ビジネスパーソンインタビュー
「昨日の自分より少しでも成長する」
「今、すべてを賭けよう!という思いがありました」『全裸監督』森田望智が語る“勝負強さ”
新R25編集部
ビジネスパーソンには、「ここで絶対に結果を残さなくてはいけない」という局面に立たされることがありますよね。
ターニングポイントになり得る“勝負どころ”で、自分の実力を発揮できればいいけれど、これが難しい…!
“勝負強さ”を手に入れる方法があるのなら、ぜひ教えていただきたい。
そう思い取材を依頼したのが、Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』でブレイクした女優・森田望智さん。
【森田望智(もりた・みさと)】1996年生まれ、神奈川県出身。2011年に女優デビュー。出演作に、映画『友達』、『一週間フレンズ。』など。2019年Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』で、ヒロインの黒木香を体当たりで演じ注目を浴びる。その後『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』で看護師役を演じ、前作とのギャップも話題に。第24回釜山国際映画祭「アジアコンテンツアワード」にて最優秀新人賞を受賞。現在配信中のFODオリジナルドラマ『あの子が生まれる・・・』で初主演。また本作の主題歌eill『Night D』のMVに出演し8月5日より配信リリース
森田さん、『全裸監督』のヒロイン役オーディションに抜擢されるまで、オーディションに落ちつづける日々がつづいていたそう。
超ベテラン俳優たちに囲まれながらも、作品は大ヒット。森田さんに密着する内容の『情熱大陸』(TBS系)も放映されました。
大舞台でここまで結果を残せた理由とは…?
本人いわく「3つの意識」があったそうです。
〈聞き手=ほしゆき〉
8年間オーディションに落ちまくり、「これが最後かも…」と思った『全裸監督』のオーディション
ほし
森田さん、『全裸監督』に出演するまではほとんど無名の状態だったとか…?
森田さん
そうですね。14歳で女優デビューをしたものの、オーディションを何百回も受けては落ちて…
合間にバイトをしながら、レッスンに通う日々でした。
森田さん
なので、マネージャーさんから『全裸監督』のお話をもらったとき、「これがラストチャンスかも…」という気持ちでオーディションを受けました。
黒木さんは脇毛を生やしていたとのことで、できることは全部やろうと思って脇毛を自分で描いて行きました。
ほし
脇毛を描く…!!
オーディションって、そこまでするんですか?
森田さん
ほかにそんなことしてる人はいなかったですね(笑)。
でも武正晴監督は、オーディションでもできる限り“演出”をする女優さんを評価すると聞いていたんです。
黒木さんは脇毛を生やしている女性ということを事前に調べていたので、自分で描いて挑みました。
ここぞというときに、「すべてを賭けられるかどうか」が大事
ほし
「伝説のAV女優」と謳われる女優黒木香さんを演じるということで、体当たりな絡みも多い役でしたが…挑戦することにまったく躊躇はなかったですか?
森田さん
躊躇は、なかったです。
チャンスをつかみたいなら、「ここぞというときに、すべてを賭けられるかどうかが大事」という思いをずっと持っていて。
『全裸監督』のお話をいただいたときは「今がそのときだ」と感じていたので、覚悟を決めて飛び込みました。
ほし
どうして、「今こそ勝負どころだ」と感じられたんですか?
森田さん
黒木さんが実在する女性ということで調べてみたら、私の笑顔は黒木さんと雰囲気が似ているように思えたんです。
笑顔だけ、ほんの少しですけど…
お芝居には演技力はもちろん、その役に合った雰囲気が大切なので、「私のチャンスかも」と思えたのは大きかったと思います。
ほし
たしかに、配信後には「本物の黒木さんをみているようだった」という声も多かったですよね!
とはいえ、実際に抜擢されて撮影をするときには、緊張されたんじゃないですか?
森田さん
そうですね。
セクシー女優を演じるのも初めてでしたし、カメラの前で脱ぐ経験もなかったので…
ベッドシーンの撮影がはじまる2~3週間前までは、「みんなインフルエンザになって撮影中止になればいいのに」と思っていたんですけど…
めちゃくちゃ逃げ出したくなってる
森田さん
リハーサルで監督が自ら演技の手本を見せてくださって、「私が恥ずかしがっている場合じゃない!」と覚悟が決まりました。
ほし
脱ぐことで、「女優として色がついてしまうのではないか」という心配はなかったですか?
森田さん
それはなかったです。
森田さん
ずっと無名の状態で失うものが本当に何もなかったので、『全裸監督』に挑んで女優として色をつけていただけるのなら、むしろ本望だなと。
勝負どころで大切なのは、“比較対象を間違えないこと”
ほし
『全裸監督』では、山田孝之さん、玉山鉄二さん、小雪さんなど…大物の俳優さんと共演されていましたよね。
圧倒的に経験の差がある方々に囲まれて、プレッシャーはなかったんですか?
