

「日本の若者はハングリー精神がない」って言うけど…
「日本は、中国に比べたら『どうぶつの森』」こうみくが語る、中国の若者の“ハングリー精神”
新R25編集部
中国はここ最近、キャッシュレス化・AI技術の発達などで大きく経済成長し、世界屈指の大国になっています。
そんな経済成長真っただなかにいる中国の若者は今、どんなマインドで仕事をしているのか?
また、「日本」に対してはどういう印象を抱いているのか…?
中国籍で日本育ち、三井物産→ByteDance(TikTokなどを運営する中国企業)と渡り歩き、オンラインコミュニティ「中国トレンド情報局」を運営するこうみくさんに、聞いてみることにしました!
この外出自粛に、普段はあまり気にすることのない海外の若者の働き方に触れ、自分の働き方を振り返るきっかけになれば幸いです。
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
【黄未来(こう・みく)】中国トレンドマーケター。1989年中国・西安市生まれ。6歳で来日。早稲田大学先進理工学部卒業後、2012年に三井物産に入社。国際貿易及び投資管理に6年半従事したのち、2018年秋より上海交通大学MBAに留学。現在は中国を本拠地として活動。オンラインサロン「中国トレンド情報局」も主宰。
※この記事は、2020年2月に取材したものです
中国の若者から見て日本ってどんな感じ?

天野
日本のネットでは、R25世代の人たちが「中国に行ってきたけど、こんなところがスゴかった」「進んでいた」みたいなブログを書いてるのをよく見ます。
逆に、中国の若者は現在の日本のことをどういうふうに見てるんでしょうか?

こうみくさん
それ、日本人はよく聞くんですけど、そもそも大国と小国っていう全然違うものを比べようとするのが不思議だなって思うんですよ。
ほう?

こうみくさん
だって、モルディブの人に「日本人ってモルディブのことをどう見てるの?」って言われたり、ギリシャ人に「ギリシャのことをどう見てるの?」って言われたりしても困りません?

天野
モルディブ…旅行で行くところですよね…

こうみくさん
「えっ、何かで競争してたっけ?」って思いますよね。
中国の若者も日本に対してそう思ってます。
大国は大国同士で比べるものだから、「中国と比べて日本はどうか」なんて考えることはないですね。
みんなアメリカと比較して考えているんですよ。
マジか

こうみくさん
中国人からすると、日本って同じテーブルに乗ってないんです。
バカにしてるわけじゃなく、サイズも人口も違うし、なんで比べるの?って常に思ってます。

天野
たぶん、それは失礼ながら戦後長年“中国のほうが遅れてる”みたいなイメージがあったからじゃないでしょうか。

こうみくさん
中国人の時間軸って4000年で見てるから、それは「戦争前後の一瞬の話じゃん」って感じなんですよ。
「ナウル」っていう国があるの知ってますか?

天野
ナウル?

こうみくさん
「リン」っていう鉱物が採掘されて、1980年代には日本の2倍も豊かな国(※)だったんです。
税金がタダで、生活費が支給されるから、国民の9割が無職だったっていう。
※国民1人あたりのGNP(国民総生産)が日本9900ドル、ナウル=2万ドル

こうみくさん
1990年代にはリンが枯渇して経済破綻状態になったんですが、それを聞いたところで「ナウルって最近イケてないよね?」って話すことはないですよね。

天野
その一瞬だけ盛り上がった国っていうことか…
つまり、中国人の若者から、「最近の日本って落ち目だよね」みたいに思われているっていう話は…

こうみくさん
完全に被害妄想です。
だそうです。恥ずかしくなってきたな…
中国人に「ハングリー精神」があるのは、人生がマイナスからスタートだから

天野
「日本人の若者はハングリー精神がない」なんてよく言われますが、中国の若者はどうなのでしょう?

こうみくさん
中国人のハングリー精神は半端じゃないですよ。
でも、それって当たり前なんです。
だってそもそも中国に生まれるだけで、マイナスからスタートなんですから。
そのマイナスをゼロかプラスにしたいっていう当然の欲求で行動してるだけなんですよ。

天野
何がそんなにマイナスなんですか?

