ビジネスパーソンインタビュー
竹中平蔵著『結果を出すリーダーはどこが違うのか』より
あえて自分からは手を挙げない。小泉進次郎に学ぶ、若手リーダーに必要な“3つの習慣”
新R25編集部
“構造改革なくして景気回復なし”をスローガンに、「交通営団」「道路関係四公団」などの民営化を推進した第87~89代内閣総理大臣の小泉純一郎さん。
その彼を一番近くで支えつづけた竹中平蔵さんが、著書『結果を出すリーダーはどこが違うのか』を上梓しました。
同書において、竹中さんと小泉進次郎さんの対談が実現。
それぞれの形でリーダーとして活躍するおふたりの言葉には、R25世代のビジネスパーソンにも通ずる“リーダーシップの本質”が隠されていました。
今回はその対談のなかから、「若手リーダーに必要な3要素」をご紹介。
チームのリーダーとして悪戦苦闘している人はもちろん、リーダーを志すあなたも必読です!
①恩を忘れず、とにかく「人一倍走る」
小泉さん:リーダーシップの中で大切な要素の一つが、「恩を忘れない」ことだと思います。
もちろん誰にとっても大事なのですが、リーダーたるもの絶対に忘れてはいけない。
例えば、竹中先生がいなかったら小泉純一郎はないんです。小泉純一郎が5年5カ月もの間、総理大臣を務めることができたのは、竹中先生がいたからです。
竹中先生の引き際というのも、今までの政治の歴史において例がないと思いますよ。
「小泉純一郎が総理を辞めるときが自分も政治家を辞めるときだ」と明言し、本当に辞められた。
その思いがあるから、竹中先生からお願いされたことをできる限り私はやろうと誓っています。
そのほか、政治家として考えるのは、シンプルですが「人一倍がんばる」ことです。
私が政治家になったのは28歳でした。今36歳(対談当時)ですが、ずっと最年少と言われ続け、一緒に仕事をする人は50代以上が当たり前。
そういう環境で、いくら拳を振り上げて「ついてこい」と言っても誰も絶対についてきません。
特に政治家のみなさんにはそれぞれの思いがありますし、きれいごとだけではなく、裏でいろいろなこともあります。
それでも、「小泉進次郎のことは気に入らないけれど、がんばってることは認めてやろう」、そう思ってもらえるように常に心がけています。
つまり、誰よりも走ること、誰よりもやること。シンプルに、そこです。そうでなければ、いくら頭に数字が入っていようと、難しいことをしていようと関係ないですね。
竹中さん:2005年に郵政民営化解散があったときのことです。
結局、自民党と公明党と合わせて3分の2の議席をとって小泉(純一郎)さんは圧勝しました。
その後、慶應義塾大学のある教授がおもしろいアンケート調査を行っているんですね。「あなたは郵政民営化に、どの程度、賛成だったか、反対だったか」という質問です。
結果は、賛成のほうが反対より少し多いのですが、実は多くの人が「よくわからない」と答えているんですね。
「ではなぜ、あなたは小泉さん側に入れたのですか」と理由を聞くと、ほとんどの人が、「小泉さんが、そこまで言うんだったらやってみてほしい」と答えている。
政策の中身よりも、「この人が言うんだったら」ということなのですね。
これは、先ほど進次郎さんが言われた「恩を忘れない」、そして「とにかく一番走る」、こうした積み重ねに通じるのではないかと思います。
政策はもちろん大事なのですが、その上で全人格的な信頼のようなものをどこかで勝ち取る必要がある。
それを、どのように勝ち取るかという方法は、いろいろなやり方があるでしょうが、こうした積み重ねが大切であるということ。
これは本当に小泉純一郎さんが稀代のリーダーであったことの、一つの非常に大きな条件だったと思います。
そして今、息子である進次郎さんは本当に日本中を走り回っていますからね。
そういう姿が、政策に対する賛成、反対を超え、リーダーとして人を引きつける力になっていることは、間違いないと思います。
②自分から手を挙げない
竹中さん:若手として「とにかく一番走る」、そのほかにもいろいろ気を使ってきたかと思いますがいかがでしょう?
