが複雑に組み合わさっているわけです。
そして、人それぞれに得意なこと不得意なことがあります。
だから僕は、「コミュ力」という解像度の粗い言葉でとらえていてはダメだと考えるようになりました。
そして、自分の得意と不得意を理解するために「コミュ力」を 因数分解してみることにしたのです。
すると、自分の特性が見えてきました。
僕自身、共感したり察したりすることは苦手ですが、事実を事実として聞くことはそんなに苦ではありません。
また、雑談など目的がないものや関係性を築くような会話は苦手ですが、仕事のように目的のある会話は苦手ではありません。
そうやってひとつずつ分解していくと、その人なりの「コミュ力」の全体図みたいなものができてくる。
そのなかで自分の能力が活かせる方法を見つけていくことが大事なのです。
「コミュ力」の分類で得意・不得意を知る
先ほども説明したとおり、「自分にはコミュ力がない」と考えている人の多くは、ものすごく漠然としたイメージで「コミュ力」というものを考えている気がします。
まずは、自身の得意不得意を把握するところからはじめてみるといいでしょう。
そのためには、「コミュ力」を因数分解しておく必要があります。 それを僕なりに考えてみました。
そもそも「コミュ力」は、以下のように複雑で多様な要素で成立しています。
●種類《目的完遂型/関係構築型》
●手法《話す/聞く》
●対応《察する/空気に合わせられる/仲良くなる》
●人数《1対1/グループ/大人数》
●ツール《対面(リアル)/非対面(オンラインの会話、テキスト)》
前提として、コミュニケーションには相手の言うことを理解し、かつ自分の言いたいことを伝えるための「目的完遂型」と、相手と仲よくなったり初対面でもその場をとり持たせるための「関係構築型」のふたつがあります。
さらに、この「目的完遂型」と「関係構築型」で、「対面」と「非対面」、「音声」 と「テキスト」、「1対1」と「複数」などのパターンで、得意か不得意かが分かれていきます。
これらをすべて自分に当てはめて、どんなパターンならストレスがないかを確認してみてください。
そうすると、どの手法で人とコミュニケーションを図るのがいいのかが見えてきます。
大切なのは、自分に合ったコミュニケーション方法をとること
みなさんの周りにもいろいろなタイプの人がいると思います。
キャスターの同僚を見ていてもそうです。
保育園のママ友やクラス会では、積極的に発言し、周囲のママ友と何気ない会話も平気でできるけど、仕事で1対1の場面になるとうまく話せない、というメンバーもいます。
仕事だったらハキハキとコミュニケーションは取るし、相手の感情や空気を読むのもうまいのに、プライベートでは人との距離を詰めることができずまったく友だちができない人もいます。
このように、ひと口でコミュニケーションといってもいろいろな能力がありますし、 いろいろな場面で得意や不得意が分かれます。
対面や口頭ではあまり喋らない人がチャットやメールになると饒舌になったり、SNSだと強い口調の人が対面であったらとても柔らかい人だった、などのように、その人らしさを表しやすい手段や場面、ツールが人によって違うというだけです。
だからこそ、大事なのは「コミュ力」が高いか低いかではなく、自分が得意なパターンでコミュニケーションを取るようにすること。
そして、できるだけ苦手なパターンを避ける、もしくはなんとかごまかせる技術を身につけることです。
「コミュ力の高さ」と「仕事の成果」は比例しない。勘違いしているコミュニケーションの本質
「コミュ力の高さ」と「仕事の成果」は比例しない
「コミュ力の高さ」と「仕事の成果」って、一見すると相関関係にあるように思われますが、実は何も関係ないと思うんですね。
というのも、リブセンスに在籍しているときに出会った僕が一番仲がいいと思っている友人は、類い稀な「コミュ力」の持ち主で、芸人のようによく喋って初対面の相手でも物怖じしません。
あるとき渋谷で飲んだ帰り道、スクランブル交差点で信号を待っている間に隣に立っていた知らない人に声をかけ、仲よくなってそのまま飲みに行ってしまうなんてこともありました。