こうみくさん
格差と競争が激しい。日本とはレベチなんです。
そもそも中国は一流大学に入れないと就職もできません。
その一流大学の倍率はかなり高く、まさに人生をかけた受験戦争に多くの中国人が臨むことになります。

こうみくさん
さらに就職先でも給与の差が激しい。
たとえば、優秀なエンジニアだと新卒1年目から年収1000万円なんてこともあるけど、そうでない人は年収が3分の1以下ってことも当たり前にあります。

天野
600万以上の乖離があるのか…新卒時でそこまで差があると必死になる理由がわかる気がします。

こうみくさん
ByteDance北京本社にいたころ、同僚が「インターンに応募してくる子がイケてない」って嘆いてたんですよ。
何がイケてないんですか?ってきいたら「職務経験がない」って言うんです。
これっておかしくないですか?

天野
インターンなんだから、経験がないのは当たり前ですよね…?

こうみくさん
そうです。
つまり中国では、大手企業のインターンに採用してもらうためには、まずそこそこのところでインターン経験を積んでないといけないんです。
もしくは修士まで行くか、海外留学するか。
競争とプレッシャーが半端ないんですよ。
ゲームにたとえれば、中国がバトルロワイヤル系ゲームだとしたら、日本は『どうぶつの森』ぐらいほんわかしてます。

天野
『どうぶつの森』…島だけに…

こうみくさん
だから日本の若者に対して、「ハングリー精神がない」なんて言うこと自体が的外れなんですよ。
ハングリーな環境じゃないんだから、なくて当然っしょって思います。
赤紙が来てないのに「戦争に行きたい!」って言ってる人いないじゃないですか。
たとえが危なっかしいこうみくさん

こうみくさん
中国の社会問題って日本と比べものにならないくらいヤバイですよ。
格差とか、大気汚染問題とか、そもそも安定した統治が行われるのか?とか。
いまは経済が成長しているから14億人がまとまっているけど、停滞したら内戦が起こるんじゃないかっていう話もあるんです。

天野
危うさがあるからこそ、ハングリーにならざるを得ないのか…

こうみくさん
中国と日本のハングリーさはレベチですよ。
日本って本当にいい国だなって思います。
レベチってずっと言ってる

こうみくさん
あと、“癒やし”に対する価値観が日本人とは全然違うなと思っていて。

天野
癒やし?

こうみくさん
日本人がイメージする“癒やし”って、リフレッシュとかを思い浮かべますよね。
「忙しくてしんどいから癒やしがほしい…」みたいな。

天野
それは世界共通な気もしますけど…

こうみくさん
違います。
中国人にとっての癒やしは「収入」と「活躍」なんです。収入が上がることが心の癒やしになる。
でもそっちのほうが本質的だなって思うんですよ。
日本人のイメージする癒やしって1~2日くらいしか効果を発揮しないじゃないですか。

天野
あ~、わかるな~。銭湯に行ってリラックスできても、仕事をしたら一瞬で元に戻っちゃう気がします。

こうみくさん
中国人からしたら、正直そんなのどうでもいいんですよ。
彼らにとっては、自分がコミュニティのなかで活躍してるっていうのが超絶癒やしになるんです。
日本人もみんな、癒やされたいなら収入にこだわったほうがいいと思うんですよね。
年収が3000万円になったら、仕事がつまらないなんてならないはずですから。
世界的に見れば、「フェアな競争なんてない」のは当たり前

こうみくさん
あと、日本では、本気で“個としてトガる”のは難しいと思います。
副業とかSNSで目立ちすぎると会社やまわりの人から叩かれるじゃないですか。

天野
中国では違うんですか?

こうみくさん
真逆ですよ。
たとえば天野さんが、仕事で一発当てて大成功したとするじゃないですか。
中国では、「もっとこいつを出世させよう」という動きになるんです。
どんどん出世させて、おこぼれをもらおうとするんです。

天野
そこでもハングリー精神が働くのか!

