ビジネスパーソンインタビュー

「ネガティブ思考をなくすのは、たぶん無理」SKY-HIが“憂鬱の質を変える方法”を教えてくれた

「ネガティブ思考になっちゃったとき、何が一番ヤバイかわかります?」

「ネガティブ思考をなくすのは、たぶん無理」SKY-HIが“憂鬱の質を変える方法”を教えてくれた

新R25編集部

2020/09/10

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憂鬱な気分になること、ありますよね。

ネガティブな気持ちとは早くオサラバしたいと思うものの、ズルズルと引きずってしまうことも少なくないと思います。

というかむしろ、早く気持ちを切り替えらえることなんてほとんどないような気が…。

【SKY-HI(すかいはい)】1986年生まれ。2005年、男女混合パフォーマンスグループ・AAAのメンバー日高光啓(ひだか・みつひろ)としてデビュー。ラッパー、シンガーソングライター、トラックメイカー、音楽プロデューサーなど、幅広く活動を続ける

今回は、3月に「新型コロナ鬱状態」になったものの、そこから気持ちを切り替えたというアーティスト・SKY-HIさんにお話を聞きました。

過去に何度も憂鬱な状態を経験してきたというSKY-HIさんが語る、「心のしんどさを乗り越える方法」。

今日もしんどい気持ちと戦うあなたに、お届けします。

〈聞き手=サノトモキ〉

「日本はシンプルに、やべえときに“すがるもの”がないんじゃない?」

サノ

…というわけで今日は、「ネガティブな気持ちから抜け出す方法」を聞きにきました!

SKY-HIさん

ネガティブな気持ちかあ。

「そもそも、なんで僕らって生きづらさを感じるほど悩んじゃうんだろう」って考えたことがあるんですけど…

今の日本って、「めちゃくちゃ考え抜ける体力がある人」か、「そもそも何も考えてないおバカ」しか健全に生きられないんじゃないかなって。

間の人がごそっと生きづらさを感じてると思うんです。

サノ

大部分の「ふつうの人」が生きづらい…?

SKY-HIさん

それはたぶん、多くの「ふつうの人」が「やべえときにすがれるもの」を持っていないことが関係していて。

たとえば宗教。多くの国では、一般の人の身近に宗教という「すがれるもの」があるんですよ。

これは、「生きづらさ」の解消にすごく機能してると思うんですね。

サノ

心のよりどころというか。

SKY-HIさん

めちゃくちゃ考え抜いて、悩みに対してすごい答えを出せる人はいいですよ。

でもそうじゃない「ふつうの人」にとっては、何か「すがれるもの」が必要なんですよね。僕にとってはそれが音楽だったりするんですけど…

それがないからこそノンストップで考えてしまって、考えつづける体力がなくなってしまったとき、ときに命を落としてしまうんじゃないかなって。

SKY-HIさん

そして、言葉は悪いけど、何も考えてなくて生きづらさも感じにくい「おバカ」の人もいる場合…

あれこれ考えちゃう大部分の人は「そんなに考えなくても(笑)」みたいな言葉を浴びてさらに息苦しくなっちゃったりするんですよね。

サノ

ああ、そういう光景よくあるかも…

真面目に考える人ほど損に思えちゃったりしますよね。

SKY-HIさん

考えすぎる人は人にやさしくなれるんですけどね。思考の枝葉がすごい数になって、自分と違う考えの人のことも想像できるようになるから。

でもそのぶん、考えない人に理解されず苦しくなってしまう。

考えない人ほど、自分と違う考えの人に拒否感を示しますからね。

「お風呂に入ったり、ご飯を食べたり…普段できてた生命活動すらできなくなった」

サノ

SKY-HIさんご自身も、3月に“新型コロナ鬱”状態を経験されたそうですが…

当時はどんな気持ちになってしまっていたんですか?

SKY-HIさん

うーん…

こういう取材で「どんな気持ちでしたか?」ってよくきかれるんですけど、説明しづらいんですよね。

「なんで辛いのかを言語化できなくなってること」こそが、“憂鬱”だから(笑)

SKY-HIさん

順を追って説明すると…

僕も2月~3月頭あたりまでは、「ツアーがなくなる」「フェスが飛ぶ」「ベストアルバムが発売延期になる」みたいなことが立て続けに起こって、ヘコみつつもまだ前を向けていたんです。