またあるときは、何の面識もない僕の妻にFacebookの友だち申請をして、 僕の知らないところで親交を深めていたことも。
彼の論理では、“友だちの友だちは、友だち”というわけです。 そんないかにも営業が得意そうな彼ですが、成績だけで言えば僕のほうが上でした。
リクルート時代もそうでした。 宴会で場を盛り上げるのが上手な人、毎日9時から行われる朝会の最後に気の利いたことを言ってその場の空気を明るくできる人、そういうコミュニケーションが得意な人がたくさんいました。
でも、その人たちが営業担当者として高い成果を出しつづけられるかというと、必ずしもそうではなかった。
また、空気が読めたり、懐に入るのがうまかったり、察するのがうまい人ともたくさん出会いました。
でも、空気が読めず、懐に入るのが苦手で、察することもできない僕の営業成績を一度たりとも上回ったことはありません。
多くの社会人は、就活生に向けて「営業はコミュ力を鍛えないと!」と口を揃えて言います。でも、それは仕事に必須の能力ではありません。
「コミュニケーション力がある、ない」と「仕事ができる、できない」は切り分けて考えるべきなのです。
そのことを強く意識したエピソードをひとつ。
僕はDeNAに在籍していたときに人事部で新卒採用を担当していたのですが、 選考の際に重視していた能力のひとつに「論理的思考力」がありました。
DeNAの一次面接は、グループディスカッションです。ここで論理的思考力を試すために、「フェルミ推定」を用いた課題を出していました。
ここでおもしろかったのは、すごくうまく喋っているのに仮定から結論までが破綻している人、うまくしゃべれないけれど「君はどう思ったの?」と質問をして掘り下げていくと「天才か!」と驚くような返しをしてくる人…、いろんなタイプの人を見られたことです。
その経験則から、グループディスカッションにおいてうまく話せるかどうかは、面接対象者の能力を正しく見定めるうえで不適切だと判断しました。
そして、次の年から一次面接を筆記テストに変えることにしました。すると、喋る能力と場を制する能力に左右されなくなりますから、個人の論理的思考力を精度高く測れるようになったのです。
「コミュ力」が高い人は、コミュニケーションで場を制したり、周りを察する能力があると自分自身でも感じているのでしょう。
しかし、それによってバイアスが働いて面接で有利に働くことはあっても、実際の仕事の現場で個人の能力が試される瞬間に役立つかというとそんなことはありません。
むしろ、「コミュ力以外の能力」をきちんと見極められるか。 それを考えたほうが有能な人材を仲間として引き寄せることができるのではないかと思っています。
仕事に必要な本当のコミュ力2つ
「自分にはコミュ力がない…」と悩んでいる人は多いと思います。
その思考の背景には、「人間関係が構築できて、それがあると仕事になる」という幻想があり、それに囚われているような気がしています。
だから、異業種交流会のような場が盛り上がっているのでしょう。でも僕は、これは因果関係が逆なのではないかと思っています。
「人間関係ができたから、仕事も一緒にできる」のではなく、「一度仕事をし、それがきちんと成立したから、人間関係が構築できる」のが正しい順序ではないかと考えています。
よくよく考えてみると、当たり前ですよね。
どんな能力を持っているのかわからない人に、仕事を頼みたいと思う人は少ないのではないでしょうか。
また、どんなに飲み会で楽しかったり、雑談が上手な人だとしても、仕事の成果を出せない人に大事な仕事を任せたいとは思いません。
つまり、「コミュ力」を身につけたり、人間関係を構築する前に、仕事の成果を最大化させる“何か”を身につけておく必要があるのです。
俗にいう「人脈」は一緒に仕事をして相手に満足してもらったあとに、結果として 「つくられるもの」であって、「つくるもの」ではありません。
“仕事の報酬は仕事”という言葉がありますが、仕事で成果を出すことが次の仕事を得る最短ルートですし、「コミュ力」があるかないかなんて、実は二の次。みなさんも、そう思いませんか?
