ビジネスパーソンインタビュー

「今の認識レベルでは、人類は救えない」伊勢谷友介は、環境問題に本気で取り組んでいた

伊勢谷さん、ホントに俳優ですか…!?

「今の認識レベルでは、人類は救えない」伊勢谷友介は、環境問題に本気で取り組んでいた

新R25編集部

2019/11/14

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戦争、貧困、環境問題…

R25世代の筆者は、子どもだった時代から、たくさんの「地球規模の課題」を耳にしてきました。

でも正直この手の話って…なかなか「自分ごと」だとは思えなくないですか? ホントは一人ひとりが何かをすべきなのだろうけど、アクションを起こしている人はごく一部。

どうして僕たちは、自分たちの住む地球の課題を、これっぽっちも自分ごと化できないんだろう…?

ということで今回話を聞きに行ったのが…俳優の伊勢谷友介さん。

じつは伊勢谷さん、「人類が地球に生き残るためにはどうすればいいか?」をテーマにさまざまなビジネスを展開する、株式会社リバースプロジェクトの代表も務めているのです。

自ら実業家として地球の課題にアプローチする伊勢谷さんに、僕らが“自分ごと化できないワケ”をきいてみました。

〈聞き手=サノトモキ〉

伊勢谷さん代表を務める「リバースプロジェクト」とは?

伊勢谷さん

今日は俳優としてじゃなく、リバースプロジェクトの取材なんですよね?

サノ

はい!

環境問題を自分ごと化できない20代…というか筆者に喝を入れていただきたく…

伊勢谷さん

なるほどなるほど。それじゃあ早速、一つ質問。

世界中の人がアメリカ人と同じ生活をしたら、地球が何個必要になると思います?

質問の規模がでかすぎて全然イメージができない

サノ

えっ? ええ~~~~…

伊勢谷さん

5個です

サノ

伊勢谷さん、シンキングタイムが短すぎます

伊勢谷さん

世界中がアメリカ基準に合わせたら、自然資源は地球5個分必要になると言われているんですよ。

日本基準に合わせれば、地球2個分。

これらの数字は、人類が地球環境に与えている“負荷”の大きさを測る「エコロジカル・フットプリント」という指標によって、算出されています。

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伊勢谷さん

つまり、僕らの生活はすでに、“地球1個分の生活を超えている”んです。

だから我々人類は、今すぐにでも地球1個分の暮らしができるようライフスタイルを最適化する作業を始めなければいけない。

この状態を作ったのは我々先進国の人間だと知っていながら、何も行動せず地球の足を引っ張るのは、あまりにダサいでしょう。

サノ

な、なるほど…

伊勢谷さん

そこで僕は、「人類が地球に生き残るためのプロジェクト」を展開していく会社として、リバースプロジェクトを設立したわけだけど…

さて、ここまで聞いてどう思いました?

サノ

えっ、いや…

伊勢谷さん

どうぞどうぞ、正直に言ってください。

サノ

…今のお話を聞いても、やっぱり自分ごととは思えていない気がします

「このままだと地球やばいんだろうな」とは理解したつもりだし、伊勢谷さんのように行動を起こしている人が圧倒的に正しいとは思うんですけど…

なんかすみません…

伊勢谷さん

いや、それが当たり前の反応なんですよ。

サノ

えっ?

伊勢谷さん

僕が起業してかれこれ10年以上が経ちますけど…設立当初は、もっと大きな影響を世の中に与えられると思っていたんです。

それこそ映画みたいな夢物語を描いていました(笑)。

でも率直にいって、想像は甘かった。人の価値観は、そう簡単には変わらなかったんです。

「消費を変えて、地球の未来を変える」その挑戦の先で直面したものは…

伊勢谷さん

リバースプロジェクトはこれまで、「消費者みんなが地球の未来を考えた選択をするようになる社会」を目指すことで、地球規模の課題にアプローチしようとしてきたんです。

サノ

どういうことですか?

