ビジネスパーソンインタビュー
「アートはもっと楽しめるものだ」と伝えたい
土日限定の副業アーティスト・NiiMiii HIROKIが“アートが会社員の仕事に活きる“と主張する理由
新R25編集部
新R25が“自分でつくれる本格的なネットショップ”「STORES.jp」とコラボして、「新R25ストア」を開設しているのを知っていますか?
そのなかの商品として、「1名限定・あなたを記事でバズらせます!」というものがありました。
今回取材するのは「新R25読者の“アート”に対する敷居を下げたい」ということで応募してきてくれた、アーティストのNiiMiii HIROKIさん。
人の顔を線画で描くスタイルが特徴的なNiiMiiiさんの作品。アート好きな読者のなかには「知っている」という人もいるのではないでしょうか?
取材当日、アトリエにお邪魔してみると…
…独特の雰囲気がする
白状しておくと、アートの良さ、楽しみ方をまったく理解できない編集部・宮内。ちゃんと取材を遂行することができるのか…不安を抱きながらのスタートです。
〈聞き手=宮内麻希(新R25編集部)〉
【NiiMiii HIROKI】線で構成するアートワークを製作。見た人や社会が反応する「コミュニケーションアート」やテクスチャや素材から生まれる「偶発的な美」と幾何形態である線の「必然的な美」をくみあわせるラインアートを展開。アートディレクターとして音楽やファッションのアートワークも精力的に活動している
受賞歴
2011年 R e d B u l l D o o d l e A r t fi n a l i s t
2012年 モスクワ国際ビエンナーレ- ゴールデンビー入選
2012年 メキシコ国際ビエンナーレ入選
2012年 C S デザイン賞入賞 商品化 2 0 1 2 , I F F T ( 国際見本市) 出展
2013年 W o r l d B i e n n i a l E x h i b i t i o n P o s t e r s 入選
2016年 M I D T O W N a w a r d 入賞
2019年 SICF表参道スパイラル展示
2019年 ルミネアートアワードファイナリスト
アートって何が楽しいのか分からない…
NiiMiiiさん
いきなりですが、宮内さんはアートって好きですか?
宮内
いや…正直まったくわかりません。
開口一番、NIIMIさんを不安にさせてしまったかもしれない
宮内
友達に誘われて美術館に行くこともあるんですけど、出たあとになんて感想を言えばいいのか悩んでしまって…
結局、「生で観ると違うね~」ってアートの価値をわかってるふうな発言をしてしまいます。
NiiMiiiさん
(笑)。でも、アートってなにがスゴイのかよくわからないですよね。
…これはなんだろう
NiiMiiiさん
僕も美術館で「この油絵、かっこいいな~」くらいの感想しか出てこないですよ。
宮内
そうなんですか!?
NiiMiiiさん
アートを生み出す側は作品にメッセージを込めます。でも、観ている人はそこまで汲み取れませんよね。
NiiMiiiさん
海外で実際にあった話ですが、美術館の展示スペースの真ん中に、メガネの落とし物があったんですね。
すると、そのメガネのまわりに人が集まりだすんですよ。
宮内
…?
NiiMiiiさん
美術品でもなんでもない、ただの落ちてるメガネなのに、みんなそれを作品だと思ってしまう。
つまり、作品そのものに価値があるというより、美術館という空間の力が落とし物を作品に仕立てたんですよ。
宮内
なるほど。美術館に足を運ぶようなアート好きでも“雰囲気”に惑わされていることがあるってことですね。
NiiMiiiさん
アートって結局、“世界にひとつ”とか“ここでしか観れない”という希少性に価値が宿ると思うんです。
そう考えると、「この作品ってなにがいいんだろう」と考えすぎるのって、あまり意味のないことだと思えませんか?
宮内
たしかに…!
アートの敷居を少しでも下げるために“似顔絵”を描きはじめた
NiiMiiiさん
あと、日本の美術館って厳かな雰囲気じゃないですか。海外の美術館はもっとカジュアルなんですよね。
作品の前で学生が座り込んで模写していたり、小さな子供を連れた家族がいたり。アートがエンタテイメントのひとつになってる。彼らにとって、アートはとっても身近。
僕は、「アートはもっと楽しめるものだ」と伝えたくて今の活動をはじめたんです。
NiiMiiiさん
「有名なアーティストの○○展」と言われると、そのアーティストのことが好きな人しか見に行きませんよね。
でも、「○○が国民1億人の似顔絵を展示。あなたの顔もあるかも?」と言われたら、自分の顔を探しに足を運んでみようと思えませんか?