空いた時間で準備をして、来月状況が戻ったらカウンターかましてやろう」くらいのつもりで、中止や延期が決まってもスイッチを入れ替えられていた。

サノ

そのころは「まあ、来月には事態が収束してるでしょ?」くらいの空気でしたもんね。

SKY-HIさん

でも、3月半ばにようやく「当面この状況が続くんだ」と気づいたんです。

そこで、全部考え直さなきゃってなったときに、心が一気にパンクしてしまったんですよ。

曲も作れなくなって、ついにはお風呂に入るとかご飯を食べるとか、普段当たり前にできてた生命活動も一つずつできなくなって

ああ、これはヤバイな」と自分で思いました。

普段できることがどんどんできなくなってくの、すごくわかる

SKY-HIさん

そんなふうに、辛い気持ちって雪だるま式に大きくなるんですよ。

要因は一つじゃなくて、いろんな辛さの掛け算で気がつくとすごい大きさになっている

蓄積していくうちにだんだん何が辛いのかがわからなくなって、対処できなくなってしまうんですよね。

サノ

そんな心理状態を、どうして短期間で乗り越えられたんでしょう?

普通はもっと引きずってしまうと思うんですけど…

SKY-HIさん

僕、似たような経験をいっぱいしてきたので…そのなかでちょっとずつ“憂鬱の質”を変えてきたんですよ。

ネガティブな気持ちは、「なくす」んじゃなくて質を変えていけばいいんです。

憂鬱の“質”…?

自分を肯定したいときほど、「浅ましい自分」と対峙しろ

サノ

「憂鬱の質を変える」…聞き慣れない表現ですけど、どういうことですか?

SKY-HIさん

ネガティブ思考って「なくさなきゃ」って考えがちだけど、たぶん無理なんです。基本的に、ずっと付き合っていかなきゃいけないもの。

ただ、「付き合い方を知っているかどうか」が大事だと思うんですよね。

SKY-HIさん

ネガティブ思考になっちゃったときって、何が一番ヤバイかわかります?

サノ

えーなんだろ…「いろんなことに挑戦できなくなる」とかですか?

SKY-HIさん

それもありますけど…一番はやっぱり「自分を愛せなくなること」だと思うんですよね。

自己愛、自己肯定がまったくないことこそが、根本的な苦しさなわけで。

サノ

なるほど…たしかにそうかも。

SKY-HIさん

だから、ネガティブ思考から抜け出すには自分を愛せるようになる必要があるんですけど…

「苦しいときに自分を愛してあげる」って、めちゃくちゃ難しいんですよね。

SKY-HIさん

でも、僕が少しずつ気づいていったのは…

辛いときに自分を愛するためには、まず自分の「浅ましい部分」を受け入れてあげなくちゃいけないってことで。

サノ

「浅ましい部分」?

SKY-HIさん

辛いとき、「今、なぜ辛いのか」を言語化していくと、必ず“真摯な理由”と“浅ましい理由”が見つかるんですよ。

たとえば僕が、「自粛期間に音楽活動をできないのがなぜ辛いのか」を考えたとします。

そうすると、「本気で作った音楽を、ファンのみんなに届けたかったから」みたいな、誰かに説明しやすい“真摯な理由”はわりとすぐ出てくるんです。

サノ

ふむふむ。

SKY-HIさん

ただ、もう少し本音を出すと「収入飛ぶのヤバイ」とか「今年名前売ってやろうと思ってたのに」みたいな、人には言いづらい “浅ましい理由”もある。

でも、辛いときほど僕たちって、“真摯な理由”だけを自分の本音だと思おうとしてしまうんです。

「理想の自分」に近づこうとして、浅ましさから目を背けてしまう。そうすると、より負のスパイラルにハマっちゃうんですよね。

SKY-HIさん

外に見せられるキレイな自分だけが本当の自分なワケがないから、どんどん本当の自分と乖離して、どこかで破綻しちゃう。

そうなると、「ほんとはそんな人間じゃないのに、何キレイゴト言ってんだろ…」って、「真摯な理由」すら肯定できなくなってしまうんです。

サノ

うわ、それすごいわかるかも…

普段「悪くない」と思えてる部分すら嫌いになっちゃうというか。

SKY-HIさん

だから、ネガティブなときほどまずは「浅ましい自分」も自分の本音だと受け止めてあげたほうがいいと思います。

そこでようやく、最初の自己肯定、自己愛が生まれる。

SKY-HIさん

小さくても、「まあ自分ってこんなもんだよな」って自己肯定さえ生まれちゃえば、あとはこっちのもんなんですよ。

あとは逆雪だるま式に「自分を肯定できること」を増やしていけばいいだけなんで。

サノ

逆雪だるま式?

