ビジネスパーソンインタビュー

極限状況を耐えられる人の条件とは? 小泉進次郎の根底に流れる、父・純一郎の教え

竹中平蔵著『結果を出すリーダーはどこが違うのか』より

極限状況を耐えられる人の条件とは? 小泉進次郎の根底に流れる、父・純一郎の教え

新R25編集部

2019/10/29

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“構造改革なくして景気回復なし”をスローガンに、「交通営団」「道路関係四公団」などの民営化を推進した第87~89代内閣総理大臣の小泉純一郎さん

その彼を一番近くで支えつづけた竹中平蔵さんが、著書『結果を出すリーダーはどこが違うのか』を上梓しました。

同書において、竹中さんと小泉進次郎さんの対談が実現。

それぞれの形でリーダーとして活躍するおふたりの言葉には、R25世代のビジネスパーソンにも通ずる“リーダーシップの本質”が隠されていました。

今回はその対談のなかから、「若手リーダーに必要な3要素」をご紹介。

チームのリーダーとして悪戦苦闘している人はもちろん、リーダーを志すあなたも必読です!

荒波にもまれることで、初めて見える景色がある

竹中さん:進次郎さんが、自民党史上初めて30代で農林部会長を引き受けたとき、私はよく引き受けたな、と思いました。

私も一学者から急に大臣になって、公人の責任ある立場というのは本当に極限状況だなと思いました。

毎日、どの瞬間も戦争をやっているのと同じで、どこから刺されるかわからないし、不用意なことは言えません。

この極限状況を続けていく、そして負けないためにどうしていくかというのがリーダーになるうえで究極的な条件の一つだと思うんです。

小泉さん:そうですね。やはり、リスクをとってもらいたい。リスクをとって挑戦をしたとき、答えがなく、落としどころがない勝負を挑んだときに初めて見える景色を見てほしいです。

具体的に言えば、2016年の農業改革(※)は本当に落としどころがない勝負だったんです。

(※)農業改革…2016年、当時自民党農林部会長だった小泉進次郎さんが主導した改革のこと。農協を中心とした保守的な制度が農業の成長産業化を阻んでいると主張し、制度や組織の抜本的な改革を試みた。

小泉さん:相手は1,000万人の組合員を抱えているJAグループです。しかも彼らは日本農業新聞という、自分のメディアを持っています。

そして何より、政治、官僚の世界に、さまざまな人脈を持っている。国会議員の中でも、私のことを支えてくれている人のほうが少数派です。

けれど、そこに挑むという中で、初めてヒリヒリするような、常に寝首をかかれるリスクを体験しました。

竹中先生もたくさん経験されているからわかると思いますが、夜に決まっていた合意事項が、朝起きたら平気で変わっていたりするんです。

そして、勝負がついたと思っても最後の最後まで諦めない人たちがいっぱいいます。

法案を国会に出したあとに、どうやったらつぶせるかを考える人もいる。

法律が通ったあとでも、どうにかして政省令でつぶそうと考える人がいる。

さらには官僚OB、政治家OBを使って、裏で抵抗勢力作りに励む人たちもいるわけです。

メディアに情報を流して、空気を作ろうとする人たちもいます。

その政治の荒波の中で、最初に抱えたものを運び切るということが、いかにたいへんな作業か

よく登ってきたなという世界です。落としどころが決まっている仕事だけやっていたら、絶対に見えない景色がありますし、そういった勝負に挑んで初めて真の友というのがわかります。そして、誰が敵かもよくわかる。