小泉さん:年下として意識をしていたのは、例えば自分から手を挙げないということです。
竹中さん:ご自分からは、「何かをやらせてくれ」とは言わないということですね。
小泉さん:はい。意外に思われることが多いのですが、「やれ」と言われたらやる。そして、「やれ」と言われたときには期待されている以上の結果を出す。ぐうの音も出ないほど、です。
求められているところの及第点ではなく、100点満点のテストで、どうやったら150点を出せるのか。
「若い人の抜擢」ですごく怖いのは、結果が出なかったとき一気に叩きつぶされることです。
それでも、チャンスを2回目、3回目と与えられ続けるためには、その与えられたチャンスで文句のない結果を出すことしかないんです。
塩川正十郎先生、「塩じい」と呼ばれた方がいらっしゃいました。
ベテラン国会議員である「塩じい」が、国会の質問には3日間かけるとおっしゃっていましたが、私は、それどころじゃなかったですね。
自分の能力を考えたら、3日ぐらいでは準備と言えないと考えていました。周りが、「さすがに、そこまでは詰めてこないだろう」というところまで詰めるには何をすべきかを、徹底的に考えました。
それから、これは理屈ではありませんが、エレベーターには絶対自分が先に乗らない。
先輩がいたら必ず一番後ろから乗りますし、会議で意見があったときも、まずは先輩たちから手が挙がるのを見て、最後に「ちょっと申し訳ありませんが」とやる。
民間の世界にはないと思いますが、国会では会議のとき言いたいことだけ言って帰る人がけっこういるんですよ。「俺は言ったぞ」ということを見せるためだけに…。
若手は、それを絶対やってはいけないし、もし発言するのであれば、最後までその会議にいます。
一つ一つを徹底的にちゃんとやって、突かれるところを与えない。「生意気だ、礼儀を知らない」と、何だって突かれる世界ですから、とにかく細かいことを含めて全部やっています。
自分のスタイルを貫くべきところと、「そんなことを貫いて、いったい何になるの」というところをちゃんと峻別(しゅんべつ)することですよね。
③断るときはすぐに断る
竹中さん:おっしゃる通りだと思うんですが、進次郎さんのような立場になると、困ることもあると思います。
例えば、総理と幹事長から同時に、「自分の補佐官になれ」と言われたとします。
そういう場合には、どちらかに対して丁重にお断りしなければいけない場合があるでしょう。
要するに、リーダーないしは将来のリーダーだと目されると、いろいろなリスクに直面します。
この人をうまく担いで利用しようと思う人がたくさん現れるわけですよね。
そうした人たちに対して、すべて「わかりました」というわけにはいかないでしょう。
うまく制御することが必要になってくると思いますし、実際制御してきたと思うのですが、何か指摘していただける点はありますか。
小泉さん:おそらく政治の世界で特に大事なのが、いかにうまく断るかという力です。
その断る力というのがすごく大切で、たいてい断られた側は、もう二度、三度、お願いをしてきます。
余地を与えない断り方をしつつ、けれど、失礼には当たらない断り方をどういうふうにするか。これは日々、講演も含めて、いろいろなところで起こります。
「あっちを受けて、なんでこっちを受けてくれないんですか」と言われてしまう。
断られた側に対しての配慮も含めて対応するというのがすごく大切で、常に考えますね。
それから、政治の世界では、断られるとわかっている人に何かをお願いするとき、断らせないように外堀を埋めるという手法があるんです。
その手法とは、その話を外に出しちゃうこと。そして、もう空気を作ってしまうんです。
「そういう話が出ているのに断るなんて、ずいぶん恩知らずだ」というような、断る側が、まるで悪者だというような空気を作ってしまう。
それを理解したうえで、どう先手を打ってメッセージを発信しておくかということも、すごく大事ですね。
わかりやすい具体例を挙げると、2014年の都知事選挙のときに私が舛添要一さんの応援をするかどうかという話があったんです。
「自民党が野党だったときに『自民党は終わった』と言って出ていった人のことを、なんで応援しなきゃいけないんですか。大義もないですよ」
最初にポーンと言いました。あそこで言っておけば、都知事選の応援に一度も声はかからないんです。そうすれば、頼まれて、お断りをする必要がなくなるじゃないですか。
断るときはすぐ断れ、受けるときは迷ってもいい。それが、たぶん一つの原則じゃないかと思います。
リーダーシップの本質がわかる。「歴史的リーダーの共通点」とは?
『結果を出すリーダーはどこが違うのか』では、小泉純一郎さんはもちろん、織田信長やスティーブ・ジョブズなどの“歴史的リーダー”の共通点を徹底的に分析しています。
たくさんの成功と、それ以上の失敗を重ねてきた歴史的リーダーたちから竹中さんが学び取った“リーダーシップの本質”が明らかに。
これからを生き抜くビジネスパーソンに必要な情報がギュッと詰まった、「リーダー論」の決定版です。
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