SKY-HIさん

シャワー浴びたりご飯食べたり、ランニングしたり…本当に小さなことからでいいから、できなくなっていったことを1つずつ取り戻していくんですよ。

何か行動すると、ちょっと褒めてやれるじゃないですか。頑張った自分を(笑)。

そのサイクルに入っちゃうのが、憂鬱な気持ちを抜け出す王道ルートのような気がします。

サノ

辛い気持ちの雪だるまを掘り崩したら、今度は自己肯定の雪だるまを大きくしていく

シンプルだしイメージしやすいし、いいな…

SKY-HIさん

こういう対処法を知っておけるかどうかで、ネガティブな気持ちとの向き合い方は相当変わると思うんですよね。

たとえば鬱とかも“心の風邪”と言われたりもしますけど、風邪だって一生ならないなんて無理じゃないですか。

でも、2週間引きずっちゃう人もいれば、「この漢方飲んで8時間寝れば大丈夫」と2、3日で治してくる人もいるわけで。ネガティブ思考も“質”を変えていくことが大事だと思います。

向き合うのが苦しいときは、どうすれば…?

サノ

「辛いときほど内面と向き合え」というのはよくわかったんですけど…とはいえ、自分と向き合う体力が残ってないときもあると思うんです。

そういうときはどうすればいいんでしょう…?

SKY-HIさん

ありきたりな言葉になっちゃうかもしれないけど、結局は一人で抱え込まずに、人に頼るのがいいんじゃないですか?

サノ

人に頼る。

SKY-HIさん

僕の場合は、たなか(元ぼくのりりっくのぼうよみ)がわりと、相談に付き合ってくれるんですよね。

俺が一番言われたくないことを容赦なく言ってくるんですよ(笑)。

えっなんでこの言葉で傷つくんですか? 傷つくってことは心当たりがあるんじゃないですか?」みたいな。

たなかさんの切れ味よ

SKY-HIさん

でも、本当に助かってて。自粛が明けたタイミングで一番最初に会ったのも彼だったと思うし。

本音を話せる相手が一人いると、他の人にも打ち明けやすくなるんですよね。吐き出すことに抵抗がなくなって、カジュアルに言葉にできるようになる。

今日話した「言語化力」みたいなことって、他人との会話のなかで育っていったりするから、まずは辛いときこそ誰か話す習慣をつけるといいんじゃないかな。

サノ

一人で抱え込まないことは、気持ちが楽になるだけじゃなくて、ネガティブな気持ちの「言語化力」にもつながっていくと。

そうやって、少しずつ“質”を変えていく。

…すごく、肩の力を抜ける気がしました。今日はありがとうございました!

SKY-HIさん

最後に、僕の話を聞いて「もっと自分と向き合わなきゃダメだ」とか思う必要もないですからね。

辛いときほど、「●●しなきゃダメ」じゃなくて、「●●したほうがいいかもしれない」で考えたほうがいい

体力があるときは「自分と向き合ったほうがいいかもしれない」し、体力がないときは「向き合うのを休んだほうがいいかもしれない」。

そういう小さいところから一つずつ、「自分を追い込まない考え方」に変わっていけたらいいよね。

最後に、SKY-HIさんのやさしい“枝葉”が垣間見えた気がしました

最後まで、自分をやさしく受け入れる方法を教えてくれたSKY-HIさん。辛いときほど抜け出そうと頑張ってしまったり、無理をしてしまうことって、きっとある。

でも、そんなときこそSKY-HIさんの言葉を思い出しながら、ダメな自分を受けとめていきたいと思います。

ネガティブな気持ちって、なくそうとしないほうがいいんですよ。ただ質を変えてやるだけでいいんです

〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉

SKY-HIさんが初のベストアルバム『SKY-HI’s THE BEST』が9月23日に発売予定!

9月23日、SKY-HIさん初のベストアルバム『SKY-HI’s THE BEST』が満を持して発売予定!

BEST ALBUMのCDは、以下の3枚組。

歌唱楽曲を収録するPOPS BEST

RAP曲を収録するRAP BEST

コラボレーション楽曲を収録するCOLLABORATION BEST

新曲や新たなアレンジでVocalレコーディングを新たに行った楽曲、Vocalレコーディングを新たに行った楽曲も多数収録されています!

また、2019年12月11日に豊洲PITで行われた<SKY-HI Round A Ground 2019 ~Count Down SKY-HI~>の模様を収録したLIVE盤(DVD/Blu-ray)をセットで購入できるバージョンも…!

ぜひチェックしてみてください!

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