森田さん
最初は、皆さんとお仕事することにとても緊張してたんです。
でもあるとき、山田さんに「今日役者をはじめても、10年役者をやっていても、カメラが回れば土俵は同じ。そこに差はない」と言われたんです。
山田孝之さんが…
森田さん
その言葉を聞いたときに、「比較対象を間違えてはいけない」とすごく意識するようになりました。
ほかの人が活躍してきた年数を超えることはないし、人それぞれ持っている強みも違う。
私は、私自身の戦いに集中しなくてはいけない。「昨日の自分より少しでも成長する」。
どんな環境でも、そのくり返しなんだと思います。
ほし
自分と誰かではなく、「昨日の自分と比較する」ということか…
森田さん
自分より能力の高い人に囲まれているからといって、「昨日の自分よりもうまくできる自信がない」と思うのなら、その程度の努力しかしていない、ということ。
ストイックな言葉だけど、"自分との比較"ならたしかにそうかも。
ほし
撮影中は「うまくできている」「きっと自分の代表作になる」という手応えはあったんですか?
森田さん
いや~…ぜんっぜん…(苦笑)。
演技しているときは「少し上達したかも」と感じられても、映像を見たら自分の理想とはかけ離れていて。
撮影後は毎回「なんで私はこんなに成長しないんだろう」と、落胆しながら帰っていました。
森田さん
でもそのたびに、何百回もオーディションに落ちつづけてきた数年を思い出して、「そもそも悩むほどスキルがない」って思い直してました。
凹んで立ち止まる暇があるなら、目の前の課題に集中して努力を積み重ねたほうがいい。
「私はできる人だ」と過信していたらもっとひどい演技だったと思うので、オーディションに受からない時期があってよかったです。
「苦労をしたほうが得なんだ」って思えるようになりました。
ほし
苦労をしたほうが得…
全裸監督に挑んだことで、「過去の努力は間違っていなかった」と思えるようになったんですね。
森田さん
そうです。だから今はどれだけ難題でも、「目の前の努力を積み重ねていけば絶対大丈夫」と信じられるようになりました。
失敗の理由は“ライバルから目を背けているから”だった
ほし
今の森田さんから見て、オーディションに落ちつづけていたころの自分には、何が足りなかったと感じますか?
森田さん
「ライバルとの実力差を、直視する勇気」ですかね。
以前は、「自分ならきっとやれる」「あの子よりもうまくできる」という思いがとても強かったんですよ。
自分が落ちたオーディションに受かった人の演技を、見ることができていなかったんです。
自分より評価されている人の演技を見るのは、「自分が劣っているのを直視すること」になるじゃないですか。
ほし
うわぁ…わかります。
同期だったり、経験年数の近い相手の成功ほど、素直に褒められない…
森田さん
そういう自分だから、大事な場面で失敗するんですよね。
「あの人にはできて自分にはできなかったことは何か?」という具体的な課題を見つけたほうが、本当はラクなんですよ。
ほし
どういうことでしょう…
森田さん
“ライバルとの差”にこそ、今の自分に足りないものが顕著にあらわれる。
課題をとらえられていないから、大事な場面で「なんとなく自分にはできるだろう」と過信してしまったり、「なんとなく自信がない」とネガティブになってしまったりするんです。
根拠もないのに。
これは百理ある
森田さん
「自分が何を改善したら成長できるのか」をリストにできていれば、どんな大舞台でもその課題と向き合うだけ。敵が明確になります。
もしうまくいかなくても、どの課題に対して失敗したのかが見えていればずっとラクです。
熱が入り強い言葉を使ってしまいました…伝わりましたか?
ほし
とんでもないです! …めちゃくちゃ伝わりました。
森田さん
私は未熟さを受け入れて、負のスパイラルから抜け出すまでに何年もかかりました。
演技力の向上もそうですが…何事にも時間が必要なタイプなんですよね。
でも人それぞれのスピードがあると思うので、これからもこういう自分を受け入れて、精進していきたいと思っています。
森田さん、貴重なお話をありがとうございました…!
森田さんは最初から勝負強かったワケではなく、「むしろ弱かったから勝負強さを鍛えた人」ということがわかりました。
①勝負どころでは「すべてを賭ける心構え」で
②比較対象を間違えない
③ライバルを分析して課題を明確にする
この3点を意識して、日々努力を重ねれば“勝負強い人”に一歩近づく…!
私も、ひとつずつ自分のものにしていきたいと思います。
〈取材・文=ほしゆき(@yknk_st)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=Yusuke(@yusuke_wj)〉
森田さん初主演ドラマ『あの子が生まれる・・・』がFODで配信中!
森田さんが初めて主演に抜擢されたFODオリジナルドラマ『あの子が生まれる・・・』が、現在配信中です。
原作・脚本は『リング』『らせん』などを手がけジャパニーズホラーを牽引する鈴木光司さん。この夏、ホラー作品をお家で楽しみたい方はぜひチェックしてみてください。
森田さんは本作の主題歌eill『Night D』のMVにも出演し、8月5日より配信されています!
ビジネスパーソンインタビュー
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