宮内
たしかに。それなら行くのが楽しみになるかもしれません。
NiiMiiiさん
だから僕、似顔絵ばっかり描いてるんですよね。
アートに興味がない人でも、自分の顔を描いてもらえたらうれしいじゃないですか。
NiiMiiiさん
ちなみにこれ、宮内さんのツイッターのアイコンを見て描いてみたんですけど…
宮内
あ、私…! たしかにこれはうれしい。テンション上がりますね。
NiiMiiiさん
一方的な“観るだけのアート”ではなくて、双方向的な“楽しめるアート”を生み出すことを大切にしてるんです。
副業アーティストだからこそできたマーケティング戦略
宮内
ちなみに、どうやってこのスタイルにたどり着いたんですか?
NiiMiiiさん
僕、本職が広告のアートディレクターで、今は副業的にアーティスト活動をしているんです。
本職で鍛えてきた企画脳をアートでも活かそうと思って、まず「誰もやっていないこと」×「量産できるか」で考えました。
後者の視点だと、「線」っていろんなデザインとコラボしやすいので、展開できる幅が広いんです。だから「線」をモチーフにした似顔絵を描くようになって…
NiiMiiiさん
「誰もやっていないこと」という軸では、自分が好きなインフルエンサーやお笑い芸人の似顔絵を描いて、本人のタグをつけてInstagramに投稿していきました。。
ファンが似顔絵を描くということまではよくあるんですけど、アートとして描いている人はあまり見たことがないなと思って。
宮内
実際の反応はどうでしたか?
NiiMiiiさん
わりと有名な方たちもストーリーに上げてくれました。
アーティストっていいものはつくれるけど、マーケットを見極めて広げていくことが苦手なので、本職のスキルを活かせたのはよかったですね。
これは美大を卒業してそのままアーティストとして活動していたら、絶対にできなかったことだと思います。
副業として自分の好きなことに没頭したら、本業でも成果が出た
宮内
ほかにも、広告のお仕事をされながらアーティスト活動をしてよかった点ってありますか?
NiiMiiiさん
仕事でもうまく連動できたり、アートでの考え方が広告でも活きたりします。
NiiMiiiさん
広告の仕事ってクライアントワークじゃないですか。
ときには、「絶対こっちのほうがいい結果になると思う」という個人的な意見や感情を抑えて、本質的じゃないものを提案せざるを得ないときもあって。
僕の実力不足なところもあるんですが、少し違和感を感じるときもありまして。
宮内
業界問わず、同じ葛藤を抱えている人は多そうです。
NiiMiiiさん
そんなタイミングでアーティスト活動をはじめたんです。
すると、作品を見た人から問い合わせをいただいて仕事につながったり、本業の案件でも自分がアーティストとして関われたりできるようになって、以前より仕事の幅が広くなり、楽しくなっていった。
自分が信じられることだけをやったほうが、パフォーマンスを発揮できると思えたんですよね。
NiiMiiiさん
それに気がついてからは、もっと本質的な提案や自分の意見を言えるようになりました。結果的にそのほうが、みんなが幸せになる仕事ができるとも思っています。
本業とは別の軸足ができたからこそ、いつ会社の仕事がなくなってもいいと思いながら仕事ができるようになりましたね。
NiiMiii HIROKIが次に考えていることとは?
宮内
最後に、これからNiiMiiiさんが企んでいることについてもお伺いしたいです。
NiiMiiiさん
まだできるかはわからないのですが、JR両国駅に、イベントスペースとして借りられる“3番線ホーム”という場所があるんですけど、両国にちなんで、そこで歴代の横綱の似顔絵を展示したいと思ってます。
ただ、ひとつ問題なのが…お相撲さんって、線画にすると誰が誰だかわからなくなるんですよ(笑)。
写真のなかには5人の横綱がいます
宮内
本当だ(笑)。でも、ちょっと見てみたいです。
NiiMiiiさん
実現に向けて制作頑張ります!
これからも、宮内さんのように、“アートがわからない”“アートに関心のない”人に、もっとアートを身近に感じてもらえる仕掛けを生み出していこうと思っているので、楽しみにしていてください。
アートに限らず、「自分は詳しくないから」「よくわからないから」と言って遠ざけるのではなく、難しく考えずに“楽しんでみる”という気持ちで踏み込むことで、新しい世界が開けるのかも。
事実、「お相撲さんの展示会」以外にも、進行中という企画をいくつか教えてもらったのですが、どれもアートに関心のない自分でも行ってみたいと思えるものでした。
NiiMiii HIROKIがこれからどんな仕掛けをしていくのか、Instagramで要チェックです。
〈取材・文=宮内麻希(@haribo1126)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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