こうみくさん
日本だったら「何アイツ」みたいに足を引っ張ろうとしますよね。
すぐに粗を探して、叩こうとする。
ここ最近、特にそういうニュースが多い気がします…

こうみくさん
「縁故採用とかよくない」っていうのも日本独特だなと思います。
トランプ政権ができたとき、トランプさんは重要なポストを身内で固めました。
それを日本のメディアは「トランプはバカ」って叩いてたんですけど、私は「お前がバカだ」って思ったんですよね。
能力なんてよくわからないし、いつ刺されるかわからないヤツを近くに置いて疑心暗鬼になるよりも、信用できる人で固めて自分のパフォーマンスを上げよう、って当然の考えですよ。

天野
視点がまったく違いますね…

こうみくさん
世界だと「競争はフェアじゃない」のが当たり前なんですよね。
みんなの待遇を同じにしようって考えるのは日本的だなと。
さすがにそろそろ「日本で働くメリット」も教えてほしい…

天野
なんか、いろいろ言われっぱなしなので、いま日本で働いている若者の希望になるようなアドバイスもほしいんですけど…
こうみくさんが考える、「日本で働くメリット」ってありますか?

こうみくさん
日本は競争が激しくないから、上昇志向がある人は勝ちやすいですよね。
中国だと全員が上昇志向を持っていて、そのなかで戦わないといけませんから。
その点、意識を高く持って行動していれば頭ひとつ抜けることは簡単だと思います。

天野
なるほど…
たとえば、こうみくさんが今新卒に戻れたら、どんな環境で働くのがベストだと思います?

こうみくさん
リクルート一択ですね。

天野
えっ!? どうしてですか?

こうみくさん
リクルートはすべての点で最強なんですよ。
まず大企業としての教育がしっかりしていますよね。
さっきもお話した通り、中国の企業ってレベルの高いインターン経験があるのが当たり前なので、教えはするけど「教育しよう」という意識はありません。

天野
たしかにそうだな…

こうみくさん
あとは大企業でありながら、ベンチャー的な独立精神も身に付くこと。そういう社風だと、会社にぶら下がろうっていう人がほとんどいないじゃないですか。
それに新卒から給与が高いのも魅力です。生活が安定するので、仕事に集中できますよね。
こうみくさんのリクルート最強説、あとちょっとだけ続きます

こうみくさん
そして、リクルートっていろいろな採用形態があるから、学歴がなくても頑張ればなんとか入れる。これは中国だとありえないことですよね。
教育・ベンチャースピリット・待遇の3つが整った最強の企業だと思います。
新卒時に戻れたら、絶対にリクルートに入りたい。

天野
ふむふむ。日本人のフェアネス精神や中国のハングリーさがバランスよく発揮されているのか…
上昇志向のある人にとっては最高の環境だと言えますね。

こうみくさん
これは提案なんですけど、日本の若者は人生の大きな方向性として、「退屈」と「不安」のどちらかを選んだほうがいいと思うんです。
退屈っていうのは安定した大企業にいること。
一方で不安は、個としてトガる道を選ぶこと。もちろんケガするリスクもあるけど、こっちのほうがリターンは大きいです。
このどっちの道で生きていくかを決めておかないと、キャリアについて行き詰まることが多いと思います。

天野
中国人はどちらかというと、みんな「不安」のなかで生きていると。

こうみくさん
そうです。
個人としてどう生きるかという点を選べるのは、日本社会の魅力だと思います。
…というわけで、想像以上にハングリーさを求められる環境にあるのは、中国特有の文化だと言うことがわかってきました。
日本の若者はハングリー精神を持ちづらいと言われますが、だからこそ向上心がある人は頭ひとつ抜けやすい。そう言われるとやる気が出てくるかも。
隣国でありながらも全然知らなかった中国のマインド。
今後も世界各国の若者のリアルについて識者に聞いてみようと思います!
〈取材・編集=天野俊吉(@amanop)/撮影・文=福田啄也(@fkd1111)〉
こうみくさんが主宰するオンラインコミュニティ「中国トレンド情報局」では、中国のトレンド、アプリ、ニュースなど中国現地でしか得られない情報を発信しています。
今回のインタビューで興味がわいた方はぜひチェックしてみてください!

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