誰とでも仲よくなれる能力は、僕から見るとすごい能力です。
でも、本当の「人間関係」や「人脈」をつくろうと思ったら、その能力がなくても大丈夫です。
まずは、仕事において必要な「コミュ力」はたった2つ。
●相手の言っていることを正しく理解できる
●こちらの伝えたいことをちゃんと伝えられる
この点だけを磨くことに集中すべきでしょう。
なぜなら、訓練次第で誰でも身につけられるからです。
人間関係や人脈を築くためにコミュ力を鍛えたい…、そう思うこと自体は否定しませんが、それができないからといって焦らなくていいのです。
相手の役に立つ仕事、相手が満足してくれる仕事ができるようになることを一生懸命にやることが一番の近道だからです。
現に僕自身、「コミュ力不足」で失敗したことは数知れませんが、それでも仕事で成果を出してきたからこそ、現在のポジションがあると思っています。
はじめに「仕事で成果を出すこと」に邁進する。その次に「コミュニケーションを円滑にとること」を考える。
この優先順位を間違えてしまうと、負のループに陥る可能性もあります。忘れずにいたい心構えです。
コミュ力のない僕が、営業トップクラスになった理由2つ
コミュ障流・仕事テクニック2つ
①相手がイメージしやすい「たとえ話」を出す
僕は対面でのコミュニケーションが苦手で、その場の瞬発力でいろいろ話したり、 相手の懐にうまく入ったりすることができません。
でも、リクルートにいたときも、リブセンスにいたときも、DeNA にいたときも、 営業成績は常にトップクラスでした。
それを実現できていたのは、自分が苦手な方法で勝負をしないことを心がけて、勝てるパターンを習得していたからです。
結論から言うと、すごく簡単な言葉と身近な例があれば共通認識が生まれるので、 伝えたいことと近しい構造のものを見つけて、わかりやすくたとえて話すだけ。
今から10年以上前のフリーター時代、僕は個人宅に電話をして、光ファイバーの契約を獲得する仕事をしていました。
昼間から一軒家に在宅しているのは年配者の割合が圧倒的に多かったので、「ADSLから光ファイバーに切り替えませんか?」と案内してもピンとこないんですよ。
そこで用いるのが、たとえ話。
なんだかよくわからない光ファイバーの話を、相手の生活と関係のある話に置き換えてあげると決断できる材料ができます。
そのときは「お買い物に行きますよね」からはじまり、「スーパーに向かうときは自転車ですか? 徒歩ですか?」と聞く。
そこで自転車という返答があれば、「自転車が電動自転車になったと思ってください。そうすると重い荷物を運べてラクだし、ペダルも軽いので速く走れるようになりますよね?」と説明します。
そして、「ADSL が光ファイバーになるのは自転車が電動自転車になるようなものだと思ってください。電動自転車が自転車に比べて高いように、便利になるので少し高くなりますが、毎日使うものが便利に快適になるのは嫌ではないと思うんです。これから光ファイバーも普及して当たり前になってきますし、今なら工事費も無料でできるので、どうですか?」とお伝えするわけです。
これをひたすら繰り返していました。
特にテレアポは、営業トークをパターン化して説明するにはもってこい。
しかも、 相手の顔を見ながら話す必要もありませんし(なんなら下を向きながら話していてもいい)、空気感を察する必要もありません。
だから、僕みたいな対面で会話するのが苦手なタイプにとっては、ストレスなく働くことができるとても恵まれた環境でした。
一方で、断られるのが嫌だという同僚もいました。
でも、逆の立場になって考えてみてください。いきなり営業電話がかかってきたら絶対に断るじゃないですか。だから、断られるのが普通。
むしろ話を聞いてくれる人は超いい人なんですよね。
めちゃくちゃ断られるけど、世の中にはたまにとんでもなくいい人がいるんだな、と思えるようになってから、辛いという気持ちにはならなくなりました。
断られるのが辛いというより、話を聞いてくれる人がこの世の中にこんなにいるんだって、うれしい気持ちが勝ったというか。
そう思えるようになると、メンタルが安定してきますから、仕事が楽しくなります。
仕事が楽しくなると、結果が出る。結果が出ると、メンタルがより安定し仕事がより楽しいと思えてくるのです。