伊勢谷さん

資本主義社会の現代、人は誰もが消費者です。

ならば、人類が「地球の未来に思いを馳せたモノかどうか」を基準にサービスや商品を「消費」するようになることがいいんじゃないかと考えた。

つまり、「消費」の価値観を塗り替えることで、地球の未来を変えてやろうと思ったわけです。

なんかもう、俳優に見えなくなってきたぞ

サノ

具体的に、どんなビジネスを展開されたんでしょうか?

伊勢谷さん

さまざまな企業や地域とコラボしながら、僕ら自身の手で「地球の未来に思いを馳せたプロダクトやビジネスモデル」を作っていきました。

伊勢谷さん

たとえば、「全日本制服委員会」。

これは、まずは1000万着の企業などの制服を、環境に配慮したものに変えていくプロジェクト。

これまでに、貝印やニッポンレンタカーやのような大手企業の制服をプロデュースしてきました。

サノ

規模がすごい…

伊勢谷さん

他には、「“E”REGULAR PROJECT(“イ”レギュラー・プロジェクト=イレギュラーを“いい”レギュラーに)」。

年間約200万トン廃棄されている「規格外野菜」の有効活用を目指すプロジェクトです。

色や形がよくないからと廃棄されてきた「規格外野菜」を、企業の食堂におろして、売上の一部を(貧困家庭の子供たちの食生活向上に取り組む)フードバンクなどへ還元する取り組みなんです。

サノ

えっ、このビジネスモデル普通にすごくない…?

このお方、ホントにいったい何者なんだ

伊勢谷さん

そういうビジネスを少しずつ拡大させていくことで、「地球の未来を考える消費者」を増やして、生産者と消費者、両面の価値観に変革を起こそうというのが僕らの狙いでした。

サノ

めちゃくちゃ面白いし、カッコイイ!!!

伊勢谷さん

ただ、さっきも言ったように…思い描いていたようなインパクトは出せていない。

だからこの10年間は、すごく「残念だなあ」という気持ちを抱えながらやってきた部分も正直あって。

サノ

そうだったんですね…

伊勢谷さん

でも、僕の座右の銘は“挫折禁止”。

諦めて何の結果も出さなかったら、何も考えてないやつと同じ。

「どうして世間の価値観が変わらないんだろう?」「まだまだ多くの人が自分ごととしてとらえられないのはなぜなんだろう?」と、何が足りなかったのかひたすら考えました。

サノ

(おお、いよいよ今日の本題に…!)

その答えは出たのでしょうか?

伊勢谷さん

ええ。

多くの人が地球の課題を自分ごと化できないのは…「自分の人生をまっとうするのに精いっぱいだから」です。

世界の変革は、一人ひとりが「真実」に気づくことから始まる

伊勢谷さん

みんな、自分を幸せにすることだけで頭のなかがいっぱいいっぱいなんです。

簡単に言えば、自分の人生が「不安」で、自分以外のことを考える心の余裕がない

「消費」を変えて価値観にアプローチするだけでなく、この不安を解消してあげないと、人が自分以外のことを自分ごと化できることはないのだと気づきました。

伊勢谷さん

今の20代なんてとくにそうなんじゃないかな。

ただでさえ雇用制度がぐらついたりして将来が不安なのに、地球や人類のことなんて気にしてる余裕ないよね。

サノ

…まさにそうかも。

このままだと地球滅びる前に俺が滅びちゃうから…ごめんな地球」みたいな。

伊勢谷さん

僕も20代のころは自分のことばっかりでしたよ。「映画を撮りたい」という夢に向かって、芸大に通いながらひたすら俳優活動をして…

伊勢谷さん

でも、本当はその“将来への不安”って、社会システム的なアプローチで払拭できることがすでに実証済みなんですよ。

サノ

社会システム…国の制度で解決できると?

