

人より頑張れるところでは、弱気を見せない
少数民族を撮りつづけるヨシダナギが「人の可能性は、信用と勇気で決まる」と語る理由
新R25編集部
仕事をしていくうえでも、プライベートで深い関係を築くうえでも、「信用されること」の重要さははかりしれません。
ですが、なぜ“今”その波がきているのでしょうか? そんな背景を探るため、まさに時代の流れをつかんで一躍有名になったこの方にお話をお伺いすることに。
【ヨシダナギ】1986 年生まれ。フォトグラファー。 2009年より単身アフリカへ渡航。以来、独学で写真を学びながらアフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影、発表。唯一無二の色彩と直感的な生き方が評価され、2017年には日経ビジネス誌で「次代を創る100人」、雑誌PEN「Penクリエイター・アワード 2017」に選出される。また同年には、講談社出版文化賞 写真賞を受賞。近著には、写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)、紀行本『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)、エッセイ「ヨシダナギの拾われる力」(CCCメディアハウス)、BEST作品集「HEROES」(ライツ社)がある
「少数民族と同じ格好で撮影する写真家」として注目を集めているヨシダナギさん。
はじめてアフリカに渡ったときは英語も話せなかったという彼女は今、幼いころからの憧れだったというアフリカの地で少数民族と信頼関係を築き、自身の夢を叶えています。
ナギさんが、好きなことで生きていくには「信用」と「勇気」が大事だと語る理由とは…?
〈聞き手=ほしゆき〉
一歩を踏み出す勇気のない人には、何も起こらない

ほし
今回は、ヨシダさんに「信用」をテーマにお話をお伺いしたいのですが…

ヨシダさん
「信用」って大事ですよね。でも同じくらい「勇気」も大事だと思うんです。
私、その人の可能性って「信用」と「勇気」の掛け算で変わるんじゃないかと思っているので。

ほし
勇気といえば、ナギさんの著書のなかでずっと忘れられないのが「かすり傷より爆死したい」という一言なんですが…(笑)
「それですか!(笑)」

ほし
この言葉の後には「もしダメだったら、ちゃんと絶望できる大きな挑戦を選びたい」とつづいていますが、そのような勇気はどこから来るんですか?

ヨシダさん
私は、なにかに未練を持ちつづけている自分が本当にキライなんです。
中途半端に傷ついたり失敗すると、まだ望みがあるからウジウジ考えはじめるじゃないですか。
その時間がもったいないので、やるなら大成功か大失敗がいい。もしダメでもそのほうが次に進むためのエンジンになるので。

ほし
でも、たとえば会社を辞めてチャレンジしようと思っても、「食べていけなくなったらどうしよう」と不安になって一歩を踏み出せない人が多いと思うんです。

ヨシダさん
「食べていけなくなること」なんてないですよ、今の日本で。
たとえ会社員という肩書きを失ってもバイトはできるし、生計が立つまで友だちに寝床とご飯を頼ることだってできる。
なんだったら、無理して日本で生活する必要もないです。完全に資金が尽きる前に、物価の安いタイへの片道チケットだけ買って、タイで生活したっていい。

ほし
えっ…そうかもしれませんが…極端じゃないですか?

ヨシダさん
選択に迷ったら、極端だと思うリスクを選んだほうがいいんです。
「25歳でコンビニバイトって恥ずかしい」とか、「まわりと比べて劣っていない社会人でいたい」なんていう見栄やプライドで自分を守って動けないうちは「本当に欲しいもの」なんて手に入りませんから。

ヨシダさん
一歩踏み出す勇気が出せない人に、新しいことはなにも起こらないんです。

ほし
(グサッ…!)
ただし、勇気があっても信用されないと好きなことはできない

ヨシダさん
…とは言っているけど、私も以前は踏み出すことを怖がっていたので、臆病になる気持ちはわかります。
子どもの頃からアフリカ人に憧れていて、「いつか絶対にアフリカに行きたい」という明確な夢があったのに、23歳まではグラビアやイラストのお仕事をしていたんですよね。

ほし
グラドルだったんですか!?

ヨシダさん
はい(笑)。
アフリカに行くにはお金も時間もかかるし、現地に行って「なんか違った」となるのが怖かったんです。

ヨシダさん
だからずっとアフリカに踏み込めずにいたんですけど、片想い状態なのがいよいよ我慢できなくなったんですよね(笑)。もう限界だと思った。
そんな想いでアフリカに行ったんですが、最初はやっぱりキツかったんです。

ヨシダさん
いざアフリカに飛び立ったはいいものの、ほとんど英語が話せなかったので、会話はガイドさんに頼まざるを得なかった。
日本人女性が急に来たところで、現地の人はそんな簡単に心をひらいてくれるわけがなくて。

ほし
テレビではよく民族の長がやさしく日本人を受け入れてくれるシーンを見ますが、実際は厳しいんですね。

ヨシダさん
もちろんそういう民族もいるけれど、私が行くような僻地の少数民族だとなかなか…
そこで気がついたのが、勇気があっても「信用」されなければ好きなことはできないということです。
自分の「得意なフィールド」を見極めてやりきることで信用を獲得できる

ほし
自分の信用がまだゼロのとき、ナギさんはどうやって相手との距離を近づけていくんですか?