「メンタルが安定すると結果が出る」「モチベーションが上がると結果が出る」と言われることもありますが、僕は逆だと思っています。
どんなに楽しい仕事でも、1カ月頑張り続けて成果が出ないと、絶対に心は折れてしまう。でも1日10件成果を出せば、楽しくてしょうがなくなる。
だから、安定して結果を出すにはどうするかということに向き合う必要があるのです。
②リスト管理・定型文で攻める
リクルートに入社して最初に任された仕事は、求人情報誌「タウンワーク」の新規営業でした。
最初はテレアポ、それで成果が出ない場合は飛び込み営業に回されるのですが、僕はとにかく飛び込みを避けて成果を出す方法にこだわっていました。
というのも、対面で話すのが苦手な人間が、自分のことを何も知らないお客さんのところへ行って、仕事の話をして、興味を持ってもらうなんて絶対に無理。もう地獄でしかないわけです。
結果、行き着いたのが対面しなくても済むように、テレアポを駆使してなんとか成果をあげること。
とはいえ、急に電話を掛けて仕事の話をするわけですから、担当者につないでもらえないまま断られることも当然あります。
そこで僕は、しばらく同期や先輩の様子を観察してみることにしました。
すると、あることに気づきました。
いきなり電話をかけて先方の人事担当者につながる確率は、約10%。 10人中1人くらいしかいない。
つまり、ほとんどの人が営業をさせてもらえるところまで行き着いていなかったのです。
この担当者と話せる確率を2倍とか3倍にできたら、その後のトークが下手でも成果が残せるのではないか?
そう思って必死にどうやったらできるかを考えました。
そこで僕が徹底したのが「リスト管理」です。 担当者はいたか、名前は聞けたか、などをすべてエクセルに書き出していきました。そうすると傾向が見えてくるんですね。
この担当者は月曜日の午前中はいないなとかって。それが見えてきたら、次は月曜日の午後に電話を掛けてみよう、曜日を変えてみようと対策を立てることができるわけです。
さらに僕は、作成したリストをもとに月曜日から金曜日の5日間を朝・昼・夕方に振り分けて電話するようにしました。
そうすると、10件中5件は電話に出てくれます。
同僚たちの3~5倍は担当者と直接話せているので、結果的にアポイントの数も受注数も3倍以上に増えるわけです。
ただ、このときも大した営業トークはしていません。というよりも、自分で決めた「定型文」以外のことは極力話さないように心がけました。
「タウンワーク」には、誌面の冒頭に毎号特集ページがあり、そこで取り上げられると求人応募率が上がるので、それをフックに話をするのです。
特集枠に掲載される意義を淡々と説明する。
しかも、会社が用意してくれた特集の案内があるので、それをそっくりそのまま喋るだけでした。
たとえ「コミュ力」が低くても、決まった内容を口に出すだけならそこまで難しくありません。
だから、僕でも実績をつくることができたのです。
コミュ力がなくても会話が続く魔法の質問
「コミュ力」がない人ほど、会話が続かないから理解できたふりをしてしまう傾向が強いように思います。
でも、仕事において、それは絶対にやってはいけません。
理解できないのなら、相手のほうから具体的な話を喋ってもらう必要があります。
では、どうやって相手に話してもらうようにするのか。
幸いにも僕は、空気を読んだり、察したりできないので、わからないことがあるとどういうことかを細かに聞いていました。そして、困ったときに利用する魔法の聞き方を用意していたのです。
それが次のフレーズ。
「具体的には、どういうことですか?」
そう聞くとたいていの場合は具体的な話が出てくるので、こちらも理解が深まるので、イメージをより明確にできます。
親しい人が相手だと「それで?それで?」って聞きますよね。それと同じです。
また、「これまでと何が違うんですか?」や「他社サービスと何が違うんですか?」 というフレーズもとても便利です。
何かと比較しようとすると、人間はたいていわかりやすく例を出して伝えようとしてくれるわけです。
たとえば、クライアントから「採用がうまくいっていなくて困っている」という課題を聞き出したら、「具体的には、どういうところで困っているんですか?」とさらに踏み込んでみるわけです。
そこで出てきた回答に対して、「ちなみに」とか「さらに」と気になることを掘り下げていくと、相手がどんどん話してくれます。