伊勢谷さん

そう。

ベーシックアセットです。

伊勢谷塾、再開します。みなさん気を引き締めてください

伊勢谷さん

みなさんも聞いたことがあるだろう「ベーシックインカム」は、全国民に最低限の「お金」を渡すもの。

ベーシックアセットという考え方では、たとえば「医療」と「学業」をタダにするという政策アイデアが出てくるんです。

税金が高くなるかわりに、「心身の健康」と「学ぶ機会」を保障することで、国民の人生を安定させる。この試みは、デンマークをはじめさまざまな国で成功を収めはじめています。

サノ

えっ、それならすぐ日本でも導入すればいいですよね。

伊勢谷さん

そうですよね。でも、国家規模の変化が起きていくのって、僕ら一人ひとりがこの世のいろんな真実に気づいていくことがきっかけなんですよ。まずはその気づきが大事ですよね。

地球規模の課題も同じ。ベーシックアセットの例のように、解決の道筋自体は案外立てられるものなんです。

サノ

お話聞いていると、たしかにそう思えそうな気もしてきます。

伊勢谷さん

問題は、「自分にどうこうできるはずがない」と思考停止して、自分だけの世界に戻ってしまう人が多いこと。

まずは、一人ひとりが地球規模の課題を「変えられるもの」だと気づくことがはじまりなのかもしれません。

僕らは「今の人類のレベル」を自覚しなければならない

伊勢谷さん

だからじつは今、僕らは“教育”にも着手しているんですよ。

教育…?

サノ

具体的に、どんなことをされてるんですか?

伊勢谷さん

Loohcs高等学院」という学校に携わっていて、学生と「生きる目的」などについて一緒に考えるアクティブ・ラーニングを展開しています。

「自分規模」ではなく、「地球規模」で物事を考えられる「論理性」と「客観性」を身に着けて、世に巣立っていってほしいと思っています。

そんな思いで、僕ら大人が気づいたことを、若者たちに伝えています。

サノ

その子たちが、社会に出たあと「地球の未来を考えた生産や消費」を実行しはじめるってことか…

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サノ

でも、そういう人って「意識高い」みたいにバカにされちゃったりもしますよね…?

伊勢谷さん

ありますね、残念ながら。

でも、それが現状の社会課題への認識のレベルだからね。

サノ

レベル、ですか。

伊勢谷さん

よく、被災地に支援にいった芸能人が売名だ、偽善だって叩かれたりするじゃないですか

たとえモチベーションが「売名」だろうと、誰かが助かったり元気が出たりするなら、べつにそれでもいいんですよ。でも、一部の人は「その人が得をしそうな感じが気に食わない」ってところにピントが合っちゃうわけで。

それが、現状への認識レベルをよく表してると思うんです

伊勢谷さん

人のためになることを頑張ると、じつは自分が救われる

これってきれいごとのようだけど、僕の経験上、絶対的な真実なんですよ。

でもそれを実践したことがなければ、体感することもできないわけです。

サノ

なるほど。

伊勢谷さん

僕らは自分たち“人類”という種族が、その意識の低さゆえに、今ギリギリのところまで地球に負荷を与えてしまっているという事実を自覚し、どんな行動で応えればいいのか考えなくちゃいけない。

そういう気づきを一人でも多くの人がもつことから、はじまると思うんです。

なるほど…!

サノ

自分がなぜ自分ごと化できないか、どうすればできるか…少し糸口が見えた気がします!

今日はたくさんお話してくださって、ありがとうございました。

伊勢谷さん

いやあ、若い熱さにほだされて、俺もつい熱く語っちゃいましたね(笑)。

でも、こうやって質問を抱くこと自体が、自分ごと化への第一歩ですからね。

ぜひまたお話しましょう!

自分のことで精一杯だと、自分のこと以外、自分ごと化できない

この言葉は、地球規模の課題にとどまらず、いろんなことに通ずる「耳の痛い話」な気がします。

取材後、「俳優として一層活躍して、その影響力をリバースプロジェクトに還元したい」とお話しされていた伊勢谷さん。すべての行動が「地球のために」につながっている、ひたすら熱くかっこいいお方でした。

リバースプロジェクト、面白くめちゃくちゃ学びのあるプロジェクトをたくさん実施しているので、ぜひみなさんもチェックしてみてください!

〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)

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©2019 フジテレビジョン アミューズ 東宝 コルク

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