どんなときでも絶対支えてくれると思った人の中で、意外に支えてくれない人。

はなから期待をしていない人で、やっぱりねという人。

それから、最初から絶対協力してくれないと思っていたのに、実は最後まで支えてくれたのはこの人だったという人。

こうした人間関係は、一緒にお酒を飲んで仲よく話をしているだけでは見極められない

本当にヒリヒリしたところに勝負に行ったとき、どういうふうに手を差し伸べるか、どういうふうに手を引かれちゃうか、ということが見えてきます。

そして、支えてくれた人とは、その後も、ものすごく深いところで信頼できるパートナーになれます。

自分にとっては、本当に大きな財産だったと思うのが農業改革での経験です。

みなさんには、それぞれの領域で、そういう経験をしてもらいたいなと思いますね。

「自分で選んだんだからな。忘れるな」という父の言葉

竹中さん:極限状況を避けるな」というのが大変重要な進次郎さんのメッセージだと思います。

極限状況においてこそ自分は成長する、極限状況に置かれた場合にどういうふうに自分自身を制御していくのか。

将来、そういう場に直面する可能性の高いみなさんへ、伝えたいことはありますか。

小泉さん:極限状況で耐えられるか、耐えられないか。この分岐点は、たぶん、その世界にいることを自分が選んだか、選んでいないかだと思います。

もう、本当にそれだけだと思います。耐えられなかったら、やめればいいわけですから。

僕自身、政治の世界は、親父のあとを継ぎたいと自分から選んだ世界なんです。

「継げ」と言われて入ったわけではないので、いやならやめればいいということなんですよね。

本当に極限状況が日々続き、マスコミにもずっと追われ、プライバシーもありません。

時には、アメリカの生活でしていたような、スタバのテラスでコーヒーを飲みながら読書する時間をもう自分は持てないんだ、あの時間を恋しいなと思うこともあります。

だけどどんな犠牲があっても、「その世界を選んだのはお前だ」と言われたら、その通りなんですよ。だから結局、極限状況に耐えられないということは、「その世界は本当に自分が選んだんですか」という問いを突きつけられていることだと思います。

だから僕はいつも、いろいろな人に「自己決定してください」と言います。たまたま先日、就職の相談に来られた方がいました。

相談に来たのは、A社、B社、両方とも超有名企業の内定をもらった本人とそのご両親です。本人はA社に行きたいが、両親はB社のほうがいいと思っているんです。

たしかにB社のほうが業務内容はグローバルで、将来のことを考えたら幅が出るかなと僕も思いました。けれど本人は、仕事はローカルだけれどA社に魅力を感じていると言います。

ご両親を目の前にしてたいへん申し訳なかったけれど、僕は「親の言うことを聞かないほうがいいよ」と言ったんです。

「親の言うことを聞いて、結果的に大正解だったと思うならいいかもしれない。けど、もしも、最悪な上司に当たってみな。パワハラにあったとか、ブラック企業で精神的に病んだとか。

そうなったときに、きっと親のせいにするんじゃない? 

だったらうまくいくかどうかはわからないけど、この道は、この会社は私が選んだんだという選択をすれば、悩んだとき、つらいときに、『選んだのは私なんだ』って思える。

それが最後の最後、極限状態のときに、がんばろうっていう力に変わるよ。だから自分で決めな」と言ったんですよ。すべての世界、そこじゃないかなと思いますね。

竹中さん:いや、本当に重要なことだと思います。私も鮮明に思い出しました。ちょうど進次郎さんが初めての選挙に出るとき、小泉総理と食事をする機会があったんです。

「進次郎さん、いよいよ立候補されますね。どんなアドバイスをされたんですか」と聞いたら、

「いや、一言だけ言った。『自分で選んだんだからな。忘れるな』。それだけ言った」と。  

どういう言い方をされたかまではわかりませんが、選んだ進次郎さんもすごいし、そういうアドバイスをされる純一郎さんもすごいなと思ったのを覚えています。

進次郎さんはコロンビア大学で勉強されましたが、コロンビア大学にインドから留学してきた学生が行ったおもしろいリサーチを記憶しています。

トップ企業のCEOに、「あなたはどうして社長、CEOになれたと思いますか」というアンケート調査をしたんです。

すると、一番多かったのは「それは自分のやりたいことをやったからだ」という答えだったそうです。

結局、本当に自分がやりたいことをやって、自分で選択したからこそ、がんばれる

人のせいにしないで、がんばれる。そういう点がきわめて重要なのだと思います。

リーダーシップの本質がわかる。「歴史的リーダーの共通点」とは?

結果を出すリーダーはどこが違うのか』では、小泉純一郎さんはもちろん、織田信長やスティーブ・ジョブズなどの“歴史的リーダー”の共通点を徹底的に分析しています。

たくさんの成功と、それ以上の失敗を重ねてきた歴史的リーダーたちから竹中さんが学び取った“リーダーシップの本質”が明らかに。

これからを生き抜くビジネスパーソンに必要な情報がギュッと詰まった、「リーダー論」の決定版です。

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