小学生でも理解できそうなところまで掘り下げられることができれば、事実の組み立てはそこまで難しくはないですよね。
これからは「非対面」が得意な人が有利。リモート時代のコミュニケーション術
オンラインでは、「短く」「回数」を重ねよう
リモートワークの普及に伴い、人を評価する軸も変わりつつあります。
仕事をしている姿が見えないからこそ、「非対面」でのコミュニケーションをしっかり取れる人のほうが評価が高くなるような気がします。
きっと安心感が生まれるのでしょう。
たとえば、2年以上会っていない友人でも、日頃からSNSで交流していれば親近感が薄れません。
逆に親しかった人でも、数ヶ月連絡が途絶えると、それだけで疎遠になった感覚になります。
SNSでよく「いいね!」やコメントをしてくれる人は存在を近く感じますよね。
対面で会ったことはないのに、なんとなく知人になったような気がします。
僕が経営に携わっているキャスターにもお客さんにわかりやすく話すことが得意ではないメンバーももちろん在籍しています。
それでもお客さんとの関係値が高いのは、毎日仕事で頻度高くコミュニケーションを取っているからだと思います。
特にチャット上の会話のキャッチボールは、簡潔で短い言葉を重ねていくことで成立すると思っています。
この「回数が大事」というのは、「1回で理解できると思わない」というスタンスの表れでもあります。
だから、1回の文章で理解できなくてもいいと思うのです。 1回の連絡ですべてを理解してもらえると思わないことです。
伝えたいことをわかりやすく、簡潔に、きちんと主語をおいて連絡する。
つまり、正しい日本語を使えるかどうかのほうが重要だと僕は思っています。
なかには文章から感情の機微を読み取って対応できる人もいます。
でも、僕みたいな空気が読めない、察せられないタイプは、わからないことは素直に聞いたほうがいいし、裏にある感情を読む必要はありません。
察せられると思わなくていいし、察しようとしなくてもいい。
会話で得た事実に反応していくことでコミュニケーションを成立させていく。
それを繰り返して回数を重ねていくと、自然にわかることもあると思います。
たとえば、「今日のAさん、いつもと何か違うかも?」と感じたりできるのも回数を積み重ねたからできることです。いつもは「!」がつくのに、今日はついてないから素っ気ないなとか。今日はダラダラと長い文章を送ってくるな、とか。
そうやって会話の回数を重ねて関係が築けてくると、文章が短くても会話が成立するようになります。
家族やすごく親しい友人とのやりとりは「うん」や「はい」、絵文字やスタンプだけでも感情の機微がわかるようになるじゃないですか。
それは、メッセージの回数を重ねてきたからこそできることです。
回数を重ねないうちは、余計な推測をしてしまったり、その結果ネガティブに考えてしまいガチガチになったりして、コミュニケーションがうまくいかないことが往々にしてあります。
だから、変に察しようとせず、会話を成立させることに集中したほうがいいと思います。
ちなみに僕は、ニュース番組のスタッフさんとのやり取りはメールが中心なのですが、最初は「〜様」とかいう作法どおりのやりとりをしていましたが、回数を重ねていくうちに、「大丈夫です!」とか「わかりました!」と返すだけでも大丈夫な雰囲気になっていきました。
メールだとどうしても硬い文章を送りたくなるものですが、相手も同じ温度感でいるなと思ったら、それ相応に揃えてもいいのかなと思います。
雑談する時間を作る
僕は目的のない会話が苦手です。友人や知人とお茶をしながらくだらないことを話すなんて絶対に無理…、話が持ちません。
ただし、仕事は別。特に、リモートワークにおいては、目的なく話す雑談がすごく大事になることがあります。
理由はふたつ。
ひとつは、一緒に働く人の姿が見えないなかで、ピンチになっている人に気づけないことがボトルネックになるからです。
スタートアップ界隈では、「心理的安全性」という言葉がよく使われますが、簡単に言ってしまうと「どんな発言をしても大丈夫!」という環境を常日頃から整えてお くことが重要です。
というのも、リモートワークでは相手の状況を察することがけっこう難しいんですね。体調が悪いとか、忙しそうとか、うまくできなくて悩んでいるとか。
