ビジネスパーソンインタビュー
鴨頭嘉人YouTubeチャンネルより
「人の話をちゃんと聞けない」と思う人こそが、本当の“聞き上手”になれる
新R25編集部
マネジメントをする人にとっては必須スキルと言ってもいい「聞く力」。
かつて日本マクドナルドで“伝説の店長”と呼ばれ、自身の講演を発信しているYouTubeチャンネルは登録者数100万人(2020/1/30現在)を誇る“炎の講演家”・鴨頭嘉人さんは、この「聞く力」を鍛えるにはネガティブになることが必要だと語ります。
コミュニケーション能力が高い人を見ていると、ネガティブとはほど遠いような気もしますが…一体どんな理由があるのでしょうか。
【鴨頭嘉人(かもがしら・よしひと)】高校卒業後、東京に引越し19歳で日本マクドナルドにアルバイトとして入社。30歳で店長に昇進。32歳の時にはマクドナルド3300店舗中、お客様満足度日本一、従業員満足度日本一、セールス伸び率日本一を獲得し最優秀店長で表彰される。その後も最優秀コンサルタント。米国プレジデントアワード、米国サークルオブエクセレンスと国内のみならず全世界のマクドナルド表彰もすべて受賞する功績を残す。2010年に独立。現在は組織構築・人材育成・セールス獲得についての講演・研修を行う「炎の講演家」として活躍している
私たちも陥っている「聞いている途中でわかった気になる現象」
先日、池袋駅の改札で年配のおじさんが駅員さんに道を聞いていました。
駅員さんは慣れた様子で、「こちらをまっすぐに進んで、右手に曲がって、23番の出口に進んでください」と説明をしていました。
ところが、そのおじさんは、駅員さんが説明している途中にもかかわらず、「あぁ!? どこ!?」と声を被せてしまっているんです。
しかも、その後には「何言ってるかわかんねえんだよ!」と駅員さんにキレはじめました。
そのやりとりが6回は続いていましたね。
駅員さんは道を聞かれ慣れているので、誰もが迷わないであろう、わかりやすい説明をしているんですよ。
「右」や「23番」って、小学生やおじいちゃんがおばあちゃんが聞いてもわかる言葉ですよね。
こういうのを「浅い言葉」といいます。
浅い言葉というのは受け取り方のブレが少ないので、コミュニケーションにおいて非常に使い勝手のいい言葉です。
それでもおじさんは「わかるように言えよ!」と怒っていました。
僕も最初は、「このおっちゃんは話にならないな」と思っていたのですが、何度も繰り返されるやりとりを見ているうちに、気づいたんです。
これは、自分も含め多くの人が陥っている、「聞いている途中でわかった気になる現象」ではないかと。
声に出さないだけで、思考の中では同じことをやっている
今回の例では、駅員さんの説明に声を被せていたので、おじさん側が悪いというのがわかりますよね。
では、声が被っていなくても、思考が被っていたらどうでしょう?
相手の人が話している途中で、「それってこうだよね」と、自分の頭の中で決めつけてしまっていたら?
おじさんも「自分が聞きたいのはそれじゃない」と思い込んでいたから、「そうじゃなくて!」と声を被せていたんです。
もしかしたら私たちも、声に出さないだけで、頭の中では同じことをやっているのかもしれません。
FacebookやYouTubeのコメント欄を思い出してみてください。
あのコメント欄にはたまに、発信者の言いたいことを全部受け取る前に書かれているコメントがあるんですよ。
たとえば僕が、「前向きな言葉を使えば、前向きな心が育まれる」という話を YouTubeで発信していたとします。
するとコメント欄に、「人間はポジティブな面だけじゃないと思います」という書き込みがくるんです。
たしかに、そのコメント自体はおっしゃるとおりでしょう。
でも、僕がそのYouTubeで話していたのは、「人にはネガティブな面とポジティブな面の両方があるけれど、前向きな言葉を使うことで、前向きな気持ちに変われます」という内容なんです。
そこに、「人間はポジティブな面だけじゃないと思います」とコメントするということは、話を聞いていないんでしょうね。
「聞けていない」という前提に立とう
我々だって、人の話を30分、10分と、ちゃんと聞くことができるでしょうか?
Aさんの話は30分でも聞けるが、Bさんの話は1〜2分しか聞けない。
上司の話はちゃんと聞けても、部下の話は聞けない、という人もいるでしょう。
そこで必要なのは、「自分がちゃんと聞けていない」という前提を意識することです。
これができないと、「聞く力」は鍛えられません。
おじさんは、「俺は聞いているけれど、お前の言い方がおかしい」ということが前提になっていたので、「何言ってるかわかんねーんだよ!」と、怒りの矛先を相手に向けていました。
「成長する」というポジティブな面を伸ばしたければ、「聞けていない」というネガティブな面を意識することが重要です。
ただ、我々はどうしてもポジティブは良いことでネガティブは悪いことだと、二元的に判断してしまいます。
自分を成長させたいときには、その二元的な考え方が大きな機会損失につながります。
むしろ、「自分はできている」と思い込むことこそ、もっとも危険なことです。
ネガティブな思考を持つことで、ポジティブな変化を遂げられることを意識してください。
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