ヨシダさん
まずはできる限りそばにいることと、ニコニコして相手の話を聞くことです。
「とにかくあなたのことをもっと知りたい、近づきたい」という気持ちを、精一杯態度で示すんです。「どうしてもこの人と一緒に仕事がしたい!」と思える人に出会ったときも同じですね。

ほし
なるほど。
たとえ言葉が通じない相手でも、態度でなら伝えることができますもんね。

ヨシダさん
そうです。そういうことを必死にやっていたら、食事に呼んでもらえたりするようになりました。

ほし
ナギさんがテレビでイモムシやヤギの頭、泥水のコーヒーをふつうに口にしているのをみて、驚いたことがありました(笑)。

ヨシダさん
正直、キツイときもありますよ。
私は感情が顔に出にくいタイプだったり、裸でコミュニケーションをとったりしていたので、「ヨシダナギ は自然体だ」というイメージを持たれることが多いですが、実際はそんなことないんです。

ほし
キツイのにそこまでするのはなぜなんでしょう?

ヨシダさん
「なんでも食べる」とか「脱げる」という勇気は、私にしかないストロングポイントだからです。だからこそ、そのフィールドでは絶対に負けない、やりきるぞと決めてるんです。
実はかなりの見栄っ張りで、「自然体」の対極にいるのがヨシダナギなんですよ。

ほし
自分だけのポイントを見つけてそこを徹底する。ある意味、戦略家でもあるわけですね。

ヨシダさん
テレビでも、「脱げて、食べられる女性」ということで面白がってもらっている。そこで弱さを見せてしまうと、「結局この人なにもできないじゃん」と信用してもらえなくなりますよね?
だからこそ、自分が人より頑張れるところでは、絶対に弱気を見せちゃいけない。むしろそこだけでいいからやり抜くことが大切だと思っています。
言いなりになってはダメ。「自分にとって譲れないものを守る」ことも信用につながる

ほし
ちなみに、そんなナギさんが断ることってあるんですか?

ヨシダさん
ありますよ。私、踊ることと夜の宴だけは絶対に参加しないんです。どんなに誘われても、絶対に断ります。本当にイヤなので。

ほし
えっ、でも踊りとお酒って仲良くなるための超重要な手段じゃないですか!?

ヨシダさん
自分を殺して関係を築いても、辛くなるだけで長く一緒にはいられないんですよ。
一度受け入れてしまうと、次に断ったとき「なんか態度悪いな」とヘンな空気になるので逆効果。だから最初から断固拒否するんです。
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ヨシダさん
その代わり、それ以外で自分にできることは120%でやるし、全力で一緒に楽しい時間を過ごす努力はしているので。
いたずらになんでも受け入れるのではなく、「自分にとって譲れないことをちゃんと守る」というのも、信用されるために大切だと思いますね。

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個人として強くなるために、「ひとりでは生きていけない」という自覚を持つ

ほし
ここまではアフリカでのお話を伺ってきましたが、日本でのお仕事において「信用してもらうために心がけていること」はありますか?

ヨシダさん
大きくは変わらないのですが、「自分の弱み」をあえて先に伝えるようにしています。

ほし
ナギさんの弱みというのは…?

ヨシダさん
私、人と話すのが下手なんですよ。
なので、「人見知りであまりこういうのは得意ではないのですが…」と最初に伝えるようにしています。

ほし
『ヨシダナギの拾われる力』(CCCメディアハウス)にもありましたが、「できないことはやりたくない、というかやらないほうがいい。できる人に任せたほうがいい」というのがナギさんの軸なんですよね。

ヨシダさん
そうですね。
自分が人よりも長けている部分で思いっきり勝負するために、できないことを頑張っているヒマはないんです。

ほし
「個人として最大限力を伸ばす」ということは、上手に人の手を借りるってことでもあるんですね。

ヨシダさん
自分が得意なものに振り切る”勇気”と、”信用”される力を掛け合わせることで、本当の意味で「好きなことで自由に生きられるようになる」んだと思います。
インターネットやSNSの普及によって、誰でも自己発信できる時代だからこそ、挑戦するハードルが下がっている昨今。
だからこそ、ヨシダさんのようにその先で突き抜けられるかどうかは、「信用力」に左右されていくのだと思います。
まさにそんなヨシダさんの考えをアプリにしたようなものが、自らの信用力をAIで数値にできる『ジェイスコア』というサービス。みずほ銀行とソフトバンクが共同で設立した起業によるAIを活用したサービスです。このようなサービスを活かすことで、より積極的に「信用」を活かして活躍できる世の中がやってくるのかもしれません。
信用力を数値化するこのサービスは自分自身の変化とともに成長していくので、まさにやりたいことへの挑戦を後押ししてくれる存在と言っても過言ではありません。
これからの時代は、このようなサービスを活用して、より「信用」が武器になって、夢への第一歩を踏み出せるようになるのかも?
〈文=ほしゆき(@yknk_st)/編集=宮内麻希(@haribo1126)/写真=鬼澤礼門〉

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