そういうことって顔を日々合わせていると変化したときに気づきやすいですが、遠隔で仕事をしているとそうもいきません。
だからこそ、困っている本人に自分から困っていることを発信してもらわないといけません。
ただ、それをするには普段から仕事以外の話題も話せるようにしておく必要があります。
自分の置かれている状況を気兼ねなく発言できる土台として、雑談も含めて「なんでも話して大丈夫!」となっていることが重要だと思います。
チャットツールを使っているのであれば、メンバーごとのチャンネルや雑談用のチャンネルを用意して、普段からたくさん雑談したり、仕事以外のことも話すことで、 グッと大事なことも話しやすくなるのでオススメです。
もうひとつは、相手を理解するうえで必要だからです。
オフィスで働いているときは、「業務の話」「相談」「雑談」という3つの要素が合わさって会話が成立しています。
そして、こうした会話を通じてお互いの思考や人間性をなんとなく理解して、仕事を進めていきます。
それがリモートワークになると、業務の話だけになってしまいがち。
それでも仕事は回りますが、会話の総量が減ると相互理解ができなくなるので、結果としてチームで働きにくくなってきます。
先述しましたが、僕にとってリモートワークはものすごくラクな環境です。
でも、みんながみんな僕と同じ条件・環境で仕事をするのがベストかというとそれは違うと思いますし、リモートワークであっても人が集まりチームで仕事をすることは変わりません。
だから、リモートの状態であってもオフィスにいるのと同等レベルに会話する環境を設けることはとても大切なのです。
メンバーの「姿」ではなく「アウトプット」を見ること
リモートワークの導入を検討している企業が必ず心配すること、そのひとつがメンバーがサボらないかでしょう。
会社によっては全員オンラインで常時つないで監視したり、ログを監視したり、PCの前に張り付いて即レスするルールなどを設けたりと性悪説に基づいた施策を打つこともあるようです。
でも、はっきり言って、これは悪手です。
僕から言わせてみると、サボる人はどんな状況でもサボる。ですから、リモートになった途端に見張るようになるという思考は不思議でしかありません。
メンバーのことを信用していないということを暗に示しているようで、働く側もいい気分で仕事に取り組めないのではないでしょうか。
リモートワークで大切なのは、「それぞれのメンバーの役割を定義し、目標を設定して、アウトプットにフィードバックして進める」という当たり前のことです。
そして、上司はちょっとのことで動じず、広い心でどっしり構えていること。その姿勢によって、メンバーの活躍の度合いもきっと変わってくるはずです。
むしろチャットでみんなが議論している様子が見えるようになるので、オフィスにいるときよりもグッとメンバーの仕事が見えるようになります。
オフィスで働いているときに、1日中会議ばかりしていたとしたら、その日にメンバー一人ひとりがどんな仕事をしていたかを見ることはほぼ不可能です。
ただ、リモートワークであれば、自分が1日会議ばかりしていても、その間の会話や仕事のやりとり、連絡などがチャットにすべて残っているので、リアルのオフィスで働いているときよりも「仕事が見える」のです。
オフィスで働いていたときに見えていたのはメンバーの「姿」であって、「仕事」 ではありません。 むしろ物理的な「姿」が見えていたことで「仕事」が見えていると安心してしまっていることもあるかもしれません。
リモートワークになり物理的な「姿」が見えないことに不安にならず、メンバーの 「アウトプット」や「仕事」を見てください。
そしてメンバーが成果を出すためのサポートを行う、環境を整えることをやってください。
それが本来の上司の役割ですから。
コミュニケーションが楽になる一冊
漠然と「コミュニケーションが苦手…」と捉えがちですが、「自分に合った方法でコミュニケーションをとればいいんだ」ということが分かり、肩の力がフッと抜けた一冊です。
他にも同書では、人間関係が楽になる考え方や、シチュエーション別の仕事術についても触れられています。
仕事でもプライベートでも使えるヒントが満載です。コミュニケーションでお悩みの方は、ぜひご覧ください。
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